パンダさんのプリティーダービー!(前)
野生の王国には、たくさんのウマがいます。
ウマは働き者でした。荷物運んだり畑を耕したり。
何しろ、ウマ一頭で出来ることが「馬力」という基準になるくらい。
ウマは毎日、馬車馬の如く働いていました。
そんなブルーカラーの彼等ですから血気盛ん!
夜ともなれば厩舎で宴会、大騒ぎ。果てはケンカも日常茶飯事。
今宵も一頭が口火を切る。
「この中で一番速いのは?」
さあ、カンカンガクガクの大激論!
皆が俺だ俺だと主張し譲らない。あわや血を見る惨事!
長老シロゲが事態の収拾に乗り出し一喝!
「実際に走って決めろ」
レースは公開で行われました。
最速のウマは誰だ!
それは他の動物たちにとっても興味深い。馬場は超満員。
エントリーしたのは、
カゲ・クロカゲ・アオカゲ・アオゲ・クリゲ・アシゲ!
戦前の予想では、荷車引いてるクロカゲが一番人気。
天候は晴れ。良馬場。
実況はオウムです。
各馬ゲートインから一斉にスタート!
アオゲがちょっと出遅れたか。
第二コーナーを回ったところで先頭はクロカゲ。
一馬身ほど離れてクリゲ、さらに一団となって、
アオカゲ、カゲ、アオゲ、アシゲが追う展開。
さあ、第三コーナーまわって第四コーナーにかかる。
ここで、おおーっと、
最後尾からアシゲがグングン出てきた!
アシゲ速い、速い!トップのクロカゲも懸命に逃げる。
最後の直線コースに入った。もう差はほとんどない。
並んだ、並んだ!残り・・・抜いた!
アシゲ、大逆転で一着ゴールイン!
何と何と勝ったのは誰も予想しなかったアシゲ!
アシゲは「最速」の称号を得、喝采を浴びます。
おまけに馬主からご褒美にニンジンをタンマリ。
一方、敗れたクロカゲは悔しくてたまらない。
ずっと一着だったのに、ゴール直前で差されたのですから。
納得いかないクロカゲは憤然と再戦を申し込みます。
見物客もまた、意外に実力が拮抗していることを認めました。
次はどっちが勝つかわからない。
いや、三着以下に終わったウマにも充分チャンスはある。
アシゲ、表彰台の上でマイクをつかんで絶叫!
「俺がチャンピオンだ!
いつ何時、誰の挑戦でも受ける!
イチ、ニッ、サン、ダァーッ!」
ひええぇーっ!何てこったい!
今回、パンダさんの出る幕なかったぁーっ!