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パンダさんのパン屋さん  作者: 山田靖
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パンダさんの星降る街角!2

とっても寒い夜でした。冷たい風がほっぺたに吹きつけます。

でも、街は浮足立っていました。大勢のひとが家路を急いでる。

ネオンが煌めき、陽気なリズムが流れ、おしゃべりと雑踏。

行き交うひとびとは皆、どこか楽し気!もうすぐ、クリスマス!なのです。


そんな笑顔と歓声で沸き立つ街のハズレ、小さな橋がかかっています。

「オリジナルの新刊でーす!」「良かったら見てってくださーい!」

サンタコスの少女が机とイス出して自作のBL本を売っていました。

今日、初めて同人イベントに出展したのですが、一冊も売れなかったのです。

「ポストカードはタダですよーっ!」「スケブ描きまぁーす!」

朝から搬入、11:00-15:00までイベント、撤去からアフターで路上。

一日中、声を枯らしてるのに、サッパリ売れません。

けっこう通行人はあるものの、見向きもされない!

そりゃ、そうでしょう。わざわざ人目のつくとこでBL本なんて。

「本を買ってください!」「売れないとゴハンが食べられないのです」

夜も更けてきました。気温もドンドン下がっていきます。


「おいおい、こんなとこじゃ同人誌は売れねぇぞ!」

パンダさんです。大きなリュック背負って両手の紙袋には本がギッシリ。

「君はさっきまでそこに居たね?確かBLコーナーだったような。どう?売れた?ははあ、出展は初参加だったんだ。うんうん、一般ではチョクチョク来てたね。あれだろ?これなら私にも描けるとか。で、授業中にノートにラクガキしてたらクラスメイトに見つかって、”アンタ、上手いじゃん”マンガ家みたい”ねぇねぇ、アレ描いてよ”普段、陰キャでぼっちだったのに一躍注目浴びて図に乗っちゃった。イベントに出るって口走ったら”わぁ、スゴイ!行く行く!絶対行くよ!”みんな午後から来るんでその前に売り切れたら困るってフンパツして300冊刷ったと。会場へ直送してもらったら80サイズ段ボール箱が6個もある。ひえぇ、って周囲のサークルにもドン引きされてあげく友だちはひとりも来ない、ド新規なんで相手にされない。見本誌すら手に取らない。オマケのポストカードと名刺をやっと3人くらいに押し付けた大爆死だったんだ。これが着払いで実家に届いた日にゃ親御さん寝込むから自分で持ち帰るしかないけど重たいからチョットでも減らそうとここで売ってるんだね。いやぁ、よくある話さ。あのね、見たところ君は確かに絵は上手い。友だちもオセジじゃなくて誉めてくれたんだ。けど、そりゃ半分キャラ人気なんだ。ここはそれでカンチガイしたのばっかりなんだ。しかもBLってさあ、そりゃ同人誌といえば18禁なんだけど、あのジャンルはこれでもかというくらい細分化されてる。そしてヲタは特定のモノしか買わない。BLなんか最たるもので、読者は100%腐女子だ。女性絵師が増えたとはいえ、一般参加は断然野郎が多い。さすがのボクでもBLには手が出ない。需要と供給のバランスだよ。それと君は”好きこそものの上手なり”で描いたんだろうが、自分が描きたい絵と他人が描いて欲しい絵はまた別だ。絵でお金をもらうということは、自分を殺し人様の欲望に応えることなんだ。それはそうと、ボクは長年、女性作家にある違和感があった。何か気色悪いんだ。その原因は目線だった。女性の視点だから男の描写が細かい。これが男だと女性キャラは全身全霊で描き込む。女性が男性作家を下品とするのはそういうところだったんだ。これが性別だよ!差別とかじゃなくてね。ついでに女の子は女性キャラの特に巨乳を毛嫌いするがアレ何でなの?男は現実じゃサイズにこだわるけど、フィクションには文句つけんぞ。まあ、そんな感じで君もプロを目指すなら世間に媚びへつらってほしい。百合なら大歓迎だ。おお、そうだ!こんなこともあろうかとボクはお気に入りを複数確保してある。布教用を君にあげよう。人気絵師の作風をよく観るんだ。なあに、彼等だって最初から壁や列や即完売だったわけじゃない。君ならできる!」

「ありがとうございます。それじゃこの在庫と交換してください」

「おいおい、全部?次のイベントに少し残しといたら?」

「いいんです、いいんです。Re:ゼロから始めます!」

「そうかい?エヘヘ、悪いなぁ」


パンダさんと少女はとってもあったかい気持ちになれました。

星降る街角、こんな寒い晩なのに心はポッカポッカ・・・

「あっパンダさん、雪ですよ!」

パンダさんと少女はニッコリ笑ってお家へ帰っていきました。



パンダさんの星降る街角!2

「同じ本ばっかり300冊もどうするんじゃーいっ!」


・・・・・・・・・・To Be Continued


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