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パンダさんのパン屋さん  作者: 山田靖
168/224

パンダさんの残酷な天使のテーゼ!

「急募!買い物代行

 高齢者等、外出が困難な方々へ食品など届ける簡単なお仕事です

 高給優遇、委細面談」


これだっ!楽して儲かるバイト探してたオレは速攻で登録した。

事務所にスマホと保険証を預けるや、さっそくオーダーが舞い込んできた。

「パンダさんのパン屋さんのメロンパン2個を届けてください」


パンダのパン屋は遠かった。しかも山ン中。こんなんクライマーでもキツイだろ。

メロンパン2個って。そりゃまあ、美味いかもしれんが、パンはパンだろ。

支払い済んでるが1個一万円!本物のメロンより高けぇじゃねぇかっ!

やっとこさパン屋に着くと、ホントにパンダが出てきた。

「へい、らっしゃい!何いたしやしょう?みんな美味しいよっ!」

あっいや、買い物代行ですが、注文してたメロンパンを取りに・・・

「あっああぁぁー!メロンパンね。うんうん、大丈夫!用意してあるよ」

パンダはニヤリと笑ってwinkすると、オレを奥へ通した。

土間には大きな石があった。パンダは厳かに「開け、ゴマ!」

ゴゴゴゴ・・・地下室へ降りる階段だった。


「さあ、これがそうだよ」

パンダは黒いプラスチック製の弁当箱みたいなのを持ってきた。

それから食パンの切ってない一本まるごとをくり抜いて中に埋めた。

えっ?メロンパン・・・なっ何をしてるんですかっ?!

困惑するオレの目の前で、パンダはかまわずラッピング完了。

「いいっていいって!先方、解ってるから。毎度どうも!」

オレは変な汗が出た。ヤバイもんを運んでるんじゃないか?

これって、もしかして、あの、ややや闇バイトってヤツじゃあ・・・


「おおっありがとう!まあ、上がってくれ」

お届け先の中年男は少々陰キャだが機嫌よく迎えてくれた。

中に入ってビックリ!同じようなハゲやデブやメガネのオッサンがタムロしとる。

購入者はパンから黒いのを取り出すと何やらクラシックな機材にセットした。

「いやあ、最近ウルサクってねぇ。そうだ、良かったら君も観ていきなよ」

こっこれは!親父に聞いたことがある!VHSビデオテープとやらではっ!

すると中身は!むっ無修正とか流出やらの、ううう裏ビデオ!

オレは変な汗が出た。大昔のものとはいえ、モザイクなしで視れる!わくわく!


部屋はカーテンが閉め切られ照明も落とされた。各自、マナーモード。いざっ再生!

「画質悪いなぁ、三倍速で7-8回ダビングしてるから仕方ないか。でも音はいい」

「30年前の天気予報か。明日は雨だったんだな。おっCMもノーカットだぞ」

「さすが、パンダさんコレクションだ。ホラいよいよ始まるぞ!OPだ、唄おう!」

「うーん、いつ観ても何度観ても感動しますね。まさに伝説です」

「この爆風の描写どうよ!鳥肌立つね。コマ送りでもう一度」

「彼女こそツンデレの始祖ではなかろうかっ!」

「そういや当時、考察でアナタと徹夜で激論して最後は殴り合いになりましたね」

「今の若いモンはパチスロから入ったクセに信者ヅラしやがる。真の古参とは、当初人気なかったTV本放映毎週水曜日18:30~リアルタイム視聴の我々だけを指す!」

「すべてはここから始まった!」


突如画像が乱れキリキリプチッと音がして真っ暗になった。

ええっテープが切れちゃったあ?おいおい、こんなのどーすんのよ。

「しょうがないなぁ」オッサンはこんがらかったテープを引っ張り出しヨジレを戻す。

あのあの、切れたとこは?「おい、セロテープ持ってこい」

えっ貼るの?貼っちゃうの?それで、それで、えっそんだけ?オレは変な汗が出た。

元通りに収めてデッキに挿入!これがまたちゃんと再生されるじゃありませんかっ!

賑々しくプレミアム観賞会は無事再開された。



パンダさんの残酷な天使のテーゼ!

この次も、サービス!サービスぅ!


・・・・・・・・・・To Be Continued


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