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パンダさんのパン屋さん  作者: 山田靖
136/223

パンダさんの孤独のグルメ!

夜は、いろんな顔を持っている。

その顔をひとつひとつ覗いてく男がいる・・・


Saturday Night Fever!深夜にもかかわらず街は浮足立っている。

雑踏や喧噪、ネオンに陽気なリズム、だが私は孤独だった。

あてもなくさまよっている。頭が割れるように痛い。

どこで何をしていたか、これから何処へ行こうとするのか?

気持ちが悪い。意識がモーローとして時空までがボンヤリしてる。

どれほど歩いてきたのだろう。真っ直ぐな広い道だった。

静かであった。真っ暗な先にポツンと灯が見える。

その下に小さな食堂があった・・・


「へい、らっしゃい!何にいたしやしょう?」

あっいや、私は・・・言いかけてビックリギョーテン!

何と何と、店主はパンダだった!


「儲かりまっか?ボチボチ?いいなぁ。ボクなんか昼間パン屋やってるけどこの不景気でね。食ってけなくなって仕方なく夜もイートインなんか始めたんスよ。あっ今日から今日から。お客さんが初めて!第一号だからサービスしまっせ。歌でもどうですか?

♪ぃヤミのぉ中でえぇぇ何かがぁ今ぁウゴメイているぅぅぅぅそぉれわぁぁ犠牲者!

ギセイシャ!GISEISYA!UMmmmmmmm!赤と黒だけの世界ィィィィィィ!

ヘビメタ嫌い?うーん、残念!いやあ、学生時代にバンドやってましてね。

こりゃオリジナルでね、ボクが作詞したんだけど、

ベースのヤツが”もっと悪魔的じゃないとダメだよ”って抜かしやがってさぁ」

パンダは饒舌だった。聞きもしないのに、お天気やアニメの話をベラベラと。

いっいや、それより何も注文してないのにパンが出てきた。

おいおい何だよコレ!固くなってるし、ちょっとカビ臭いぞ。

「やだなぁ、お客さん!ウチは新鮮第一!本場直送のパンでっせ!」

ぱっパンに本場なんてあるのかよっ?

「Oh NOooooo!モノゴトすべてにホンモノがありニセモノがあるんスよ、お客さん!真偽を見極める感性を磨かないと損しますよ、ソン!パンの本場はねぇ・・・ウフフ、ウチですよ、ウチ!パンダさんのパン屋さんと言えばウチが本場!元祖!みんなに自慢していいスよ。そうだ、今日は特別にお客さんにナイショのグルメ情報を教えてあげようかな」

パンダの目が妖しく光った。


「お客さん、タコ焼き好き?そう、良かった。あのタコだけどさあ、どこが一番おいしいか知ってる?実はね、タコは利き足がウマイ!ほら、右利きとか左利きってあるでしょ。それって手だけじゃなくて、目とか耳なんかにもあるんだ。メインで使ってる方がそうだよ。それでね、タコにもあるんだ。タコは八本足だけどメインの利き足は一本!よく使ってるから筋肉が発達しプリプリしててウマイんだ。で、この利き足の見分け方なんだけど・・・いいかい?秘密だよ。タコの頭をペチッとたたくんだ。そん時、真っ先にビクッて動いた足が利き足!コイツを食ったら他の足は食えないね。えっ食べたい?ウチはパン屋なんでタコなんか置いてないよ」


パンはマズくて値段も高かった。店主もウザイし、もうこんな店はコリゴリだ。

まぁでも、話のネタにはなるな・・・


「お客さんさぁ!アンタ、昨日パンダさんトコ行ったね?そのタコの話、ウソだよ、ウソ!全部ウソ!ウソウソウソ!四月は君のウソ!あのパンダ、自分がダマされて恥かいたんで、初見の客に同じ話するんだ。んで、アンタみたいに引っかって”タコの利き足を出せ”って、ウチに来るから、こっちはメイワクしてんだよね!」



パンダさんの孤独のグルメ!

真夜中の食堂は今日もまた、星降る街角で春夏冬あきない中!

袖振り合うも他生の縁、とびっきりのご馳走でオモテナシ!


・・・・・・・・・・To Be Continued


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