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パンダさんのパン屋さん  作者: 山田靖
135/223

パンダさんのタクシードライバー!

夜は、いろんな顔を持っている。

その顔をひとつひとつ覗いてく男がいる・・・


Saturday Night Fever!深夜にもかかわらず街は浮足立っている。

雑踏や喧噪、ネオンに陽気なリズム、だが私は孤独だった。

あてもなくさまよっている。頭が割れるように痛い。

どこで何をしていたか、これから何処へ行こうとするのか?

気持ちが悪い。意識がモーローとして時空までがボンヤリしてる。

どれほど歩いてきたのだろう。真っ直ぐな広い道だった。

静かであった。真っ暗な先にポツポツと灯が見える。

私は呆然と立ち尽くした。


その時である。私の側にすぅーっと音もなくタクシーが停まった。

ドアが開く。私は吸い込まれるように乗り込んだ。

「どちらまで?」

あっいや、私は・・・言いかけてビックリギョーテン!

何と何と、運転手はパンダだった!


「儲かりまっか?ボチボチ?いいなぁ。ボクなんか昼間パン屋やってるけどこの不景気でね。食ってけなくなって仕方なく運転手なんか始めたんスよ。あっ今日から今日から。お客さんが初めて!第一号だからサービスしまっせ。歌でもどうですか?

♪ぃヤミのぉ中でえぇぇ何かがぁ今ぁウゴメイているぅぅぅぅそぉれわぁぁ犠牲者!

ギセイシャ!GISEISYA!UMmmmmmmm!赤と黒だけの世界ィィィィィィ!

ヘビメタ嫌い?うーん、残念!いやあ、学生時代にバンドやってましてね。

こりゃオリジナルでね、ボクが作詞したんだけど、

ベースのヤツが”もっと悪魔的じゃないとダメだよ”って抜かしやがってさぁ」

パンダは饒舌だった。聞きもしないのに、お天気やアニメの話をベラベラと。

いっいや、それより行き先も告げてないのに車が発進してるんだが・・・

おいおい、何処へ行くんだよっ!

「何言ってんスか。お客さんの思うがまま、お望み次第で何処にでも行きまっせ!」

私は帰るんだ、さっきのとこで降ろしてくれ!

「Oh NOooooo!まだ宵の口、夜はこれからじゃないスかっ!せっかくこうして出会えたんだ、イチゴ一会を大切にしましょうよ。アナタも若いエネルギーを持て余してるでしょ?オールナイトでダンシング!そうだ、ボクの知ってる店に案内しまっせ。お客さん、好きそうだからきっと気に入るよ。ハタチの娘がいるんだ。気分はサイコーッ!朝までやるぜ!」


パンダは急ブレーキでUターンするや猛スピードでブッ飛ばした。

見るからに怪しげな店の前で私を降ろすや、また猛スピードで走り去った。

「あらぁ、いらっしゃーい!」

ウス暗い店内で、巨漢厚化粧キンキラキンのオバサンがイキナリすり寄って来た。

あっあのぅそうじゃなくて、ハタチの娘がいると聞いたんですが・・・

「そーなのよぉ、アタシに似てカワイイのっ。声優になりたいって、ねぇ!」



パンダさんのタクシードライバー!

真夜中のタクシーは今日もまた、星降る街角をカッ飛ばす!

袖振り合うも他生の縁、お望みならばどこまでも!


・・・・・・・・・・To Be Continued


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