パンダさんの流れゆくもの!(前)
野生の王国!弱肉強食の無法地帯!残された最後の秘境!
だがしかし、ここにもインパウンドの波は容赦なく押し寄せます。
最近になって観光客が激増!生態系への異変が懸念されるほど。
さらにそれらを当て込んだビジネスも活発になってきました。
ツアーやガイド、みやげ物店などで大層な賑わい!
インフラも整備されました。道が広くなったり橋がかかったり。
それらは現地の動物たちも恩恵に与るので大歓迎!
そしてまたひとつ、新たな施設がオープンしました。
さほど大きくなく、鉄筋コンクリートの頑丈な造り。
映画で見た、トーチカみたい。でも別にいま戦争やってないのに。
入り口は二か所、それぞれ表札あって二世帯住宅?
ひっきりなしに客が訪れますが、皆すぐ帰っちゃう。
あんまり面白いところじゃなさそう。
しかし、動物たちはこの未知なる建造物に興味津々!
調査のため探検にでかけることにしました。
念のため、二手に分れて別々の入り口から侵入しよう。
赤の表札の入り口からはタヌキがチャレンジ!
キャーッ!ヘンタイ!出てけーっ!すさまじい悲鳴と怒号!
タヌキは秒で叩きだされた。
おい大丈夫か?しっかりしろ、何があったんだ?
「わからん・・・イキナリ攻撃された・・・相手は女ばかりだ」
タヌキは敵意がないことを示すため、あえて弱点の八畳敷きを全開!
が、あろうことか敵はその急所をことさら集中的に痛めつけたのです。
やはりここはアマゾネスの軍事要塞?
イカン!パンダさんがアブナイ!
しかし青の表札から入ったパンダさんはそれっきり。
いくら待っても戻ってきません。
後から入った連中はスグ出てくるのに。
不審に思った動物たちは探しに行くことにしました。
おそるおそる青の入り口から入っていくと・・・
「パンダさんがいない?!」
パンダさんは忽然と消えていた。
そこはあまり広くない殺風景なスペースであった。
中央に通路があり、両サイドに分れている。
片側には何やら妙な白い陶器でできたイス?がズラリ。
もう一方は複数のドアが並んでいた。
ん?これはキンモクセイの香り・・・
「あっちはジャスミンだったぞ。ドアばかりでイスはなかった」
半死半生のタヌキが苦しい息の下から証言した。
開けてみようとしたら施錠されてる!
誰かいる!おい、開けろ!ドンドン!
「入ってるよ!」
おっこっちは開くぞ!
狭い部屋。真ん中にやはり白の陶器の壺?がひとつ・・・
天井は低い。窓はあるが小さくて開かない。
こっこれは、完全な密室だ!
パンダさんは、いったいどこへ?!
(つづく)




