パンダさんの赤い靴!
この街にやって来たのはそう、もう何年も前のこと。
あこがれの都会!胸ポケットにふくらむ希望いっぱい詰め込んで、
アタシ、買ったの。赤いハイヒール・・・
ここでなら、何だってできる!ここでなら、輝ける!
ここでなら、頑張れば、夢は必ず叶うんだ!ここでなら!
あれから・・・ホントに頑張ったんだよ。一生懸命だったんだよ。
だけど・・・ダメだった。うん、疲れちゃった・・・
やっぱり、アタシはいつまでたっても、ヨソモノなんだ。
コーヒー頼んだのに、トーストとゆでたまごにヨーグルトがついてこない!
冷やし中華にマヨネーズは、当然の助動詞「べし」!
ケッタマシーンって、今アンタが乗ってるヤツじゃないの!
この街はついに、アタシを迎え入れてくれなんだ。
もう、いいや・・・最終電車でこの街とサヨナラするの・・・
その前に、たったひとりでお別れパーティしましょ。
機会がなかった赤いハイヒール履いて・・・
そのお店は街のハズレにポツンと建っていた。
昼間はパン屋で、夜はお酒も出すみたい。
ワイワイガヤガヤ、ドッタンバッタン大騒ぎ!
アタシのラストステージだもん!賑やかでいいじゃん!
中に入ると、えっ?動物がいっぱい・・・
「へい、らっしゃい!」
マスターは、パパパパパっ、パンダ??????!
どうやらアタシは不思議な空間に紛れ込んだようだ。
でも、みんな優しかった。こんなアタシを受け入れてくれた。
「やっぱ、若いオネーチャンはエエのう」
チヤホヤされたのなんて、生まれて初めて!
こーしてお酒が呑めるのも、パンダさんのおかげです!
パンダさんよ、ありがとう!ホントにホントにありがとう!
ソレッ!一気!一気!一気!一気!
アタシはテーブルの上に仁王立ち!そうだ、暑いから脱いじゃお。
Yeah!めっちゃホームレス!唄って踊れる最強ニートちゃんよっ!
ああっ、E気持ち!今夜はサイコー!グルグルまわってるーっ!
世界の中心はここだったんだ!よぉーし、愛を叫ぶぞーっ!
そのうち、アタシの胸の奥から熱いものがこみ上げてきた。
何でだろう、あれっ?涙が止まらないや。早起きしたからかな?
アタシは黙って席を立って洗面所へ向かった。
この想いをすべてブチまけるために!
ふうぅぅぅぅ・・・危機は去った。
アタシは再びステージへと向かった。かっぽん、かっぽん・・・
ん?どうしたんだろ、やけに傾いてるような気がするけど・・・
「お客さん、困ります!困ります!」
パンダが慌てて駆け寄って来た。かっぽん、かっぽん・・・
いいのぉ、アタシは大丈夫なんだから、ほっといてよ。
んもう、さわんないでよ、スケベ!
どうも右足が重たいと思ったら、何か引っかかってる!
ハイヒールのカカトが、トイレ床の排水口のフタの穴にはさまって
本体丸ごと抜けて、そのままズルズル引きずってるんだ!
どうりでさっきから傾いて、かっぽん、かっぽん、かっぽん!
かっぽん、かっぽん、かっぽん、かっぽん、かっぽん、かっぽん!
さあ、皆様ご一緒に!かっぽん、かっぽん、かっぽんぽん!
パンダさんの赤い靴!
おねえさん、おまわりさんに連れられて、行っちゃった。
・・・・・・・・・・To Be Continued




