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諸賢との遭逢、諸賢からの涵養4

「大地がイメージした民族衣装をアプリ上に具現化します」

 そう言ってグランは、いつかと同じように大地の手を取り、指を絡ませた。


「どうぞ、始めて」

 促されるまま、大地は目を閉じて日本の、それから目にしたことのある幾つかの他国の衣装を一つ一つ思い浮かべた。全体のイメージが湧き上がると、すぐに細部にわたって特徴的な模様や色使い、布地が描く線などが脳内によみがえる。素材感もはっきりと描写できるほど、自分でも驚くほど鮮明に思い描くことができた。


 自分はこんなにも記憶力は良かっただろうか。いや、そんなわけはない。きっとグランの能力が何等かの相乗効果をもたらしているのだろう。すくいあげられるぎりぎりの要素までが、直接手を組み触れることによって克明に再現される手助けとなっているのだと思えた。


 しかし不覚にも、大地はアジアの民族衣装をグランが着用している姿を想像してしまった。


 祝い事や儀式など特別な時のために作られたらしい、レースと金糸をふんだんに使ったその衣装は、白からシャンパンゴールド、深い藍、とグラデーションを成し、美しいだけではなく、高貴でありながら妖艶という表現が似合いそうなイメージで、本来ボリュームのある裾まわりをタイトなシルエットラインに抑え、金糸で縁取りに刺繍をほどこした長いマリアヴェールを加えると、グランが着たら似合いそうだとあの時思った意識を、大地はよみがえらせてしまった。


 流れていく大地の意識が、つなぎ合わせた手を通過する時に増幅したように思えた。


 受け取った側のグランがかすかに反応したのが大地には分かった。


「このくらいで、いいでしょう」

 グランが手を離し、デザインアプリの最終処理を行う。大地は目を開いてグランの横顔を見やったが、グランはそこにくみ取れる感情を見せず、いつもと何の変わりもない笑顔を浮かべただけだった。


 運動用のウェアは、前回使用した医療系のとは別の施設である運動のためのセンターへ転送した。


 ムイジセブで直接センターへ向かう。その室内は壁面が一面全部、鏡張りになっていた。といってもタレスターフのそれは地球でいう鏡とは違うかのもしれないが、自分が映る映像を客観的に見ているようなものだと認識すれば、違和感はすぐになくなった。強化したい部位別に装置がまとまって設置されている。それとは別に軽い運動をローテーションできるコーナーも設けられている。


 二〇人ほどが利用していた。彼、彼女らは大地がどういう立場なのかを知ってか知らずにか、特段興味を見せずに、それぞれが自分の身体的能力と相談しながら最適化されたプログラムを行っている。それでも大地の姿が見えていないとか、完全に無視しているといった態度でもないのだ。


 ティニが大地に見せたようなあからさまな興味は、グランやマーシ、マークたち一部を除けば他の者からは感じられない。それはもしかしたら大地の姿が異星人として認識されていないからではないだろうか、と思った。人によって見え方が違う、ということはこういうところにも表れているのかもしれなかった。


 大地は基礎運動をするつもりだったのだが、グランの勧めで別室でゲームのようなシミュレーションを先に行うことになった。使用する武具は実物のようだった。素材やデザイン、仕組みこそ違っても、基本的なところでは同じ、剣や弓や銃などの目的を持つ武具だ。


 的を狙うとか、引き金を引くタイミングを計るとか、剣を振るうとか主に攻撃する身体能力の測定がなされていると大地は感じた。もちろん、スビニフェニスではそれらが使用される実戦の場はあり得ないのだろう。ただし、考え得るリスクへの備えとしては、防御は攻撃をもってなされる場合もあるということも視野には入っているのだ。


 グランはあらゆることについて、大地の適性を測っているのかもしれなかった。


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