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諸賢との遭逢、諸賢からの涵養3

 数日ぶりに空のはるか上方へ出ることを思うと、多少なりとも気持ちが高揚する。大地は宇宙空間から見る星の姿が好きだ。それが地球のような美しい惑星でも、月のようにはかなげな印象の衛星でもだ。人間の一生など比較にもならない時間を費やしてきた星々の営みを、一つの星が誕生してから消滅するまでの一生を、無理だとは分かっていても自分の目で実際に見たいとさえ思う。


 現実の生に執着することも忘れ、永遠の生命に興味を持つこともない大地だが、その一大スペクタクルショーを観ることがかなうのであればそのためのそのくらいの時間なら生きていてもいいかと思う。


 グランの言っていた、スビニフェニス星が外からは見えないという現象も興味深い。いったいどんな仕掛けがしてあるのだろうか。明日になればそれが分かるのか。大地は自分が今、遠足前の小学生のような気分に近いのを自覚して苦笑した。


 あらかじめ要点を的確にまとめていたスタッフのおかげで、ミーティング自体はさほど時間を要しなかった。ロボットが替えの飲み物を運んできた頃には雑談も混じるようになった。


 今日紹介されたメンバーとは会話をするうちにすっかり打ち解けた。基本的にタレスターフの人々は皆、他人との関わり方が上手いと思う。微妙な距離感を適度に調整できるのは、遺伝的資質なのか、それともマルベレクによるのか。


 マルベレクがはじき出した答が、ここにもあったのだろうか。会うべくして会った、ということなのか。それを言うなら、大地がスビニフェニスに転移させられた事すら、なにがしかの意図したことであり必然的事象なのか。


 ──俺は、ここにとどまるべきなのだろうか。

 思いが脳裏をかすめる。行く先の道筋さえも分からない手探りの旅を、あえてするべきなのだろうか。地球に帰る理由を挙げるなら、移住プロジェクトの遂行のためであり、それ以外には大地を縛るものは地球にはなさそうだ。


 ──俺にとって大切なものは、心の中にある。

 グランはいつものように、静かに微笑んで大地を見守っている。


「事前に確認しておくことはこれで全部ですね」

 グランが頃合いを見計らってまとめる。皆はそれぞれが言葉や態度で肯定を表明した。


「では夕食まで自由に過ごしてください」

 グランがそう続けると、グランと大地を残して他の面々は現れた時と同じように椅子ごと忽然とその場から姿を消した。マークだけは()()際に、満面の笑みで「後でね」と大地に手を振った。


「同じメンバーで夕食を取る予定です。それまで何かやっておきたいことはありますか? 大分時間には余裕がありますから」

 明日のための準備はすでに何度も確認している。ふと、身体を動かしたい、と大地は思った。


「トレーニングセンターへ行きたいな。基本セットだけでいいんで、できれば習慣を崩したくはないからな」

「もちろん、構いませんよ。では、洗い替え用にウェアを作っておきましょう。それから、ついでに、と言ってはなんですが」

 アプリを開きながらグランがにっこりと大地に笑いかけた。


 ──そうか、あれはまだだったな。

 グランの望むものが分かって、大地は興味深そうに頷き、笑い返した。グランはどうやってイメージを取り込もうというのだろう。


 大地がこの先の進む道についてどう結論を出すにしろ、衣服などはもう少しあった方がいい。まずは頻繁に替える必要のあるものなどは簡易的に作製できるマシンに送り、凝ったデザインのものや作りの複雑なものはもっと高性能な機械へ送り、幾つか追加しておく。


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