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諸賢との遭逢、諸賢からの涵養2

 ムイジセブのある場所。非可視化されたその扉は、いつもグランによって開かれる。そして二人はマークが所属しているセンターへ移動した。


 その一室には座席が二つ用意されていた。両側に肘掛けが備わっていて、形状は美しい流線形のフォルムをした仰々しくない大型のものだ。素材が何かは判らないが、金属のともプラスティック様のともつかない、いや、むしろ生物的触感だ。グランが大地に手ぶりで着座するように勧めた。腰を下ろすと、しっくりとなじむ座り心地のいい、それでいて背筋がピンとするような感覚だった。足が膝より少し前方に出る角度で、靴底を受ける部分は体格によって可動するようだ。身長差による脚の収まりの悪さを回避している。


「ミーティングといっても、顔合わせとスケジュール確認ですよ」

 グランがそう言った時、ふいに座席が増えた、ように見えた。


 座っていたのはマークだった。座席の配置もそれまでと角度を変えたように思った。右手にグラン、マークは左手にいるのだが、直線状ではなく円弧上の配列という感じがした。


「やあ、グラン、大地」

 会うなりマークは嬉しそうに声を掛けてきた。自分の存在はそんなに興味深いのだろうか、と大地は一瞬思った。未知の惑星からの訪問者に関わることと考えれば、そう、自分がその立場なら率先して情報収集にあたるだろうと思う。積極的に交流を試みたいと思うはずだ。


 それはこの星の人にとっても同じことだろう。分からない事だらけのうちの一つが明確な答として示される。その喜びたるや、尽きることを知らない。


 大地はマークに笑い掛け、小さく手を上げた。グランはマークに応えるように頷いた。


 座席がさらに一つ、続いてすぐに二つ増えた。全部で六つが半径二メートルほどの円を描くように並び変わる。中央にはモタルドクの領域がスタンバイ状態になったのか、不思議な揺らめきを見せている。


 この部屋そのものがムイジセブとなっているのだろうか。それともホログラムのように映像だけが送られてきたのだろうか。何もない空間から突如として現れた態の新たな三人は大地にとっては初めての顔ぶれだった。


「これで全員揃いましたね。あなた方は大地に自己紹介を」

 グランは三人にそう言うと、最初の一人を指名するようなしぐさで、グランの右側の若い男に手を向けた。


「俺はクリス。PAの操縦を教えてもらう。よろしく頼む」

 サイドから襟足にかけて刈り上げた短髪のクリスは、精悍な印象の若者だ。


「よろしく、クリス」

 大地が答える。


 操縦といっても、実際は機能の説明に終始するかと思える。昨日終日と今日の午前中、シミュレーターで存分に操作方法を繰り返したことで、船の技術的にはスビニフェニスの方が進んでいると断言できる。


「フィン。俺は、整備担当」

 フードのようなゆったり感のある頭部全体を包む帽子をかぶったフィンは、少し気難しそうと言って悪ければ、こだわり感の強い職人風、に見える。眼差しに鋭さが垣間見える。


「よろしく、フィン」

「私はトニアです。パトロール隊に所属しています」

 続けて最後に、長いまっすぐに伸びた髪を後頭部の真ん中で一つに縛ったトニアが自己紹介をした。感情を読み取れない表情をしていて、印象をひと言で言い切れない。


「よろしく、トニア」

 ──クリス、フィン、トニア。

 大地は声に出さずにそれぞれの顔を順に見ながら彼らの名前を復唱した。


「では、明日の予定ですが……」

 グランが司会役となってスケジュールを確認していく。準備作業についての進捗や完了している項目についても確かめた。明日はパトロール艇に乗り込みスビニフェニスの外気圏へ出る。


 PAー002はすでに積載されているらしい。大地の身分証がPAの起動に必要なことはすでに伝えてある。いずれそれは、スビニフェニスでの使用のために別なシステムに変更されるだろう。あるいは、大地の身分証と同等のキーデバイスを複製するのか。


 液体燃料はフルタンクに近いはずだ。明日の予定は充分に余裕を持って行えるだろう。当然経過によっては補充する必要に迫られるかもしれないが、その用意もできているという。


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