青き星、悠遠の星 15
食事を終え、大地はグランに感想を言わないようにと念を押し、ロボットが食器を洗うのを見ていた。こういった機械たちの形状が、いかにもロボットですといったものから、街を巡視していた鳥のような本物と区別のつかない外見のものまで、とても幅広いことに興味を抱く。
ふと、人型もタレスターフの社会の中に存在しているのだろうな、と思った。
大地の料理に満足した感を醸し出すグランが淹れたフルーツの香りのするお茶を飲みながら、そのことを尋ねてみた。グランは社会の中に溶け込んでいるヒューマノイドは、多くは癒しを必要とする人々が求めたのだと言った。
お茶を飲み終えてから場所をミューズムの中の投影室に移し、グランはロボット事情を説明した。モタルドクの中で、縮小された人間や動物が動き回っている。
一般的なヒューマノイドは人間に近い容姿をしてはいるが、明確に人工物であるという特徴を備えている。
しかし一方で、ペットを飼っていた飼い主が、その対象を失ったときの悲しみを癒すために造られたアニマノイドは、鳴き声はもちろんのこと、行動パターンや物事に対する反応やしぐさに至るまで、生前のデータを基にして造られている。毛並みの質感までそっくりなことで、別な個体を選ぶことのできない人々には好意的に受け入れられているという。
そして、それは人間についても同様であるのだとグランは言った。もちろん、それはほとんどの人に対しては公開されず、唯一無二の存在しか受け入れられない人にとってのいわば究極的選択肢なのだと。
悲しみを乗り越えることのできる人の方が圧倒的に多いけれど、どう頑張ってもできない人には、マルベレクの裁量で思い出の中に生きることを選択可能にしたのだという。公的には設計者と当事者しかそのことを知らないシステムができているのだと言った。
それがヒューマノイドであってクローンであってはならない理由は、求めた人間が同じ別れを二度繰り返すことのないように、あるいは「思い出」だけが残された場合に、その存在理由を失ってしまうからだ、とグランは言った。
遺伝情報の特徴から、基本的にタレスターフの人々は理想に向かって前向きに生きようとする。しかし、どうしても変異は発生するものであり、それについては繊細な対応が必要となる。
大地は、そういったことを自分に隠さず教えてくれるグランには一体どんな意図があるのだろうと思う。
「今夜はスビニフェニスの歴史を少しお見せしましょう」
グランがそう言うと、それに合わせたように大きなモタルドクがその領域を閉じた。直後、大地は自分が宇宙空間に放り出されたのかと思った。
自分が宇宙に漂っていて、スビニフェニス星を見下ろしているといった構図だ。天井や壁、床などが一切感じられない、室内全体が立体映像を投影した空間となった。
急速に視界は地表へと降り、大地は人や車の行き交う都市の喧騒の中にいた。映画の中に飛び込んでしまった視聴者という感覚を覚えた。
各国の要人が議論する会場。兵器を開発する企業または国家。埋蔵資源や海産物の領有を争う国家間の争い。情報技術の革新。スポーツ、音楽や芸術。犯罪事情や人権問題。一触即発の緊張した外交。争いに敗れた国家。従属国の悲劇。略奪、暴動、恐怖政治。美しい風景、自然破壊。生態系とその変化。
走馬灯のように、しかし核心を突いた場面が会議場にいるように、海の中にいるように、爆風を浴びたかのように、次々と大地の周りで展開される。
意味合いでいうところの核兵器はその威力も、それを所持する国家も増していった。密かに、しかし断固とした小さな動きが起こる。ああ、この人たちがタレスターフを築き上げるのだ、と大地には分かった。争いの渦中から少しずつ目立たないように遠ざかったその動きは、社会の中でまだそれを気取られてはいなかった。
大地は突然、再び宇宙空間に引き戻された。監視衛星が捉えた映像なのだろうか。突如として隕石群がスビニフェニスの星域に出現した。それは本当に突然だった。星や小惑星の衝突などといった直接的原因も見当たらず、飛来の軌跡さえも見せず、何もない空間から突然湧いて出たような出現の仕方だった。
そして地表に到達した隕石群は、巨大なクレーターを作り、同時に威力の競い合いと権利の奪い合いをしていた国家が所持していた兵器がそこかしこで爆発、誘爆した。世界の終焉は、その運命から逃れる術もなく訪れた。ただ一つの領域だけを除いて。




