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青き星、悠遠の星 12

「予想以上に良かったです。目的は、大地の身体能力を把握する事であると同時に、ウィークポイントと、その程度を知る事でもあるのです」

 苦手を知る、ということが大切なのは分かる。


 克服すべきこと、あるいはガードを強化すべきことを知っている、いないでは何につけ大きく違う結果をもたらす。


「スビニフェニスの住人は、生まれてすぐにオグヌイを身に着けますから、こうして特別な機会を設ける必要はないのですが、大地はお客様なので」

 言わんとする事は分かった。


 大地がスビニフェニスの住人になるとするなら、当然必要な情報であるし、宇宙へ旅立つとするならそれはそれで後々参考になることだと思える。何しろ一人旅になる。身を守る術に関しては万全を期すに越したことはない。


 ロボットが再び運んできたグラスを受け取り、大地は今度は少しずつ、塩分を含んだような味の飲料をゆっくりと飲む。


「全体的に運動能力は高いです。弱点を言うなら、右脚を使わなければならない動きに多少問題があることですね」

 怪我をした後のリハビリも途中で止めざるを得なかったこともあって、完治を待たずに結局弱さを残したままの膝だ。かばう癖、右脚力の低下は長年にわたって蓄積されたものだ。


「なんとなくそうは思っていた。何か解決策があるのかな?」

 グランは大地の顔をほんの数秒じっと観察しているように見つめた。それから何故だか真意をはぐらかすように微笑した。


「これから探していきましょう。方法は一つではないですから」

 それはそうだろう、と思う。現状を補足する機能か、脚そのものを強化するのか、また他に方法があったとして、タレスターフでは技術的に複数の選択肢を提示できるのだろう。何がベストか。慌てることもない。どうせ宇宙の迷い人だ。


 大地はそんな心境さえも楽しめている自分に気付いた。


「グランに任せるよ」

 そう言って、大地はグラスを口に運ぶ。


「大地の適応能力は高い数値を示しています。衣服からの酸素供給も、明日か明後日には必要なくなるでしょう。」

「順応できているのか?」

 グランは暫定的な処置と言っていた。


「ええ、順調です。星々の大気を構成する成分が基本的には異なるという前提で、生命にとってそれに適応できるかどうかは重要ですから、最初に調べました」

 PAの生命維持装置は駆動系の装置とは完全に独立した構造になっている。大地が発見された時には、エンジンは停止していてもバッテリーによって生命維持装置は問題なく作動していて、艇内の空気についても機器にはエラーらしきサインは示されていなかったという。


 スビニフェニスの大気には地球のそれにはない成分である()()()()()()()が含まれているのだ、とグランは言った。成分構成で比較すると、PA内の分圧から見てスビニフェニスでは酸素濃度が二パーセントほど低いといい、そのため大地がスビニフェニスでの生活に適合するように、遺伝子にメタティリバスに適応するための情報を書き加えたのだと説明した。


「早い人で四、五日で適応します。測定結果を見る限りでは大地は早い方かと」

 目覚めた時の感覚を思い出す。身体のどこ、と断定できないが確かに変異を感じたあの不思議な痛みのような感覚。大地の身体が環境に応じて進化をしたと言えばいいのか、それともワクチンのような働きと思えばいいのだろうか。


 補填的意味合いの酸素供給が要らなくなるというのであれば、それは身軽になれるということだ。


「そのメタティリバスというのは、スビニフェニス固有のものなのか?」

 いつか地球でも認識されるとして、元素周期表でいうならどの辺の属性に配置されるのだろう、と思いながら大地は尋ねた。


「他にないとは言い切れませんが、とても稀少で、ある意味歴史的産物と言えるかもしれません」

 そう言ったグランの言葉から、大地はその背景にはいくばくかの事情があるのだろうと感じた。タレスターフという共同体が存在を確定させた事情のようなもの。スビニフェニスが孤立を貫き通す理由のようなもの。また、その機会があればグランは説明してくれるのだろうという期待感もあったため、大地はあえてそれ以上問うことはしなかった。


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