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青き星、悠遠の星 11

 汗のにじむ額と腕を、グランから手渡された柔らかなタオルで拭き取る。タオルは瞬速で水分を吸い込み、同時に乾燥していた。コンディションは悪くない。


「次は、こちらの測定室で、少しハードに動いてもらいましょう」

 グランは扉を開き、十メートル四方ほどの空間を示した。


「ハードに動く?」

「ランダムにビームや光の玉が発生します。どういう方法でも構いませんから、それを避けてください。避けられなくても気にせず続けてください。扉が開いたら終了です」

 ──反射神経でも測定するというのか?

 大地はグランに向かって頷いた。


 ずいぶんと大ざっぱな説明だったが、どういった目的であったとしても、それは必要なことなのだろうと思った。室内は窓のない、不思議な揺らぎを見せるぼんやりとした空間だった。


 始まりの合図もなく、前方からいきなり大地の足を目掛けて、床からの高さ二〇センチメートルほどの所にオレンジ色のビームが走った。虚を突かれて一瞬遅れたが、大地は脚を上げてかわす。すぐに第二弾がやってくる。


 さまざまな色の光が前方から、横から、後方から、上から、下から、と角度や速度、高さを変えて向かってくる。


 ──これは! 測定というより演習、いや実戦じゃないか。

 ひたすら自分に向かって走る光の線や玉を避ける。


 段階を踏んで難易度が増すというのではなく、緩急が実に予測不能な間合いで付けられている。全神経を、どこから来るか分からない光に集中する。大地は予想をはるかに裏切る光の攻撃の複雑さに、考えることをすでにやめていた。もはや本能に任せるしかない状況だ。


 額や腕から飛び散った汗が床を濡らす。意識のどこかで「滑るかもしれない」と自分が囁いている。幾つかは避けきれていなかったはずだ。しかし、光の攻撃が止むまで動きを止められない。息が弾む。


 ──間合いが変わった?

 今度は持久力を試そうというのか、速度が上がる。


 休む暇を与えない光は、大地を容赦なく襲う。光に捉えられる回数が増える。身体の向きを変え、這いつくばり、ジャンプし、のけぞり、回転し、ひたすら避ける。


 バク転し、避けきったところでバランスを崩した。片手を床に突いたまま両足が着地した。


 そこでようやく扉が開いた。大地がそのまま膝を折り座り込んでしまったところへ、グランがタオルを持って入ってきた。


「お疲れさま。これで終わりです」

 グランは肩で息をしている大地のそばに一緒に座り、タオルを手渡した。大地はタオルを受け取ると、声を出せずに、目でありがとうと伝えた。グランはそれを微笑みで受け止めた。


 ──これはキツイ!

 荒い呼吸をしながら、それでも大地は清々しさを感じていた。


 これまでこういうメニューは経験したことがなかったし、自分がどう動けるのかも想像したことさえなかった。本来、身体を動かすことが好きか嫌いかでいえば好きな方だ。この疲労感が爽快感と一致する感覚が、大地は好きだった。


 光をどの程度避けきれなかったかは、どうだっていい。自分の知らなかった自分を認識できた満足感を大地は味わっていた。


 ──グランは結果について何も言わないな。どうせ今聞いたって、頭には入らないか。

 しばらく経って大地はようやく立ち上がると、軽く身体を動かしクールダウンを始めた。


「呼吸が整ったら、あちらにアルスパクがありますから汗を流してきてください」

 グランも立ち上がり、開いた扉の向こうに見える別の扉を指し示した。


 リフレッシュした身体に新しい着衣をまとった大地は、休憩室のような別室へと案内された。


「結果には驚いています」

 グランがモタルドクを開いて、チャートのように見える画像を示す。比較対象がないのでそれがどう評価されるのかは分からない。


 ロボットが大きなグラスで運んできた飲料を、大地は一気に飲み干した。液体が食道を通り胃に達する過程が、まるで流れる水が皮膚の上を伝っているような感触で分かる。空になったグラスをロボットに返し、追加が必要かと尋ねられたのへ肯定で返す。


「それはいい、悪い、どっちで?」

 大地が尋ねると、グランはにこやかに笑った。


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