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青き星、悠遠の星 9

 新しい分野での様々な開発は、規制という枷を持たずに個々の目的を指標に為される。生み出された新たな物たちが、将来的にどういう効果をもたらし、どういう弊害をもたらし、それを人々がどう利用し、どう悪用し、などといったおよそ考え得る全てが想像を上回れば、結果として失うものの方が絶大になる悲劇を免れない。


 何の不安もなく運用されるような環境づくりを、初めの段階で定義する機関がないからだ。人工知能に原則というものを定義するなら、どうあるべきか。悠長な議論が決議を下す前に、開発が進展を遂げてしまったら、取り返しのつかない方向性を秘めたものが備わってしまったら、人間がそれに打ち勝つのはたやすいことなのだろうか。


「ここでは、人間と知能機械とはどういう関係性にあるんだ?」

「そうですね。人が精神的豊かさを少なくとも維持するために、人工知能がその手助けをするというのが一番でしょう」


 疑問に思った事、学びたいと思った事は、いつでもその時点で答を得る「手段」が提供される。体調などはオグヌイによって常に把握され、睡眠、食生活などに反映される。人々の交流という点でも、より意識を高め合うことのできる波長を持つ者同士が関わる機会を多く得る。


 機械化によって利便性を重視した怠惰な生活を提供するのではなく、人間がより深い造詣に携わるために最適化された環境が、マルベレクによって与えられているのだという。


 ──火を起こすための棒きれをマッチ、ライターへと変遷させたように……

 人類にとってはあらゆるものに対しまだまだだ未知の部分の方が多いはずだ。存在することさえ疑わしいゴールと言えるような「知」の到達点を、人は見ることができるのだろうか。たとえかなわないとしても、そこへ近付くために疑問を抱き、答を探すのだろう。


「グランはマルベレクに意識があると言っていたね。その、主観というものが反映されたりはしないのか?」

「マルベレクの主観は、基本的に客観性の上にあるものなので、大地が問いたい意味でのそれはないと言えます」

「タレスターフに関する膨大な情報を全て掌握できていると?」

 タレスターフの全てを管理するというのなら、よほどの記憶容量が必要だと思える。そしてそれを処理する能力もだ。


「もちろん、容量についてはわれわれが気にする必要はないのです。それに、情報はある程度規定の概念として定着した時点で圧縮されます。解凍の必要のない、箱のようなものと思ってください。それは分野ごとに順次内包されていきます。例えばある一つの情報を得たいとき、それがたとえ何層もの圧縮された箱の最深部にあっても、ピンポイントで取り出すことができるのです」

 グランは、概念としての箱に納まっている情報は、そのままの状態で書き換えることもたやすいし、同時に分野としてのつながりも臨機応変な移動が瞬時に可能だと説明した。


 マークはロボットアームの映像を閉じ、室内の特大のモタルドクの領域を検索結果に切り替えた。


「候補となる座標は、かなりあるね。もうちょっと絞り込みたいけれど、何かないかな」

 オリオン座の特徴といっても、大地に分かる範囲は広くない。


「ベテルギウスは半規則型変光星で、もの凄くいびつな形をしている。観測できる角度によるのか形状バランスの悪い雪だるまのように見えることもある。地球から六四〇光年離れた年老いた赤色超巨星だ」

 マークが情報の追加を入力していく。


 天の川銀河にある地球とここ、スビニフェニスの間では、時間軸における関係性がはっきりとしていないため、仮にベテルギウスが観測できる座標にあったとしても既に超新星爆発後で消失している可能性も否定できない。


「これで、候補はようやく二桁。このくらいだと食指が動くんじゃない?」

 抽出された星座の図形は、いかにもオリオン座らしく見える。形状にいくらかの違いがあるのは、その星座を見上げる星、つまり地球(仮)の位置的なものか。


「これらの検索結果は、スビニフェニスの宇宙船で航行可能な範囲にあるものです」

 グランが、大地の決断がスビニフェニスへの滞在ではなく、宇宙へ出ていくことを想定しているかのように言った。言外に、それより外側はスビニフェニスにとっても未知の領域であり、行くというなら大地の自由意志に任せるが、それ以上の先にどんな想定外があろうとも手を差し伸べることはできないというニュアンスが込められている気がした。


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