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青き星、悠遠の星 8

 寂しさも孤独感も、まったくないと言えばそれは違うのかもしれない。自分は常に独りだという意識はある。たとえ周りに何人いようと、だ。孤独を痛みとして感じる段階はすでに超えてしまった。逆に捉えるなら、孤独から逃れるために、分かってもらいたいと思うことに心を砕くことが、もう、煩わしいとさえ思えるのだ。それよりは独りでいる方がずっと気が休まる。少なくとも、スビニフェニスに転移されるまで大地ははそう思っていた。


「ここの人々は、皆温かくて穏やかないい関係を保っていると感じる。地球でもそうならどんなにいいだろう」

 犯罪体質の蔓延した世界、脅かされるかもしれないと常に身構え神経を張りつめていなければならない世界。競争と狂騒に満ちた冷たい世界。生きていたくないとさえ思わせる世界。いったいいつの時代から、どうしてそうなったのだろう。


「そうだね。僕らの世界は、安寧を心から求める人々が作り出した世界だからね。弱き者は弱さを盾にはできないんだ」

「そうだろうな」

 力を振りかざす者が弱者を喰い物にして、最後に行き着くところはどこだろう。世界でただ一人の覇者となって、もはや喰らい尽くし、弱者が存在しなくなったら?


 滅びの道を進んでいることに気付かない者たちが、未来への道を狭めていくのだ。

 つかみ取れ、ここの人々はそう覚悟して実践してきたのだろう。


「ありがとう、大地。君の気持ちを知ることができて良かった。参考にさせてもらうよ」

 ふと、自分の言葉にどれだけの情報を込められたのだろう、と大地は自分自身に問う。


 それでマークが充分に納得したのだとしたら、マークの問いには何か額面の他にも意図するものがあって、それはマルベレクの配慮かもしれない、と大地は思った。


「こんなんで参考になったならよかった」

 大地に対するタレスターフの人々の対応が、地球でのそれとはかけ離れているということを痛感する。ここの人々は、相手のことをよく知ろうとし、知った上でどう向き合えばいいのか真摯に考え、行動する。


 深く関わることも、距離を取るということも、どちらの意味であっても。


 ああ、それは大地に対してだけではなく、誰に対してでも、ということではあるのだろうが、口先だけの誠実さとは完全に異なるものだ。暗に非難やあざけりを忍ばせた言葉など存在しない。何の不安も疑いもなく聞くことのできる言葉。それがタレスターフでの心穏やかな時間を生み出している。


 地球では当たり障りのないところで口にされる良識的な言葉たちは、現実に当事者となったときに実行されはしないことが常だ。事後に「せめて相談してくれていたら」と語る人の中に、事前にその相談に快く応じる人はいったいどれだけいるだろう。


 マークが何かを言いたそうにしているのが大地には分かった。が、聞いたところで答はお預けなのだとも分かった。まだその時に至ってはいないのだろう。


「グランがPAを動かすと言っていたけど、いつ頃になりそうかな」

 大地が主動する案件でもないのだが、マークのために別な話題を用意した。


「大地のPAは、パトロール艇に積載して宇宙空間へ出て、そこから発進させます。発進装置に必要なPA用のオプションを作製中で、今はその完成を待っています」

 質問に答えたのは、ちょうどそこへ戻ってきたグランだった。


 何故だかほっとする。三人がそれぞれ笑みを交わし、グランがいる時の独特な居心地の空気に包まれる。


 マークは自分のモタルドクで、作業中の映像を大地に見せた。PAをカタパルトか何かに固定するための台のようだった。これまで知ることのなかった星の乗り物という性質からか、ロボットアームが人と遜色ない繊細な動きでワンオフのパーツ()()()()している。


「へえ、なんだか職人みたいだ」

 機械が持つセンサーがどれだけの精緻を誇るのかは分からないが、動きを見る限りでは、人が指の腹で感知する技ほどのものを備えているようにも思える。


「この動きは、熟練者、達人と呼ばれる人の動きを再現したものです。彼らが技術を磨き、さらに高度なテクニックを会得すれば、機械にもそれは反映されます」

 グランの言葉を聞いていると、人工知能への教師データはかくも美しくあるべきなのだろうと思える。美しさとは、偏見がなく、合理的、効率的な作業に付随するものだ、と大地は思う。スビニフェニスでのマルベレクによる一元管理だからこそ、実現し得ることなのだろうか。


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