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青き星、悠遠の星 6

「時間という流れに沿って、われわれが行動しているのではなく、われわれの活動の結果が時間なのです」

 過ぎてきた事象の経過を計るものは宇宙の中で一律ではなく、その個が持つものだという。


 モタルドクの中で、点と点をつないだ間の領域が、場所を変えてあらゆる方向に動くシミュレーションを始めた。


 点在、ということなのか。大地はインターネット上に数多に存在する一つ一つのページをイメージした。インターネットが普及した時代からこれまで、膨大な情報が現れ、幾つかは存続していて、幾つかは消え、幾つかはその管理者すら探し出せないほどの深い層に沈み込んでいる。


 過去、誰かによって作成されたとあるページは、ふとしたきっかけで例えば何年か後、それを初めて目にした閲覧者にとってはまさに今この瞬間なのだ。そして、そのページにとっては過去と未来がつながった一瞬となる。


 必ずしも連続した一つのライン上の点をたどっていくということではないのだろう。点と点とのつながりはランダムに描かれる、あるいは描くものということなのかもしれない。


 しばしば、平常のひと目盛とある質量を受けよく伸縮したひと目盛で比較される、碁盤状の目盛付きゴムシートをひとつの世界線にたとえて、そのゴムシートがいくつも層になり、あるいは角度を変え、向きを変え、無限に重なりあっている状態が宇宙の状態なのだとしたら。


 ──過去も現在も未来もすべて同時に存在していて、それらがどうつながるかで長さが決まる……?


 ふと『浦島太郎』を思い出す。竜宮城へのいざないを一つの点として、竜宮城から戻った時彼が玉手箱を開けなかったとしたら、平常の目盛のまま生きられたのかもしれない。開けてしまった彼は、質量を受けて伸びた数十年分を経過した世界線に戻された──


 玉手箱にはどんな仕掛けがあったのだろう。タイムリープ、つまりグランの言う()()の行き来を制御する機能? 浦島太郎の新陳代謝を調整する機能? 物理計算で竜宮城の時間的概念が成り立たないとするなら、この物語は過去も未来もないまぜになった別の世界線を行き来した男の物語ではないだろうか。


「まだまだ分からないことだらけですが」

 そう言ってグランはモタルドクの球体の座標を宇宙図に変えた。大地はグランに言って星座を確認できるほどの縮尺に変えてもらった。


 地球から見た星座が、スビニフェニスから見ても同じような配置を描くわけではないことは理解している。しかし、大地が初めてモタルドクの宇宙図を動かしてみた時よりは、もう少し自由に操作できる気がした。存分に動かしてみたい、と思った。


 その時、音も光も、それと分かる現象は大地には感知できなかったが、グランが何かに反応したように見えた。


「少し、ここで待っていてもらえますか? タリアの子供にオグヌイを渡してきます」

「分かった」

 気の済むまで地球を探していい、という配慮だろうか。グランは昼食の予約をロボットに伝えて、出て行った。戻って来るまで少しは時間がかかるということなのか。


 ──新生児にもうオグヌイを渡すのか。

 大地が装着したオグヌイを外してみた時の感触を思い出す。赤ん坊の成長に従ってオグヌイも身体に沿うように変化するのだと思えた。オグヌイはタレスターフにおける個人のIDでもあるのだろうか。そして、大地はグランがその子にオグヌイを直接渡すという行為に何だか人の心の温かさ、人と人との密接な関りを感じた。


 目の前の大きな宇宙図をゆっくりと回していく。


 事は簡単じゃない。地球から見た星座の星々は、同じ平面上にその座標を持っているわけではない。奥行が考慮されないその星座の形は、自分がこの宇宙図のどの方向から見れば現れるのだろう。


 オリオンでもいい、カシオペアでもいい、北斗七星でもいい、よく見知った星座を描くその場所を見つけ出したい。そうすれば、少しは状況が進展するはずだ。大地が地球へ向けて旅立てるのか、それともこの星に残らざるを得ないのかがそれで分かるような気がした。

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