青き星、悠遠の星 4
具体的に話す前に、とグランが補足するように話したのは、タレスターフの宇宙における対外的立場や、種としての守り切らなくてはならない事項であった。
タレスターフは交易も必要としない、侵略することもされることも望まない、自給自足の可能なまさに隠れ里だ。宇宙の覇者たらんとする星々は、スビニフェニスが争いを望まないからと言って、はいそうですかと簡単に諦めてくれるわけもなく、どういった手でも使ってくるだろう。それならば閉鎖社会を貫くしかない。
しかし、だからといって、惑星外の諸事情に耳をふさぐということではなく、常に最新の情報は収集している。グランが地球のことについて大地に尋ねるのも、PA-002の解析許可を求めたり、カイを残して欲しいというのもそれ故、ということだろう。
タレスターフがそういった立場を維持できるのには、惑星自体が非可視化されているという現象があるからだという。外からはスビニフェニス星を観測できないのだと。
「PAの操作説明の後に実際に見てもらった方が早いかもしれませんが」
と、グランは言った。
スビニフェニスに惑星外から来ることになった人は、皆自分の意思とは無関係の宇宙の理によってこの星にいざなわれることになったのだという。ある時点を境に。
それからグランは、人体について少なからず遺伝子に関する何等かの意図的干渉があることも否定しなかった。
──種としてこれだけの性質を維持するには、遺伝子操作をすることは必要不可欠なんだろう。
そうでなければこの均衡は保てるはずがない。
「これが、大地のDNAの解析結果です」
グランは目の前の特大のモタルドクに、膨大な量の記号の羅列を表示させた。
「大地のオグヌイに落とし込んでおきましょう。それから、こちらが標準的なタレスターフの人のものです」
並列したその膨大な量の情報は、ところどころマーキングされてあり、よく見ると同じかとてもよく似ていた。生命の成り立ちとは違う部分の情報だ、とグランは言った。多分に性格であるとか、性質であるとか、個を示す情報について特別に大地のものが似通っているということなのだろう。
「ある意味、遺伝的に一つの方向性を持たせることはリスクの大きいことと言えるでしょう。それでも、われわれはこの道を選んだのです」
そこに至らしめるまでの、タレスターフの人々の根底にあるものがどれほどの忌むべきものなのか、想像だにできない。
グランの説明を聞きながら流れていく配列を見ていると、マーキングの特別目立つ部分に大地の目が留まったのを、グランは見過ごさなかったのだろう。
「この部分は、自然界に存在するある種の音を、言語脳で処理することを示しています」
「というと?」
「特徴的な性質なのです」
「へえ。それは地球でも日本人の特徴に挙げられている」
「日本人だけのですか?」
「断定はできない。地球に存在する全ての民族が調査されたかどうかは知らないんだ。『ある条件下で日本語を話す日本人』なんだが、地球でも稀少な事例だとされている」
──グランが「特別なお客様」とユーゴに言ったのはこのせいだろうか。
大地の言葉を聞いて、グランは何かを考えているようだった。
しばらくして、グランが大地の反応を測るように言った。
「こんな仮説はいかがです? 『日本人は、スビニフェニス星から転送させられた、あるいはこちらに戻って来られなくなったタレスターフの人間の子孫である』」
「面白い。俺の逆のパターンか。実に興味深い」
グランが地球にいてこんな話をしたら、「鬼が笑う」と一笑に付されるだろう。
生命が、星の誕生から後、独自の構成物だけで成り立っているわけでもないだろう。共生関係にあるもの、隕石や飛来物、あるいは投下物などの外宇宙からの干渉を、まったく受けないということはない。特異なもの、稀少な存在が、外来によると仮定するのも一つの論ではあるだろう。
グランのこんな仮説を聞くと、自分の身の上に起こった事がどれだけ分母が天文学的数字であっても、ますますもって分子のまさに「一」であることを実感させられる。




