スローライフは訪れない
「婚約破棄してまいりましたわ!」
生まれてすぐに結ばれていた婚約を、その日、わたくしは破棄してまいりました。
晴天率の高い土地柄、本日も青い空が広がっている王都。
婚約破棄を実現させたわたくしは、馬車を急がせいそいそと家へ戻りました。
あぁ、心が逸って少々お行儀が悪いかもしれませんがそれも致し方ないことなのです。
わたくしは、今朝出てきたばかりの家に帰りつきますと、居間の扉を大きく開き、お母様と弟へ高らかにこの朗報を伝えたのでした。
あぁ、なんとすがすがしい気分なのでしょう。
そしてなんという解放感。
生まれてはじめての出来事に、わたくしの胸は高鳴ります。
何の肩書もない、この家の娘というだけのわたくしです。
明日からは何の公務もない、ただの貴族令嬢です。
素晴らしいことです。
あぁ、このままあこがれのスローライフというものを味わってみたいところです。
どこか田舎でひと月程過ごさせていただけはしないでしょうか。
「まぁ、カテリーナ。お行儀が悪くてよ。」
わたくしが大きな声で高らかに宣言した事を、おっとりとお母様は嗜めてから、ゆっくりと、手にお持ちのティーカップとソーサーをテーブルの上へと置きました。
そうして、ゆっくりとわたくしへ向けられる体。
お顔は柔らかな笑顔で彩られております。
「おかえりなさい姉上。今日はお祝いだね。」
緩やかに笑うのは弟。
弟はお母様とは違い、ティーカップを乾杯する時のように少し高く上げてから、その中身に口をつけました。
我が家は古くからある貴族の家柄ですが、広い土地や財産は多くは所有していません。
その代わりと言っては何ですが、代々王宮にて重要な役職を担ってまいりました。
今代の家長であるお父様はこの国の宰相職に任じられており、とてもお忙しくしていらっしゃいます。
そして、今日婚約破棄をしてきたわたくしは、元婚約者がこの国の第一王子であり、現国王の唯一のお子であったために、やはり、とても忙しい日々を送っていたのです。
そんなわたくしが、こんな日も高いうちから我が家に戻ってこられるなんて。
一体いつぶりの事でしょう。
「それにしても、婚約破棄という事は、また、ピサロ殿下のご病気がでたのねぇ。」
「4度目の婚約破棄宣言を頂戴したもので、そのまま国王陛下と宰相閣下にお目通りしてまいりましたわ。」
「あらあら。」
ふふふ と、お母様は柔らかく微笑まれました。
王子殿下との婚約を破棄。という、一大スキャンダルに、我が家で慌てる者はおりません。
弟もおいしそうにお茶を堪能してから、執事を呼び、今日の晩餐の準備を勝手に始めている程です。
それというのも、もう以前から王子殿下の悪癖は我が家に浸透し、準備をさせるに至るものであったのです。
彼の王子様は、どこで知り合ったのかわからない小柄で可憐なか弱い女性と恋に落ち、そして、その真実の愛の元、自分はその人と結ばれるのだ。と、わたくしに婚約破棄を突き付けること過去3回。
本日午前10時に4回目が実施され、わたくしはそれを実現してきたというわけなのです。
「ちょうどいいですね。子牛を一頭仕入れたところでしたから。楽しみにしていてください。姉上」
「まぁ、素敵ねクラウディオ。それなら、カテリーナの生まれた年のワインも一本開けましょうか。」
「夜が楽しみですわ。そうしましたら、わたくしはテラスの準備をしますわ。暖かい季節ですもの、花を楽しみながら晩餐というのも素敵ですから。」
「確か、ネモフィラが満開になっていましたから、今日のテーマは青紫でまとめると致しましょう。」
「楽しみだこと。」
と、お母様が席を立つのを合図に家全体が動き始める。
こうして我が家では急遽祝いの席が設けられることとなったのです。
あぁ、婚約破棄をこれほどまでに家族に祝っていただけるなんて、わたくしはなんと幸福な家に生まれたのでしょう。
ちょうど薄手の青紫の生地を幾重にも重ねたふわりとしたドレスがあったわと、わたくしはいつも傍らに侍っている侍女にドレスの指示をしてからテラスへと移動をはじめました。
テーブルクロスや、庭に取り付ける照明を決めなくては。
弟は他のメニューの手はずのために執事と部屋を移動していき、お母様はお父さまの装いを整えるため自室へ行かれたのでしょう。
こうして我が家のささやかな晩餐会を開けるのも、いつぶりのことかしらと振り返る。
あぁ、殿下の婚約者という役目がなくなっただけで、これほどまでに自由な時間を持てるのですね。
明日も王宮へと行かなくてはならないと考えなくてもいいのですから。
初めて知る感覚に少々罪悪感を覚えますね。
しかし、家族も婚約破棄を祝してくださるのだから、この解放を喜ぶべきですね。
その夜、お父様が戻るとすぐさまお母様と侍女たちが部屋へといそいそと連れて行かれました。
玄関ホールへと出迎えに出たわたくしとクラウディオはそれを見送り、そろって居間へと移動する事と致しました。
クラウディオは、薄い青紫のリボンでゆるくウェーブした髪を一つにまとめ、ブラウスの胸元にも同じ色のタイを結び、全体の服装は白と灰色をメインにし、差し色にした青紫がとても美しい装いをしておりますね。
本日は青紫と指定をした色を差し色として入れてくるのは、クラウディオの好きな揃え方。
「クラウディオ、リボンの色が映えてよい出来栄えね。」
「ありがとうございます姉上。姉上も、そちらの青紫のドレス、やはりお似合いになりますね。きっとそちらを着られると思っていたんです。」
「あらまぁ、お見通しね。さすがだわ。」
本当に、今日のクラウディオの装いは綺麗で、その上わたくしの装いの邪魔にならない様選んでくれるのだもの、気が利きすぎる子で嬉しい反面、心配になるわ。
この子は、要領よくできる子だけれど、疲れてしまわないかしら。
「カテリーナ、クラウディオ、待たせたな。」
お父様の声にわたくしとクラウディオは振り返り、一緒に膝を曲げ、腰を落とした。
「おかえりなさいませ。お父様。」
「おかえりをお待ちしておりました。」
「帰ったよ。」
全員揃ったところで、テラスへ移動し、月明りの元、庭の花の盛りを照らすランタンと、食卓を彩る蝋燭の灯りに感嘆のため息を零す。
「素敵だこと。」
と、お母様が褒めてくださり、全員が席に着く。
「宰相としてはこう言っては何だが、カテリーナ、待望の婚約破棄、おめでとう。」
「ありがとうございます。お父様」
お父様の言葉を皮切りに、お母様とクラウディオも祝福してくださり、晩餐が始まる。
「殿下も、悪い方ではいらっしゃらないのだけど。」
「あの悪癖がある限りは、よい結婚相手とは口が裂けようと言えませんね。」
お母様が困ったお方です事。と、親しみを込めながらも呆れた声でおっしゃられるものの、クラウディオは渋い顔で首を振った。
「それにしても困ったものだ。殿下の婚約相手になれる令嬢を探すのも骨を折る事になりそうだ。」
「お父様には頑張っていただくしかありませんわね。」
渋い顔をなさるお父様。
わたくしから言えるのは激励のみ。
そして、家族一同それにうなづき、がんばってくださいね。と、口々にお伝えする。
「お前たちもそれなりに国に関わっているというのに、ずいぶんと他人事のように…」
「僕はそれよりも姉上の結婚相手がまともであることの方が大事ですよ。」
クラウディオがにこりと微笑みかけてくれる。
「あらあら、相変わらずクラウディオはカテリーナに甘いのだから。」
「クラウディオはそろそろ姉離れをしなさい。」
「家族を大切にするのは悪いことではないでしょう。」
お父様は苦い表情を顔に浮かべ、それ以上クラウディオに言うのを諦めた様子をお見せになる。
「ところで、今、カミーユ様は隣国にご視察に行っていらっしゃるのですよね?しばらくは戻られないのでしょう?」
わたくしは、このつかの間の自由が今しばらく続くのではと少々期待して、そのようにお父様に聞いてみました。すると
「それだが、ほとんどの日程は消化されている事がわかっているからな。陛下が早馬を飛ばされ、急ぎ戻るよう手紙を持たせたところだ。」
「あらまぁ。陛下の取り乱し様が目に浮かぶようですわね。」
「それは、カミーユ様に大変なご迷惑をおかけしてしまいますわね。」
「甥である殿下のしでかしたことですから、お身内できちんとしていただくのが筋というものでしょう。」
わたくしのつかの間の自由は、本当につかの間という事ですのね。
ほんの少し、夢を見すぎてしまったようです。
でも、これも致し方ない事です。
これでもわたくし自身、国政に深くかかわりすぎているのですから。
あぁ、でも、一度くらいは夢見たスローライフを経験してみたいものです。
せめて、1週間だけでも。
「では、いつでも召喚に応じる事のできるよう、ドレスを決めておかねばなりませんね。」
「姉上とカミーユ様は、お見合いは済ませていらっしゃるのですから、次呼ばれるとしたら、婚約の儀という事でしょうか?」
「さすがにカミーユ様ともう少し時間を重ねる必要があるだろうと、陛下も気を使われていたので、それはないと思うが。」
「陛下が気を使っておられるのはカミーユ様に対してでしょう。」
「クラウディオ、そういう事を言ってはダメよ。本当の事なのだから。」
嗜める様に言うものの、お母様もクラウディオに同意見でいらっしゃる。お父様は素知らぬ顔をされて聞かなかったことにされたようですね。
臣下としては二心なくお仕えするのが良い事ですが、それが難しい場面というのは往々にして出てくるという事ですわね。
外では大きな声では言えませんが、この屋敷には古くから仕えてくれている者ばかり。
よほど陛下へ牙をむくような事でなければ大事にはならないでしょう。
それよりも、もう一つ大事な確認事項があったことをはた…と、思い出しました。
「そう言えば、その後、王妃様は…大丈夫でございましたか?」
わたくしは恐る恐るお父様にお伺いしてみました。
王妃様。ピサロ王子のご母堂であり、国王陛下の唯一の妻であらせられる方。
「あ…あぁ…」
お父様の顔色がさっと変わられ、わたくしは状況を察知しました。
だからカミーユ様に早馬を出されたのですね。
「大変なご様子、お察しいたします。」
「なら、明日わたくしがアルセリア様のご様子を見て参りましょう。」
「すまないな。頼む。」
アルセリア様というのは王妃様のお名前。
お母様が、アルセリア様とはご学友でいらっしゃったのは王宮でも有名な話です。
わたくしとピサロ王子の婚約を王妃様が熱烈に望まれた故に、まだ歩けもしないような年の頃から婚約に至ったという背景もあるくらいです。
そのアルセリア様が、婚約解消と聞き、荒れないはずがございません。
アルセリア様は派手な外見等はされていらっしゃいませんが、大変な知識人でいらっしゃり、信念を持って国政にあたっていらっしゃるお方です。
つまり、アルセリア様は苛烈ではない方ですが、とてもお強い方なのです。
ゴホンッ
「ところで、カテリーナ」
「はい、お父様。」
食卓の空気がアルセリア様の話題で微妙な温度になってしまい、お父様が大き目の咳払いとともに話題を変えられました。
「今しばらくは公務やレッスンもないのだし、しばらく私のところで書記官の手伝いに来てはどうだ。」
「まぁ、突然どうしましたの。」
「先日立て続けに秘書官補佐が辞めてな。」
「父上、そんなことは秘書課から臨時の文官を出してもらってください。」
「クラウディオ、お父様にそのような口のきき方をして。」
「申し訳ありません。母上」
お母様の嗜める声に、クラウディオはしおらしく言いますが、前言は撤回しない様子。
「それより姉上、父上の所では男性ばかりで心配です。僕のいる部署で勉強されてはいかがですか?」
と、結局王宮で働くクラウディオのいる部署へ誘われる始末です。
あら?
なぜわたくしはお父さまと弟に仕事の斡旋をされているのでしょう?
スローライフという言葉が一気に遠ざかりかけますが、だめですだめです。
ほんの少しでも希望があるのなら、諦めてはなりません。
たとえ、ほんの1週間のみしかないかもしれなくてもです。
「そんな急に言われても、そちらの部署での受け入れもすぐには難しいでしょうし、わたくしも、少し身の回りの整理をしたく思っているところですし…」
できればわたくし、スローライフというものを味わってみたいのですから。
困ったものです。
「うむ、そうだな。婚約破棄はしたが、またすぐにカミーユ様とご婚約の流れになる予定だ。殿下とそろいで作った装飾等、整理したほうがいいだろう。」
「そうねぇ。婚約者とおそろいでと作ったものが多いのは確かですものねぇ。」
「そういう事であれば致し方ありませんね。しかし、お時間ができたらおっしゃってくださいね。姉上のような方をなんの役目もなく放っておくなど、損失でしかありません。」
ありがとう。と、返事をしつつ、わたくしは心底理解せざるを得ませんでした。
せっかく婚約破棄しても、スローライフ等送ることができないのですね。
長年国のために働いてきたわが身が怖いというものです。父や弟のいう事がよくわかります。
すなわち、働く能力のあるものが国のために働くのは必然なのですから。
あの殿下ですら、多くの公務を抱え、きちんとこなしておいででした。
しかし、ほんの少しできたこのつかの間の自由をわたくしは何とか死守することができました。
小さな喜びに自然口元がほころぶというものです。
「カミーユ様もすぐ戻られることでしょうから、それまでは身の回りの整理と、つかの間のお休みを取らせていただければ幸いですわ。」
こうして我が家の喜びに沸いた晩餐はしめやかに過ぎ去ったのでした。
さて、それからの日々は予告通り自身の整理を主に行うこととなりましたが、予定通りに事は進まないものですね。
なぜか、多くの方がお屋敷を訪れてはわたくしの顔を見に来てくださいます。
数人の仲良くしていただいているお嬢様方は、わたくしを心配し、お見舞いに来てくださいました。
何人かの年かさのおばさま方は、たくさんのお見合い用の絵姿をわたくしに持ってきてくださったようでしたが、お母様や執事が対応し、丁重にお帰りいただいておりました。
わたくし自身への求婚と思われる男性の来訪は、そもそも玄関から入ることは許されず追い返される始末。
なるほど、これが婚約者のいない令嬢というものなのですね。
我が家は土地こそございませんが、宰相職という栄誉ある職に就く父と、古くから繋いでまいりました家名がございます。
その上、婚約破棄はしたものの、わたくし自身、王家の皆様との顔繋ぎにも一役買えることでございましょう。
しかしながらそんなことはどうでも良い事でございます。
人々の流れを見ながらも、わたくしはわたくし自身の支度をしなくてはなりません。
カミーユ様のお仕事は国内外を渡り歩く事の多いもの。
わたくしもそれに合わせて旅のできる支度を十二分に整えておく必要があるでしょう。
また、これまでは深く掘り下げておりませんでした近隣の知識も取り入れなくてはなりません。
これでもやることは山積しているのです。
…あら?これって、結局殿下との婚約を破棄しても、忙しい上、責務はついて回っているのではないかしら?
はたと気づき、わたくしは頬をおさえてしまいましたわ。
なんという事でしょう。
わたくし、スローライフにほのかにあこがれていましたが、わたくし自身がスローライフに向いておりませんでしたわ。
結局時間が許す限り身の回りの整理をし、調べ物をし、気晴らしにお茶をしてと、毎日毎日公務を見据えた準備ばかりをしております。
こんなつもりではなかったはずなのですが。
そのようにあれこれと動いているうちに婚約破棄から5日経ちました。
そんなある日。
我が家がにわかに騒がしくなりました。
普段から冷静沈着にどのような事柄にも動じず仕事をしているはずの我が家の使用人たちが、この様に慌てるなど、一体何があったのかしらとわたくしは自室から急ぎ玄関ホールへと向かいました。
すると、なんという事でしょう。
「カミーユ様!?」
さすがのわたくしも動揺から少々大きな声を出してしまいましたわ。
二階から見下ろした玄関ホールには、なんと、今まさに少々埃で汚れたマントを家令に預けている王弟殿下がいらっしゃるではありませんか。
わたくしは急いで階段を降り、玄関ホールへとたどり着きます。
すると、カミーユ様は普段であればとても静かで凪いでいるお顔に、小さな皺を作り、何度か唇を動かし言葉を紡ごうとしては閉じられます。
「カミーユ様、隣国でまだお仕事にあたられているのでは?」
色々な言葉をどうにか紡ごうと探しあぐねていらっしゃる様子から、わたくしはそっとカミーユ様のご事情にまずは水を傾けます。
「陛下より手紙を受け取り、早馬で戻った次第です。」
すると、カミーユ様は通りの良い、しかし、少し抑え目な音程で、ゆっくりと言葉を紡がれます。
あまり多くお言葉を交わす機会はございませんでしたが、それでも、過去何度かお聞きした時と変わらずその声のまろみと耳通りの良さはとても好感が持てます。
「そんな、お忙しいカミーユ様にそこまでしていただかずとも…」
「わが甥、ピサロのした事です。」
普段と大きくお変わりにはなっていない表情ですが、とても沈鬱な雰囲気がそこにあるとわたくしには思えました。
カミーユ様は、今回の件に関し、深くその胸を痛めてくださったのでしょう。
「カテリーナ様の御心を深く傷つける行為の数々…」
わたくしはそっとカミーユ様に微笑み、首を振りました。
「わたくしは、お互いにこれでよかったのだと思っております。わたくしでは、あの方が王となるには役者不足であったと、この数日でそう考えるに至りました。」
カミーユ様は戸惑いを強く浮かべた瞳で、まっすぐにわたくしを凝視されました。
たった5日間ではありますが、わたくしも、あの婚約破棄は少々勢いに乗せすぎたと反省し、それから、自身と殿下の関係について以前よりもずっと俯瞰で考えることができるようになりました。
わたくしたちは、ずっとそばにあり続け過ぎたのだと、今になると思うのです。
本来であれば、もっと多くの人との出会いを経て器を広げるべき時期が、互いにあったはずなのではと。
そして、そばに居すぎたために、わたくしも、殿下も、お互いの姿を見失い過ぎていたのではないかと。
近くにあれば物事はよく見えるとは思いますが、そのよく見えている場所は、その存在のたった一部分のみになってしまいます。
「ですから、この婚約破棄は、お互いが招いた出来事なのだとも思うのです。」
にこりとほほ笑む事で、わたくしはこの話題を終わらせます。
そうして、わたくしはカミーユ様のいでたちを確認しました。
「隣国からなど、長旅でいらしたのに…直接来てくださるなんて思いもよりませんでした。ありがとうございます。カミーユ様」
「先ぶれも出さず、申し訳ありません。」
少し困ったように少しだけ口の端を上げ、首をすくめられるカミーユ様の仕草が、年上の方に言うには不適切かつ失礼かもしれませんが、かわいらしく、ふふふと笑いがでてしまいました。
「おきになさらないでくださいませ。ぜひ、我が家での歓待を受けていってくださいませ。」
こうして、婚約破棄から始まったわたくしの短いお休みは幕を閉じたのでした。
言葉通りに休めたかはさておき、こうしてわたくしは、婚約破棄5日目にして、次の婚約予定のお相手と再会することとなったのでした。
それからのわたくしたちの話はまた別のお話でございます。
*追記*
評価、ブクマ本当にありがとうございます。
デイリーにいることに気づいて泣きました。
少しでも、誰か一人でも楽しんでいただけたなら幸いです。
本当に本当にありがとうございます。