ストライズの物語
何処に在るのかもわからない、灰色一色の世界。その中央に、輪になって立つ十一の人影があった。彼らは皆フードつきのコートを羽織っていて、男か女かはわからない。そして、赤、青、緑……と、全員がそれぞれ異なる色の光を放つ水晶玉を手にしていた。
「……異世界ストライズには二人の神が存在した」
突然、その中の一人――緑の水晶玉を持った者が話し出した。その後を継ぐように他の人々も順に口を開いていく。
「二人の神の間には、一人の息子がいた。神々は息子を可愛がり、何も起こることはなく、世界は平和だった」
「……だが、ある時神はもう一人身ごもり、それが原因で二人の仲を引き裂いてしまった。神の子はもう一人生まれてはならなかったのだ」
「一人は子を殺そうとしたが、もう一人はそれを拒絶した。やがて神々の争いは地上に生きる人間達をも巻き込む巨大な戦争を引き起こしてしまった」
「……そうして長い戦いの末、敗れた神は闇の底で深い眠りにつき、残された神は世界を治め《光の神》と呼ばれる存在になった」
「世界は平和を取り戻したかに見えたが、完全には封じられていなかったもう一人の神はまどろみながらも光の神を呪っていた」
「神の心は闇色に染まり、何時しか《闇の神》と呼ばれていた」
「《闇の神》は光の神を憎み、地上に邪悪な種を撒き散らした。種は人の身の内に巣食う闇に植えつけられ、彼等は恐ろしい姿となり《魔物》と呼ばれる存在になった」
「彼等はかつて愛していた者を喰らい、世界は混沌と闇に包まれかけた」
「一計を案じた光の神は全ての元凶となった二人の子をある者に託し、自らの力の一部を十一の光の玉に変え、それらを地上に落とした」
「光の玉はそれぞれが選んだ者の魂に溶け込み、その人間に世界を守る為の特別な力を与えた」
「力なき人々は、彼等を『光の神に魅入られた者』『世界を守る者』という意味を込めて《光の守護者》と呼んだ……」
最後にもう一度緑の宝玉を持つ者が語り、物語を締めくくる。直後、彼等は一斉にマントを脱ぎ捨てた。
それぞれの顔が現れる。緑の宝玉を手にしていたのは、宝玉と同じ色の澄んだ瞳を持つ黒髪の少女だった。他の宝玉を手にしていた者達も、少女の年齢にほど近い少年少女ばかりだった。
……そして、彼等は最後の言葉を告げる。
『これは、守り守られるモノ達のモノガタリ……』