一章 出会いと憂鬱
春。暦ではそうだが、まだ風は冷たく、慣れない通学路と制服のせいもあってか思うように進まない。時々薄い長袖で歩くお年寄りを見かけたが、本当に凄い。なんでそんな薄着でいれんの?
しばらくすると大きく派手な造りをした門が見えてきた。あれがミシル国立魔法学園の正門だ。今日はその豪華な門に更に飾りがついている。そう。俺、もといクリスタは新入生なのだ。しかしそれを加味しても、しつこい。人混みのなかでサラッとクラスを確認し、これから自分の所属するB組へ足早に向かった。
「おっはよークリスタ!」
と無駄に大声でクラスの真ん中にいた女子、フローラ·スタリアが挨拶をしてきた。それに対して俺は、
「···ん。おはよ。」と軽く手をあげて返した。よりによって一番うるさいのと同じになってしまった。
「朝からうるさい。」
「なんでよ?別にいいじゃん!今日から進学よ?テンションあげてかなきゃ!」
静かな環境が好きな俺は、本当にこのうるさい幼なじみとやっていけるのか、心配になってきた。
同じクラスで知り合い何人かに挨拶をしたあと、始業式が始まり、クラス内で軽く自己紹介をし、荷物を持って帰った。まあ、そりゃ初日から授業なんてしないしね。
そんなことより俺が心配なのは明日だ。互いの魔法を把握するために「魔法披露会」をしなければならないのだ。え?何が嫌かって?言ってなかったけ?俺は国でもごくごく希少な「無色」属性なんだ。まあ、希少って言っても悪い方にだけど。普通は炎、水、風、光、闇の精霊が憑いていてどれか一つの属性を持っているんだ。だけど精霊が憑いていないのか知らんけど、俺にはどれも当てはまらないんだ。
え?特別感があっていい?ふざけんな!俺は目立つのが嫌いなんだ!···おっと失礼。
兎に角、それで嫌がらせを受けてきたから嫌なの。
そして俺はまた一人で悩み始める。