表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

飽和

作者: azqi

俺は"ありきたり"で、"普通"なモノが嫌いだ。

時たま子供に見られる、"違う"モノに魅力を感じる、或いはオンリーワンな自分に陶酔する、あの気持ちのまま、成長してきてしまった ───それが俺だ。

どこか奇を衒おうという心持ちが ───当時はそんな言葉は知らなかったが ───働いていたのかもしれない。

大人になってからも、希少なモノや、少し"ズレ"ているモノに心惹かれるものだった。


そんな俺は、作曲家になった。


斬新な、実験的な、或いはどこか不自然な……そんな曲ばかり書いた。

勿論初めは、鳴かず飛ばずだった。

多少名が知れてきても、なかなか受け入れられなかった。

それでも俺は"普通"に与する事はなかった。

諦めず、現代音楽の最先端を、斜め上に駆け抜けるような気概でいた。

人生も折り返しかという所で、漸く評価されはじめた。人生が好転した。

「遂に俺を"普通"な奴どもに認めさせてやった」と、えもいわれぬ達成感を感じていた。 ───少なくともその時は。


あれから随分年月が経った。

寿命が近づいてきた。


いい年齢まで生きた、と自分では思っている。

しかし今、俺の心は絶望で埋め尽くされている。

"自分らしさ"が認められなくとも、努力して、努力して、遂に認められる ───なんてものは、"ありきたり"な努力譚であり、幾つもある美談だった。

老い先短い俺には、最早何も出来ない。


結局、俺の人生は、"普通"だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ