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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
98/110

結論:どっちも面倒くさい

エンキ編に入る前にちょっと一息。安心してください。ただフローラとシャーロットがいちゃつくだけの話です。

 扉のある部屋へリリィたちがやって来た時、フローラ含めるこの部屋に先にやって来ていた面々は、彼女達が無傷であることを喜び歓迎した。


「ちょっとごめん⋯⋯。すぐ立ち直るから、もう少しだけ一人にさせて⋯⋯」


 しかし、シックの死から未だ立ち直れていないリリィは、一人離れた場所へと立ち去っていく。「何があったんですか?」と真剣な表情で尋ねるフローラに、ルルは簡単にシックのことを話した。


「⋯⋯なるほど。それで、あんなにも落ち込んでいるのですか」


「⋯⋯リリィは強いから、エンキと戦う前には気持ちを切り替えてくれると私は信じています。それより、けが人はいませんか? 私のギフトでなるべく治してあげたいのですが⋯⋯」


 ルルの提案により、守護者との戦いで怪我を負った者は全員治療してもらうこととなった。それにより、視力を失っていたナナも視力を取り戻し、ナナとクララの二人は手を取り合ってそのことを喜び合う。


「ふふふ、怪我が治って喜ぶ患者の姿を見るのは本当に嬉しいことです。さあ、これでけが人は全部ですか?」


 ルルのその問いかけに、フローラは気まずそうに視線を逸らす。実は、まだ一人ルルの治癒を受けていない人物がいるのだ。その人物⋯⋯シャーロットは、リリィと同じように一人だけ皆の輪から離れたところでじっと座り込んでいた。

 先程シャーロットと喧嘩したことを引きずり、なかなかルルにシャーロットを治療して欲しいと言い出せないフローラ。そんなフローラの頬を、隣に立っているペトラが髪の毛でパシンとビンタする。突然ビンタされ目を丸くするフローラに対し、ペトラはきっと眉をつり上げる。


「いい加減に意地を張るのはやめなさいな、この馬鹿フローラ!! 貴女がシャーロットのことを気にかけていることくらい、その情けない顔を見ればすぐ分かりますわ!」


「ぺ、ペトラ⋯⋯」


「⋯⋯シャーロットのあの言葉が本気ではないことくらい、わたくしでも分かったのですから、つきあいの長い貴女が分からないはずはないでしょう? それに⋯⋯」


 と、そこでペトラは少し寂しげに目を伏せ、こう続けた。


「⋯⋯わたくしにはシャーロットの気持ちが少し分かる気がしますの。シャーロットがわたくしのことを嫉妬しているように、わたくしも、フローラ、貴女と長い間共に戦ってきたシャーロットを羨ましく思う気持ちがあったことは否定できませんもの」


 ペトラのその告白に、フローラは「えっ!?」と声を漏らした。


「シャーロットはペトラに嫉妬していたんですか!? そしてペトラもシャーロットを羨ましく思っていたって⋯⋯ど、どういうことです?」


「はあ⋯⋯フローラ、貴女、恋愛小説の鈍感系主人公の素質がありますわ。そこまで自分への好意に鈍感だと、シャーロットもさぞかし苦労したことでしょう。可愛そうに⋯⋯」


 未だ頭にクエスチョンマークを浮かべるフローラを、ペトラは半ば強引にシャーロットのところへと髪を使って押し出す。ペトラの髪は万能なのだ。

 そして、とうとうシャーロットの目の前まで押し出されたフローラ。皆がその様子をハラハラとした気分で見守る中、フローラはなかなかシャーロットに話を切り出せずにいる。そんなフローラに対し、シャーロットが皮肉げに口元を歪め話しかける。


「⋯⋯何の用だね? フローラ。シャーロット・ノックスと君は、先程仲違いをしたと記憶しているのだが⋯⋯。もしや、君は数刻前の出来事すら思い出せないほど愚かなのかね?」


 完全にフローラを馬鹿にしたシャーロットの物言いに、フローラは先程ペトラに言われたことなど完全に忘れ、かっとなって反論する。


「私はそこまで間抜けではありません!! 馬鹿にしないでください!!」


「それでは、君は何のためにここへ来たのかね?」


 しかし、シャーロットはあくまで冷ややかな表情を崩さず、冷静にそんなことを尋ねてくる。素直に仲直りをしに来たとは言えず、「そ、それは⋯⋯」と思わず言葉に詰まるフローラ。しかし、そんなフローラを見て、シャーロットが呆れたように「はあ⋯⋯」とため息をついたことで、フローラの中の何かに火がついた。


「何なんですかさっきから本当に!? こっちが仲直りしたいと思ってるというのに、そんな態度じゃ全然言い出せないじゃないですか! そもそも、何で一人称がフルネームなんですか!? 自分で言ってて恥ずかしくならないのですか!?」


「なんだと!? フローラ、君、そんな風に思っていたのか!?」


 予想外の言葉に、初めてショックを受けた様子を見せるシャーロット。そんなシャーロットに、吹っ切れたフローラはさらに日頃の不満をぶつけていく。


「そもそも、今回の件もそうですが、シャーロットは何故そう他人を見下しているような態度を取るのですか!! 本当は優しくて誰よりも責任感が強いのに、そんなんだから皆に誤解されるんですよ!!」


 フローラのその言葉に、シャーロットはむっと眉を寄せる。


「それならこちらも言わせて貰うが、フローラは鈍感すぎる!! 君はいつも仲間を守りたいと言っているが、私たちも同じように君のことを守りたいと思っていることをもっと分かるべきだと思うのだがね!! 君はいつも危なっかしすぎるのだよ!!」


 シャーロットとフローラは、ぐぬぬ⋯⋯! と唸りながら顔を近づけ、互いににらみ合う。


「シャーロットの屁理屈屋! 分からず屋!! おっぱいでかいんですよもげろ!!」


「頑固者! 貧乳!! 一人で頑張りすぎだ少しは休みたまえ!!」


 最初こそハラハラと見守っていた他のメンバーも、罵り合いが子供レベルまで下がっていき、最終的には何故かお互いを褒め合っている二人に、呆れたような視線を向け始めていた。


「お待たせ。とりあえず気持ちの整理つけたからもう大丈夫⋯⋯って何この状況」


「気にすんなリリィ。ただ二人がいちゃついてるだけだ」


 ようやく皆の輪に戻ってきたリリィに、ラモーネが的確な状況説明をする。ただ、皆が呆れた表情を浮かべる中、ペトラだけが唯一人、安心したようなそれでいて寂しそうな複雑な表情を浮かべ、二人の様子を見つめていたのだった。



次回、決戦準備。最終決戦前に何やってんだこいつら⋯⋯。まあ、いい緊張ほぐしにはなったかな。

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