『超絶治癒光形態』
スターちゃん出てくるだけでだいたい何とかなる風潮ある。
おもむろに、シックがリリィの身体へとその手を伸ばす。シックの身体に触れたロロがコンピュータウイルスに感染し機能を停止してしまった光景を目にしているリリィは、上半身を後ろに反らすことでギリギリその手をかわした。そして、上体を反らした勢いそのままに、後方へ宙返りしてシックから距離をとる。
「そんなに全力回避されると⋯⋯さすがにしょげる。」
「そりゃあ回避するでしょ!! まだここでは死にたくないしさ!!」
まだお互いに軽口をたたく程度の余裕はある。しかし、これはあくまで牽制に過ぎないことはリリィも理解していた。おそらく、ここからがシックの本気だ。
そのリリィの予想通りに、シックは今までずっと口を覆っていた黒いマスクを脱ぎ捨てた。一瞬、マスクの下から現れたサクランボ色の唇に目を奪われそうになったリリィであったが、その後シックがとった行動によって一気にそんな余裕は消えてしまった。
「⋯⋯霧の中、もがき、苦しみ、そして死ね⋯⋯!『病霧』。」
シックは、口をすぼめて力強く息を吐きだす。すると、呼気と共に放出された無数のウイルスが、まるで霧のようにリリィの視界を覆う。今までとは比べ物にならない量のウイルスに、リリィも慌てて体内の毒の生成速度を上げて侵入してくるウイルスに抵抗する。
しかし、どうしても抵抗できない箇所が存在する。それは、霧に直接触れる皮膚だ。リリィは、自分の腕に蕁麻疹が出来ているのを見て、慌てて腕を舐める。ただ、そのうち全身が焼けるような痛みを帯び始め、リリィは既に手遅れであることを悟った。
「う、うわああああああ!?」
痛みに耐えきれず、叫び声をあげるリリィ。その自分の叫び声によって、リリィは自分に近づいてくる足音を聞くことが出来なかった。
唐突に、先程までリリィの視界を覆っていた霧が晴れる。その時既に、シックはリリィの胸に自分の手を置いていた。
「⋯⋯じゃあね。『心臓発作』!」
シックがそう呟くと同時に、リリィの身体にドクン! と衝撃が走り、リリィは泡を吹いて床に倒れる。シックは、いまだビクンビクンと痙攣をし続けるリリィの姿を悲し気に一瞥し、そっと背を向けた。
「⋯⋯ごめんね。でも、たぶんこれが苦しまずに一番楽に死ねると思うから⋯⋯。」
リリィが死ぬその瞬間は、あまり見たくなかった。だからシックは倒れるリリィに背を向け、その時が来るのを待つ。
しかし、ここでシックにとって、そしてリリィにとっても予想外の事態が起こる。
「この子は、死にませんよ。何故なら⋯⋯私が来ました。」
ロロでもリリィでもない。聞き覚えのない第三者の声に、シックが慌てて後ろを振り向くと、そこには、リリィとは違いしっかりと白衣をまとった女性が、リリィをその腕の中に抱きかかえて立っていた。
「貴女⋯⋯一体だれ?」
「私の名前は、ルル。あらゆる怪我や病気を治すだけがとりえのしがないドクターです。」
黒のナース服のシックに、純白の白衣を纏ったルル。かたや、病を振りまく者。かたや、病を治す者。あらゆる面で対称的な二人が今、お互いに向かい合う。
「うう⋯⋯わ、私は一体⋯⋯って、何でルル姉ここに居るのさ!? 死んだんじゃなかったの!?」
「なんだかんだで一日だけ復活できたのよ。⋯⋯それよりも、今はこの場を何とかするのが先決でしょ?」
ルルの腕の中で回復したリリィ。驚いている様子のリリィに簡単に現状を説明し、そっと地面に下ろす。先程までシックのウイルスに蝕まれていたリリィの身体は完全に元通りになっていた。
「⋯⋯病気の治療、それが貴女のギフト?」
「その通りです。どうやら、貴女は他人に病を伝染すギフトのようですが、その力は私の前では無力です。なぜなら、私は全ての命を救う者⋯⋯ドクターですから。」
「⋯⋯!! 私、お医者さん嫌い!! 注射痛いし!!」
自分の天敵とも呼べるギフトの持ち主であるルルを脅威と見なし、素早い動きでルルへと迫る。しかし、そんなシックからルルを隠すように、ルルの前に立つのは、顔をマスクとサングラスで隠し、身体はトレンチコートで覆っている不審者。さらなる乱入者の登場に、シック、そしてリリィも目を丸くする中、ルルがその不審者に対し声をかける。
「じゃあ、いくわよスター!! ここに来るまでの間に即興で思いついた、私たちの合体技を!!」
「あいあいさー☆ こっちはいつでもオーケーだよ~!」
その不審者⋯⋯スターは陽気な声でそう答え、そして、ルルはその答えを聞くと同時に、スターが着ていたトレンチコートを豪快に脱ぎ捨てる。彼女のことを知っている方ならご存じのこととは思うが、スターはコートの下には何も着ていない。つまり今スターは全裸だ。だが、実はかなりスタイルの良いスターちゃんのスタイルを拝むことは誰にも出来ない。なぜなら、スターのギフト、『全身が光る』能力により、その身体から放たれた眩しい光が皆の視界を奪うからだ。
ここまでだと、スターがいつもやっている『超光形態』と何も変わらない。ここからがルルとスター、二人の合体技の真骨頂だ。
「そぉい!!」
かけ声一発、ルルはおもむろに自分の手をスターの脇へと挟み込んだ。「あふぅん!」と思わず声を上げるスターだが、何故だろう、そこまで色気は感じない。
ただ、その光を浴びるシックは、自分の身体の中のウイルスがもの凄い勢いで死滅していくのを悟っていた。まさか、とシックがその事実に思い当たった瞬間、ルルとスターの得意げな声が二重で聞こえてきた。
「「見たか!! これが私たちの合体技!! あらゆる病気や怪我を治す癒やしの光⋯⋯名付けて、『|超絶治癒光形態《スーパースターちゃんモードwithルル》』だーー!!!」」
次回、シック戦決着⋯⋯かな?




