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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
93/110

『雷神降臨』

たつき監督を返してよ!!(切実)

《シャーリー&サラside》


「ドクター、こっちはもう平気だから、お前はあの塔に行ってくれないか? あいつらのことを頼んだ。」


「⋯⋯分かりました。無茶だけはしないでくださいね!」


 シャーリーの願いを受け、塔へと走るルル。その後ろを、スターが慌てた様子でついていく。シャーリーが行って欲しかったのは治癒能力があるルルだけだったのだが、スターがここにいてもこれ以上することはないだろうと判断し、引き留めることはしなかった。


 シャーリーは、ここでピティーがルルの行く手を阻もうとしてくるかと警戒していたのだが、そのピティーはというと、先程から何かブツブツと呟くばかりで動く気配がない。


「奴らはさっき、ホウライと言った⋯⋯? いや、しかし、それはあり得ない。ホウライがあそこから逃げ出したとしたら、今頃私も奴らも死んでいるはず⋯⋯。まさか、アレ(・・)ごと逃げ出したのか? それこそ、あんなモノと一緒に逃げることなどほぼ不可能なはず⋯⋯。」


 よく分からない独り言を繰り返すばかりのピティーに、シャーリーの苛立ちは次第に募っていく。そんなシャーリー同様、我慢の限界がきたらしいサラが、シャーリーに対し『どうする? やる?』と指で合図を送った直後、まさかの事態が起きた。


「はっはっは!! このソニア、諸悪の根源を討ち取ってみせるぞ!! とーうっ!!」


 先程まで若干その存在を忘れていた、ヘルメットを頭に被った不審人物、ソニアが高速でピティーに蹴りを放とうとしたのだ。しかし、蹴りかかる前に大声でそんな台詞を言ってしまったため、ピティーがソニアの襲撃に気付き顔を上げてしまった。シャーリーは大きく舌打ちをする。


「くそ、あの馬鹿何やってんだ? 後で首切ってやるか⋯⋯。」


 そして案の定、ピティーはその瞳を光らせてソニアのギフトを無力化し、突然動きが遅くなったことに動揺したソニアの腕を掴んで遠くへと放り投げた。


「な、なんだとー!?」


 ソニアの叫び声が遠ざかっていくのは完全に無視して、シャーリーとサラの二人は隣に並び立って臨戦態勢を整える。しかし、ピティーの瞳は、シャーリー達を捉えておらず、その視線は塔の方へと向けられていた。


「⋯⋯もしホウライが逃げているとすれば、一大事だ。こんなところで時間をつぶしている場合ではない。このことを、少しでも早くエンキ様にお伝えせねば⋯⋯!!」


 そう言って、ピティーはその姿を消していく。ピティーが戦わずに逃亡する気だと気付いたシャーリーは、慌てて逃亡を阻止しようとしたが、突然鳴り響いた爆音と、襲い来る熱風によって身動きを封じられた。


「待ちやがれピティー!! くそっ、一体何だってんだこれは!!」


 その時、シャーリーは目撃する。シャーリーたちの周囲でポポ軍団が相手をしていたピティー軍団。その一体の身体が、突然爆音と共にはじけ飛ぶ光景を。


『自分が逃げるために、自爆させたんだ⋯⋯。』


 同じくその光景を目撃していたサラが、何とも言えない表情を浮かべ、シャーリーにそう伝えてきた。ピティー軍団の自爆により、辺り一面砂埃が巻き起こり、とてもじゃないがこんな視界の中では透明になったピティーを追うことは出来ない。


 爆発事態はそこまでの威力ではなかったので、シャーリーとサラが傷つくことはなかった。しかし、ピティーに逃げられてしまった悔しさに歯ぎしりするシャーリー。


「何故貴様が悔しがるのだ!! 一番悔しいのはこの我輩であるぞ!! 我輩の兵をあんな方法で蹴散らすとは⋯⋯あのピティーとやら、万死に値する!!」


 そんなシャーリーの前に、怒りを全く隠すことなく近づいてきたのは、吹き飛ばされたソニアを背中におぶったポポ将軍であった。先程の爆発は、あまり大きなモノではなかったといえ、すぐ傍に居たポポ軍団は皆やられてしまっていた。実際はやられてもまた同じ数の軍団を出せるポポ将軍ではあるが、やはりあまり気持ちが良いモノではないらしい。


 ポポ将軍は、背負っていたソニアを乱暴に地面に放り投げた。その際、ソニアが痛そうに「うっ!」とうめき声を上げたが、それは完全にスルーし、ポポ将軍はシャーリーとサラの二人を睨み付ける。


「⋯⋯で? これからどうするのだ? 奴をこのまま逃がしてはろくなことにならんぞ?」


「それはオレも良く分かってるわ!! だが、一旦透明になられちまうと見つけるのはかなり難しいからな⋯⋯。」


『おりゃー、数増やすしか能の無い奴がえらそうにしてんじゃねえぞばーか。』


 幸い、サラのその罵倒がポポ将軍に伝わることはなかった。しかし、どうすればピティーを見つけられるかの答えが出ることはない。


「あー!! オレは考えるのは苦手なんだよ!! こうなったら走り回って探してやる!!」


 そう叫び走り出そうとしたシャーリー。そんな彼女を、ポロン♪ という弦を爪弾くような音と共に、「待ってください」と制止する声があった。


「あ? お前らどこかで⋯⋯。あ、お前らジミナが参加してたゲームの参加者か!!」


 シャーリー達の目の前に現れたのは、少し後にこの場に送られてきた、ウク・レレ、“わたし”ちゃん、そしてレイニー・ブルーの、つい最近シャーリーが夢でその戦いっぷりを見た少女達であった。三人の中心に立っていたレレは、シャーリーのその言葉に大きく頷き、隣に居るレイニーの肩を抱き寄せ、自信たっぷりにこう言い放った。


「ここは、私の天使、レイニーに任せちゃってください!! レイニーが怒れば、出来ないことなんてありません!! なぜなら、普段は天使なこの可愛いレイニーちゃん、怒った時だけは⋯⋯雷神と化しますから。」


 何故か自分のことでもないのにドヤ顔のレレ。そして、そんなレレにつられて「どにゃあ!!」とドヤ顔をする“わたし”ちゃん。


「あ、あまりハードルあげないでよ⋯⋯。き、緊張する⋯⋯。」


 レイニー本人が一番不安気という謎すぎる状況に、シャーリー達の間にこいつら本当に大丈夫か? という空気が広がる。


 しかし、この後レイニーが魅せた本気の姿に、夢で一度その姿を見ているはずのシャーリーさえ、言葉を失うことになるのであった。


 


 

次回、タイトルは未定ですが、なるべく早く投稿する予定です。

ピティー編はおそらく終わるかも。

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