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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
86/110

『第六感』

今回でエイミー戦は決着!! ペトラさん大暴れです。あ、あの子も登場するよ!!


一応ペトラの紹介もしときますね。


ペトラ・ルドリアーナ 1st stage登場

ギフト⋯⋯『ヘアースタイルを自在に変えることが出来る』

《フローラ&ナナside+α》


「ペトラ、あいつには絶対に触られないよう気をつけてください! 触覚を操られたら大変なことになります。」


 自分より少し前に立つペトラに、そう忠告するフローラ。そんな彼女に対して、ペトラは髪の毛でオーケーサインを作ることで答える。貴族然とした優雅なたたずまいと、若干お茶目なその行動のギャップに、フローラは思わずくすっと笑みを浮かべていた。

 そして、エイミーはというと、そんな二人のやりとりを面白くなさそうな顔で睨み付けていた。


「ねえねえ、アナタ、ガチで一人で私とやろうっての? 別にフローラと二人でかかってきたとしても私は構わないんだけど。」


「御託はいいですから、さっさとかかってらっしゃいな。それとも、このわたくしと戦うのが怖いのかしら?」


 エイミーの挑発にも反応せず、逆にエイミーを挑発してみせるペトラ。自分の指と同時に、髪の毛も手の形に変形させ、くいっくいっと人差し指を曲げてかかってこいとエイミーを煽る。一瞬ぴきっと額に青筋が走ったエイミーだったが、流石にこれで逆上して向かってくるほど彼女も馬鹿ではなかった。


(⋯⋯とりあえず、私と会話をしている時点で聴覚は支配出来る。聴覚を奪って混乱させたところで隙を見て触ってやる。そうすれば、もう奴らに勝ち目はない。)


 エイミーは、冷静な思考の元、そう判断を下し、ペトラの聴覚を奪う。そして、耳元に大音量の叫び声を送りつけることにした。

 しかし、突然の爆音にも、ペトラは動じない。少し眉をひそめただけで、すぐに髪の毛を使って耳栓をし、自ら聴覚を封じる。

 ペトラに全く隙が生まれないことから、一旦距離を置き、壁の色彩との同化によりペトラの認識から外れようと試みるエイミー。しかし、後ろへと飛び跳ねたその身体は、空中で止まってしまう。


「!! またこれかっ! 一体何で⋯⋯。」


 先程フローラにトドメを刺そうとした時と同様の現象に、その原因を素早く探すエイミー。しかし、その瞳が、金色に輝くペトラの髪の毛を捉えた時には、エイミーの身体は突然量を増やした髪の毛によってグルグル巻きにされてしまっていた。


「やはり、その様子だと髪で触る分には問題ないようですわね。さて⋯⋯いきますわよ!」


 エイミーの身体を縛る髪の毛が、大きな拳の形に変形する。第三者から見ると、ペトラの頭から生えた大きな腕がエイミーを掴んでいる形だ。ペトラは、その髪の毛の腕を振り回し、エイミーの身体を地面に力強く何度も叩きつける。


「ぐっ⋯⋯!! はあぁぁぁっ!!!!!」


 エイミーは、四度目に地面に叩きつけられたタイミングで、力任せにペトラの髪から脱出することに成功した。その頭からは血が流れており、先程の攻撃でかなりのダメージを受けたことがうかがい知れるが、エイミーは決して倒れない。自分の敬愛する神を侮辱する者たちへの憎悪だけを糧に立ち上がり、高速で頭を回転させ、打開策を練る。


(あの髪は恐らくアイツのギフト⋯⋯空中で動きを封じるアレも、多分髪だ。そうなると、アイツに近づくのは困難、それなら⋯⋯あいつらの友情につけこむ!!)


 エイミーは、自分が戦っていない時でも油断なく自分を睨み付けているフローラに、ギフトの対象を変化させた。そして、触覚支配により、再び内蔵の動きを封じようとしたのだが、ギフトを発動させる前に、ペトラの髪がドリル状に尖ってエイミーを貫かんと襲い来る。


「わたくしの髪、その本数は今やほぼ制限なく増やせますわ。そして、増やした髪の毛を極限まで細くしたモノを、この部屋中に張り巡らせてあります。そう、言うなれば、既にここはわたくしの固有結界の中。この部屋の中で貴女が何かをしようとするなら、わたくしには全てお見通し⋯⋯というわけですわ。」


 ペトラの髪の毛に追われ、部屋の中央に追い込まれたエイミーの元へと、全方位から金色の髪の毛の波が、エイミーを包み込まんと迫ってくる。視界が金一色に染まる寸前、エイミーはペトラの声を聞いた。


「わたくしが最も信じるのは、今も昔もこの髪の毛がもたらす情報。視覚でも聴覚でも触覚でも嗅覚でも味覚でもない、『第六感』とでも言うべきこの感覚⋯⋯この感覚は、わたくし以外の誰にも支配出来ませんわよ。」


 


 フローラの目の前で、ペトラの髪で形成された巨大な球体がエイミーを閉じ込める。フローラが全くといっていいほど歯が立たなかったエイミーを、ペトラは圧倒してみせた。そんなペトラを純粋に凄いと思うと同時に、ほとんど何も出来なかった自分を情けなく思う。

 唐突に、フローラの頭を何か柔らかいモノがぽんと叩いた。見ると、ペトラが髪の毛の腕を伸ばし、フローラの頭を撫でてきていた。


「⋯⋯フローラ、そんなに自分を責めないでくださいまし。今回わたくしが彼女を封じ込めることが出来たのは、単純に相性が良かっただけのこと。貴女は、五感のほとんどを支配されてもなお、諦めずに彼女に立ち向かっていた。もし貴女が途中で諦めていたら、わたくしの助けは間に合わなかった。フローラ、貴女の勇気が、勝利をもたらしたのですわ。」


「ペトラ⋯⋯。」


 こうしてペトラに褒められ、励まされると、まだ自分が弱く、何も守ることが出来なかった頃のことを思い出す。だが、今のフローラは、もう昔のフローラではない。だからこそ、フローラは思わず溢れそうになった涙をこらえ、にっとペトラに向けて笑みを浮かべた。


「⋯⋯ありがとうございます、ペトラ。でも、次戦う時は、貴女の後ろではなく、隣に居させてくださいね。」


「勿論、そのつもりですわ!」


 そして、ペトラもそんなフローラに満足そうな表情を浮かべてそう答えた。しかし、突如その顔が再び緊張感漂うモノに変化する。その変化に敏感に反応したフローラも、同時に警戒を強めつつ、ペトラに「何が起こったのですか?」と尋ねた。


「⋯⋯どうやら、あの方はまだ諦めていないようですわ。わたくしの髪の毛を食いちぎり、外に出てこようとしています!! わたくしの髪は鋼鉄並みの強度を誇るというのに、何という執念でしょうか⋯⋯。」


 ペトラがそう言った直後、「うがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」という咆哮と共に、全身血だらけのエイミーが球体の中から飛び出してきた。だが、エイミーはペトラ達に向かってくる気配がない。彼女が向かった先は⋯⋯。


「しまった!! アイツ、ナナを狙ってる!!」


 そう、そこに居たのは、戦闘に巻き込まれないように避難させていたナナ。フローラの声でエイミーの狙いが分かったペトラは、エイミーを止めるべく髪の毛を伸ばす。しかし、エイミーは、縛られた手首を噛み千切り、強引にペトラの髪縛りから逃れた。これには、流石のペトラも目を丸くする。


 フローラは、慌ててナナの元へと駆け出すが、少し距離が離れてしまっており、間に合いそうにもない。それでも諦めきれず、全速力で走るフローラの目に、エイミーとナナの間に立つ三つ編みの女の子の姿が見えた。


 髪型もそうだが、顔にかけている眼鏡も相まって少し野暮ったく見える女の子。この場にはとても似つかわしくない女の子は、しかしそこに立つのが当然とばかりの堂々とした様子で、迫り来るエイミーからナナを守るようにその腕を広げ、その口を開いた。


『エイミー、止まるんだ。』


 その声を聞いた瞬間、フローラの背筋をぞわっと悪寒が走る。それと同時に湧き上がる怒り。間違いない。この声は、あのエンキの声(・・・・・)だ。しかし、何故あの女の子からエンキの声が⋯⋯?


 戸惑ったのはエイミーも同じだったようで、先程まで狂気しか感じなかった表情に、戸惑いの色が見える。思わず立ち止まってしまったといった様子のエイミーに、その女の子は冷たい視線を向け、エンキの声でこう言い放った。


『はあ⋯⋯こんな雑魚相手にそのやられようか。どうやら、私はお前のことを過大評価していたようだ。』


「え、エンキ様⋯⋯。ま、まだチャンスをください!! これからこいつらを一人残らず⋯⋯」


『はあ、もういいよ。⋯⋯死んで?』


 エイミーの言葉を遮り、エンキの声は残酷な命令を言い渡した。その言葉に、エイミーは頭を垂れ、「⋯⋯お望みとあらば」と小さく呟いた。


 その直後、エイミーは血を吐いて床に倒れた。どうやら、口の中に隠し持っていた毒薬を飲み込んだようで、口から泡をふいている。閉じられたその瞳からは、涙が一筋流れていた。


 突然目の前で起こった出来事を理解する間もなく、フローラの身体を眩しい光が包んでいく。慌てて後ろを振り返ると、ペトラも同じように光に包まれているのが見えた。そして、ナナも、またあの女の子の身体も光が包んでいく。


 数秒後、フローラ達の姿は光に包まれて消えていった。そして、色彩の派手な部屋の中には、最期まで神を信じ戦った守護者の死体だけが、ぽつんと置かれていたのであった。

今回はちょっと後味悪めかも。てか、あの子のギフト割とえぐいよね。


次回、『神へと至る扉』です。今回名前を出せなかったあの子の紹介とかもするよ!

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