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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
85/110

姫獅子、参上

ちょっと遅れたけれど、その分あの方の登場シーンには拘りました。凛ッ!!

《フローラ&ナナside》


フローラは、獣のような叫び声を上げながら向かってくるエイミーの身体を危なげなく躱した。単純な突進攻撃ならば、そもそもフローラに当たるはずもないのだ。しかし、直後、ターンして再び向かってくるエイミーの攻撃は、剣で受け止めるしかなかった。なぜならば、フローラの後ろに視力を奪われたナナが居たからだ。


「フローラぁぁぁぁ!! お前、そろそろ消えろよぉぉぉ!!!」


 エイミーがそう叫び、腕を振り下ろす。すると、フローラは自分の膝の裏を付かれた感覚と共に、自然と膝を折ってしまう。バランスを崩したところに、エイミーが鋭い膝蹴りをフローラの顎目掛け放つ。しかし、フローラは自らのギフト、『認識したモノから少しだけ浮く』能力により、辛うじて直撃は回避することに成功した。


「いくらナナを危険視していたとはいえ、私の視力を支配できなくなったのは失敗だったみたいね!」


 フローラは回避と同時に、エイミーに剣を振るう。その剣は途中でエイミーによって肘の動きを操られたため当たらなかったが、それを見越して蹴り飛ばした靴はエイミーの顔面にヒットした。鼻血を出しよろけるエイミーに、すかさずフローラが追撃をはかり頭突きを放つ。しかし、予想以上の痛みに悶絶し倒れたのはフローラの方だった。


「お前に与える痛みを『触覚支配』により数倍に引き上げた!! さあ、次はこちらの番だ!!」


 そう叫び、エイミーが後方へと跳び上がる。フローラは、一度見失えば何をされるか分からないという先程までの戦闘の経験から得た判断で、即座に顔を上げてエイミーの動きを目で追いかけた。


(何だ? 目がショボショボする⋯⋯。)


 エイミーの着ている派手な色と柄の服。その服が、この部屋の派手な色彩と合わさってエイミーとの距離感が上手く掴めない。フローラは、今更ながらにこの部屋の仕組みを理解し、ちっと小さく舌打ちしたが、その時には既にエイミーの姿を見失ってしまっていた。


「どうやら、私の姿を見失ったみたいだね。」


「視力を無くすまで追い詰められたのは想定外だったけれど⋯⋯最悪の事態に備えて、ちゃんと用意はしてあった。」


「お前の攻撃は私に一生当たらず⋯⋯仮に当てても、お前にダメージがいくのみだ。さあ、蹂躙を始めようじゃないか。」


「「「「エンキ様に捧げよう!! 罪人の血を!!」」」」


 四方八方から同時にエイミーの声が聞こえ、その直後、フローラはまたしても膝を折られる。とっさに逆立ちの姿勢に切り替えるが、今度は肘を折られ、バランスを崩したところに、耳元で大音量の爆音が響き渡る。


「ああぁ!?」


 思わず鼓膜が破れたかと思いかけたほどの衝撃に、くらりと一瞬意識が遠のくフローラ。


「ああ、ごめん、蹴るね?」


 エイミーの声がそう囁きかけると同時に、脇腹を鋭い痛みが襲う。恐らく蹴りによるモノと思われる衝撃により、吹き飛ばされるフローラ。空中で体勢を整えたところまでは流石だったが、背中に虫が這いずるような感覚が走り、「きゃっ!?」と可愛らしい悲鳴を上げてしまう。


「わあお、可愛い悲鳴!! 録音して墓に入れてあげたいくらいね!!」


 すっかり調子を取り戻し、巫山戯た口調で煽ってくるエイミー。フローラは、羞恥と怒りで顔を赤く染めるも、努めて冷静で居られるよう深呼吸をしようとした。


 しかし、呼吸が出来ない。まさかの事態に動揺するフローラの耳元で、エイミーの声が囁きかける。


「驚いた? 驚いたでしょ? ⋯⋯実はね、私も驚いてる。今まで会った奴らは、貴女ほどしぶとくなかったから、私自身も能力の限界を知らなかったみたい。まさか、内臓の動き(・・・・・)まで支配出来るなんて、ね。多分、何度も身体に触れることがこの能力の発動条件だったのね。今は、貴女の肺の動きを支配して止めているの。ふふふ⋯⋯ねえ、次に私が何をするか、賢い貴女なら、分かるでしょ? 分かるよなぁ?」


 酸素を求め、パクパクと口を動かすフローラの正面、そこに、エイミーがやっと姿を現す。しかし、今のフローラにもうエイミーの元へと向かう気力は残されていなかった。

 エイミーは、血を流し続ける両目を見開き、腕を大きく広げて、天を仰ぎ見た。


「これから私はぁ⋯⋯貴様の心臓の動きを支配し、その活動を止める! そうすれば、貴様は死に⋯⋯エンキ様は喜ぶ!! 私は⋯⋯私も⋯⋯狂喜乱舞する!! ははは⋯⋯ハハハハハ!!」


(狂ってる⋯⋯どいつもこいつも、あの神に関わる奴は皆狂ってる⋯⋯!!)


 フローラは、狂ったように笑い続けるエイミーを見て、そう思わずには居られなかった。しかし、そんな狂った奴に、自分は何も出来ずに殺されてしまう。殺すべき神の姿すら見ることなく、ここで終わってしまう。


 ⋯⋯そんなの、ごめんだ。


「うわああああああ!!!」


 フローラは、体内に残った少ない酸素を全部吐き出すようにして雄叫びを上げ、エイミーへと向かう。そんなフローラを一瞥し、エイミーは嘲るような笑みを向けた。


「はっ! 最期まで馬鹿な奴だな、アンタは。それじゃ⋯⋯バイバイ。」


 エイミーは、そう言って、高く突き上げた右の拳をギュッと握りしめようとした。そうすることで、フローラの心臓を止めることが出来たからだ。


 しかし、その拳は握りしめられることなく、中途半端な位置でピタリと止まってしまう。それだけでなく、エイミーは全身の動きを封じられていた。


「ぐはぁっ!?」


 その結果、エイミーはフローラの攻撃を避けることが出来ずに、頭突きをもろに喰らって吹き飛ばされる。また、同時にエイミーのギフトも解除され、再び呼吸ができるようになったフローラは、慌てて大きく息を吸い込んだ。


 しかし、なぜエイミーが自分の攻撃をよけることが出来なかったのか、不思議に思ったフローラは、先程までエイミーが立っていた場所を注意深く眺めることにした。


 そこで見つけたのは、金色に光る細い糸のような物体。その物体に見覚えがあったフローラは、まさかと驚愕に目を見開いた。


「くそっ!! くそっ!! この私の動きを支配するなんて許さない!! 支配するのはこの私だ!! 誰が(・・)、私の動きを封じたぁぁぁ!!」


 フローラに吹き飛ばされた衝撃から立ち直ったエイミーが声を張り上げる。そして、その声に答えるように、凛とした気品のある声が、部屋中に響き渡った。


「ずいぶんと野蛮な方ですわね。そんな様子では、わたくしの家のパーティーにはとても招待できませんわ。」


 カツン、カツンと、ヒールの音が徐々に自分へと近づいてくるのを感じつつも、フローラは後ろを振り向けずにいた。まさかあの子がここにいるはずがないという思いと、しかしこの声はあの子に違いないという直感からくる確信がせめぎあい、フローラの頭をパニックに陥れていた。


 フローラの目の前で、白いドレスが舞った。花の香りがフローラの記憶を呼び覚まし、こちらへと振り向いた顔が微笑みかけ、話しかけてきたその声で涙があふれだし、肩に置かれた手で、彼女が今ここにいることを実感した。


「⋯⋯その指輪、ちゃんと持っていてくれたのね、フローラ。」


 肩に置かれた白い陶磁器のような手がフローラの胸元へと伸び、そこに下げられた指輪をそっと持ち上げる。フローラは、たまらず彼女へと⋯⋯最愛の友人、ペトラへと抱き着いた。


「ペトラぁぁぁぁ!!!! 私、私⋯⋯あなたにまた会いたかった⋯⋯!! 会えて良かった⋯⋯!!」


 ペトラは、そんなフローラの頭を優しく抱き留め、その頭を撫でると、優しい声でこうささやいた。


「わたくしもですわ、フローラ。⋯⋯本当に会えて良かった。」


 そして、ペトラはその胸にフローラを抱き留めたまま、エイミーを睨みつける。対するエイミーも、突然の乱入者を油断なく睨みつけていた。そんなエイミーに対し、ペトラはその自慢のドリルヘアーをシャランと揺らし、凛とした声でこう宣言した。


「さあ、野蛮な方。わたくしの友人を傷つけた罪は重くてよ。ここからは、フローラに代わってこのわたくし⋯⋯ペトラ・ルドリアーナが、貴女のお相手をいたしますわ!!」





次回、エイミー戦決着の予定。

タイトルは、『第六感』です。

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