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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
77/110

シャーロットの推理

投稿遅れてすみません。

体調もまあ良くなったので、これからも頑張りますねー。

あ、今回は前書きで遊ぶのはなしで。眠いのです。

《シャーロット&ラモーネside》


 シャーロットはプリンアーマーで全身をすっぽりと覆ったラモーネの後ろに隠れ、この一面ピンクの悪趣味な部屋の主でありこの塔の守護者でもあるコック帽を被った少女、フライに向かって銃弾を放つ。


「ふわふわマフィンにあま~いケーキ♪ まぁるいドーナツも召し上がれ♪ そぉれ、『フライ返し』!」


 そのフライはというと、先程からおそらく自作であろうそこまで上手でもない歌を口ずさみながら、シャーロットが放つ銃弾をその手に持つ巨大なフライ返しでこちらへとはじき返している。こちらへと返ってくる銃弾は全てラモーネが防いでくれているので、シャーロットはその間フライの持つギフトについての推理に集中することが出来た。勿論、攻撃の手を緩めることはない。


「さて⋯⋯フライの能力は一体なんだろうか。銃弾を弾くという点から考えると、一番無難なのは『反射』する能力といったところかね。それか、一見意味の無いように思えるあの歌に秘密があるのか?」


「いや~、母さん、あの歌に意味はないと思うよ。ああいうタイプのちょっと頭が変な奴は意味のないことを言ったり歌ったりするのが好きなのよ。」


 シャーロットの独り言に対し、顔だけ後ろを振り向き口を挟んできたラモーネ。シャーロットは、ラモーネの言葉に「⋯⋯成程。一理ある」と呟き、その小さな顎に指を添えた。


「つまり、母さんみたいな奴というわけだな。」


「そうそう、そういうこと⋯⋯って、え? 私娘に変な奴だと思われてたの?」


 ショックを受けた様子のラモーネは無視し、シャーロットは観察と攻撃を続ける。シャーロットが拳銃に弾を装填する間は、フライからの攻撃が来ないようラモーネにプリンの壁を作ってもらい、装填が終わり次第再びラモーネの後ろに隠れ、フライに向かって発砲する。

 その動きを繰り返しつつ、シャーロットはラモーネにも指示を出し、フライへと少しずつ近づいていった。距離が近づく分、フライにとっては銃弾が自分へ向かってくるまでの時間が短くなり、余裕がなくなっていく。当然、その分シャーロットも自分に銃弾が当たるリスクが大きくなるが、多少のリスクは冒さなければならないことは覚悟の上。それに、ラモーネは絶対に自分を守ってくれるという信頼があった。


「さあ、そろそろだな。フライ君、君のトリックをこのシャーロット・ノックスに見せてくれたまえ!」


 シャーロットはモノクルのレンズをキラリと光らせ、それまでずっと片手だけで撃っていた拳銃を、両手撃ちへと変化させる。


「『アンビデクストラス』⋯⋯。やはり探偵は両方の手を器用に使えなければな。」


 二丁拳銃スタイルとなったことでより一層激しさを増した弾幕は、ついにフライの肩に命中した。その衝撃で後方へと吹き飛ぶフライ。しかし、そんな状態でも、彼女はまだ呑気に歌い続けていた。


「どろ~りジャムをパンに塗って♪ フルーツサンドを作りましょ♪ 『しっぺ返し』!」


 ハイライトのない瞳で、肩から血しぶきを上げながらも笑顔で歌い続けるその様子には、一種の狂気を感じる。思わず眉をひそめるシャーロットであったが、突然肩に走った痛みに思考を中断させられた。


「な⋯⋯! これは一体⋯⋯?」


 シャーロットが自分の肩を見ると、そこにはまるで銃弾が貫通したかのような小さな穴が空いており、そこから血がだらだらと流れていた。慌てて肩を手で押さえ、止血をすると同時に、シャーロットはフライの姿を探す。だが、どこにもフライの姿は見えない。


「⋯⋯シャーロット、私、今片目しか見えないから、これ見間違いかもしれないんだけれどさ⋯⋯。何か、あのコックちゃんが天井に立っている(・・・・・・・・)ように見えるんだけれど。」


 ラモーネのその言葉に、シャーロットは天井を見上げ、そして絶句する。そこには、ラモーネの言うとおり、天井に二本の足で立っているフライの姿があったのだ。いや、この場合ぶら下がっていると言った方が正しいのだろうか?

 とにかく、フライは重力を無視し、天井に居た。さらに、彼女の肩には、先程シャーロットに撃たれた傷が全くなかった。先程までと全く変わらず、フライは天井でもあの変な歌を口ずさんでいる。


「ぷるるんゼリーにひんやりアイス♪ ソフトクリームもいいかもね♪ 秘技、『天地返し』~♪」


 シャーロットは、視線はフライから離さないまま、血が出ている肩は破ったマントで縛って止血し、その口に愛用の煙管をくわえた。そして、隣に立つラモーネへと声をかける。


「⋯⋯母さん、今からこのシャーロット・ノックスは思考の渦の中へと潜り込む。その間、奴の攻撃から守ってくれ。」


 シャーロットは、ラモーネの返事を待たずにゆっくりと目を閉じた。その瞬間、周囲の音が完全にシャットアウトされ、シャーロットは極限に集中した状態になる。このことを、シャーロットは『思考の渦に潜る』と表現していた。


(⋯⋯さて、情報を整理しようではないか。フライのギフト、その詳細が分からないままでは、いつまでも翻弄されるだけだ。考えろ。考えるのだ⋯⋯。)


 シャーロットは、頭の中で先程までの戦闘の様子を振り返っていく。


(まず、フライは私の銃弾をはじき返した。この時、奴の歌に出てきた言葉は、『フライ返し』。この時点で考えられるのは、『反射』の能力。次に、私の銃弾を受けて奴は肩から血を流していた、が、いつの間にかその傷は消え、今私が逆にダメージを受けてしまっている。この時歌っていた言葉は『しっぺ返し』。これも、『反射』か? ⋯⋯いや、違う。もし仮に、奴が私にダメージを反射させたとしても、それなら奴はそもそも怪我をすることはない。⋯⋯そして最後。フライは、重力を無視し、天井に立っている。その時歌っていたのは、『天地返し』。これは、絶対に反射の能力では出来ないことだ。これら三つの行動に共通すること、そして、それが可能な能力を考えるとしたら⋯⋯!)


「⋯⋯答えは、一つしかない!」


 シャーロットは、加えていた煙管を再び胸のポケットにしまい、再び天井に居るフライに銃を放つ。そして、何故かその攻撃をよけようとせず、腹や腕に銃弾をもろに喰らうフライ。それでも、笑顔を崩さない。シャーロットは、もし自分の推理が当たっているとするなら、これから起こるであろう事態に思わず眉をひそめる。だが、臆することなく銃を撃ち続けた。

 フライは、もう二、三発ラモーネの銃を喰らったところで、再び歌い出した。


「イチゴジャムは、真っ赤っか~♪ 白いキャンバスを赤く塗る~♪ 『しっぺ返し』!」


(-来た!!)


 シャーロットは、フライが『しっぺ返し』と言ったタイミングで、自分の太ももに銃を突き立て、そのまま引き金を引いた。あまりの痛さに思わず倒れてしまったシャーロットに、ラモーネが慌てた様子で近づく。


「シャーロット!? アンタ何やってるのさ!!」


 しかし、シャーロットのそばへ駆け寄ったラモーネは困惑することとなる。先程シャーロットが撃った場所は太ももだったはずなのに、今シャーロットが血を流しているのは、腹と腕の二カ所だったからだ。


「⋯⋯いや、ただ、このシャーロット・ノックスの推理が当たっているかどうかを検証してみただけだよ。そして、どうやら推理は当たったらしい。」


 そう言ってシャーロットが指さした先をラモーネが見ると、そこには、太ももを押さえて天井に座るフライの姿が。心なしか。ハイライトのない瞳はシャーロットを睨み付けているように見える。


「え? どういうこと? シャーロット、アンタあいつのギフトが何か分かったの?」


「ああ、あくまで推測だがね? しかし、ほぼ正解であると確信もしているよ。」


 まだよく事態の把握出来ていないラモーネに対し、シャーロットは自分の推理を聞かせる。


「フライのギフトは、『あらゆるモノをひっくり返す』だと思われるよ。銃弾を反射していたように見えたのは、おそらく銃弾の進む向きを『ひっくり返して』いたのだろう。そして、今天井に居るのは、『重力反転』⋯⋯つまり、『重力をひっくり返している』んだ。そして、この推理を決定づけたのが、今のフライの状態だ。あれは、『自分の受けたダメージと相手の受けたダメージをひっくり返す』ことにより、彼女がギフトを発動する寸前、このシャーロット・ノックスが自ら与えたダメージが彼女にいったのだろう。そして、彼女の受けたダメージは、こちらへと返されている。⋯⋯いや、なかなか面白いギフトじゃないか。フライ君?」


 そして、シャーロットは最後にフライの方へと視線を向ける。いつの間にか歌うのを止めていた彼女に対し、シャーロットは静かにこう告げた。


「⋯⋯さあ、これが名探偵、シャーロット・ノックスの推理だ。出来れば、この推理が合っているかどうか、君の口から教えてくれないかね?」


 すると、フライはしばらくの間無表情のまま固まり、一歩も動く様子を見せなかった。しかし、突然天井から地面へと降り立つと、その首をカクンと縦に動かし、ギギギ⋯⋯という音が聞こえてくるような鈍い動きで、徐々に口を三日月型に変形させていき、限界まで口角を上げたところで、『あはっ☆』と笑い声を上げた。

 そして、口を開いたフライの口から出たのは、今までとは全く別人のような乱暴な声だった。


『ピンポンピンポーン!! だいせいかーい。オレ(・・)のギフトは、「あらゆるモノをひっくり返す」能力さー!! だが、ギフトが分かったくらいで調子に乗るんじゃねえぞ!! オレが凄いのは⋯⋯こっからだからなぁぁぁ!!!』


 ヒャッハー!! と叫び声を上げるフライ。その瞳には、先程までとは違い激しい炎のような光が宿っていた。

 シャーロットの頭の中に、『二重人格』という言葉が浮かぶ。どうやら、フライはあのふわふわした人格と、この凶暴な人格の二人の人格を持っているようだ。


「⋯⋯母さん、気をつけるのだよ。どうやら、ここからが本番のようだ。」


「言われなくても分かってるわよ!!」


 二人目の人格を露わにしたフライ。改めて、シャーロットとラモーネの戦いが始まる。

次回、『どんでん返し』。

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