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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
75/110

「スクラップにしてあげる」

シャルン「おい、なんやねんこれ。エイミーの時とはえらい違いやないか! ⋯⋯許すけど!! しかし、タイトル詐欺したことは許さん。」

《クリスタ&クロ&ムイムイside》


 クリスタが膝の上に広げた本のページを、まるでピアノを奏でるかのような優雅な指使いで捲っていく。ぐっと上体をかがませ、その反動で車椅子を前へと進ませるクリスタ。目指す先は勿論、ゼロイチだ。

 クリスタと対峙する形となったゼロイチは、シャツの袖をゆらゆらと揺らし、あくまでも自然体を崩すことはない。


「何です? 馬鹿正直に突撃っすか? 自分、アンタはもう少し頭良いと思ってたんすけどねぇ⋯⋯。」


 そう言って、これ見よがしにため息をつくゼロイチ。しかし、クリスタは構うことなく突進する。そんなクリスタに対し、ゼロイチはまたあの魔法の呪文を唱えた。


「じゃ、容赦なく⋯⋯『性能変化(ステータスチェンジ)』。今度は、幼児化で。」


 その言葉と同時に、クリスタの身体は車椅子の上でみるみる縮み始める。まず、クリスタが膝の上に置いていた本の山が地面に落下し、光の粒となってクリスタの体内に消える。そして、それに続くように、クリスタの纏っていたドレスが、地面に落下する。


「⋯⋯かかりましたね、ゼロイチ。わたしは、このときをまっていたんでしゅ! あなたの昔の行いから、へんこうするしゅてーたしゅ(ステータス)に順序があることはよみとりました。だから、わたしはあえてあなたへととつげきしゅることにしたんでしゅ。わたしのこのあしを、いちじてきにもとにもどしゅために!!」


 車椅子から真っ裸(・・・)の状態で滑り出たクリスタは、その脇に下着を抱え、クロのもとへと駆け戻った。そして、主人の居なくなった車椅子は、そのままのスピードで走り続け、「ちょ、それは予想外⋯⋯。」などと慌てるゼロイチに激突し、小さくないダメージを与えることに成功する。計算高いようで、意外に爪の甘いゼロイチである。


 一方、体つきがすっかり男らしくなってしまったクロのもとに駆け戻ったクリスタであったが、何故かクロは自らの股間を押さえた状態で座り込み、クリスタから目を合わせようとしない。


「? どうしたのでしゅかクロ。⋯⋯というか、すっかりかっこよくなりましたね。わたし、びっくりでしゅ。」


 そう、クリスタが思わず感嘆の声を漏らしてしまうくらい、今のクロは⋯⋯誰もが認める美丈夫であった。


 女らしい丸みはすっかり消え去り、筋肉で程よく引き締まった肢体。切れ長の黒い瞳に、周りの光を全て吸い込みそうなくらいに怪しい魅力を放つ黒髪。ちらりと見える腹は、腹筋が六つに割れているのが分かる。元々背丈はそこそこあったので、男になっても全く違和感がない。むしろ、男が似合いすぎて怖いくらいだ。


 驚きつつも無邪気にクロの変化を褒めるクリスタ。先程ゼロイチに感じた怒りを一瞬忘れてしまったくらいだ。

 

 しかし、考えてもみてほしい。今、クリスタはいくら幼くなって、胸などはほとんどないとはいえ、真っ裸なのである。健全な男子が、真っ裸の女子を見たらどうなってしまうであろうか? しかも、相手は元々から好意を抱いている相手である。その答えは当然⋯⋯。


「お、お嬢様⋯⋯。せ、せめて服を着てください! そうじゃないと、その、何というか股間に生えたモノがむくむくと⋯⋯。」


⋯⋯まあ、つまりはそういうことである。


 テノールボイスのクロに指摘され、ようやくクロがどのような状態なのかを悟ったクリスタ。一瞬で顔を真っ赤に染め、慌てて胸と股間を手で隠す。


「く、クロのえっち!!」


 思わず口からそんな台詞が出てしまった。だが、よくよく考えれば悪いのはクリスタである。幼女の姿になったことで、いろいろと油断していたのだ。冷静になったクリスタはそのことに気づき、地面に頭をすりつけ落ち込むクロを必死に慰めようとする。


「⋯⋯いや~、我ながら良い仕事しましたわ、これ。幼女と美少年!! これ、最高の組み合わせじゃないっすか!? あ、鼻血出そう。」


 そんな二人の様子を、少し離れた場所から、呑気にそんなことを言いつつ眺めるゼロイチ。しかし、この時ゼロイチは完全に忘れていたのだ。この場に居る、もう一人の幼女の存在を。


「うう⋯⋯なんかからだがおもいよぅ。おなかとか足がプニプニでうごきにくいぃ⋯⋯。」


 そう、ゼロイチが最初に『性能変化』を使い、体重を増加させて動けなくしたムイムイである。ムイムイはゼロイチのギフトの影響を受け、すっかりその身体に柔らかいプニプニの脂肪をつけてしまい、ボールのようなまん丸体型になってしまっていた。おまけに、纏っていた猫の着ぐるみも破け青白い肌が見えてしまっている。そのため、ゼロイチも脅威にはならないと判断し、すっかり存在を無視していたのだが、ここでムイムイは予想外の行動に出た。


「そうだ!! このプニプニ、じゃまだから切りおとし(・・・・・)ちゃえ!!」 


 そう言って、ムイムイは自分のお腹にハサミを突き立てる。呆気にとられ、目を丸くさせるゼロイチの前で、ムイムイは時々「むいっ! むいっ!!」というかけ声と共に、なんとそのお腹にあった脂肪を全て切り落としてしまった。


「はぁ!?」


 思わず声を上げるゼロイチ。しかし、クリスタ達は別に何ともない様子でムイムイの『自分解体ショー』を見つめている。そんな二人の反応に、ますます混乱するゼロイチ。


「ちょ、ちょっと大丈夫なのあの子!? 頭おかしいんじゃないすか? アンタ達、仲間なら早く止めてやろうよ!?」


 しかし、ゼロイチがそう言ってもクリスタとクロはただ苦笑するだけだった。クリスタが、たどたどしい口調でこうゼロイチに告げる。


「べつに、たすけるひつようはありませんよ。わたしたちは、ムイムイがだいじょうぶなことをしっているので。⋯⋯それよりも、やっぱりあなたのそのでぇた、あまりに簡素すぎでしゅね。ギフトのなまえだけじゃ、ムイムイの能力のおそろしさは、はかれませんよ?」


 そして、そのムイムイはというと、すっかり腹の脂肪を切り落とし、今度は手足の脂肪を切り落としにかかっていた。だが、少し切りすぎてしまったのか、ムイムイの内臓が切り口からひょっこり顔を出しており、うっかりそれを見てしまったゼロイチは吐き気を感じ「うっ⋯⋯!」と口元を抑える。


「さいごにかおのプニプニをおとして⋯⋯。よし!! これですっきり!! あとは、切りおとした皮をぬいつけて⋯⋯。」


 ムイムイは、切り落とした皮膚の表面だけをはぎ取り、切り取った部分に縫い付ける。すると、そこにはすっかり元通りの体型に戻ったムイムイの姿が。

 

「な、何なんすかこいつ⋯⋯!! ほんと何なんすか!?」


 すっかりムイムイに恐怖してしまったゼロイチ。そんな彼女に対し、ムイムイは無邪気ににっこりと微笑みかける。


「さあ、おねえちゃん。ムイムイのおともだちに⋯⋯。あ、やっぱりだめ。おねえちゃんはクロおねえちゃんとクリスタおねえちゃんをこまらせたわるいひとだから⋯⋯。」


 ふっと笑みを消し、真顔になるムイムイ。そして、ムイムイは囁くような声で、こう言った。


「⋯⋯スクラップにしてあげる!!」

さて、ここでムイムイのビジュアルが気になった方は作者のツイッターを見てみましょう。何と、素敵な立ち絵をプレゼントしてもらいました!! いえーい!!


次回、タイトル未定。ゼロイチ戦、決着です。

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