「この世は全て0か1」
オクター「いや、このギフト思いついた時から作者はこの展開を考えていたらしいですよ? 正直かなり変態だと思います。あ、鮮明な描写は不味いかなと思って一応セーブした結果、この形になったみたいです。」
《クリスタ&クロ&ムイムイside》
ゼロイチが自分のギフトを知っていたことに一瞬動揺したクリスタであったが、すぐ気を取り直していつものように本を作成する。その間、クロはクリスタの隣で控えていたが、まだクリスタとの共闘に慣れていないムイムイはゼロイチへと駆けだしてしまった。
「あはは!! おねえちゃん、あーそぼ♪」
ムイムイはそのつぶらな瞳をギラギラと怪しく光らせて大きなハサミを全力で振りかぶる。しかし、そのハサミがゼロイチに届く前に、ゼロイチがぼそっと一言こう呟く
「⋯⋯『性能変化』。体重増加。」
その瞬間、突然ムイムイが「むいっ!?」と悲鳴を上げて地面にぺたんと崩れる。それとほぼ同じタイミングでゼロイチのギフトを読み取ったクリスタが表情を引きつらせた。
「何ですか、貴女のこのギフトは⋯⋯。凶悪にもほどがある⋯⋯!」
「いったいどういうことですかお嬢様!? ムイムイは大丈夫なのですか!?」
そう唸るようにして言ったクリスタに、クロが不安げな表情でそう問いかける。だが、その問いかけにはクリスタではなくゼロイチが直接答えた。
「あ、自分のギフトのこと知りたいんすか? それなら多分⋯⋯直接体験した方が分かりやすいかと。」
そして、ゼロイチはシャツの袖で隠れた手でくいっと眼鏡を押し上げる。クリスタが、慌てて「やめなさい!!」と叫ぶが、既に遅く、ゼロイチは再びこう呟いた。
「では、もう一度、『性能変化』。じゃ、今度は⋯⋯性転換で。」
ゼロイチのその言葉に、恐怖したのはゼロイチのギフトのことを知っているクリスタであった。クリスタが作成したゼロイチの本。そこに書かれていたギフトは、『データを分析、変更できる』というモノ。名前だけではどんな効果があるか一見はっきりとしないこのギフト、しかし詳細までばっちり記されたクリスタの本にはその恐ろしさが全て記されていた。
まず、『データを分析、変更できる』ギフトの、『データを分析』の部分。この点に関しては、クリスタのギフトとほぼ同じで、視認した相手の情報を得ることが出来るというものだ。ただし、クリスタが本を作成し、それを読むというワンクッションいるのに対し、ゼロイチは直接脳内にデータが送られるので速度は上である一方、その分得られる情報は、名前や身長・体重、年齢に性別、そして、もし持っていればギフト名だけであり、簡易的な情報しか得られない点に違いがある。
そして、それよりも特筆すべきなのは、もう一つの『データを変更できる』の部分だ。なんと、ゼロイチは、得たデータの中から、一つだけを自由に変更することが可能なのだ。例えば、体重を増やしたり、身長を縮めたりなど⋯⋯。そして、クリスタのギフトではこれを行うことはできない。これが、クリスタとゼロイチのギフトの最も大きな違い。
先程ゼロイチがムイムイに対し呟いたのは、『体重増加』だった。ゼロイチのギフトによって、自分の体重のデータを変更させられてしまったムイムイは、増えた体重を支えきれずに地面に崩れてしまったのだろう。
そして⋯⋯ゼロイチは、クロにもその能力を発動させた。呟いた言葉は、『性転換』。すなわち⋯⋯。
「ううっ!? か、身体が、急に熱く⋯⋯。」
クリスタの目の前で、クロがうめき声を上げ始める。そして、その変化は徐々に、クロの身体に起こり始めていた。
「ああ!! 胸が、胸が⋯⋯!! だ、だめです、お嬢様、こ、こっちを見ないでぇ⋯⋯。」
クロの黒い服の上からでもわかる程よい大きさの胸が、みるみるうちにしぼんでいく。空間のできた胸の部分を隠すようにして抱きかかえるクロ。その顔は、主であるクリスタに恥ずかしい姿を見られた羞恥で赤く染まっていた。思わず地面に膝をつくクロであったが、その瞬間、今度は胸を隠していた手をばっと慌てて自分の股間へと持って行く。
「う、嘘⋯⋯。や、やだ、こんなことって⋯⋯。で、でもやっぱり、生えてる⋯⋯!?」
クロのその反応を見て、ゼロイチは「むっほー!!」と一人歓声を上げた。
「やっぱりいいねいいね!! いつ見ても一番興奮するのは性転換の時の反応っすね!! 本当は男が女になる方が好みなんすけど⋯⋯。まあ、それは仕方ないっすね。」
「⋯⋯貴女、何が目的でこんなひどいことをするのですか。私は本なら基本なんでも好んで読むタイプですが、官能小説は好みではないのですよ!!」
隣で自分の身体の変化に泣き出してしまったクロと、ボールのようにまん丸に膨らんでしまったムイムイの姿を見て、クリスタは激高し、ゼロイチに向って叫ぶ。
「え? 何を怒ることがあるんすか? 所詮この世は全て0と1。人間だってデータの集まりに過ぎない存在。そのデータを、自分は少し変えただけ。何も悪いことはしていないっすよ。むしろ、ニッチな層にとっては嬉しいことだと思うんすけどね。」
ゼロイチは、あくまでも平然とした様子でそう答える。そんなゼロイチに対し、クリスタはさらに声を荒げた。
「人間は、決してデータの集まりなんかじゃありません!! 単純なデータではわからないアナログな部分、そこに人間の本質はある!!」
「へえ? じゃあ、自分にそれを証明してみせてくださいよ。このアナログ人間。」
互いの主張をぶつけ、にらみ合うクリスタとゼロイチ。またしてもくいっと眼鏡を持ち上げたゼロイチに対して、クリスタはその膝の上に数冊の本を広げたのであった。
次回、『デジタルVSアナログ』。
果たして、クロとムイムイの身体は元に戻るのか⋯⋯!?




