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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
1st stage 戦場に咲く友情の花
7/110

五日目

キスカ「五日目のあらすじは!」

ソニア「フローラとペトラのいちゃいちゃ特訓と!」

キスカ「アン&ララVSルージュです!お楽しみに!」

ソニア「ちょ、お楽しみに!は私のセリフだろう!セリフを横取りするとは、やはり貴様悪!」

《フローラ&ペトラside》


 フローラとペトラは、先日の戦いの反省もかねて、今日も特訓を行っていた。しかし、先日とは違い、今日の特訓は、フローラの能力の活用方法に重きを置いていた。


「恐らく、フローラさんがあの竹に身体を貫かれるどころか傷一つなく上空へ打ち上げられたのは、フローラさんの能力が関係していると思うんですの。」


「やっぱりそう思いますか?」


 フローラ自身も、あの時は疑問に思わなかったが、後から考えるとあの現象はおかしいということに気付いていた。地面に落下して確認したあの竹の先は、槍のように鋭く尖っていたし、何よりあの勢いで突き上げられフローラの身体に傷一つついていないことが異常だったのだ。

 フローラの能力・・それは、地面から少しだけ浮くことができるというもの。その能力で何故あのような現象が起こったのか、ペトラは既にある一つの仮説を立てていた。


「それでは、ペトラさん。私が今から貴女に目隠しをします。貴女は目隠しをした状態で、私の言うことに従ってくださりますか?」


 ペトラのその指示に、フローラは素直に従った。この数日間で、彼女は言葉こそ時々きついものはあるものの、いざという時は平民である自分さえも身を挺して庇ってくれるような人物であることを、フローラは昨日の戦いからも学んでいた。


「それでは、フローラさん、全速力で走ってくださいまし!」


 ペトラのその指示に、何故能力の性能を確かめるのに走る必要があるのかという疑問は持ったものの、ペトラを信じ全速力で走り出した。目隠しをしたまま全速力で走るという行為はなかなかに怖いものがある。それでも、ペトラに言われるままひたすら足を動かしていると、「おおっ!?」というペトラの驚いたような声が聞こえ、それから一拍遅れて、「もう目隠しを外していいですわよ。」というペトラの指示が聞こえ、フローラは目隠しを外した。

 目隠しを外した瞬間、フローラが見たのはどんよりと曇った空。なぜ自分は真っ直ぐ走っていたはずなのに、空を見上げているのか?というフローラの疑問は、足元を見て解決することとなった。

 フローラの足元にあるのは、やたらゴツゴツした岩肌。それが、先ほど走り出す前目にしていた崖だと気付いた時、フローラはまさかと思い後ろを振り返った。すると、案の定、眼下にはこちらを見上げるペトラの姿が。

 自分が今、崖から少し浮いた状態で崖を走っている。そのことを理解した瞬間、フローラの身体は突然落下を始めた。


「うえあいぉぉぉ!?」


 自分が高いところから落下しても大丈夫なことを忘れ、意味不明な叫び声をあげるフローラ。そのフローラを、ペトラが受け止めようとする。が、ペトラの両腕にフローラの身体が収まる寸前、その身体が少しだけ浮いたことで微妙にタイミングをずらされたペトラは、フローラに押し潰され、「むぎゅっ!?」という呻き声をあげることとなった。


「ぺ、ペトラさん、大丈夫ですか?」


「わ、私のことは問題ありませんわ。それよりも、これでようやくフローラさんの能力について分かりましたわ!」


 ペトラは、フローラに潰されたことを気にする様子もなく、素早く立ち上がるとドレスについた汚れを払い、どこか得意気に説明し始めた。


「おそらく、フローラさんの能力は、正確には『地面から少しだけ浮く能力』ではなく、『地面と認識したものから少しだけ浮く能力』なんですわ。そして、地面と認識さえしていれば、崖を地面と見立ててその上を少し浮きながら走ることもできる・・その

証拠に、目隠しをした状態では問題なく崖を登れていたのに、目隠しを外した瞬間落下してましたし。先日の件も、地面から突然生えた竹をフローラさんが地面と認識していたため、竹から浮く形で身体が持ち上げられたんだと思いますわ。」


 なるほど、確かにそう考えると色々と説明がつく気がした。フローラは、自分が十六年間気付かなかった能力の応用法に、ペトラがこの数日間で気付いたことに感嘆の念を抱いた。それと同時に、応用法は分かったものの、やはりそこまで役に立ちそうにないなと落胆する。


「それでも、やっぱり浮くだけの能力なんてあまり使い道ありませんよね・・。地面と認識したらダメならいつも目隠ししないといけないわけですし。」


 しかし、ペトラはそんなフローラに興奮を隠しきれない様子で詰め寄ってきた。


「何を言っているのですかフローラさん!地面と認識したものから浮くことができるなら、たとえ貴女が目隠ししなくとも、思い込み次第でどんな足場にも重力を無視して立つことができるんですわよ!?つまり、重力を無視した三次元的な動きができるというわけなのです!なんとも素晴らしいことじゃありませんの!」


 フローラは、自分のことでもないのに、どこか嬉しそうに鼻息を荒くするペトラのことを、素直に嬉しく思った。それと同時に、少しだけ不満に思ったこともある。


「・・ペトラさん、そういえば、昨日は私のことフローラって呼び捨てで呼んでくれたのに、今日は全然呼んでくれませんね。」


「ふぇ!?な、なんのことですの?」


 慌ててしらを切ろうとするペトラに対して、フローラはしかしそれを許さなかった。


「忘れたとは言わせないですよ?ほら、私とペトラさんでパトリシアさんを倒した後のこと・・」



 

 ペトラを投げたフローラが地上に降りた時、ペトラは既に髪を巨大なドリルからいつものツインドリルに戻していた。

 そして、驚いたことに、胸を貫かれているにも関わらず、パトリシアはまだ生きていた。


「・・驚きました。まさか、私が貴女たちに倒されることとなろうとは。」

 

 息も絶え絶えな様子で、そう独白するパトリシアに、ペトラはこう答えた。


「ふん。人を見かけで判断するからそんなことになるんですわ。」


「・・貴女にそんなことを言われるとは思っていませんでした。・・ペトラさん、私を倒した貴女にお願いがあります。最後は、貴女のその手で、私にとどめをさしてくれませんか?」


「・・分かりましたわ。貴女に敬意を払って、その役目、私が引き受けましょう。」


 ペトラはそう言うと、腰からナイフを取りだし、パトリシアの胸元に突き刺した。すると、その瞬間、パトリシアの身体は無数の種となり、天高く飛び立っていった。


「ゲホッ!ゴホッ!死んで種になるんなら先に言ってくださいまし!少し飲み込んでしまったじゃありませんの!」


 と、そこで、ペトラは後ろにいるフローラを振り返り、その手をとって満面の笑みでこう言った。


フローラ(・・・・)!さっきのは本当にナイスでしたわ!お陰様で助かりました!」


 フローラは、ペトラが見せた満面の笑みがあまりに可愛らしかったことに驚き、それと同時に、自分の名前を初めて呼び捨てで呼んでくれたことをとても嬉しく感じた。




「・・あの時、呼び捨てで名前呼ばれて、ついきゅんときちゃったんですよ。本当に嬉しかったんで、また呼び捨てにしてください。」


「あ、あの時は勢いでつい・・というか、平民の貴女がこの私に指図なさらないでくださる!?」


 最初はただムカつくだけだったこのペトラの平民を見下すような口調も、今となってはただの照れ隠しにしか見えない。実際、ペトラの耳は真っ赤になっていた。

 フローラは、そんなペトラを微笑ましく思いつつも、呼び捨ては欲しいので、さらに畳み掛けることにした。


「あ、もしかして、貴族の令嬢であるペトラ様ともあろうお方が、平民を呼び捨てにすることもできないんですか?」


「・・貴女、最初会った時と性格変わっていませんか?随分図々しくなっていません?」


 ペトラは顔をひきつらせてそう言うが、別にフローラの性格が変わったわけではない。ただ、ペトラに対するフローラの印象が、嫌な奴から可愛くて頼りがいのあるお嬢様に変わっただけだ。

・・まあ、ペトラと出会ったお陰で、以前よりも自信がついたのも確かだが。


「それで、どうなんですか?呼び捨てで呼んでくれるんですか?呼んでくれないんですか?」


「ああもう!分かりましたわ!ただ、一つだけ条件がありますわ!」


 フローラの押しに負け、ついにペトラが折れた。しかし、呼び捨てには条件があるという。

 その条件が何なのかを待つフローラに対し、ペトラは顔を真っ赤にしながらこう言った。


「わ、私のことも呼び捨てで呼んでくださいまし!それが条件ですわ!」


 ペトラが提示したその条件に、フローラは思わずこう反応した。


「ペトラ・・貴女、可愛すぎですか?」


「もう!フローラ!私のことをからかわないでくださいまし!」


 その後再び行われた特訓は、いつもよりも激しかったという。



《アン&ララside》


「うーん・・ねえ、アン。おかしいと思わない?」


「なんのことデスか?博士。」


 アンは、首をかしげて考え事をする博士今日もファッキンキュートなどと思いながらも、返事だけはちゃんと返した。


「昨日のことだよ。これまではずっと脱落者のアナウンスがその日の終わりにあったのに、なんで昨日はなかったのかな?」


 ララの言う通り、これまではずっとその日の終わりに脱落者が発表されていたのにも関わらず、昨日はそれがなかった。しかし、アンは気楽な調子でこう答えた。


「昨日は単純に誰も脱落しなかったということなのではないデスか?それならアナウンスがないのも当然デスし。」


 アンのその返答にも、ララはどこか不満な様子だ。


「う~ん。それでもおかしいよ。もし脱落者がいなかったとしたら、一日目のピティーさんの時みたいに神がお仕置きをするはずでしょ?でもそれさえ昨日はなかったもん。」


「考えすぎではないデスか?きっと、神がアナウンスをし忘れていたんデスよ。分からないことを考えるよりは、今日をどう生き延びるか考える方がよっぽど有意義デス。・・貴女もそう思いますよね?」


 アンは、そう言って後ろを振り返った。すると、アンの視線の先から、パチパチと手を叩きながら海賊帽を被った少女が姿を表す。もちろん、ルージュだ。


「いやー、お前、なかなか良いこと言うじゃねえか。いつから俺がお前らつけていることに気が付いていた?」


「少し前からデスね。私のセンサーにビンビン反応来てたデスよ。」


 アンは、視線をルージュに向けつつ、自然にララを背中に庇う。そんなアンに対して、ルージュはサーベルを抜き、不敵な笑みを浮かべた。


「それじゃあ早速やり合おうぜ?何となくお前からは強そうな気配感じてうずうずしてるんだよ!」


 そう言うなり、ルージュは早速アンに向かって飛びかかっていった。アンの放つ銃弾をかわし、一気にその懐に入ると、胴体にサーベルの一撃をお見舞いする。しかし、その攻撃は、人体ではありえない感触と共に弾き返されてしまった。


「はあ!?お前の身体どうなってるんだよ!?」


「私の身体は鉄で、血はオイルでできてるデス。ファッキンハートで貴女にアンラッキーを届けるロボットメイド、その力思いしるがいいデス!」


 アンはそう言って、ルージュに向かって両手の銃を乱射するのであった。




《ルージュside》


 ロボットとか、ふざけるのも大概にしろと言いたくなる。先ほどから、何度か近付いて攻撃を加えても弾かれ、その度に銃の乱射が襲い掛かり、それを慌てて回避するという行為を繰り返している。

 このままじゃらちが明かない。何か打開策はないかと考えようとした時、これまであのロボットの後ろに隠れていた幼女が動いた。


「ララもアンの助太刀をするよー!そーれ!」


 幼女は、こちらに向かって紙飛行機のようなものを飛ばしてきた。それが何かは分からなかったが、おそらくあの幼女の能力に関係しているものだろうと判断し、銃で撃ち落とす。しかし、銃弾が紙飛行機に当たった瞬間、その衝撃で広がった紙飛行機から、なぜか大量の石が落下してきた。


「くそっ!これが狙いかよ!」


 石が落下してくる間にも、アンはこちらに銃口を向けている。ルージュは、石をかわすのは諦め、アンの攻撃だけを対処することにした。


「くっ!いってえじゃねえかよこの糞ったれ!」


 そこまでの高さではないとは言え、やはり落下してくる石はそれなりのダメージをルージュに与えた。

 またあの能力を使われてはうっとおしい。そう判断したルージュはキスカから奪った『ギフト』を賭け金にしてララのギフトを奪おうとした。しかし、


「くそ、外れか!ついてねえ!」


 表に賭け投げたコインは裏側を向き、ルージュはキスカの『ギフト』を失ってしまった。やっぱりリスクの低い賭けは当たりにくいなと思いながら、打開策を考える。が、何も出てこない。

 なので、何も考えず正面から突っ込むことにした。


「やっぱり俺には頭を使うより何も考えず突っ込む方が似合うぜ!」


 ルージュは、心臓など致命傷になる箇所に飛んできた銃弾だけを防ぎ、あとは無視して強引にアンに突っ込んでいった。その無謀とも言える特攻に、アンは思わず動揺してしまう。動揺すれば必ず隙が生じる。その隙をルージュが見逃すはずもなく、ルージュはまず、先端にナイフをつけた足を思いっきり振り上げた。アンは辛うじてそれをかわしたが、メイド服のスカートが切り裂かれ、生足を見せることになる。ルージュは攻撃の手を止めることなく、素早く追撃する。アンは、距離を詰めてきたルージュに対し、腕を剣に変形させ降り下ろした。

 そのアンの攻撃を、ルージュは防ぐことなくさらに距離を詰めた。アンの腕がルージュの右腕を切り落とす。しかし、その時には既に銃を持ったルージュの左腕がアンの額に突きつけられていた。


「ゼロ距離なら、流石にダメージ喰らうだろ!」


 ルージュは、ゼロ距離から銃弾をぶっぱなす。そして、追撃を避け一旦後方に下がった。アンに切り落とされた右腕にバンダナを縛り付け、素早く止血する。その間も、視線はアンにずっと向けていた。


「アン、大丈夫!?」


「ダイジョウブデス。ハカセ。タダ、トウブニダメージヲウケタセイデセリフガキキトリニククナッテシマイマシタ。」


 ルージュが右腕を犠牲にしてまで行った決死の攻撃。しかし、その結果はアンに少ししかダメージを与えることができなかった。思わず舌打ちが漏れる。


「くそっ!化け物かよてめえは。」


「化け物デハアリマセン。ロボットデス。そして・・コレハサッキノオカエシデス!」


 ダメージを与えたはずの頭部さえ、ララの修繕で回復を始めたアンは、ここでルージュにさらに絶望を突きつけた。

 ルージュの腕が変形し、表れたのは・・巨大なミサイル。そのミサイルは、ルージュ目掛け発射され、ルージュはミサイルの爆発をもろに受け止めることとなった。


 ミサイルの爆発により辺り一面が更地と化し、いつの間にか降り始めた雨が地面を濡らす中、しかしながらそこにルージュは立っていた。


「ちょ、何でお前まだ生きているのデスか?ミサイル思いっきり当たりましたよね!?」


 ルージュはもちろんミサイルの爆発により倒れていると思っていたアンは、驚きの声をあげる。そんなアンに、ルージュはこう答えた。


「・・キャプテンが子分より先に死ぬわけにはいかねえからな。気合いで耐えてみせたぜ。」


「さっきお前が私に化け物って言ったの、そっくりそのままお返しするデス!」


 しかし、ルージュはなんとかミサイルの爆撃に耐えたとは言え、そのダメージは大きく、満足に戦える状態ではなかった。

 そこで、ルージュは震える手でコインを取りだし、それを爪先で弾く。


「・・やっぱりダメージは大きいみたいデスね!私が引導を渡してあげるデス!」


 ルージュの様子を見て動ける状態ではないと判断したアンは、とどめを指すため両腕を銃に変形させた。しかし、その銃口がルージュに向けられるより先に、ルージュの力強い声が響く。


「それはこっちのセリフだぜ、ロボットメイド。」


 ルージュの手の甲には、先ほど弾いたコインが既に置かれていた。コインは、裏側を示している。そして、ルージュが宣言したのも、またコインの裏側であった。

 ルージュは、そのコインをアンに見せ、お得意の笑みを浮かべるとこう言った。


「これでチェックメイトだ。・・この賭け、どうやら俺の勝ちのようだぜ?」


 次の瞬間、目映い光と共に、雷鳴がアンの身体を貫いていった。




《アン&ララside》


「アン!アン!!しっかりして、アン!大丈夫だから!今私が修理してあげるからね!」


 混乱する思考回路の中、泣きながら自分の名前を呼ぶ博士の声が聞こえてきた。


-ああ、博士。私の愛しい博士。どうか泣かないでください。


 身体が熱い。あまりの高温に、鉄の身体はあちこち既に溶け始めている。博士の声に答えようにも、もう言葉が出てこない。

 アンは、初めて自分が声を出した時、ララが物凄く喜んだことを思い出していた。これでいつでもおしゃべりできるね!と言った時の笑顔がとても眩しかった。アンがおかしな口調で話すと、それを面白いと言って笑ってくれた。


-博士、ごめんなさい。もう、私は貴女とおしゃべりすることができません。冗談を言って貴女を笑わせることもできません。


 ララは、泣きながら溶けていくアンの身体を必死でかき集めようとしていた。ララの小さな手が、溶けた鉄で焼けただれていく。


-博士、私はもう死んでしまいます。博士を悲しませるようなこんな出来損ないのポンコツロボットのことは忘れてください。博士なら、私よりも素晴らしいロボットをたくさん作れるはずです。


 だから!


 アンは、まだ溶け出していない両手で、ララの身体を無理矢理持ち上げた。そして、最後の力を振り絞り、腕をララごと射出させる。


「そんな!やめて、アン!私は貴女を見捨てたりしない!私には、貴女が必要なの!アン!アーン!!!」


 ララの悲痛な叫びは、次第に遠ざかっていく。無事目的を果たすことができて、アンは満足だった。


-だから、博士はどうか、生きてください。


 もう視界もろくに働いていない。手足も動かすことができない。冷たい雨が、溶けた鉄を冷やし歪な塊を作り出していく。そんな中、最後に残った心は、産まれて初めて後悔というものを感じていた。


-博士。貴女が私にくれた心は、我が儘で困ります。機械がそんなことを望んではいけないのに、もう少し、貴女のそばにいたかったと思ってしまった・・。


 アンの瞳からオイルの涙が溢れ、アンの意識はそこでシャットダウンした。



《ルージュside》


 ララという幼女の方は逃がしてしまった。しかし、そちらを追う気力は残っていなかった。それに、もし体力が残っていたとしても、自分が死力を尽くして戦ったあのロボットが最後まで助けようとしていた彼女を殺す気にはなれなかっただろう。

 ルージュは、ゆっくりと、アンだったモノの元へと近づいていった。ここまで全力を尽くして戦った相手はルージュとしても初めてだ。ちゃんと弔いくらいはしてやろうと思った。

 ようやくアンのもとへたどり着いたその時、どこからか時計の針が進むような音が聞こえてきた。

 耳を済ましてみると、その音はアンの身体の下から聞こえてきていた。ルージュは、その音の正体を知るため、左腕でアンの身体を持ち上げた。


 そこには、残り時間数秒を示した時限爆弾らしきモノと、その表面に、『ファッキン海賊へのプレゼントデス。』というメッセージが添えられていた。


「糞ったれ。」


 ルージュがそう呟いたのと同時に、爆音がルージュを包み込んだのだった。



▼▼▼▼▼



『五日目の脱落者は、アンとルージュでーす!実力者二人が相討ちした形になっちゃったね~。残念残念♪それでは、残りも少なくなってきたけれど、みんな頑張ってね~。』

戦闘用メイド型ロボットNo.13(アン)

身体能力(機械補助つき) 5

知力 2

社会性 2

運 1

能力の強さ 2

ギフトの能力・・身体を変形させる。(武器ならなんでも可。)


キャプテン・ルージュ

身体能力 5 

知力 3

社会性 4

運 4

能力の強さ 5

ギフトの能力・・一か八かの賭けができる。(賭け金には、手に入れたいものと同様の価値のものを設定する必要がある。また、ルージュはコイントスしかしなかったが、賭けならなんでもいい。)

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