守護者との邂逅
オクター「強キャラ感を漂わせる守護者たち!! ああ、皆さんは無事彼女たちを倒せるのでしょうか?」
《シャーロット&ラモーネside》
シャーロットとラモーネの二人が飛ばされたのは、やたらメルヘンチックな小物が乱立する部屋であった。そんな部屋を一瞥し、シャーロットは露骨に嫌そうな顔をする。
「なんだね、この気持ち悪い部屋は。そして、何で母さんと二人っきりなのかね? 気持ち悪さが倍増するではないか。」
「え、ちょ、それ本気で言ってる? もしそうだったらお母さん地味にショックだよ?」
自分でガーン! という効果音を口にして、シクシクと泣き真似するラモーネ。そんなラモーネの姿に、シャーロットはあ⋯⋯とため息をつく。
「⋯⋯子供みたいな真似はやめてくれないかね?」
「だって今の私子供だもん!!」
そう言ってサムズアップするラモーネ。シャーロットはもうラモーネを相手にしないことを決め、その小さな顎に手を当てて今の状況を思案することにした。
「さて、他のメンバーはどこにいるか⋯⋯。最悪なパターンだと、他のメンバーは既に死んでしまい、我々二人だけが残されたという可能性もある。が、これはあり得ないだろう。フローラがこのシャーロット・ノックスより先に死ぬはずがない。それならば、考えられる可能性として最もあり得るのは、他のメンバーも我々と同じように、どこか別の場所へと飛ばされていることだな。」
「アンタのフローラに対する信頼の厚さって結構凄いよね。その信頼の1%でいいからお母さんにも分けてくれない?」
自分の娘に対し上目遣いをする母親の図がここにあった。手を組んでお願いポーズをするラモーネに、シャーロットはしかし全く関係ないことを尋ねる。
「⋯⋯ところで母さん、目玉ロキはどうしたのだ? 先程から姿を見かけないのだが。」
「アンタ、少しは構いなさい? ガチ泣きするわよ? 三十路を越えたロリ母さんが本気で泣くわよ?⋯⋯でも、確かにロキの姿見ないわね。あいつ、勝手にどこ行きやがったのやら⋯⋯。」
ラモーネは、そう呟き目の上に手で傘を作り、辺りをキョロキョロと見渡す。そんなラモーネの目が、あるモノを捉えてその動きを止めた。ラモーネは、ちょいちょいと手を動かし、シャーロットにソレがある方へと注意を向けさせる。そして、ラモーネ同様にソレを認識したシャーロットは、この部屋に飛ばされた時からあった眉間の皺をさらに深くしたのだった。
二人の視線が向く先、そこにあるのは、イチゴやクリームのオブジェで、ケーキ風に飾られたキッチン。そして、そのキッチンでは、コック帽を被った少女が一人、鼻歌交じりにクリームを泡立てていた。
「ふんふんふふーん♪ おっひさっしぶっりの~♪ お客様♪ おっいしいケーキでっ、もってなっすよー♪」
コック帽を被った少女は、とうっ!! というかけ声と共に、キッチンを飛び越え、シャーロットたちの目の前に降り立つ。着地の拍子に、手に持っていたクリームが彼女の服に飛び散り、赤い染みを作る。⋯⋯どうやら、あのクリームはイチゴ味のようだ。
「私の名前はフライ!! この塔の守護者の一人だよ♪ 二人ともとーっても美味しそう♡ 私が、おいししくスウィーティーに料理してあげる!!」
フライは、そう言うと、背中の巨大なフライ返しをぶんと一振りし、にこっとシャーロット達にほほえみかける。だが、その瞳にはハイライトがなく、身体からは殺気を迸らせている。そんなフライの登場に、シャーロットは腰のピストルを、ラモーネは自らの拳を構え、それぞれ戦闘態勢に入る。
「やれやれ。パティシエールはどいつもこいつも変な奴ばかりなのかね?」
「流石に私の同僚にもここまでヤバそうな奴はいなかったかな!!」
シャーロットの銃声を合図に、戦いの火ぶたが切って落とされた。
《クリスタ&クロ&ムイムイside》
その頃、時を同じくして、クリスタたち三人も守護者と対面していた。その守護者は、ずり落ちそうな眼鏡をシャツの袖で押し上げ、気怠げにこう名乗りを上げた。
「どもども。自分、ゼロイチというものです、はい。正直言って自分、戦闘とかそんな好きなタイプじゃあないんで、パパッと終わらせてネトゲやらせてもらっていいっすか?」
クロとムイムイが自分を守るように前に立つ後ろで、クリスタは、改めてこのゼロイチと名乗った守護者を観察する。
ぼさぼさの茶髪に、だるだるのシャツ。一見して、だらしない印象を与える彼女。下半身はズボンらしきものをはいておらず、シャツでギリギリパンツが隠れているような有様だ。しかし、その眼鏡の奥の瞳は、油断なくこちらを見据えている。
とりあえず、いつものようにゼロイチの本を生成しようとしたところで、彼女からこう声がかかる。
「クリスタ・ライブラリ。『いろんな人の物語が読める』ギフト持ち⋯⋯。今も、その能力で自分の情報を読もうとしたんでしょ? 別にいいっすよ? だって、自分も貴女と同じように、情報収集に適したギフトなんで。ただ⋯⋯。」
そこで一旦言葉を切り、ゼロイチは再び袖で眼鏡をくいっと押し上げ、そしてこう言った。
「自分と貴女⋯⋯どちらのギフトがより優れているか、貴方たちはすぐに思い知ることになると思うっすけどね。」
《リリィ&ロロside》
塔の入り口に飛び込んだリリィとロロ。彼女たちも他のメンバー同様、守護者のいる部屋へと飛ばされていた。しかし、他のメンバーとは大きく異なる点が一つ存在する。
それは、部屋に飛ばされた瞬間、リリィの身を強烈な寒気と吐き気が襲ってきたことだ。
「リリィ様!? どうなされたのですか? しっかりしてください!!」
ロロが慌てた様子で声をかけてくるが、リリィは返事をすることさえ出来ない状態だ。リリィは、ぼんやりとする思考の中で、必死にこんな状態になった原因を考える。毒ガスか? それは違う。体液が毒であるリリィに毒ガスが効くことはない。しかし、そうなると全く原因が分からない。もしや、自分の毒を上回るような濃度の毒ガスが充満しているのだろうか⋯⋯?
「けほっ、けほっ⋯⋯。よ、ようこそ、わたしの部屋へ⋯⋯。」
その時、リリィの耳にこんな状況とは場違いなほど可愛らしい声が聞こえてきた。しかし、その声も、リリィ同様に苦しんでいるのか、とても弱々しいものだった。過去に教師をしていたこともあるリリィは、思わず自分の様態も忘れてその声の主に対して声をかけていた。
「あ、貴女、大丈夫なの? は、早くこの部屋から出た方がいいわ。恐らく、ここには高濃度の毒ガスが充満している。」
しかし、そのリリィの呼びかけに対するその声の主の答えは、リリィの予想外のものであった。
「ううん、違うよ⋯⋯。この部屋に充満しているのは、毒じゃなくてウイルス⋯⋯。そして、ここはさっきも言ったけれど、わたしの部屋だから⋯⋯。だから、この部屋から出た方がいいのは、貴女たちの方。」
そして、ようやくその声の主がリリィたちの前に姿を現す。少女の着ている黒色のナース服は、所々破れていて、本来与えるべき清潔感は伝わってこない。そして、彼女の顔の大半は、口元の大きなマスクで隠れており、唯一見える瞳の下には、くっきりとした黒い隈があって、見る者に不健康そうな印象を与えた。
「わたしの名前は、シック。けほっ、けほっ!! あ、貴女たちを、ここで、殺します⋯⋯。ご、ごめんなさい。でも、仕事だから⋯⋯。」
「⋯⋯まさかとは思ったけれど、これもアンタの仕業ってわけか。⋯⋯こりゃ、ちょっとしんどいなー。」
シックは、そう言って頭を下げる。対するリリィは、この最悪な状況に思わず天を仰いだのだった。
そういえば、カロンが脱落したにもかかわらず、お決まりのキャラステータスを記載していなかったので、ここで書いておきます。
カロン
身体能力 5
知性 2
社会性 1
運 3
能力の強さ 2
ギフトの能力⋯⋯『痛みを感じない』
次回、守護者のギフトが徐々に明らかになっていきます。




