VSカロン その1
ソニア「ひっぐ⋯⋯ひっぐ⋯⋯!! うう、作者が、投稿が遅れたのは、ノゲノラの映画を見に行っていたせいだ⋯⋯!! ごめんなさい⋯⋯!! でも、後悔はしていない。むしろ満足。」
自らをカロンと名乗った十手使いの少女を前にして、一同は一度体勢を整える。
「クリスタ! 彼女のギフトは?」
シャーロットが指示を出し、クリスタは即座にその手に一冊の本を生成する。その間、カロンが動き出さないか警戒していたフローラであったが、カロンはその場から少しも動く気配がない。
「彼女のギフトは、『痛みを感じない』というモノ⋯⋯。ギフト自体はそこまで強力なモノではありませんが、皆さん気をつけてください。この方は、守りのプロです。これまで、侵入者を塔の中にいれたことは一度もありません。」
クリスタが一同にカロンの情報を伝える。カロンの威風堂々たる立ち姿を目の前に、フローラは、成る程と彼女の実績が嘘ではないことを自分の目でも確認した。
「ならば、私が初めて貴女の守りを突破した人物になってみせます!」
フローラは、気合いの声と共に猛スピードでカロンに切りかかる。そのまま手に持つ剣を横薙ぎ⋯⋯と見せかけ、大きくジャンプ。そして、大上段から自分の体重も乗せた一撃をお見舞いする。
しかし、カロンはその攻撃を見事十手で受け止めてみせた。その上、十手を持つ手を捻り、フローラの剣を折ろうとしてくる。
武器を折られては堪らないので、フローラは一度カロンの胴を蹴り後ろに下がった。その直後、背後から「フローラ、上だ!」と声がかかる。その声にフローラが天を仰ぎ見ると、そこには既に自分を捉えようと投げられた網が、視界を網目模様に変えていた。
咄嗟に剣を振り、網を断ちきろうとするフローラ。だが、振るった剣は金属音を立てただけで網を破ることは出来なかった。
「鉄製の網か⋯⋯!!」
カロンがフローラと十手で打ち合う前に投じていた鋼鉄の網。フローラはその網に囚われ動きを封じられてしまう。その隙に、カロンは残りのメンバーへと飛びかかった。
「彼女さえ封じてしまえば、こちらのものだ! 天誅!!」
カロンの十手の向かう先は、ピストルを構えるシャーロット。シャーロットが撃った銃弾を、カロンは十手の先で弾き、その懐に潜り込む。そして、屈んだ姿勢からシャーロットの顎目掛けての鋭い突き。
「シャーロット!!」
網の中でもがくフローラの叫びがこだまする。しかし、次の瞬間、フローラが目撃したのは予想外の光景であった。
「⋯⋯やれやれ。あまりこのシャーロット・ノックスを舐めてもらっては困るのだよ。」
カロンが放った突き。シャーロットは、十手の腹を掌で突き、その攻撃を自身から逸らした。そして、突きにより伸びきったカロンの腕を掴み、背負い投げる。
そして、カロンの身体を地面に打ち付けるとほぼ同時に、掴んだ方の腕を体重を乗せて思いっきり固めた。
時間にして役数秒程度の間に行われたその攻防、そして、それを行ったのがこれまで戦う姿を見たことがなかったシャーロットであるという事実に、呆けたような表情になる一同。シャーロットは、すかさず活を入れた。
「何をぼうっとしている! 恐らく、彼女を止めておける時間はそう長くない!! 今のうちに、リリィは毒でフローラの網を溶かすのだ!!」
その言葉通り、シャーロットに腕を固められていたカロンは、シャーロットが活を入れた直後、力任せにシャーロットを振り払った。宙へと吹き飛ばされたシャーロットの身体は、ロロが飛び上がって受け止める。
「こ、この人、腕が折れてる⋯⋯。」
ナナが顔をひきつらせてそう言ったように、カロンの腕はだらりとぶら下がり、一目で折れていることが分かる有り様になっていた。
そんな状態であるにも関わらず、カロンは再びその十手を振るい、近くに立っていたナナとラモーネの二人に襲いかかる。
「教え子に手は出させないよ!」
ラモーネは、全身にプリンを纏う『プリンアーマー』でカロンの攻撃を受け止める。だが、十手の攻撃が通じていないと見るなりカロンは即座に十手を捨て、ラモーネの小さな頭を鷲掴みにし、ナナめがけ投げつけた。「ぐはっ!?」「うっ!?」と呻き声を上げ、地面に倒れる二人。
そんな二人の様子を見ることしか出来ないフローラは、焦った様子でリリィをせかす。
「リリィ、まだ網は破れませんか!?」
「もうちょい待って!! なかなか頑丈でさ⋯⋯。」
フローラは、こんなにも簡単に無力化されてしまった自分が悔しくて網のなかで歯ぎしりした。
フローラのギフトは、確かに攻撃を避ける点では非常に優秀で、フローラも相手の攻撃をかわしながらの戦闘を得意としていた。
しかし、今回の網のような、広範囲に渡る攻撃の場合、避けるのが難しくなるのが弱点でもあるのだ。カロンは、恐らくフローラのギフトのことを知っていたのであろう。そうでなければ、鉄製の網など用意しているはずはない。それでも、敵がこういう攻撃をしてくることを予測していなかったのは、完全にフローラのミスだ。
「よし! 破れたぞ!」
リリィがそう言うと同時に、フローラは網の中から勢いよく飛び出る。そして、すかさずカロンに向けて剣を構えた。
対するカロンは、フローラが網から抜け出そうとしている間、何度もそのチャンスはあっただろうに、全く追撃してこようとはしなかった。そのことは、シャーロットやラモーネたちにも言えることだ。
そのことを認識し、フローラは改めてカロンについての評価を改める。
彼女は、守る戦いに特化した人物だ。そして、一対多での戦いにも非常に慣れている。無駄な追い打ちをしないのは、その隙に別の敵が塔へ侵入するのを防ぐため。致命傷は負わせず、少しずつ相手を傷付けていき⋯⋯最終的には全員撃退する。
非常にやりにくい相手だと思う。しかも、痛みを感じない彼女には、ダメージの蓄積という概念は存在しない。
「ぬるい!! ぬるいぞ貴様ら!! これしきの力でエンキ様を傷付けてようとしているとは⋯⋯。ますます不敬!! 天誅!! 天誅だぁぁぁ!!!」
カロンの咆哮が響く。確かに、カロンの言う通り、こんなところで手こずっているようではエンキなど倒せないだろう。
フローラは、気を引き締め直し、真っ直ぐ剣を構える。
-さあ、第二ラウンドの始まりだ。
シャーロットが使うのは柔道に似た武術です。
まさかの投げ技キャラ。
次回、その2です。




