四日目
キスカ「こんばんは、今回のあらすじを担当することになったキスカです。さて・・」
ソニア「ちょっと待ったぁぁ!ここは私のコーナーのはずだ!人のコーナーを横取りするとは、やはり貴様悪!」
キスカ「・・今回のあらすじは、アン&ララは癒し、フローラ&ペトラVSパトリシアの二本です。それでは、明日もみてくださいね。じゃんけん、ぽん!」
ソニア「スルーされた!?しかも、何故サザ〇さん風!?」
《アン&ララside》
殺し合いゲーム四日目の朝。ララに仕える完璧ビューティホーなメイドロボットアンは、何故か産みの親であるララの前で正座させられていた。そして、そんなアンの前には頬を膨らませて仁王立ちするララの姿が。
どうしてこんな状況になっているかというと、それは三日目の夜に遡る。
三日目の夜、アンは宝箱から出たアイテムの無限に水が湧き出る水筒を使って、水を飲んでみた。
その水は、凄く美味しかった。この世のものとはとても思えないほど美味だった。それはもう、ロボットのアンがあまりの美味しさに酒に酔ったようになってしまうほど美味しかった。
そう、この状況は、美味しすぎる水に酔ってしまったアンが、ララにセクハラ紛いの行為を繰り返し、ララの堪忍袋の緒が切れたことで産み出されたものであった。
「アン?何か言うことはない?」
「はい・・昨日は酔った勢いで博士の尻を撫で回し挙げ句の果てには博士の唇を奪おうとしたこと、深く反省しておりますデス。」
アンは、ぷんぷんと怒るララに対して素直に頭を下げた。ララはめったに怒らないが、怒るとしばらく口をきいてくれない時もある。もしそうなれば、アンの精神は深刻なダメージを受けることになる。ララの怒りを静めるためにも、ここは誠心誠意心を込めて謝らなければならない。
「そ、そっか。まあ、反省してるんなら~・・許す!」
そして、こうして謝ればララは大体のことは許してくれる。アンは、そんなちょろ可愛いララのことが大好きだった。
ただ、怒った顔も可愛いのは反則級だ。ファッキン尊い。
《フローラ&ペトラside》
「それでは、いきますわよ!」
ペトラの合図に合わせ、フローラは剣を構えると「はいっ!」と力強く答えた。すると、ペトラは早速髪を伸ばして攻撃してくる。フローラは、その攻撃を剣で必死に防ぐ。ペトラの攻撃は非常に苛烈だ。上下左右、ありとあらゆる方向から髪が襲いかかってくる。時には髪を鋭く尖らせ、時には髪で特大の拳を作り殴りかかる。フローラはあっという間に持っていた剣を髪に巻き取られ奪われてしまった。
「まだまだ甘いですわね。そんなんじゃすぐにやられてしまいますわよ?」
呆れたような表情でそう言うペトラは、この稽古が始まってから一歩も動いていない。左右のドリルヘアーを地面に突き刺し、地面にしっかりと固定させることで存分に髪を振るえるようにしていた。戦闘中全力で息も絶え絶えなフローラとは違い、ペトラには髪で作った髪コップで湖の水を優雅に飲む余裕がある。フローラは、その余裕を羨ましく思いながらも、再びペトラから剣を受け取り、ペトラの猛攻を防ぐ特訓をする。
フローラがなぜこのような特訓をしているかというと、それは三日目、剣を手に入れた後の魔物との戦闘において、全く剣を使いこなすことが出来なかったからである。それどころか、一度は手が滑って剣を放り投げてしまい、それが危うくペトラにぶつかりそうになった。
そして、危うく自分が殺されるところだったペトラは、自らペトラの戦闘訓練の指導をすることを申し出て、フローラも流石にこれはマズイと思いその指導を受けることにした。
しかし、いざ指導を受けてみると、ペトラはなかなかのスパルタ教官であった。一時間ぶっ通しでひたすら髪による多彩な攻撃を行い、ひたすらそれを剣で防ぐか躱すという訓練をさせられたのだ。しかも、その訓練は三日目から時折休憩を挟みつつもひたすら行われていた。勿論、睡眠もろくにとっていない。ペトラ曰く、「人間一日くらい寝なくても死にはしませんわ。」とのことだ。いや、確かにそうかもしれないが。それに、たとえ身体に当たっても痛くないよう若干髪質を柔らかくして貰っているとはいえ、やはりそれなりのスピードで放たれた攻撃は当たれば痛く、フローラは必死で緊張感を保ちつつそれを捌く必要があったため、眠気など感じる暇が全くなかった。
「・・時間になりましたわね。少し休憩をいたしましょう。」
ペトラのその言葉と共に、フローラは地面に崩れ落ちる。そんなフローラに、ペトラから労いの言葉がかけられた。
「お疲れ様ですわ。まだ剣の扱いには未熟なところはありますけれど、回避だけなら大分ましになったのではなくて?」
「はあ・・はあ・・あ、ありがとうございます。」
フローラは、息を切らしながらも素直に礼を言った。このスパルタすぎる特訓には思うところがあるものの、ペトラは自分の睡眠時間も削って特訓に付き合ってくれたのだ。その点に関しては本当に感謝している。それに、この特訓をしているうちに、ペトラが以外にもこちらをよく気遣ってくれていることにも気が付いた。休憩時間には髪コップに入れた水をくれたし、特訓中は食事も全てペトラが作ってくれた。口では平民を見下したような態度を取りながらも、普通の貴族ならまず平民に食事を作ってあげることなどしないので、これには普通に驚いた。
いったいこのペトラというお嬢様は何者なのだろうか。貴族のお嬢様にしては戦闘力が高すぎるし、やけにサバイバルに慣れているようにも思える。
フローラは、次第にこのお嬢様のことが気になり始めていた。
あともう少しで休憩時間が終わり、再び特訓を始めようとしたその時、ペトラが急に何かに反応したように顔を上げた。
「これは・・何かが私たちのところに近づいてきますわ。フローラさん、剣を構えて。」
ペトラに鋭い声でそう言われ、フローラは慌てて剣を構えた。そして、その数秒後、ペトラの言う通りに、ある人物がフローラたちの前に姿を現した。
「これはこれは・・また気配を察知されてしまいましたか。少々自信がなくなってきますね。」
フローラたちの前に姿を現したのは、あのエルフの少女だった。確か、名前はパトリシアと言っただろうか?こちらに刺すような視線を向ける彼女は、とても友好的とは思えない。フローラは、剣を握る手に力を込めた。
一方、ペトラは視線はしっかりとパトリシアの方を向きながら、あくまでも冷静に応えた。
「この周辺の木々に細い髪を張り巡らせて索敵用にしていたのですわ。そのお蔭で気配を察知することが出来ました。」
・・本当に、このお嬢様は何者なのだろうか?
「そうだったのですか。それはご丁寧に教えていただきありがとうございます。それでは・・とりあえず、死んでもらえますか?」
パトリシアが早速動いた。パトリシアは、フローラたちに向かって腕を一振りする。すると、そこからは無数の種のようなモノが飛ばされてきた。
「フローラさん!危ないですわ!」
ペトラは、フローラが反応するよりも早くフローラの前に出ると、髪を前方で回転させて、飛んできた種を全て防いで地面に叩き落とした。しかし、攻撃を防がれたにも関わらず、パトリシアは笑みを浮かべていた。フローラが何だか嫌な予感を感じるのとほぼ同時に、先ほど叩き落とした種から芽が生え、それは物凄いスピードで成長し、フローラとペトラに襲いかかってきた。
「な!?何ですのこれは!?」
ペトラはこの異常事態に目を丸くするが、すぐに落ち着いて、刃物のように尖らせた髪を振り回し、伸び続ける植物たちを刈っていく。
「う、うわああ!?」
一方、フローラの方は、突然襲い掛かってきた植物に冷静な対応が取れず、手足を絡めとられていた。しかし、すぐさま、「大丈夫ですの!?」という声と共にペトラが髪を振るい、フローラは拘束から解放された。
「あ、ありがとうございます。ペトラさん。」
「落ち着いてくださいまし!これくらいの植物なら、あの特訓を耐えたフローラさんなら対処できますわ!」
ペトラにそう鼓舞され、ようやく落ち着きを取り戻したフローラは、ペトラと背を合わせ剣で植物を刈っていく。
その様子を満足そうに眺めていたペトラだったが、ふとある違和感に気付いた。
(あのエルフはどこにいきましたの!?)
しかし、ペトラがそのことに気が付いた時、パトリシアはいつの間にか伸び続ける植物の中に紛れるようにして、フローラの前に立っていた。
「・・まずは、こちらの弱い方から・・!」
ペトラは、とっさにフローラの背中を掴み、後ろへと放り投げた。そして、パトリシアが振り下ろしたナイフを髪で受け止める。しかし、受け止めた瞬間、口元ににやりと笑みを浮かべるパトリシアの表情を見て、自分が罠に嵌められたことを悟った。
次の瞬間、足元から生えてきた竹のような植物により顎を強打され、ペトラは宙を舞うことになった。
フローラは、ペトラが吹き飛ばされる様子を茫然と眺めていた。しかし、すぐ助けなくては!という思いに駆られ、フローラは吹き飛ばされたペトラを慌てて受け止める。そして、そのままペトラを抱えて全速力で逃げ出した。その途中で、ペトラの心臓の音を確かめる。・・良かった。死んではいない。息もしているし、どうやら一時的に意識を失っただけのようだ。とにかく、自分ではあのエルフには勝てない。ここは、生き残るためにも何としてでも逃げなくては!
《パトリシアside》
パトリシアの目の前では、哀れな小娘が仲間を抱えて逃げようとしている。しかし、最初にパトリシアが種をまいた時点で、ここにはもう逃げ場などないのだ。パトリシアの能力は、植物の種を飛ばすというもの。植物の種類は選ばず、また、飛ばされた種はその一つ一つがパトリシアと意識を共有しており、自由に操ることが可能となる。パトリシアは、逃げ去って行く少女のちょうど足元で、種を発芽させた。この種は、先ほど巻髪の少女を突き上げたものよりも先端を鋭く固く品種改良した竹だ。パトリシアは、竹に身体を貫かれ、絶望の表情を浮かべ絶命する少女の姿を想像した。
しかし、その想像は覆され、何故か少女は身体を貫かれることなく、竹に突き上げられるようにして空中へと飛んで行ったのだった。
《フローラ&ペトラside》
フローラは、この上なく困惑していた。突然足元の地面が盛り上がったと思いきや、気付いた時にはペトラを抱えたまま宙高く放り投げられていた。・・わけが分からないよ。
「う、うう・・油断してましたわ・・。って、なんですのぇぇ!!?何で私は今フローラさんに抱えられて空を飛んでいますの!?」
その時、非常にちょうどいいタイミングでペトラが気絶から復活し、現在の状況を把握して叫び声を上げた。
「良かった!ペトラさん、目が覚めたんですね!」
「それどころではありませんわよフローラさん!!何で私達今空を飛んでいますのぉぉぉ!?」
「いや、正確には飛ばされたと言う方が近いような・・。」
「貴女、意外に冷静ですわね!?」
「私、ここから落ちることになっても死にませんし・・。」
「そういえばそうでしたわね!」
全く役に立たないと思われた私の能力が、ようやく日の目を見る時が来たようだ。しかし、ペトラさんはこのままでは地面に落ちて死んでしまう。どうしたらいいだろうか?眼下に目を向けると、何やら驚いた表情でこちらを見上げるパトリシアの姿があった。彼女にとっても、この事態は予想外なのか。横を見ると、ペトラもパトリシアの表情を見たようで、何やらいいことを思いついたのか口角をくっと上げていた。
「いいことを思いつきましたわ!フローラさん、一旦私に捕まってくださいまし!」
フローラに言われるままその身体に抱き着くと、ペトラは、髪を広げ、翼のような形を作り出した。
「その形って・・!ペトラさん、もしかして飛べるんですか!?」
「二、三秒だけですけれどね!でも、それだけで充分ですわ!」
ペトラは、翼を大きく動かし、空中で体勢を整えた。そして、パトリシアの真上に来たところで、懐からあの『パワーアップキャンディ』を取り出しフローラに渡す。
「フローラさん!そのキャンディーを食べて、私をあいつ目掛けて思いっきり投げてくださいまし!」
「えええ!?そんなことをして大丈夫なんですか!?」
「私のことなら問題ありませんわ!それよりも、今はあいつを倒すことが最優先ですわ!」
フローラは、本当に大丈夫なのかと心配になったが、ペトラに、「私のことを信じてくださいまし!」と強い意志の込められた瞳で言われ、覚悟を決めることにした。
まず、キャンディーの包み紙を開け、口に入れる。その瞬間、身体の奥底からパワーが沸き上がってくるのを感じた。パワーアップキャンディの名前は、伊達ではないようだ。
「いきますよぉぉぉ!!」
フローラは、気合の叫び声と共に、ペトラをパトリシア目掛け思いっきり投げた。そして、投げられたペトラは、髪形を瞬時に変化させる。
そして出来上がったのは、頭頂部に巨大なドリルヘアーを付けたペトラだ。物凄いスピードで落下してくるドリルに、パトリシアは慌てて植物を使ってその勢いを止めようとするが、ドリルは障害物を蹴散らし、真っ直ぐにパトリシアの元へと向かっていった。
そして、轟音と共にドリルは地面に激突する。未だ上空に浮かぶフローラは、立ち込める砂煙の中、堂々と地面に刺さるドリルと、そのドリルに胸を貫かれ倒れるパトリシアの姿を見たのだった。