シャーリーの今
ソニア「毎日更新ということで、ここのパートの担当も日替わりだ! 今回は、ラモーネ視点で、シャーリーの現状が語られるぞ!!」
「久しぶりに帰ってきたなぁ⋯⋯。皆元気でやってるといいけれど。」
一人そう呟き目の前の大きな屋敷を見上げるのは、つい先日神聖国から戻ってきたばかりのラモーネ。その手には、お土産の代わりに道中でこしらえた人数分のプリンが入った袋が握られている。
『はー⋯⋯この身体じゃお前のプリンが食べられないのが辛いなぁ。』
「⋯⋯まず、アンタはその身体でどうやって喋っているのさ。」
自分の頭の上から聞こえてくるその声に、ラモーネは呆れた様子で返事を返す。その直後、ラモーネの持つ袋にぴょんっと小さな謎の生き物が落ちてくる。その謎の生き物⋯⋯目玉に手足をひっつけた見ようによってはキモ可愛いと言えないこともないこいつの正体は、“奪う神”ロキの成れの果てである。
ラモーネは、神聖国からここに戻ってくるまでの馬車の途中で、ロキが何故こんな身体になってしまったのか、その理由を説明された。そして、その理由がエンキと一対一でのガチの勝負をしたからであると聞いた時は、思わず食べていたプリンを喉に詰まらせそうになったものだ。
結果として、ロキはエンキとの勝負に敗北してしまったが、身体が完全に消える寸前、ラモーネに与えていた自分の右目に魂を移すことで存在自体が完全に消滅することは防いだとのこと。ただ、ロキはそれで助かったかもしれないが、右目をロキに奪われる形になったラモーネは悲惨である。幼女の身体になった上に、眼帯キャラまで上乗せすることになってしまったとラモーネは自分の不幸を呪った。
まあ、失ったモノもかなりあるが、その分のリターンがかなり大きいことも確かだ。ロキの話によれば、エンキは今神特有の不死性を失っており、またロキとの戦いのダメージもまだ残っているらしい。エンキを倒す⋯⋯つまり、神を殺す上での最大の関門が取り払われたのだ。
「この大ニュースとプリンをお土産としてひっさげて帰れば、あの偏屈な娘も満足してくれるよなー。⋯⋯ん? 誰か屋敷の前にいるな⋯⋯。あれは⋯⋯クリスタ?」
ラモーネがその人物をクリスタと判断したのは、遠目に見えるその人物が車椅子らしきものに座っていたからだ。ラモーネが知る限り、メンバーで車椅子に乗っているのは彼女だけなので、ラモーネがこの判断を下したのはおかしいことではなかった。
しかし、近づくに連れ、ラモーネはその人物がクリスタではないことに気がついた。何故ラモーネがそのことに気付いたかと言えば、まず一つはその髪の色だ。クリスタは一目で貴族と分かる金髪なのに対し、その人物の髪は真っ白だった。
そして、何よりも目を引くのが、全身に巻かれた包帯。ラモーネは、あんな格好をしている人物を一人しか知らなかった。⋯⋯だが、ラモーネはそれが彼女であると認めたくなかった。何故なら、ラモーネが知る彼女は、いつも豪快で力強い姿で皆を引っ張っていたから。だから、あんな風に車椅子に座ってぼけっと空を眺めている彼女の姿など見たくない。だが、ラモーネが知る彼女の姿より数倍もしわくちゃで弱々しくても、すぐ傍まで近付いたラモーネは、それが彼女であると認めざるを得なくて、震える声でこう尋ねた。
「嘘でしょ⋯⋯。シャーリー、アンタ⋯⋯いつの間にこんなに歳を取ったの?」
そう、それは、ラモーネの仲間の一人である元殺人鬼のシャーリーであった。しかし、今の彼女は、ラモーネが神聖国へ旅立った数週間前とは別人のように年老いてしまっている。
いや、確かにシャーリーは、彼女の持つギフト、『時間を引き延ばす』能力の副作用として、普通の人に比べて歳を取るのが異様に早い。ラモーネが最後にシャーリーを見た時は、シャーリーは29歳だったはずだが、その肉体年齢は60歳を軽く越していた。
しかし、今のシャーリーはどうみてもそこからさらに歳を取っているように見える。今の彼女の肉体年齢はいったい何歳なのだろうか⋯⋯?少なくとも、80歳は越しているように思える。もしかしたら100歳なんてことも⋯⋯?
先ほどから、シャーリーは虚ろな瞳で虚空を見上げるばかりで、こちらの声にも全く反応してくれない。そんなシャーリーの様子に居たたまれなくなったラモーネがシャーリーから視線を反らすと、その先にはいつの間にか自分の娘であるシャーロットと、そしていつもシャーリーの傍にいたサラの姿があった。
「シャーロット、シャーリーはいったい⋯⋯?」
「⋯⋯そのことについては、あとで詳しく話そう。とりあえず母さん、屋敷の中に入ってくれないか? そちらの話も聞いておかねばならないのでな。」
シャーロットはそれだけ告げると、くるりと踵を返して屋敷の中に入っていく。サラもそれに続くかと思いきや、サラはシャーリーの傍に駆け寄ると、彼女の座る車椅子を押し始めた。
ラモーネは、サラに「手伝おうか?」と申し出たが、サラは、左手を使って『いい。シャーリーを支えるのは、私の仕事。』とその申し出を断った。
シャーリーと、彼女を運ぶサラの姿が消えた後、ラモーネはそっと肩の上に乗るロキに尋ねた。
「ロキ⋯⋯アンタ、シャーリーが今どれくらいの肉体年齢なのか、分かる?」
『⋯⋯ああ。オレは仕事柄そういうのも得意だからな。アイツの肉体年齢は⋯⋯恐らく120歳ってところだ。正直、何で生きているかが不思議なレベルだ。』
「120歳⋯⋯!? シャーリー、アンタ、どうしてそんなことに⋯⋯。」
ロキの口から告げられた驚きの真実。ラモーネは、ショックを受けつつも、シャーリーの身にいったい何が起こったのか、その真実を知るために、屋敷の中に足を踏み入れたのだった。
次回タイトルは未定です。明日、もしくは今日暇があれば投稿します。




