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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
5th stage  『主人公』たちの物語
55/110

閑話:決戦の前に

ソニア「お前たち、久しぶりだな!!」

シャルン「Final satage行く前にとりあえず閑話やでー。」

オクター「今後の活動については、後書きで述べるそうです⋯⋯。」

 かつて、幼い少女が二人の両親の死体と共に過ごしていたという謂われのある古い屋敷。その屋敷では、現在十人ほどの年齢も様々な女性たちが集まって生活をしていた。彼女たち全員に共通していること、それは、神が行った残酷なゲームの生き残りであるということ。

 そして、全員がその神を打ち倒さんという決意を胸に抱いていることであった。


 そんな彼女たちのリーダーを務める少女、フローラは今、屋敷の敷地内にある庭で仲間の一人である元殺人鬼のシャーリーと戦闘訓練を行っていた。

 そんな二人の戦闘の様子を傍らで眺めるのは、エンキに作られた人形でありながら創造主であるエンキに牙をむく道を選んだサラ、そして最近仲間に加わったばかりのジミナとムーンだ。

 今、三人の前ではシャーリーがその手に持った杖をフローラの首元に突きつけている。どうやら、今回もまたシャーリーが勝ったようだ。今日はこれまでに五度ほどフローラとシャーリーは戦っているが、その結果はシャーリーの五戦五勝。しかし、そんな二人の戦闘を観戦するジミナは、思わずこう呟かずにはいられなかった。


「⋯⋯いや、動きが速すぎて何が起こったのかさっきから全然分からないんですけれど。」


 そんなジミナの呟きに対し、サラはスケッチブックに文字を書き出す。サラは言葉が喋れないのだ。


『シャーリーの動きが見えないのは当たり前。シャーリーは最強。誰にも負けない。そんなシャーリーの動きについていけているフローラの方が異常。』


「私からすればどっちも異常よ。私、戦闘は全く出来ないしね⋯⋯。」


 ジミナはそう言って遠い目になる。目の前では、シャーリーとフローラの六度目の戦闘が始まろうとしていた。あの二人の体力は底なしなのだろうか? 


「それにしても二人とも凄いよねー!! 流石、このチームの最高戦力二人って感じだね!!」


 ムーンの無邪気な賞賛に、サラはむっとした表情でスケッチブックを突きつけた。


『訂正を要求。最高戦力はシャーリーと私。フローラが強いのは認めるけれど、そこだけは譲れない。』


「そうだねー。サラちゃんはシャーリーさんのこと大好きだもんね~。」


 ムーンはそう言って、サラの頭を撫でようとするが、その手はサラの頭をすり抜けてしまう。こうやって普通に会話しているから忘れそうになることが多いが、ムーンは所謂『幽霊』なのだ。彼女のギフト、『死んだら幽霊体になる』能力で、死後もこうして存在しているが、物理的な干渉は全く出来ない。

 そして、ムーンだけではなく、ここにいるほとんどのメンバーが皆ギフト持ちである。

 

 例えば、ジミナは『影が薄い』というギフトを持っている。このギフトは、常時発動型のモノで、ジミナと波長が合う人でなければ、ジミナの存在を認識することすら不可能になる驚異のステルス能力である。因みに、波長が合う人に対しても、ジミナが本気で気配を消せば存在を悟られないことはここに来てから既に実験済みだ。ただ、その状態でも何故かムーンには存在を認識されてしまったのだが⋯⋯。

 そして、隣に座る少女、サラは『心が読める』というギフト持ちだ。しかし、言葉を話せない彼女は、心を読んでもそれを即時に伝える手段を持っていなかった。⋯⋯彼女がシャーリーと出会うまでは。

 シャーリーは、話すことが出来ないサラに対して、手を使った独自の言語を作り出すことにより、彼女とのスピーディーな会話を可能としたのだ。そんな経緯もあってか、サラは非常にシャーリーのことを慕っており、ジミナが見る限りはいつもシャーリーの傍に居る。

 因みに、この独自言語は、既にチーム内ではほとんどのメンバーが使えるようになっているが、最近メンバーに加わったばかりのジミナとムーンはこの言語を使えないため、サラはスケッチブックを使った筆談をしてくれている。ただ、普通に会話する速度でこの言語を操ることが出来るのはサラとシャーリー、そしてフローラともう一人、シャーロットという少女だけだ。


 そして、先程話題に上がったシャーリー、彼女も当然のようにギフト持ちだ。彼女と先程から戦っているフローラも勿論のこと。

 シャーリーのギフトは、『時間を引き延ばす』というモノ。その能力はチートもいいところで、ギフトを発動している間の彼女にとっての一秒は、ジミナたちにとって一分に相当する。しかも、本気を出せば一時間を一日に引き延ばすことが出来るというのだから驚きだ。ただ、その能力の代償として、彼女はまだ二十代でありながら、まるで老人のような外見になっている。良くも悪くも、シャーリーに流れる時間は他人より早いのだ。


「あ!! 見てみてジミー!! フローラさんとシャーリーさんが引き分けたよ!!」


 興奮した様子のムーンの言葉に、ジミナが二人が戦っていた場所を見ると、そこではお互いに相手の急所に自分の武器を突きつけている二人の姿があった。


「⋯⋯まさか、このオレが本気を出していないとはいえお前に引き分ける日が来るとはなぁ。やっぱりオレも年取って衰えたか。」


「衰えてこれですからシャーリーは十分バケモノですよ。⋯⋯でも、ようやくここまで追いつきました。」


 若干悔しそうに、しかしどこか少し嬉しそうにフローラはそう言った。ジミナは、貴女も十分バケモノだと言いそうになるを寸前で押しとどめた。


 フローラのギフトは、『地面から少しだけ浮く』というモノ。これだけ聞けば、大したことないギフトに思える。しかし、フローラはそのギフトを自身の努力と才能により昇華させてみせた。

 フローラは、今や地面からのみならず、斬撃や打撃といった攻撃、また銃弾や弓矢のような飛び道具、そういったあらゆるモノからふわりふわりと浮くように回避することが出来るようになっているらしい。また、最近触れたギフトの進化でモノを浮かすことも出来るようになったとか。影が薄いだけのジミナからすればうらやましい限りである。

 そんなフローラでも、シャーリーとの模擬戦ではこれまで負け続きだったそうだ。まあ、時間を操作する能力はチート能力の代名詞なので、それは当然だろう。しかし、フローラは先程そんなシャーリーと引き分けてみせた。これが意味することはつまり、フローラは引き延ばされた時間の中でも普段と同じ動きが出来るようになったということだ。しかも、これは単純に何度もシャーリーに挑み続けた結果、つまり努力によるものである。シャーリーが戦闘におけるバケモノと言うなら、フローラはまさに努力のバケモノと言えよう。どちらにしろ、ジミナにはとても真似出来ない。


「くはあー!! いやー、流石に疲れたな!! オレはちょっと休憩させてもらうぜ!!」


 六戦目が終わったところで、シャーリーはそう言って地面に座り込んだ。そんなシャーリーに対して、フローラが申し訳なさそうに眉を下げる。


「あっ⋯⋯。すいません。シャーリーさんの体力のことも考えずに⋯⋯。」


「ああ!? フローラ、おめえ誰を心配してるんだ? 同情なんかされても全く嬉しくねえんだよ!! やっぱ休憩はやめだやめ!! もっかいバトるぞおら!!」


 そう言って、シャーリーは立ち上がり再びフローラと戦闘を始める。そんなシャーリーの様子を、ジミナの隣でサラは心配そうに見つめていた。


 結局、最後の戦いはフローラの勝利に終わる。しかし、シャーリーは負けた割には悔しそうな顔をせず

むしろ全力で戦ったフローラのことを褒めていた。その後、サラの傍にぐったりとした様子で座り込んだシャーリー。そのシャーリーの手は何故か自分の影に伸びている。この時のシャーリーの行為の意味を知るのは、この中ではサラ一人しか居なかった。


▼▼▼▼▼


 一方、屋敷の中にある書斎では、これまた数人の女性たちが集まっていた。机に座り、中心にいるのはシャーロット・ノックス。その隣に、車椅子の少女、クリスタ・ライブラリが控え、その二人を取り囲むように、ナナ、リリィ、ロロが立っている。

 周りの視線を一身に受ける中、探偵風の格好をした少女⋯⋯『捜し物の場所が分かる』ギフトを持つシャーロットは全く動じることなくこう切り出した。


「さて⋯⋯我々の戦力もだいぶ充実してきた。そして、エンキに関する情報も集まってきた。クリスタ、例の資料を出してくれ。」


 シャーロットにそう声をかけられ、クリスタはおもむろに一冊の本を取り出した。クリスタは、『いろいろな人の物語が読める』というギフトの持ち主で、一度見た相手の情報を一冊の本にまとめることが出来る。しかし、この本はそのギフトで手に入れたものではなく、つい先日、ジミナがエンキが祀られている神聖国にある図書館の閲覧禁止区域に忍び込んで盗み出したモノである。


「この本によると、神聖国の中心に位置する塔⋯⋯そこの最上階から、エンキの居る神界へと行けるようだ。この情報は、うちの母⋯⋯ラモーネ・ノックスがロキに確認をとったので、確実なモノだと言えるだろう。」


「あれ? そういえば、ラモーネ先生はどこにいるんですか?」


 こてんと可愛らしく首をかしげそう尋ねるのは、水色のショートヘアーが特徴的な少女、ナナだ。『運がいい』というギフトを持っている。


「母には、神聖国内部に侵入して我々が侵入する経路を探って貰っている。この仕事は別にジミナに任せても良かったのだが⋯⋯。ジミナの場合、もし戦闘になった際危険が伴う。その点うちの母ならば問題はない。それに、母の姿は以前と異なる。それをどうやらエンキも把握していないようだからな。諜報部員として重宝しているのだよ。」


 シャーリーのその発言に、思わず笑みを漏らしたのはリリィだ。リリィは、『体液が毒』というギフトを持ち、また過去ラモーネの同僚だった経緯から、ラモーネとはかなり親しくしていた。


「実の母親も容赦なくこき使うとは流石だね。そういや、この前ラモーネの奴娘が煙草を吸わせてくれないって愚痴ってたよ?」


「今の母は幼女なのだ。煙草など吸わせることは出来ない。当たり前だろう。」


「それならば、私が毒性のない煙草を制作いたしましょうか? 確か、博士の昔の作品にそのようなモノがあったはずです。」


 シャーロットにそう提案するのは、この中では唯一ギフトを持っていない、ロボットのロロだ。ロロは、今日もいつもと同じくメイド服を着ている。ロロのその提案に、シャーロットは一瞬思案した後、首を横に振った。


「⋯⋯やはり駄目だ。いくら無毒とはいえ、幼女の喫煙は絵面的にもアウトだと判断する。」


 因みに、本人は居ないが、さんざん話題になっているラモーネ・ノックスのギフトは、『美味しいプリンを作れる』というかなりユニークなモノだ。それでいて、ラモーネはそこそこの戦闘力を持っているため、今回の任務に抜擢された。今頃、神聖国の内部で自分の娘に可愛らしい声で恨みを吐きながらも、しっかりと仕事をこなしていることだろう。


ー以上のメンバーが、神に挑まんとする者たちの名前である。そして、彼女たちの最終決戦のその日は、刻一刻と近づいていた⋯⋯。






 

今後の活動について

今週の週末は忙しくて多分更新できませんが、それが終わったら、Final stageのストック作りを始めようと思います。しかし、ストックばかりで何も更新しないのも退屈なので、『勇者のパーティは変人ばかりです。』というファンタジー作品を、二日おきくらいで投稿したいと思います。その作品を投稿しない日は、ストックを書くことに専念します。

しばらくこんな感じで進めていくつもりなので、Finalはまた少し遅くなりますが、それまで気長にお待ちください!! お願いします。

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