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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
5th stage  『主人公』たちの物語
54/110

閑話:ジミナの新しい出会い

何とか書き上げました・・。

え?前書き村の奴らはどうしたって?閑話なんで今回はお休みです。(単純にネタが思いつかなかっただけとか言わない)

 ロキの力によって闘技場から転移させられたジミナとムーン。二人が目を開けると、そこには見慣れぬ景色が広がっていた。

 ジミナとムーンの二人を囲むのは、無数の黒い柱。円柱の柱には、凹凸が全くなく、表面はやすりで丁寧に磨いているかのようにツルツルだ。

 そんな黒い柱が、真っ白な果ての見えない空間の中にずらーっと並べられている。


「一体どこなのよここは・・。」


 ジミナの口から思わずそんな声が漏れる。果てが見えないということは、終わりがないということ。終わりがないモノは、それだけで人間に恐怖を与える。借金地獄、課金地獄etc..日本の八大地獄にこれらが加わる日も近いかもしれない。

 少々話が逸れたが、ジミナもまたこの終わりの見えない空間に恐怖を感じ、立ちすくんでいた。


「わー!!なんか凄いところにきたねー!!私こんな場所初めてでちょーワクワクするよー!!」


 そんなジミナに対し、ロリータファッションに身を包んだ幽霊、ムーンはいつもと変わらないハイテンションで辺りを飛び回っていた。そんなムーンの姿に、ジミナの感じていた恐怖も若干薄まる。


「ちょっとムーン。あまり勝手に飛び回らないで。ここがどこかもまだ分からないんだから。危ないわよ。」


「えー!!だってこんな謎空間探検したくなるでしょ普通!!」


 ジミナが忠告するも、テンションの上がったムーンは全く聞こうとしない。ふわりふわりと柱の間を縫うようにして飛行していたが、三度目のふわりで上手にカーブすることが出来ず、柱にぶつかってしまった。

 とはいえ、幽霊体であるムーンがダメージを受けることはない。そのためジミナは全く心配していなかったが、柱にぶつかったムーンは「きゃー!?」と悲鳴を上げ、顔を真っ青にしてジミナの元に高速で戻ってきた。


「じじじ、ジミーちゃん!!ややや、ヤバいよ!!ヤバいよヤバいよマジヤバハムートだよ!?」


「ちょっとムーン落ち着きなさい!言葉が変になってるわよ。一体何を見たというの?」


 パニックを起こしている他人を見ると、つられてパニックになるか逆に冷静になるか、反応は二つに分かれる。そして、ジミナは後者であったため冷静にムーンにそう尋ねることが出来た。

 しかし、いくら冷静になっていても、ムーンが青い顔のまま答えたその事実には、驚きを隠すことが出来なかった。


「私、見ちゃったんだよー・・。あの柱の中に、死体(・・)が入っているのを!!」


「し、死体!?何でそんなモノが・・。」


 ジミナは自分のすぐ横の黒い柱を見る。この中に、本当に死体が?もし、ここにある柱全てに死体が入っているとしたら・・。

 ジミナは、黒い柱から無数の死体がこちらに這い寄ってくる光景を想像してしまい、顔を青くした。お互い青い顔のまま見つめ合うジミナとムーン。そんな二人の後ろから、音もなく忍び寄る影が・・。


『みーたーなー?』


「「ぎゃあああああああ!!!!??」」


 突然後ろから聞こえてきた声に、ジミナとムーンの二人は揃って涙目になり跳び上がる。反射的にお互い抱き合おうとしたが、ジミナの身体をムーンの幽霊の身体は受け止めることが出来ず、ジミナだけが「ぶへっ!?」と変な声を出して地面とキスする。


『ギャハハハハ!!ドッキリ大成功!!驚いたか!?』


 そんな二人を見て笑うその声に、ジミナは聞き覚えがあった。ここに来る前、あの奇妙な『試練』で何度も頭の中に響いてきた声だ。


「その声は・・貴女がロキなのね?」


『お、大正解!!いかにも、オレこそが奪う神ロキだぜ。そして勿論、お前らをここに連れてきたのもオレだ。』


 そう言って豊満な胸を張るのは、黒いマントの下に黒ビキニという何とも露出度の高い格好をした妖艶な美女だった。自らを神だと名乗る彼女からは確かにただならぬオーラを感じられた。

 そして、彼女はさらっと重要なことを言っていた。ジミナがそれを聞き逃すはずもなく、ロキにすかさず問いただす。


「貴女、私たちをここに連れてきたって言ったわね。一体何のためにこんなところに連れてきたの?一体ここはどこなの?」


『まあまあそう急かすなって。ちゃんと説明してやるからよ。』


 ロキはそう言うと、パチンと指を鳴らす。すると、何もない白い空間から突然椅子が二脚現れた。ロキは、ジミナとムーンにその椅子に座るよう促す。ジミナは、とりあえず言われるがまま椅子に腰掛けた。ムーンもジミナに続いて座ろうとする。・・が、すり抜けて地面に潜り込んでしまったため、ひとまず椅子の近くでふわふわ漂うことにした。


『そもそも、オレがあんな試練をお前たちに与えたのは、お前たちを見極めるためだった。・・神殺しの片棒を担ぐ、その資格があるかどうかをな。』


 そして、ロキは語り出した。過去エンキが行った残酷な殺し合いゲームのことを。そして、その生き残りの一部がエンキを殺すという目的のもと集まっていることを。


『オレから見ても、エンキはやり過ぎている。いくら神とはいえ、人間をそんな簡単に殺していいはずがねえんだ。だから、オレはそいつらに力を貸そうと思ったってわけさ。・・まあ、結局エンキの邪魔が入って無駄な犠牲が出てしまったことは本当に申し訳なく思っている。あの中にはお前らの友人もいたんじゃねえか?』


「・・奪う神にしては、随分優しいのね、貴女。私聞いたことあるわよ。貴女、確か人間の命を奪う死神なんでしょう?」


 ジミナは心底不思議に思いそう尋ねた。そんなジミナに対し、ロキはふっと笑みを浮かべると、左目に比べると少し茶色い右目を指さしてこう言った。


『オレが人間に優しいと感じるなら、それは多分この右目のせいだ。人間は、美味いプリンを作るからな。・・さて、話を戻すぞ。』


 ロキは柱を指さし再び語り始めた。


『お前たちもさっき見ただろ?あの柱の中にある死体・・あれは、全部過去のゲーム参加者のモノだ。中には死体が残らなかったモノもいくつかあるが、それ以外は全員分回収してある。今回の参加者も闘技場にいた奴は回収してきた。・・スマイル以外は。』


 スマイルの名前を聞いた瞬間、ジミナもムーンも一斉に顔をしかめた。


「・・まあ、あいつはちょっとね。」


「私もあの子だけはきらーい!」


 ロキも二人に同調するように苦い顔で頷く。


『ああ、あれを参加させたのは正直オレのミスだった。あれの死体だけは完全に異空間に封印してある。』


 なかなかにヤバい奴だったスマイルだが、ここまでボロ糞に言われると流石に可愛そうにも思えてくる。しかし、ジミナにとってはスマイルは考えるだけでも無駄な奴だという認識だったため、即思考を切り替えてロキに質問をぶつける。


「それで、どうして貴女は過去の参加者の死体をこんなところに集めているの?何か理由があるのでしょう?」


『ああ、もちろんだ。実はな・・。』


 ロキは、ジミナとムーンの二人にその理由を明かした。そして、それを聞いた二人は一様に目を丸くする。


『・・とまあ、こういうわけだ。だが、実はエンキにオレが死体を回収していることがばれててな・・。今回は何とかごまかせたんだが、次は多分無理だ。そんな訳で、オレはこの場所の所有権をお前に譲ることにする。』


「はあ!?ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!さっき聞いた話だけでもかなり厄介なのに、その上これ全部私に丸投げするっていうの!?」


 そこにさらにロキの爆弾発言。ジミナは相手が神であることも忘れて声を荒げるが、ロキはからからと笑い声を上げて全く気にする様子がない。


『心配するな、大丈夫だ!!お前の姿はエンキも認識出来ていなかった!!神ですら認識出来ない影の薄さとは本当にたいしたもんだと感心してたんだぜ?』


「・・それはどーも。」


 全く褒められている気がせず、ジミナは苦笑いを浮かべる。ムーンは「よかったねジミーちゃん!!神様に褒めてもらえたよ!!」と相変わらず呑気だ。


『さて・・今からお前たち二人を生き残りの奴らがいるところまで転移させるが、ここの所有権を得たことでお前はいつでもここと行き来出来るようになった。お前の判断で自由に来ることが可能だが、さっきお前らに話した理由だけは生き残りの奴らにも秘密だ。誰かにこのことを話した時点で、ここの所有権は自動的に消失するように設定されている。いいな?』


「・・まあ、理由が理由だしね。生き残りの人たちには伝えない方がいいことは理解できるよ。多分混乱するだろうし。はあ・・。」


 ロキの説明に対して納得は出来たものの、その分プレッシャーも大きい。ため息が漏れてしまうのは許してほしい。


『よし!!準備はいいか?転移させる時は眩しいからしばらく目を瞑っておけよ!!』


 ロキの忠告通り、ジミナとムーンの二人はぎゅっと目を閉じる。次の瞬間、二人の身体を真っ赤な光が包んだ。


『じゃあな!!期待しているぜ?影の薄いヒーローさんと、明るい幽霊!!』


 ロキのその言葉を最後に、二人の姿は完全に消えたのであった。



▼▼▼▼▼


 二度目の転移を終え、二人は再び目を開いた。すると、そこには目を丸くしてこちらを見つめる数人の少女の姿が。


「うわぁ!?何か突然ロリータ服の幽霊が現れましたよ!?」


 そう叫ぶのはショートヘアの女の子。水色の髪といい、どこかレイニーにも似ている。その女の子の隣には、赤髪の女性。白衣の下は何故かビキニだ。しかし、彼女の胸はロキとは違いかなり平坦である。


「安心してください。これはどうやら彼女のギフト、『死んだら幽霊体になる』という能力によるもののようです。」


 そう落ち着いた口調で周りをなだめるのは、車いすの少女。その隣には、これまた何故かメイド服を着た少女が無表情で立っている。

 しかし・・まあ、見事にここまで四人、全員がジミナについては触れていない。生き残りだからといって必ずしもジミナと波長が合うとは限らないようだ。


「オレとしては、その幽霊よりその隣の黒髪の方が気になるけどな。なあサラ?」


「・・・・。」


 包帯で全身を覆った老女の言葉に、ピティーを小さくしたような姿の少女が無言で頷く。


「貴女たちは、私のことが認識出来るのね。」


 ジミナは自分を認識してくれたことが嬉しくてそう話しかける。しかし、ジミナに答えたのはその二人とは別の声だった。


「当然だ。このシャーロット・ノックスの観察眼を舐めてもらっては困るのだよ。」


「おー、私はなんか右目だけ黒髪の子見えるわ。・・これ、どう考えてもロキの目のせいだよな?」


 自らをシャーロット・ノックスと名乗ったのは、見るからに探偵という風貌の少女。その隣には、9歳くらいの少女がこちらを見ていた。

 ジミナは、神と戦おうとする奴がこんなにいるのか・・と正直感嘆していた。だが、ムーンが早速「私はムーンだよ!!よろしくしく~☆」と自己紹介しているのを聞き我に返り、自分も名乗ることにした。


「私の名前はジミナ。ロキに言われて貴女たちと協力するためにここに飛ばされてきた。・・ところで、貴女たちの中でリーダーは誰?」


 ジミナは、何となく探偵風の少女がリーダーではないかと見当をつけてそう尋ねたが、その探偵風の少女がジミナの問いを受けて、後方に「おい、リーダー。新入りのお出ましのようだよ。筋トレをやめてこっちに来るんだ。」と声をかけた。

 数秒後、姿を現したのは、髪の色からして平民だろうに何故か貴族風の髪型をした女の子だった。その子は、確かにジミナとムーン、二人を認識し、きりっとした顔立ちでこう告げた。


「私の名前はフローラです。二人ともようこそ、歓迎いたします。共にエンキの奴をぶっ殺しましょう。」




 



フローラ(ちゃんとリーダーっぽく決めてやるぞ!!)キリッ!

シャーロット(フローラ、張り切っているな。)

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