エピローグ
レッドリーフ「・・最近、けもフレのアミメキリンが可愛く思えて仕方がない件について。」
ソニア「アミメキリンっていうと、10話で出てきたあのポンコツ探偵か?」
シャルン「村長みたいなアホキャラやろ?」
ソニア「なんだと!?」
オクタ-「で、なんでいきなりそんな話に?」
レッドリーフ「分からない。ただ言いたくなっただけ。・・多分、自室の本棚にアミメキリンのイラストが描かれたクッキーの箱が置いてあるせいだと思う。毎日見ているせいでほら・・何か『サブリミナル可愛い』効果が出てるとか。」
ソニア「『サブリミナル可愛い』って凄いパワーワードだな。」
レッドリーフ「・・アミメキリンにわざと難しいクイズ出して、自信満々で答えたところに即『はずれー!!』ってダメ出しするのを何回か繰り返してアミメキリンが涙目になったところを慰めてあげたい。」
シャルン「やべえ。何か長々と妄想語り出したで。」
オクタ-「うわ、変態だ・・。あ、こんな作品書いてる時点でこの作者頭おかしいのは周知の事実でしたね。」
「どうも主人公さん。私は唯のモブキャラです。」
平然とそのような台詞を口にしたジミナ。しかし、スマイルはまだ事態が把握出来ていないのか、今まで浮かべたことのない焦りをその顔に浮かべていた。
「な、何なんだ君は!!そもそも、どこから出てきたんだ!?」
そんなスマイルに対して、ジミナは呆れたようにため息をついた。
「いや・・だから、さっきからずっと座ってたって言ってるじゃん。あんた、前から思っていたけれど、人の話はちゃんと聞いた方がいいよ?」
「前から・・?まるで僕のことを見ていたような口ぶりだけれど、生憎僕は君の顔を見た覚えがない!!君は一体誰なんだ!!」
そう言って詰め寄るスマイル。その拳は既にキツく握りしめられている。しかし、ジミナは全く動じることなく、シクシクと嘘くさい鳴き真似をしてみせた。
「えー・・ひどいよ~。私、一応第一のゾーンからずっと貴女と一緒に行動していたんだけれどなー。・・主人公の癖に仲間の顔を覚えていないとか主人公失格じゃない?」
ジミナはそう言うが、スマイルには全くこの目の前の少女を見た覚えがなかった。しかし、ジミナが言った『主人公失格』という言葉に心を惑わされる。
「そ、そんなの出鱈目だ!!僕は君を仲間にした覚えはないし、仲間は皆大切にしている!!」
そう弁解するスマイルに対し、ジミナはすっと目を細める。そして、隣にいるムーンに視線を向けた。
「ねえ、ムーン、貴女、ちゃんと私の存在も伝えたよね?」
「もちろん伝えたよ~。ちゃんと仲間にならないかって誘われた時、『私たちも少し心細かった』って言ったもーん。ねえ、皆も覚えているよね?」
「貴女、時々私にも認識出来ない人に話しかけるわよね・・。」
ジミナとムーンはスマイルの存在を無視したかのように話し始める。だが、スマイルにはそれを気にする余裕はなかった。今二人が言ったこと、その意味をようやく理解し始めていたからだ。
スマイルが思い出すのは、時々何もない空間に向かって話しかけるムーンの姿。第二のゾーンの途中で別れるまでに何度か見たその光景。スマイルは、変わった子だなと思うだけで、ムーンのその行動を特に気にしてはいなかった。しかし、それがこのジミナに話しかけていたのだとすれば、いろいろと納得出来ることがある。
「そうか・・物理的な干渉の出来ないムーンが何故巻物がないと行けないこのゾーンにいるのか不思議だったけれど、君がムーンの代わりに巻物を持っていたんだね。」
「お、正解。あんた、そこそこ頭は回るんだね。」
ジミナはそう言うと懐から巻物を取り出し、スマイルの前に広げ掲げてみせる。スマイルは、自らの推測が当たったことで、すっかり自信を取り戻した。にっこりと笑みを浮かべ、ジミナにこう告げる。
「なるほど・・。どうやら君の言うことは正しいということは分かった。君のことを認識すらしていなかったことは謝罪しよう。だが!!だからといって僕は君にその椅子を譲る訳にはいかない。ハッピーエンドを作るためにも、その椅子に座るべきはこの『主人公』の僕だ。そこをどいてくれないか?」
「・・どかないって言ったら?」
ジミナはすっと目を細める。対するスマイルは、笑顔のまま拳を握りしめた。
「・・それなら、力尽くでもそこをどいてもらうよ!」
スマイルとジミナの間の空気が途端にぴりりと張り詰める。しかし、そんな空気を断ち切ったのは、ジミナが指を鳴らす音と、無駄に明るいムーンの声だった。
「はいスマイルちゃんこっちむーいて☆」
スマイルはとっさに反応してしまい、後ろを振り向く。すると、そこには頬を膨らませ変顔をするムーンの姿が。
「ちょっとムーン。巫山戯ている場合じゃないんだ。僕は今真面目な話を・・!?」
顔をしかめ、ムーンに苦言を呈したスマイルであったが、次の瞬間にはその顔は疑問で覆われた。
「・・あれ?僕はさっきまで、誰と話していたんだっけ?」
そんなスマイルの耳に、後ろから聞き覚えのない声が話しかけてくる。
「私から言わせてもらえば、あんたの言ってることは矛盾だらけだ。仲間を大切にしている?笑わせるじゃない。あんたはサキを見捨て、置き去りにした。それに、少し前まで仲間だった“わたし”ちゃんも容赦なく殺した。・・あんたの行動のどこを見ても、仲間を大切にしているとは思えないわね。」
「な・・!?だ、誰なんだ君は!?」
しかし、ジミナはスマイルのその問いかけに答えることなく、冷たい視線をスマイルに投げかけ続ける。
「あんたは仲間を大切にしているとか言っていたけれど、本当は違う。あんたにとって大切なのは、自分だけだ。あんたは、私が見てきた中で最低最悪の自己中野郎だよ。」
「そ、そんなことはない!!僕は、何よりも仲間のことを大切に思っている!!だって僕は・・」
「『主人公』、だから?いい加減聞き飽きたよその台詞。」
スマイルが言おうとした台詞を奪い、ばっさりとそう切り捨てるジミナ。思わず固まってしまったスマイルに対し、ジミナはさらにこう続けた。
「それに、今のあんたの隣に仲間が誰も居ないのが何よりの証拠じゃん。仲間が誰も居ない、『主人公』だけの自己満足の物語なんて、そんなのつまらなすぎて私だったら速攻質屋に売り飛ばすわ。・・いや、そもそもそんな物語、買う人もいないだろうから、最悪枕にでもするかな。」
「・・黙れ。」
ぽつりと低く呟かれた声。スマイルは、その目に怒りをたぎらせてジミナを睨み付けていた。それは、今まで基本的に笑顔を浮かべて余裕の態度を崩さなかったスマイルが初めて見せたであろう感情の爆発。なお冷たい視線を向けてくるジミナに対して、スマイルは喉が裂けんばかりに叫んだ。
「黙れ黙れ黙れ黙れぇぇぇ!!!!お前に何が分かるんだ!!僕は選ばれた存在なんだ!!このギフトを与えられたその時から、僕は『主人公』だ!!お前みたいなぱっとしない奴に僕の何が分かるっていうんだ!!」
顔を怒りで歪めつつ、唾をまき散らしながらそう叫ぶスマイルに、ジミナはにっと口角を上げてみせた。
「分かるよ。少なくとも、あんたがここで私に負けるってことはね。」
スマイルは拳を振りかぶりジミナに襲いかかる。ジミナは、それでも椅子から降りることなく、「ムーン!!」と友人の名を一声叫ぶ。
「はいよー!!任せてよジミーちゃん!!」
ムーンはジミナの呼びかけに答え、スマイルの前にその身体を躍り込ませる。ムーンは、「わあっ!!」と両手を広げ、その半透明の身体を大きく膨らませた。半透明とはいえ、スマイルから見るとジミナの姿は一瞬覆い隠されてしまう。
「邪魔だムーン!!そこをどけえーーーー・・・・あれ?」
再びきょとんとした表情を浮かべ、立ち止まるスマイル。先程までの激しい怒りは、誰に抱いていたものだったのか、すっかり霧散してしまっている。
「私のギフト、『影が薄い』能力は、一度認識から外れると記憶からも存在が薄れてしまうんだよ。そして、記憶から薄れる時間は私と波長が合わない人ほど早くなる。・・あんたと波長が合わなくて心底嬉しいね。」
スアイルはその声により、記憶の中では三度目のジミナとの初対面を果たす。しかし、スマイルがまた「誰だ!?」と声を上げるより先に、ジミナはスマイルにこう告げた。
「実は、私はとうの昔に勝利条件の1時間を満たしているんだ。だから、私がもういいと思ったらいつでもロキが私とムーンを転移させてくれるらしいんだけれど・・。その前に、あんたにどうしても言いたいことがあったからね。」
ジミナはそう言うと、呆然と立ち尽くすスマイルを指さし、こう言った。
「あんただけが選ばれた『主人公』?巫山戯るんじゃない!!誰だって皆、自分の人生を精一杯生きてんだよ!!そういう意味では私たち一人一人が『主人公』だ。そんなことも分からないお前は、一生ここでひとりぼっちで『主人公ごっこ』でもしておけ!!」
その言葉を最後に、ジミナとムーンの身体は赤い光に包まれて消えていく。
「ま、待ってくれ!!僕を置いていくな!!僕は・・僕は『主人公』だぞ!!」
スマイルは、ムーンの身体へとその手を伸ばす。しかし、その腕は当然ながらムーンの身体をすり抜けてしまう。
「私・・君とだけは友達になりたくないな~。だって、君、全然面白くないもん。」
ムーンは辛辣な評価を残し、その姿を完全に消してしまった。自分の伸ばした腕の先を見て、ただただ呆然とするスマイル。しばらくして、だらんと腕を身体の横に下ろした。そして、くつくつと肩を震わせ始める。
「・・ははは。ワハハハハハハハハ!!!!!」
スマイルは、笑うことしかできなかった。笑うことでしか、今にも壊れそうな自我を保つことが出来そうになかった。
そんなスマイルの耳に、ずる・・ずる・・と何かを引きずるような音が聞こえてきた。しかし、スマイルにとっては最早その音が何であるかなどはどうでもいい。やがて、耳元でびん!と弦を弾くような音が聞こえた。それでも、スマイルはただただ笑い続ける。
そして、スマイルの首はぼとり。と地面に落ちた。ここまで来てもなお、スマイルは何も感じていなかった。最早、スマイルは自分自身が『主人公』である自信を失いつつあった。なぜなら、スマイルが『主人公』だとするならば、こんなところで一人みじめに置いていかれるようなことはないはずだから。
スマイルは、もう二度と生き返ることはなかった。『主人公』でなくなれば、チートもご都合主義も通用しないのだ。こうして、一人の『モブ』の物語は、誰にも知られずにその幕を下ろすことになったのであった。
地面に落ちたスマイルの首を見下ろし、血だらけのレレは、ふしゅー、ふしゅーっとか細い息を吐きながらも、再び歩き始めた。向かう先は、レイニーが倒れる闘技場の中央。
「れ、レイニー・・。やったよ・・。私、貴女の敵を・・。」
一度は意識を失い、再び生死の境を彷徨ったレレ。しかし、彼女はその凄まじいまでの意志の力で、何とかまだ生きていたのだ。しかし、意志でつなぎ止めているその命も、最早風前の灯火であった。
レレは、レイニーの死体の隣に寄り添うようにしてばたりと力尽き倒れた。そんな二人の身体を、いつの間にか降り始めた雨が優しく包んでいった。
-こうして、八人の主人公たちは、その物語にそれぞれの終止符を打ったのであった。
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ジミナとムーンが転移され、全てのゾーン内において生きるモノがいなくなってから数分後。第一のゾーンには、エンキから命じられ参加者の死体を回収しに来たピティーの姿があった。
ピティーは、他の量産型ピティーたちに命じ、第一のゾーンから参加者の死体を持って来るように命じる。
まず最初に届けられたのは、サキの死体。ピティーは躊躇いなくその死体を食べた。そうすることで、ピティーは自分の身体を動かすのに必要なエネルギーを確保出来る。
一番初めに作られたピティーである彼女。彼女は、エンキが以前作った『サラ』という個体よりも高い身体能力と知性を誇る代わりに、より多くのエネルギーを摂取する必要があった。
そのため、普段は量産型ピティーを数体食すことでそのエネルギーを確保しているのだが、今日は主から死体を回収するよう、つまり死体がロキの手に届かないようにするように命じられているため、この方法が一番手っ取り早くなおかつエネルギーも補充でき最適であると判断したのだ。
ピティーは、次にニトナの死体を食した。そして、次にイレイザの死体を食べようとしたところで、ふと思い出したようにイレイザの瞳に手を伸ばした。
「そういえば・・確か、この者のギフトは『ギフトの能力を消す』というもの。その能力の源は、目にあったはず。」
そして、ピティーは一切の迷いなく自分の瞳をえぐり出すと、それをイレイザの瞳と入れ替えた。しばらくぱちぱちと新しい目の感触を確かめていたピティーであったが、やがてその瞳が赤色に輝き出した。
「・・どうやら、ちゃんとギフト付きでの眼球の移植に成功したようです。これでまた、我が主のお役に立てる・・。」
天を仰ぐピティーの瞳は、エンキに対する忠誠心で輝いていた。
ピティーはその後、第二のゾーンへ足を進めようとするも、ロキによりゲートが閉ざされてしまい断念。目的は果たすことが出来なかったピティーであったが、ここに初めて、二つの『ギフト』持ちが誕生したのであった。
ウク・レレ
身体能力 4
知性 3
社会性 3
運 3
能力の強さ 3
ギフトの能力・・『感情を音で伝える』
スマイル
身体能力 5
知性 4
社会性 2
運 5
能力の強さ 5
ギフトの能力・・『主人公』(主人公三原則:その一、『主人公は、負ける度に強くなる』その二、『主人公は、死なない』その三、『主人公は、不可能を可能にする』)ようするに、主人公特有のご都合主義の塊チート能力。
ムーン
身体能力 2
知性 2
社会性 5
運 4
能力の強さ 1
ギフトの能力・・『死んだら幽霊体になる』
ジミナ
身体能力 2
知性 5
社会性 2
運 4
能力の強さ 2
ギフトの能力・・『影が薄い』
これにて5th stage終了です!!残すところは後Final stgeのみ!!
5th stage裏話やFinal stageの登場キャラ、また今後の予定については明日活動報告で書きます。




