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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
5th stage  『主人公』たちの物語
51/110

part6

レッドリーフ「今日目薬買ったんだ。」

ソニア&シャルン&オクタ-「・・・。」

レッドリーフ「え、反応なし?」

ソニア「いや、だってどうでもいいからな。」

シャルン「つまらねえ話した罪でお前乾パン買ってこいや!!」

オクタ-「え、そこ焼きそばパンとかじゃないんだ。」

レッドリーフ「何でさ!?罪を憎んで人は憎まずにセクシーでしょ!?」

ソニア「いや、何を言っているんだお前。」

《ロキside》


『ねえ、ロキ。これはいったいどういうことなのかな?』


 ロキの目の前には、目を黄色く光らせるエンキの姿が。ロキは、エンキから感じるプレッシャーに気圧されまいと自らも気を高める。それでも、努めて平静にこう尋ねた。


『おい、エンキ。一体何のことだ?オレにはさっぱり見当がつかねえんだが。』


『とぼけるんじゃないよ。君、第二のゾーン内において、「死の概念を奪っている」だろう?あの糸使いがいくら丈夫だとしても、あの状態で生きていられるはずがない。』


 やはり気付かれたか・・。ロキはエンキに聞こえないよう小さく舌打ちする。実際、ロキは第二のゾーン内において、絶対に死者が出ないように細工をしていた。それが、先程エンキが言った『死の概念を奪う』というモノ。

 ロキは、『奪う神』である。その固有能力は、『あらゆるモノを奪う』力。普段は運命によって死を定められた者から命を奪うのがロキの仕事だ。それ故、人間たちはロキのことを『死神』と呼び恐れている。

 一方、エンキは『与える神』。その固有能力は、『あらゆるモノを与える』力。この世界に生きる人間は全てエンキによってその命を与えられている。そのことは人間も知っており、世界を造る大きな大陸の中心には、エンキを祀る巨大な塔と、それを囲むようにしてエンキの信者のみが集められた『神聖国』と呼ばれる国が存在する。

 ロキは、常々何故エンキには信者が大勢いるのに自分には信者がいないのかということに不満を抱いていたが・・その話は今はどうでもいい。

 ロキが第二のゾーンにおいて死者を出さないよう設定していたのは、ノリノリで忍者屋敷を作るあまり、トラップの殺傷力がかなり高くなってしまったからだ。他のゾーンでは、予定では死に至るダメージが与えられると思った場合ロキが強制転移させるつもりであったが、それはエンキの登場により不可能になった。しかし、このゾーンにおいては、ロキが自分の仕掛けたトラップの威力を見たかったので、ついついそういう設定にしてしまっていたのである。


『あー、あれね。あのことね。あれかぁ・・。』


 何か上手い言い訳はないだろうかと、ロキはマッハで脳をフル回転させる。流石に、馬鹿正直に『お前を倒すための人間を選抜して鍛えようと思ったんだよ!』とは言えない。言えば最後、あいつらはピティーをけしかけられ全員殺されるだろう。・・いや、あのスマイルとかいう奴は死なないかもしれないが。

 しかし、そのスマイルもまた問題だ。スマイルは、ここに転移される以前、既に町を一つ滅亡させている。それも、自分が生まれ育った町だ。

 その理由は、『主人公が旅に出るには理由がいるから』というものらしい。そこで選んだ理由が、『生まれ故郷の崩壊』・・。先程参加者の過去をエンキに隠れて調べた際に知ったことだ。どうやら、16歳になったら旅を始めると決めていたらしく、それを律儀に守って16歳になるまでは特に目立った行動を起こしてはいなかった。それまでは一人山で魔獣と戦ったりして力をつけていたらしい。

 ロキがスマイルを転移させたのはちょうど村を崩壊させたすぐ後のことであった。こいつを元の世界に戻してしまえば、人間が滅びかねない。

 エンキへ真意を悟られないことに加え、スマイルを帰さないこと。その二つをどうにか達成できる条件をロキはひねり出した。


『・・ほら、第三の試練は「闘技場」だ。そこでこれまでの参加者全員が戦って、最後に残った一人だけが生き残る。このゾーンで死ぬより、ここで大勢死んでくれた方が盛り上がるだろ?』


 ロキがそう言うと、エンキは疑わしげな視線をじっと向けてきたが、しばらくすると、にっこりと笑顔を浮かべた。


『なーんだ!!確かにそっちの方が面白い!!ロキ、君もなかなか分かっているじゃないか!!』


『はは・・。そ、そうだろ?』


 正直苦しい言い訳かと思っていたが、どうやら納得してくれたようだ。ロキは、とりあえずエンキの方は解決したことに安堵した。しかし、それと同時に苦い気持ちもある。エンキの前でこう言ってしまった以上、闘技場においては死者が出てしまうだろう。第一のゾーンでも予定外の死者を出してしまったロキにとって、この事実は痛いものであった。


-パチン。


 唐突に、エンキが指を鳴らす。それとほぼ同時に、一体のピティーがエンキとロキの間に姿を現した。突然の第三者に驚くロキに対し、エンキはピティーを指さしてこう告げた。


『このピティーは一番はじめに作った個体だ。これだけには、『身体を透明にする』ギフトを授けてある。これには、今から君のお手伝いをしてもらうよ!!』


 エンキの言葉に合わせ、ピティーが恭しくお辞儀をする。しかし、その視線は冷たく、ロキへの敬意は一切感じられない。ロキがなんとも言えない表情を浮かべると、エンキは『こら、一応こいつも私と同じ神だよ?敬いなさい。』とピティーを叱った。


「・・分かりました。エンキ様がそう仰るのでしたら。」


 ピティーはそう言うと、おもむろに手でハートの形を作る。


「ラブラブきゅんきゅん♡ロキ様、だーい好き♡」


 先程とは違い、満面の笑みでロキへの敬意を贈ったピティー。しかし、その抑揚のない声と台詞が合わなさすぎる。しかも、言い終わるとすぐに元の無表情に戻り、「・・これでいいでしょうか。」とエンキへ確認をとった。


『うん、ばっちし☆練習通り上手くやれてるね!!』


 通りで妙にポーズだけは完璧なわけだ。実際ちょっと違和感はあるものの嬉しかった。


『おー、あんがとな、ピティー。・・で、お前はオレの何を手伝ってくれるんだ?』


 そう尋ねたロキに、しかし答えたのはピティーではなくエンキであった。


『これには、参加者の死体を回収してもらうよ。何故か、これまでのゲーム参加者の死体はどこかに消えてしまったから、そんなことが起こらないようにね。』


 エンキの視線は真っ直ぐロキに向けられている。その目は、いつの間にか再び黄色く光っていた。その目を見て、ロキは既に自分の計画の一部がエンキに気付かれていたことにようやく気付いたのであった。



▼▼▼▼▼



《闘技場にて》


 第三の試練、『闘技場』。このゾーンは、円形の屋根のない闘技場の中で参加者同士戦い、中心のステージから階段を上った先にある『勝者の椅子』に座った人のみが元いた世界に戻ることが出来る。

 勝利の条件は、自分以外の全員を倒し、『勝者の椅子』に座るか、1時間『勝者の椅子』に座り続けること。また、第二のゾーンで巻物に名前を書いたモノたちはチームとして扱われ、その中の誰か一人が勝利すれば、生きている場合に限りチームのメンバーも元いた世界に戻ることが出来る。

 

 第三のゾーンに足を踏み入れた“わたし”ちゃんは、直後そんなアナウンスを聞いた。


「・・1時間座り続けるのなんて不可能にゃ。絶対誰かが邪魔をする。そうなると・・奴らと戦うことになるのかにゃ。」


 “わたし”ちゃんはぼそっとそう呟く。闘技場には天井がないため、先程から激しい雨と風が“わたし”ちゃんに襲いかかっていた。この天候は、“わたし”ちゃんの背負うレイニーの感情の表れ。彼女は、アナウンスを聞いて、この状況に絶望しているのだろうか。それとも、未だレレの死を悲しんでいるのだろうか。


「・・人間の感情はよく分からんにゃ。」


 “わたし”ちゃんは、闘技場の奥まで歩くと、そこでレイニーを背中から下ろした。そのまま背を向けて闘技場の中央へ向かおうとした“わたし”ちゃんの耳に、「待って!!」と叫ぶ声が聞こえてきた。振り返ると、そこには震える身体を抱きしめそれでも何とか立ち上がり“わたし”ちゃんを見つめるレイニーの姿があった。


「待って・・。わ、私は、もう誰も死んでほしくないの・・。誰も失いたくないの・・。」


「・・“わたし”ちゃんだって死にたいわけじゃないにゃ。でも、こうしなきゃあ生き残ることができんのだにゃ。」


 “わたし”ちゃんは、レイニーを心配させまいとあえて笑顔を作った。レレが自分たちを逃がす時にそうしていたように。


「大丈夫にゃ!!奴らに野生の底力を思い知らせてやるにゃ!!」


 “わたし”ちゃんが胸を張ってそう言うと、レイニーは一瞬顔を伏せた後、すっと顔を上げた。その瞳には、決意が宿っている。


「それなら・・私も一緒に戦う。何もしないでみているだけなんて・・そんなの、嫌だ。」


「・・足手まといはいらないにゃ。」


 しかし、“わたし”ちゃんはレイニーの意志を無視し、振り返って再び中央に歩を進める。もう視界にはレイニーは映らない。だから、後ろからついてくる足音など知らない。


(・・ほんと、人間って何考えているか分からないにゃ。)


 未だに天候は荒れている。それでも、“わたし”ちゃんが立つ地面のみは、すっと日の光が差し込み明るく照らされていた。


 待つこと数分。水たまりの水がぴしゃぴしゃと跳ねる音と共に、その声は聞こえてきた。


「あ~あ、折角の銃が濡れて使えないじゃ~ん。マジテンション下げ下げ~。」


「君には剣もあるだろう?これしきの雨、僕たちには何の問題もないさ。」


 “わたし”ちゃんは、ぞわっと尻尾の毛が逆立つのを感じた。その瞬間、きらりと光る剣閃が見え、“わたし”ちゃんは地面に素早く伏せてそれを避ける。それと同時に、ギフトの能力を半分解除(・・・・)。その身体と顔が毛に覆われ、“わたし”ちゃんは獣人と呼ぶのにふさわしい姿になった。

 

「久しぶりだねにゃんこ~☆元気してた!!?」


 そう呼びかけると共に斬りかかってくるクラッカー。対する“わたし”ちゃんは、「キシャー!!」と叫んで爪を振りかぶる。この形態になると人語は話せないのだ。

 “わたし”ちゃんの爪は、クラッカーの剣を弾く。しかし、別方向からまた剣閃が襲いかかり、身体を捩るもよけきれず、脇腹を切られてしまう。

 “わたし”ちゃんは、構わずクラッカーの左手に噛みつく。クラッカーは、「いてっ!?」と叫び、振りほどこうとするも、“わたし”ちゃんは噛みついたまま離さない。ついには、そのまま手を噛みちぎった。


「何するんだよ!!このけだものがぁぁぁぁ!!!」


 クラッカーはそう吠え、“わたし”ちゃんの腹を蹴り飛ばす。吹き飛ばされた“わたし”ちゃんに、クラッカーが目を血走らせながら追撃しようとするが、その間に震える手で傘を握りしめたレイニーが立ちふさがった。


「こ、ここは通さない!!」


 クラッカーは軽く舌打ちした後、「邪魔ぁぁぁ!!」と叫び、残った右手でレイニーを殴り飛ばした。レイニーは、殴られた右頬を押さえながら、「ああ!?」とうめき声を上げて地面に倒れる。クラッカーはそんなレイニーなど最早目に入っていなかった。頭の中は、自分の手を噛みちぎった“わたし”ちゃんへの怒りでいっぱいだった。

 しかし、そんなクラッカーが目にしたのは、頭を握りしめられ宙に持ち上げられる“わたし”ちゃんと、それを実行しているスマイルの姿であった。


「仲間を傷つける奴を、僕は許すつもりはない・・!たとえ、それが猫であったとしてもね!!」


 スマイルはそう言うと、“わたし”ちゃんの身体を思いっきり地面にたたきつけた。どこからか、「やめてぇぇぇ!!!」という叫び声が聞こえてくる。


「・・ちょっとリーダ~。私がこの猫抹殺したかったんだけれど?」


「ごめんね。僕も仲間を傷つけられてついかっとなってしまったのさ。」


「まあいいけどさ~。死体をいたぶるのも、いいもんだし♪」


 クラッカーはそう言って、地面に埋まった“わたし”ちゃんの元まで近づき、その姿を見下ろした。その姿はギフトの効果が切れてしまったためか、子猫の姿に戻ってしまっている。

 クラッカーは、にたにたと薄気味悪い笑みを浮かべながらしゃがみ込んだ。ポケットからナイフを取り出し、舌なめずりする。

 その時、しゃっという音と共に、クラッカーの顔にすっと三本の切り傷が走った。


「にゃ、にゃー・・。」


 “わたし”ちゃんが瀕死の状態でクラッカーの顔をひっかいたのだと気がついた時、クラッカーは怒りにまかせてその心臓にナイフを突き刺した。

 “わたし”ちゃんは、「にゃー・・。」という断末魔の声と共に、その目を閉じる。


-その瞬間、大気にビリッと電流が走った。


 クラッカーはぞくっと背筋が震え上がる気配を感じ、慌てて後ろを振り向く。するとそこには、頭を抱えてうずくまるレイニーの姿があった。


「ま、また守れなかった・・。あの時と同じ・・。お父さんとお母さんが殺されたときと・・。ゆ、許さない・・!!よ、よくも“わたし”ちゃんを・・レレを・・!!あああ・・・。ああああああ!!!!!!」


 レイニーが怒りの叫び声を上げる。すると次の瞬間、轟音と共にまばゆい閃光がクラッカーを襲い、クラッカーの身体は忽ち真っ黒焦げになった。


「クラッカー!!・・よくも、僕の仲間を殺したな!!」


 仲間を殺された怒りで、スマイルがレイニーに襲いかかる。しかし、スマイルの行く手を阻むのは、雨のように降り注ぐ雷の嵐だった。スマイルは、その内の一つに直撃し、一瞬で全身を焦がされる。



-レイニーが三歳の頃、彼女の家に盗賊が入り、両親は無残にも殺された。その際も、レイニーは怒りを露わにし、雷を落としたのだった。その怒りは三日間収まることなく、村は雷により全焼した。辛うじて避難に成功し生き延びた村人は、子供たちにこう言い聞かせたという。


『レイニー・ブルーを怒らせないで。彼女が怒ると、雷が降るから。』

“わたし”ちゃん

身体能力 4

知性 1

社会性 2

運 2

能力の強さ 2


ギフトの能力・・『人間になれる』


ビスケット・クラッカー

身体能力 4

知性 2

社会性 1

運 3

能力の強さ 4


ギフトの能力・・『ポケットの中に何でも収納できる』(自分で持ち上げることが出来るもののみ)


正直今回の話は動物愛護団体から苦情が来そう・・。次回更新もなるべく早く!!

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