part5
レッドリーフ「くそ眠い。」
ソニア「それはお前の自業自得だな!!」
シャルン「けもフレ一挙を3時半まで頑張って全部見たのが結構響いとるようやな~。」
レッドリーフ「でも、後悔はしていないよ!!それに、私夜行性だからね!!」
オクタ-「駄目だこいつ。頭までフレンズ化してやがる。」
《レイニー&レレ&“わたし”ちゃんside》
レイニーとレレの二人と合流することが出来た“わたし”ちゃん。忍者屋敷のトラップの連鎖からは無事逃れることが出来た“わたし”ちゃんであったが、今彼女は別の危機に瀕していた。それは・・
「にゃ、にゃああああ♡“わたし”ちゃんの耳を触るのをやめるにゃああ・・!!」
「で、でも気持ちよくって・・。止められないぃぃ・・!!」
レイニーに耳を触られ、とろんとした表情を浮かべる“わたし”ちゃんと、あまりの耳の手触りの良さにすっかり虜になってしまったレイニー。どこからか奏でられるメロディーと共に二人の息づかいは荒くなっていき、あたりにピンク色のオーラが漂う。
「し、しまった・・。この二人の百合百合した絡みを見たくてちょっぴりエロい気分にさせたら、予想以上に破壊力が・・がふっ!?」
この状況を作り出した張本人、レレが鼻血を出して倒れたことにより、二人とも正気に戻り、何とか18禁のタグをつけずにすんだ。
レイニーと“わたし”ちゃんは、何故か鼻血を大量に流し倒れているレレを見つけ一瞬パニックになったものの、直後、「ふ、フヒヒ・・美少女同士の絡みサイコー・・。」とレレが呟いたことによって、“わたし”ちゃんはゴミを見るような目でレレを見下す。
「どうするにゃ?この変態。置いていくかにゃ?」
「い、いや・・こんなんでもいい人だから、とりあえずつれていこうよ。」
そう言うと、レイニーはレレの足を引っ張り、引きずって歩き始めた。・・どうやら、レイニーも少し怒っているようである。
レイニーと“わたし”ちゃんの二人は、隣に並んで歩きながら、改めてお互いに自己紹介することにした。
「ちょっぴり遅れちゃったけれど・・私の名前はレイニー。そして、この子がレレ。こ、これからよろしくね。」
「私の名前は“わたし”ちゃんだにゃー!!こう見えて元々は猫なんだにゃ。」
“わたし”ちゃんが得意げにそう言って胸を張ると、レイニーは驚いて目を丸くする。
「そ、そうだったの!?あ、だから猫耳が生えているんだね。・・また触ってもいい?」
「だ、駄目だにゃ!!あれはもうこりごりだにゃ!!」
“わたし”ちゃんが慌てて拒否すると、わかりやすくしょんぼりと落ち込むレイニー。その様子を見た“わたし”ちゃんは慌ててフォローを入れた。
「じょ、ジョークジョーク!!猫ジョークだにゃ!!時々なら触ってもいいにゃ!!」
“わたし”ちゃんがそう言うと、途端にぱあっと瞳を輝かせるレイニー。“わたし”ちゃんはほっとすると同時に、何で猫の自分が人間に気を遣わないとならないんだろうか・・。と疑問に思う。ただ、そんな疑問も、嬉しそうなレイニーを見ている内に“わたし”ちゃんの頭から消えていった。この二人、かなり単純な性格をしているようだ。
「う、うーん・・。」
その時、ようやくレレが目を覚ました。
「あ、変態が起きたにゃ。また寝かせるかにゃ?」
にっこり笑顔でレレに爪を向ける“わたし”ちゃん。レイニーが慌てて止めに入り、レレは何とか永遠の眠りにつかずにすんだ。
「やあ。私はウク・レレ。レレと呼んでくれてかまわないよ。」
鼻血を拭き、にっこり笑顔で自己紹介すると共に握手を求めるレレ。“わたし”ちゃんは「しゃー!!」とレレを威嚇して差し出された右手をひっかいた。
「ぐはっ!?し、しかし猫耳の美少女に引っかかれたと思えばむしろこの痛みはご褒美・・!!」
結果、変態が新しい扉を開きかけただけであった。“わたし”ちゃんは、そんなレレを見て、恐怖に身体を震わせる。
「こ、こいつ・・ガチでヤバい奴にゃ!!人間って怖いにゃあああ!!!!」
このままだと“わたし”ちゃんが人間恐怖症になりかねないので、レイニーは“わたし”ちゃんの頭を優しく撫でてあげることにしたのだった。
その後、レイニーの説得で何とかレレに対する恐怖心を押さえ込んだ“わたし”ちゃんは、二人と一緒にこのゾーンのゴールを目指すことにした。勿論、それに伴い巻物に“わたし”ちゃんの名前も書き加えてある。
「ところで、“わたし”ちゃんって名前ってなんでそんな名前なのかい?ずっと気になっていたんだ。」
レレがふと思いついたようにそう尋ねると、“わたし”ちゃんはピンと尻尾を立てて敏感にその言葉に反応した。
「そう!!誰も聞いてくれないからすっかり言うタイミングを逃してたにゃ!!“わたし”ちゃんが“わたし”ちゃんと名乗るのには深~い理由があるのにゃ!!」
そう言って得意げに胸を張る“わたし”ちゃん。レイニーとレレはそろって「おおー!?」
と期待を込めた目で“わたし”ちゃんを見つめる。そんな二人の視線を受け、“わたし”ちゃんはさらに身体を大きく反らす。
「にゃーはっはっは!!聞いて驚けにゃ!!“わたし”ちゃんが自らを“わたし”ちゃんと名乗る理由、それは・・!!」
ここで、“わたし”ちゃんはためをつくる。レイニーとレレがごくりと唾を飲み込む音が廊下に響いた。
「それは~、ムーンちゃんが“わたし”ちゃんの飼い主だったから~♪」
「そう!!ムーンが“わたし”ちゃんの飼い主だったからにゃ!!・・え?」
突然割り込んできたここには居ないはずの人物の声。レイニーでもレレでもない。聞き覚えのあるその声に、“わたし”ちゃんは尻尾の毛が逆立つのを感じた。
「うわ!?びっくりした!!」
「ひ、ひいっ!?こここ、この子、身体が透けてるよ!?」
レイニーとレレもその声の主・・ムーンの姿を見つけ、それぞれ驚きの声を上げる。しかし、ムーンはそんな二人には目もくれず、“わたし”ちゃんの方だけを見て申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ごめんね?本当はこんなことしたくないんだけれどさ~・・。一応スマイルに対してもここまで連れてきてもらった恩があるんだよね~。・・てなわけで、またね!!」
ムーンはそう言うと、壁をすり抜けてその姿を消してしまう。その人間離れした荒技を見て、レイニーは「ひ!?やや、やっぱり幽霊!?」と悲鳴を上げるが、“わたし”ちゃんはそれどころではなかった。
ムーンは問題ではない。しかし、あの感じだと、ムーンは確実に自分たちの居場所をスマイルとクラッカーに伝えるだろう。あの二人に関わるのは不味い。“わたし”ちゃんの野生の勘が全力でそう告げていた。
「レイニャー!!レレにゃん!!大変だにゃ!!早くここから移動しないとヤバいことになるにゃ!!!」
“わたし”ちゃんのただならぬ剣幕に、レレも真剣な表情に変わり、ムーンが消えていった壁を見つめる。
「・・あの幽霊が言っていたスマイル・・だっけ?そいつが来るからヤバいってことかい?」
「そうだにゃ!!あいつはヤバいにゃ!!“わたし”ちゃんも危うく殺されるところだったにゃ!!」
「こ、殺される・・!?」
『殺される』という言葉に、レイニーが過敏に反応し、涙目になる。ムーンの登場により、一気にパニック状態に陥ったレイニーと“わたし”ちゃん。そんな二人の心を、優しいウクレレの音色が鎮める。
「二人とも落ち着いて・・♪焦ったり怖がったりしていては落ち着いた判断が出来ないよ。とりあえずこの場所を早く離れよう。それに、スマイルとかいう奴が追いついてくる前にこのゾーンを抜けてしまえば問題ないよ。」
「そ、そうだよね!!多分もう少しでゴールだし・・。」
「お、おみゃー、変態なだけかと思っていたら案外まともなことも言うんだにゃ・・。ちょっと見直したにゃ。」
レレのギフトの効果もあり、落ち着きを取り戻したレイニーと“わたし”ちゃん。そんな二人にレレは優しい視線を向け・・。
そして、ウクレレの弦をぽろん♪と一音鳴らした。その音を聞いたレイニーと“わたし”ちゃんの二人は、急に血相を変えて走り出した。その場にレレ一人を残して・・。
「・・なまじ耳がいいのも考え物だね。もうそこに来ているんだろう?姿を見せたらどうなんだい?」
レレは、小さくなっていく二人の後ろ姿を見送りながら、背後に感じた気配に向けて声をかける。次の瞬間、爆音と共に背後の壁が破壊され、そこからバズーカを抱えた道化師姿の少女が姿を現した。爆発の余波で飛んできた壁の破片を、レレは振り向きざまに全て蹴り落とした。
「ひゅー♪あんた、そんななりのくせになかなか動きいいじゃーん?もしかしてぇ・・私と同業者かにぃ?」
道化師風の少女・・クラッカーは両手にピストルを持ち、それをくるくる回しながら近づいてくる。
「私ってピエロに見えるの?それなら君の視力を疑うけれど。」
レレは片眉を上げつつクラッカーを煽っていく。しかし、クラッカーはにいっと狂気じみた笑みを浮かべこう答えた。
「いいやぁ?私が言う同業者っていうのはぁ・・人殺しのことだよぉん♪」
クラッカーは、そう言うと同時にレレめがけ銃弾を放つ。しかし、その銃弾はレレに届く前に軌道がずれ、レレに当たることなく壁にめり込む。
「クラッカー!!あんまり先走ってはいけないよ!!この僕のそばに居るんだ!!」
その時、クラッカーの後ろから凜々しい顔立ちの少女が現れた。レレは、その姿を見た瞬間、こいつが一番ヤバい奴だと直感的に理解した。それと同時に、レレは腰に隠していた糸のようなモノを数本天井の梁や柱目掛けて投げる。
「お?なんじゃこりゃ。糸?こんなのすぐ切っちゃうよ~。」
そう言って、柱に巻き付いた糸をポケットから出した剣で断ち切ろうとするクラッカー。しかし、直後、その剣は梁の上から回された糸により絡み取られてしまう。その隙を突き、レレはクラッカーの顔面に膝蹴りを食らわす。
鼻血を出し倒れたクラッカーは、すぐに体勢を立て直し起き上がろうとするが、何故か力が入らない。そのクラッカーの耳に、不思議な音色が聞こえてきた。再び顔面を蹴られるクラッカー。その時クラッカーは見た。レレが走りながら壁や梁にかけた糸を爪弾いているのを。
(あれは・・糸じゃない・・?弦・・!?)
レレは、戦いながら演奏をしているのだった。奏でる音色から伝わる感情は、『脱力』。ギフトの性質上、自分の感情をコントロールするのが絶妙に上手いレレは脱力の感情のままでも戦うことが出来るが、他の皆はそうはいかない。しかし、クラッカーに再び蹴りをいれようとしたレレの前に、スマイルが両手を広げて立ちふさがった。
「僕の仲間をこれ以上傷つけるというなら、僕も容赦しないよ?」
「そっちから仕掛けてきた癖によく言うよね・・。」
スマイルはレレ目掛け鋭いパンチを放ち、レレはぎりぎりのところでその攻撃をかわす。
「言っておくけれど、君のそのギフトは僕にはもう通用しないよ!!耳が慣れたからね!!」
「・・私の音楽の良さが分からないとか、残念な耳だね。付け替えた方がいいんじゃない?」
レレが後ろに跳ねたところに、スマイルの回し蹴りが襲いかかり、レレは脇腹を蹴られて壁に激突する。「がはっ!」とうめき声を上げ、血を吐くレレ。
「主人公には、仲間を守るための勇気がある!!目的を果たすための強い信念がある!!そんな主人公相手に感情操作を行おうとする敵なんて、所詮ラスボスにはなりえない、中途半端な存在だ。僕の経験値になって貰うよ!!」
そう叫び、拳を振り下ろすスマイル。その攻撃を、身体を弦で引っ張ることにより何とかかわしたレレは、立ち上がり一人呟く。
「・・私はさすらいの吟遊詩人。旅をしていれば魔物や盗賊に襲われることもあるから身を守るための術は手に入れてある。それでも、一度も人を殺したことはないんだ。『人の死』ほど悲しい音色はないから。でも・・」
スマイルは構わずに突っ込んでくる。レレは、弦を使って身体を天井まで持ち上げ、その攻撃をかわすと共に、目を見開いて叫んだ。
「私には守りたい大切な音がある!!レイニーのどこまでも純粋で綺麗な心の音、“わたし”ちゃんの元気で無邪気な心の音・・。その音を守るためなら、私はあえて死の音色を奏でる死神になろう!!」
レレは、天井の梁から、スマイルの首元目掛け弦を投げる。弦がスマイルの首に巻き付いたのを確認したところで、レレは弦の先端を持ったまま梁から飛び降りた。当然、その弦の先はスマイルにつながっている。
レレが飛び降りると同時に、スマイルの身体は持ち上がる。摩擦熱により、梁に巻き付けられた弦がキュルルル!と音を立て白い煙を上げた。スマイルは、首に巻き付いた弦を外そうと必死にもがく。しかし、レレが手元の弦をピンっと爪弾くと、スマイルはがっくりと力なくうなだれ、そのまま地面に落ちた。
「・・君の音、やっぱり私の好みじゃないね。」
弦をしまいながらそう吐き捨てるレレ。
「そう~?私は気に入ったけれどね。お前のクソみてえな不協和音!!」
その声が聞こえると同時に、レレは慌てて横に飛び跳ねる。そのすぐ横を、複数の銃弾がかすめていった。レレが銃弾が飛んできた方を見ると、そこには目を血走らせながら剣を構えてこちらに向かってくるクラッカーの姿が。レレはとっさにウクレレを構えて剣を受け止めた。
クラッカーは、ウクレレに剣がめり込むと、即その手を放し、ポケットから別の剣を取り出しレレに斬りかかった。レレは上体を反らすことでなんとかその攻撃を避けるが、頬にぴっと切り傷が走る。
「フハハハハ!!たーのしー!!ねえねえ知ってる?私はこう見えて剣術が一番得意なんだよ~♪しかも独自の流派、『千刀流』だぜ~!!!」
笑い声を上げ、クラッカーは二つあるポケットを同時にバン!と叩く。すると、そこから数え切れないほどの刀が飛び出してきた。千刀流と言うからには、あの刀は全部で千本あるのだろうか。ポケットから飛び出した刀は、まるで雨のようにレレに襲いかかり、張り巡らされた弦を全て断ち切っていく。レレはとっさにウクレレを顔面の前に出して防御するが、それにより無防備になった腹部に、クラッカーの銃弾が襲いかかった。
「がはっ!?」
腹部の衝撃に、思わずうずくまってしまうレレ。そんな彼女に向かって、剣の雨が降り注ぎ・・。
-数秒後、そこには無数の剣に身体を貫かれたレレの姿があった。
「おーい、リーダ~。それくらいで死ぬたまじゃないっしょ?いい加減起きたらどうなのさっさ~!!」
クラッカーは、そんなレレには目もくれず、先程レレに首を吊られて地面に倒れたままのスマイルに話しかけた。すると、スマイルの身体はぴくっと動き、直後、バキバキっと首を鳴らしながら何事もなかったかのように立ち上がる。
「『主人公は、死なない』・・!!・・とはいえ、さっきのは結構効いたな~。僕もちょっと油断していたよ。ありがとうね、クラッカー。」
「えへへ~♪褒められても全然嬉しくねー!!てか相変わらずキモいわそのチート。」
クラッカーはそう言ってキシシシ!!と奇妙な笑い声を上げる。スマイルは、「君は相変わらず口が悪いなぁ・・。」と苦笑いを返し、キョロキョロと辺りを見回す。
「あれ?そういえばムーンはどこに行ったのかな?」
「おろろ?そういやああの幽霊ちゃん見ないね~。さっきのバトルにびびって逃げたのかもよよよ?あいつ物体には干渉出来ないみたいだから死んだってことはないと思うしー。」
「そうか・・。探しに行った方がいいかな?」
「いや、いいんじゃないの~?もう巻物は人数分手に入れたし、このままゴールに行っちゃいましょーぜ。もしかしたらゴールで待ってるかもだしさ♪」
そう言うと、クラッカーは、ポケットから巻物を二つ取り出してジャグリングし始めた。スマイルは、その内の一つをキャッチし、地面に倒れるレレに視線を向ける。
「そうだね。・・それに、彼女の仲間は既に目的地に向かっているようだ。このゾーンをクリアできるのは四人。彼女の仲間には・・申し訳ないけれど、脱落してもらわないとね。それが正しいプロットだ。」
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一方、こちらはレイニーと“わたし”ちゃんの二人。レレの鳴らした弦の音を聞いた瞬間、唐突に逃げなくては!!という焦燥感に駆られた二人は、ただひたすらに足を動かしていた。
しかし、レレから離れるほどにギフトの効果は薄まっていき、正常な思考を取り戻した二人はレレの行動の意味を悟り涙を流した。
「・・あの時、既にあいつらは来てたんだにゃ!!だから、あいつは“わたし”ちゃんたちを逃がすために一人・・。」
“わたし”ちゃんは、悔しげに唇をかみしめる。既に目の前にはゴールである次のゾーンへのゲートがある。しかし、とても喜べる気分ではない。“わたし”ちゃんは、にゃー!!と吠えて地団駄を踏んだ。
「もう・・!!一体何なんだにゃ!!人間って奴はどいつもこいつも!!意味不明だにゃ!!訳わっかんねえにゃ!!何で命をそんなに粗末にするにゃ!!自分のことだけ考えて生きていればそれが一番楽なはずなのに、何で・・何で・・“わたし”ちゃんは二度も命を救われたんだにゃぁぁぁ!!!」
やり場のない感情を爆発させる“わたし”ちゃん。しかし、感情を爆発させられるならまだマシな方である。もう一人、レイニーの方はというと、先程からうずくまりぶつぶつと何事か呟いていた。その様子は、どう見ても危ない状態だと分かるものであった。
「どうして・・?れ、レレが死んじゃう・・?そ、そんなの嫌だ。あの時も同じ・・。もうこんなの嫌だ・・!!」
しばらくすると、ようやく“わたし”ちゃんもレイニーの様子がおかしいのに気がついた。“わたし”ちゃんが何度呼びかけても全く反応がない。奥の手で耳をモフらせもしたが、それでも反応しなかった。
どうしたものかと困惑する“わたし”ちゃんの耳に、その時爆音と共に壁が破壊されるような音が聞こえてきた。
(あいつらがもうこっちに向かってきてるのかにゃ!?そ、それならレレにゃんはもう・・。)
レレの死を悟り、“わたし”ちゃんは一気に絶望の縁へとたたき落とされる。しかし、あふれ出る涙をぐっと押さえ込み、“わたし”ちゃんは顔を上げた。
「・・ふん!!“わたし”ちゃんは猫だにゃ。ゴミ箱を漁ってでも、人間の食べ物を奪ってでも、どんなことをしてでも今まで生きてきたにゃ。」
“わたし”ちゃんは、まだ動けないでいるレイニーを抱え、ゲートに向かって進み出した。
「・・だから、“わたし”ちゃんは、醜くあがいてでも最後まで生き延びてみせるにゃ。」
-ロキの第二の試練、突破者二組。
そのアナウンスは、第二のゾーンにいる全員に届いた。勿論、その中にはスマイルとクラッカーの二人もいる。
「突破者二組?二人ってことなのかな~?それなら、あの糸野郎の仲間二人ってこと?じゃあ、残りは私たち二人で決定かな?」
「そうだね・・。ムーンには悪いけれど、ここでお別れみたいだ。」
レイニーと“わたし”ちゃんから遅れること数分、スマイルとクラッカーの二人もゲートをくぐった。その結果、またもやアナウンスが流れる。
-ロキの第二の試練、突破者四組。
そのアナウンスに唯一疑問を抱くことが出来たのは、未だ剣に突き刺された状態のレレであった。レレは、気力によりまだ何とか意識を保っていたのだ。
(突破者四組?何で人数ではなく組の数でアナウンスするんだ?)
レレは、ふんっと力を込め、腹に突き刺さった剣を弦を使って引き抜く。傷口から大量の血が噴き出すが、レレは弦で傷口をおおざっぱに縫い合わせる応急処置を施した後、よろよろとした足取りで歩き出した。
しかし、途中でかはっ!?と吐血して倒れてしまう。レレは、歩くことを諦め、弦で自分の身体を引っ張っていくことにした。
しばらくそうやって身体を引きずって進んでいたレレであったが、ぽちっという音が聞こえて床が消え、レレは重力に従い落下していく。ほどなくして地面に激突したレレであったが、どうやらそこは坂になっていたらしく、レレの身体はごろごろと坂を転がっていく。
地面に身体が打ち付けられる痛みに必死に耐えるレレ。まだここで死ぬわけにはいかない。永遠に続くかと思われた坂がようやく終わりを迎えた時、レレの目の前には赤く光るゲートが見えた。
「は、はは・・。ど、どうやら運良く近道を見つけたみたいだね。」
レレは、這うようにしてゲートまで進んでいき、手を伸ばす。ゲートはレレを拒むことなく、その中に招き入れてくれた。ここで、レレはあの疑問について抱いていた推測を確信に変えた。
(やっぱり・・。私の名前は既に巻物に書かれてある。だから、巻物を持った二人がここを通った後でも私に通過許可は残されているんだ。そうなると、あの突破した組の数とはすなわち巻物の数のこと。あいつらが持っていた巻物は二つだった。そして私たちが持っていた巻物は一つ。それなら、あと一つは・・?)
しかし、新たに産まれたその疑問の答えを見つける前に、レレの身体もまた光に包まれ、ゲートの向こうに消えていったのだった。
久しぶりに昼の投稿。これ、大学の校舎で書いているんだぜ・・?
次回更新は恐らく明日です。




