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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
5th stage  『主人公』たちの物語
48/110

part3

ソニア「ちょっと、眠いので今回はカットで・・堪忍です。」

《チームスマイルvsニトナ&イレイザ》


 声をかけられた以上は振り向かないわけにはいかないだろう。しかし、なんだか物騒なことを言っているしあまり関わりたくない。

 ニトナが無視して再び歩き始めると、今度は別の人物の声が聞こえてきた。


「ちょっと貴女!!スマイルが話しかけているのに無視するとは失礼ではないですか?」


 どこかヒステリックな叫び声だ。それと同時に背後で膨らむ殺気。ニトナはとっさに振り向き、ギフトを発動させる。すると、その直後、ガキィィィン!!という甲高い音と共に、オッドアイの少女がニトナが張ったばかりの『引き籠もり結界』に鉄扇を打ち付けていた。オッドアイの少女は一瞬目を見開いた後「ちいっ!!」と舌打ちをする。結界に守られているとは言え、間近に見える今にもこちらを射殺さんばかりの憎しみが込められた表情に、ニトナは思わず「ひっ・・!」と悲鳴を上げてしまった。


「攻撃が防がれることは視えていたとはいえ、こうもたやすく防がれると腹が立ちますね・・!!」


 オッドアイの少女はそう言って再び舌打ちをすると、後方へと宙返りしながら下がっていく。まるで軽業師のような身のこなしだ。

 オッドアイの少女が後ろに下がったことで、ニトナはようやく他のメンバーも確認することが出来た。オッドアイの少女以外には、にやにやと気味の悪い笑みを浮かべている道化師風の少女と、やたら凜々しい見た目の少女がいる。・・いや、もしかしたら少年かもしれない。最初に話しかけてきた声の主はこいつだろうか?

 そして、ニトナはその中に見知った顔を見つけ、「あ!」と声を上げる。すると、その見知った顔・・“わたし”ちゃんとムーンもこちらに気づき、目を丸くした。


「ああ!!二トにゃーだにゃ!!おみゃー、観覧車で転がっていったけれど大丈夫だったのかにゃ?」


「お、ニトナじゃーん!!やっほー!!」


「えっと、“わたし”ちゃんに、ムーン・・だっけ?この超怖い姉ちゃんたち一体誰なの?・・あと、ムーンの身体何で透けてるわけ?」


「この子たちはね~、右から、クラッカーちゃん、スマイルちゃん、サキちゃんだよ!!そして私の身体が透けているのは死んじゃったからだよ!!」


 ムーンの身体が透けている理由は正直理解不能・・というか、理解したくなかったが、とりあえず全員の名前は把握出来た。その中の一人、スマイルと紹介された少女・・?が、“わたし”ちゃんに問いかけた。


「・・彼女は、君のお友達なのかい?」


「ん~、友達ではないにゃ。単なる知り合いにゃ!!」


「おい、そこは嘘でも友達って言っとけよ猫娘。」


 確かに“わたし”ちゃんの言うとおりなのだが、そこはもう少し空気を読んでほしかった。お前が友達って言ってくれたらこの敵対モードの雰囲気なくなったかもしれないじゃんか!!


「そうなのか。君の友達なら僕のパーティにいれることも考えたんだけれど・・。単なる知り合いなら、やっぱりここは退場して貰った方が良いかもしれないね。」


「その言葉を聞いてほっとしました・・。これ以上、馬鹿が仲間に加わるのはごめんです。」


「そんなことよりさっさと殺っちゃおうZE☆」


 ニトナが危惧した通り、たちまち戦闘モードに入ってしまった。・・て、おいぃぃ!?最後の奴いきなり銃乱射してきたんですけどぉぉ!?てかあいつ、あんな銃さっきまで持っていなかったよね!?どこから出したの!?


「うーん・・なんだか五月蠅いなぁ・・。って、うえええええ!?何かめっちゃ銃弾飛んできてるぅぅ!?」


 ここに来てようやくイレイザが目を覚まし、突然視界に飛び込んできた無数の銃弾に目を丸くする。ニトナはとっさにイレイザに「背中に隠れて!!」と叫ぶ。イレイザは混乱している様子ではあったものの、素直にニトナの言うことを聞き後ろに隠れてくれた。

 ニトナはイレイザが自分の後ろに隠れたことを確認すると、正面に向き直る。クラッカーは「ワハハハハハ!!」と狂ったような笑い声をあげ銃を乱射しており、その弾幕が途切れる気配はない。しかし、自身のギフトに絶対的な自信を持っているニトナは、ただ何もせずじっと動かずにいた。ひきこもっておけば、ニトナは無敵なのだ。


「流石ニトにゃー!!守りだけなら最強だにゃーー!!」

 

 何故か敵側にいるはずの“わたし”ちゃんからそんな歓声が上がる。もしかしたらこいつはニトナたちがただじゃれあっているだけと思っているのかもしれない。そうでもない限りこんなのんきなことは言わないだろう。流石猫・・と思いきや、ムーンも何もない空間に向かい「ニトナちゃん凄いよね~。」などとのほほんとした口調で言っている。うん、人間とか猫とか関係ないね。ただアホなだけだ。

 ・・でも、そんな褒められると、結構嬉しいんですけど!!


「ふははーー!!どうだ!!ニトナのギフトは動かなければ無敵!!悔しかったら私に攻撃してみやがれーー!!」


 ついついいつもの癖で調子に乗ってしまったニトナ。その安っぽい挑発に、サキが額に青筋を浮かべ再びニトナへと襲いかかろうとしたが、それをスマイルがそっと押しとどめる。その顔には、いつもの笑みが浮かんでいた。


「サキ。ここは僕に任せてくれないかな?」


「は、はい!!分かりました!!」


 スマイルに肩を触れられ、ぽっと頬を染めるサキ。スマイルはそのまま銃を乱射しているクラッカーのところまで行くと、「僕に任せてくれ。」と、サキに言ったのと同じ台詞を吐く。クラッカーは、「ちぇー、もうちょっと楽しませてくれてもいいじゃんかいな~。」と唇をとがらせながらも、渋々銃をポケットにしまう。

 スマイルはそれを確認すると満足そうにうなずき、ニトナめがけて猛スピードで駆け寄ると、綺麗なフォームの正拳突きを放った。しかし、当然その攻撃は結界により弾かれてしまう。


「ふはは!!無駄無駄無駄無駄ぁぁ!!」


 スマイルの攻撃が自分に全く通じていないことに余裕を見せるニトナ。そんなニトナに対し、スマイルは再び拳を構え、力強くこう叫んだ。


「“主人公三原則”その3・・『主人公は、不可能を可能にする』!!僕の全力で、君の防壁を打ち破る!!」


 そして、スマイルの拳が勢いよくニトナの結界へとぶち当たる。すると、それまでびくともしなかった結界に一瞬でヒビが入り、唖然とするニトナの顔面をスマイルの拳が襲い、ニトナは背後にいたイレイザと一緒に吹き飛ばされる。

 

「かはっ・・!!な、何で・・!?ニトナの結界は無敵なはずなのに・・。」


 未だに状況が把握出来ていないニトナ。その顔は赤く腫れ上がり、唇は切れ血を流している。そんなニトナにスマイルはゆっくりと歩いて近づき、拳を振り上げ笑みを浮かべた。


「主人公に不可能はないのさ。たとえそれがどんな強敵であろうと、最後に勝つのはこの僕・・『主人公』だ。」


 そう言うと、スマイルはニトナの顔面を拳で地面にめり込ませた。スマイルにとどめを刺されたニトナの身体は、一瞬びくっと跳ね上がった後、力をなくしてうなだれる。

 スマイルはその様を一瞥すると、再び気を失ってしまっているイレイザの元へと歩を進める。

 しかし、そんなスマイルとイレイザの間に割り込むモノが居た。


「やめるにゃ!!なんでこんな乱暴なことをするんだにゃ!!」


「・・“わたし”ちゃん、そこをどいてくれないかな。僕は、君のためにもこの敵を倒さなければならないんだ。」


 スマイルは子供に言い聞かせるような優しい表情でそう言うが、“わたし”ちゃんはきしゃー!!と牙をむいてスマイルを威嚇した。


「そんなの理由にならないにゃ!!猫だって同族同士で傷つけ合うのが悪いことだってくらい分かるにゃ!!そんな簡単なことが分からないなんて、おみゃーら人間は本当に馬鹿ばっかりだにゃ!!」


 その“わたし”ちゃんの言葉に怒りを示したのは、スマイルではなくサキであった。


「黙って聞いていれば、畜生風情が、スマイルを愚弄して・・!!」


「ふん!!“わたし”ちゃんが畜生だって言うなら、おみゃーらはその畜生以下だにゃ。」


 鉄扇を構えるサキに、“わたし”ちゃんも爪を尖らせ臨戦態勢に入る。


「“わたし”ちゃん・・君は僕のパーティから抜ける、そう捉えていいのかい?」


「元々成り行きでついてきていただけだったにゃ。ニトにゃーにあんなひどいことをしたおみゃーとこれ以上一緒にいたくないにゃ!!」


「そうか・・。残念だけれど、主人公を裏切った仲間が主人公と戦って死ぬ・・なんていうのは割とよくある展開なんだ。」


 スマイルの眉は悲しげに下げられているが、その口元には笑みが見える。直後、“わたし”ちゃんの胴体めがけ、スマイルの蹴りが襲いかかる。

 しかし、その蹴りが“わたし”ちゃんに当たることはなく、そして“わたし”ちゃんの姿もまた一瞬のうちにかき消えていた。

 スマイルが首をかしげる視線の先。そこには、茶色い猫を腕に抱えて立ち上がったイレイザの姿があった。


「・・猫ちゃんは、先に逃げていてね。」


 イレイザはそう言うと、後ろのゲートめがけて腕に抱えた猫を投げる。猫は抵抗するように「にゃー!!」と鳴いていたが、その姿はゲートをくぐると同時にかき消えてしまう。そのことを確かに確認すると、イレイザはスマイルへと向き直った。その両目は、赤く光っている。


「よくも私の初めて出来た友達を・・絶対に許さないんだから!!」


 そう叫ぶと、イレイザは腰を落としてスマイルに走り寄る。イレイザを迎え撃とうと蹴りを放つスマイルであったが、何故かこれまで感じていた湧き上がるような強い力を感じることが出来なかった。その結果、放たれた蹴りはごく平凡なものであり、しゃがむことでそれを回避したイレイザは、スマイルの真下まで近づくと、立ち上がる勢いに任せ掌底をスマイルの顎へとたたき込む。その衝撃で脳を揺らされたスマイルは、くらりと地面に倒れ込んだ。

 しかし、この程度の攻撃、スマイルにはたいしたことはない。すぐ、自身のギフト『主人公』の能力の一つ、『主人公は、負ける度に強くなる』力で立ち上がり、以前よりもパワーアップした状態で戦える・・。はずなのだが、何故か力が入らない。そう、まるで自分の力が失われてしまったかのように・・。


「す、スマイル!?大丈夫ですか!?」


 そんなスマイルを見て慌てた声を出すサキ。そんな彼女にも、イレイザは走り寄る。その姿を確認したサキは、とっさに冷静さを取り戻した。

 しかし、落ち着いて未来を視ようとしたサキは、全く未来が視えないことに、再び動揺してしまう。


「な!?どうして私の『ギフト』が使えないの!?」


 動揺により出来た隙を逃さず、イレイザはサキの手から鉄扇を奪うと、それで思いっきりサキの肩を殴りつけた。「ああっ!!」と叫び声を上げ、倒れるサキ。

 無事二人を無力化させることに成功し、息を切らしながら顔を上げるイレイザ。


 その直後、無慈悲にもその脳天を銃弾が貫いていった。


「あは☆なんか『ギフト』使えなかったけれど、それなら普通に撃って殺せばいいだけぽよ~♪」


 硝煙を上げる拳銃を構えるのは勿論クラッカーだ。撃たれた衝撃で後方に倒れながらイレイザが見たのは、イレイザを見つめる三人の少女の姿だった。




 イレイザが倒れてからしばらくして、スマイルの意識も戻り、スマイルたちは目的地であるゲートに向かって歩き出した。地面に倒れるイレイザやニトナの姿など眼中にない。ただ、ムーンだけは通り過ぎざま二人に手を合わせていた。

 そして、ゲートの目の前まで来たところで、スマイルはふいに振り返り、自分の仲間たちを見た。その表情は、仲間たちをねぎらう優しいものだ。


「皆お疲れ!!敵は僕の思う以上に強敵だった。まさか、『ギフト』を消せる能力を持っていたとはね・・。でも、最終的には僕たちのチームワークが勝利を生んだ!!やっぱり僕たちは最強のパーティだ!!」


 スマイルのその言葉を聞き、サキは誇らしい気持ちでいっぱいになる。それと同時に、今回活躍出来なかった自分を悔しく思い、次は必ずスマイルの役に立ってみせると誓う。


「・・私は見ていることしか出来なかったけれどね。いや~、何かいろんな意味で凄かったよ!!特にスマイルとか!!そう思うよね?」


 役に立つどころか何もしなかった幽霊がそんなことをほざく。しかも、また誰も居ない空間に話しかけているのだ。いい加減真面目にしてくれないだろうか。


「ふっふっふ~♪今回は真っ赤な花火が見られたから満足だぜよ~♪」


 真面目にしてほしいと思うのは、このピエロに対してもだが、こいつは今回結果を残しているので何とも言えない。


「“わたし”ちゃんは残念ながら僕のパーティから抜けてしまった・・。次会うときは、おそらく戦うことになるだろう。皆、かつての仲間と戦うのはためらいがあるかもしれないが、それも僕たち主人公に課せられた使命だと思ってこらえてくれ。」


 真剣な表情でそう言うスマイルにあわせサキも神妙な表情を作るが、内心“わたし”ちゃんには怒りしか抱いていないため、会えば恐らく即殺す。ためらいを感じることなどないだろう。

 スマイルは、仲間たちそれぞれの反応を確認すると、再び真剣な表情になる。


「そして・・今から話すのは、非常に深刻な問題だ。神が語った第一の試練、クリア出来るのは全部で7人。つまり、ここで脱落するのは三人だ。そのうち、二人の敵は倒した。しかし、まだ一人、脱落する必要がある。・・つまり、僕たちの内、一人をここで置いていかなければならないんだ。」


 サキは、その言葉を聞いたとき、置いて行かれるのはムーンだと確信した。

 だから、スマイルが笑みをたたえてサキの肩に手を置いたとき、サキはその意味を理解することが出来なかった。


「だから、僕が最も信頼する仲間、サキにここに残って貰いたいんだ。こんなこと、君にしか頼めないからね。」


 サキがとっさに反論する前に、サキはぽんっと身体を押され、気がついた時にはスマイルたちの姿はゲートの向こうへと消えていた。


「す、スマイル!?何かの冗談ですよね!?戻ってきてください!!」


 サキはゲートをくぐろうとするが、その身体がゲートをくぐることはなかった。サキは声が枯れるまで必死にスマイルの名前を叫ぶが、スマイルが戻ってくることはない。

 サキは、しばらく呆然とゲートの前で立ち尽くしていたが、不意に後ろから聞こえてくる無数の足音に振り返った。

 そして、そこには案の定、数え切れないほどのピティーが集まってきていた。恐らく、全てのピティーがここに来ているのかもしれない。その数は、今まで見てきたものの比類ではなかった。

 サキは、迫り来るピティー軍団を前に、自らのギフトを発動させる。その結果視えた未来は、サキの死の光景であり、その未来はどうあがいても変えられそうになかった。




 サキを置いて次のゾーンへと向かったスマイルたち。スマイルは、たった今くぐったばかりのゲートがあった位置をじっと眺めていた。その目からは、一筋の涙がこぼれている。


「ありがとう、サキ・・!!君の尊い犠牲を、僕は一生忘れないよ!!君の信頼に答えて、僕はこの試練を乗り越えてみせる・・!!」


 そんなスマイルの様子を薄気味悪い笑みと共に見つめるのはクラッカーだ。クラッカーは、スマイルについていった自分の目に狂いがなかったことを悟った。


(やっぱり、私の思った通りだ♪あのサキって女は、こいつの『主人公』の魅力に魅了されていたみたいだけれど・・私は違う。)


 そう、クラッカーの攻撃を受けても立ち上がってきたスマイル。その時見せた笑みの裏に、クラッカーは確かにそれ(・・)を見ていたのだった。


(こいつ・・最高に、クレイジー♪)


ーロキの第一の試練、脱落者・・ニトナ、イレイザ、サキ



▼▼▼▼▼


 「やれやれ~。なんだか大変なことになってきたよ。私たち、これから大丈夫かな?」

後書きも今回はカットで。次回、脱落者の詳しい情報を書きます。


次回から第二の試練。今回なかったレイニー成分補充予定です。

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