三日目夜&四日目
ソニア「遅くなってすまない!ここで作者からのコメントがあるぞ!」
作者『この度は投稿の期間をこんなにも開けてしまい大変申し訳ありませんでした。投稿が遅れた理由としては、フォースステージ全般心理描写が多く、推敲に時間がかかったためです。時間をかけた分、面白い作品を書こうと思っているのでご了承ください。』
ソニア「・・だとのことだ!私からもよろしく頼むぞ!」
豹変したエンキ学園長が口にした『殺し合いゲーム』。その物騒な言葉の響きに、ナナは胸がざわつくのを感じた。何か・・とてつもなく嫌なことが起ころうとしている。そんなナナの予感を裏付けるかのごとく、エンキは心底愉しそうな口調で、恐ろしいゲームの内容を語り始めた。
『私が三日三晩寝ずに考えたこのゲーム・・名付けて、「魔女狩り」のルールを説明しようではないか!!と、その前に、お前らにこれをプレゼントするよ!!』
エンキがそう言って映像上でパチンと指を鳴らすと、その瞬間ナナの首に突然鉛色の首輪が取り付けられた。ナナは、いきなり現れた首輪に驚き、外そうと首輪にかけた指に力を込めるが、首輪は全く外れる様子がない。
『あ、その首輪は外そうとしても無駄だから。どう?気に入ってくれたかな?』
こちらをおちょくるようにこてんと首をかしげるエンキに、そんなわけあるかと怒鳴りつけてやりたい衝動に襲われる。しかし、エンキはこちらの反応を待たずに再びゲームのルールを説明し始めた。
『じゃあ、プレゼントも気に入ってくれたみたいだし、改めてルールを説明しちゃうよ!ルールは単純明快。お前らの中に唯一人だけ存在する、“魔女”を殺せば魔女以外の全員が勝ち。“魔女”は、自分以外の全員を殺せば勝ち。ね?簡単でしょ?』
簡単だろうと言われても、いきなり魔女などなんだの言われて理解出来るはずがない。第一、“魔女”がいるとして、何故三日間も同じ学園で過ごした仲間を殺さないといけないのだろうか。
しかし、またしてもナナのそんな疑問を見透かしたかのように、エンキが絶望的な事実を投げかけてきた。
『あれ?何か反応薄いな~。もしかしてお前ら、三日間一緒に過ごした仲間を殺せるわけないーとか、そんなよい子ちゃんな思考の持ち主なわけ?別に私はそれでもかまわないんだけれどさ~。そしたら、お前ら、皆“魔女”に殺されちゃうよ?』
“殺される”。あまりにも簡単に告げられたその事実に、ナナの頭は真っ白になる。そうだ、神は、これを『殺し合いゲーム』と言ったではないか。もしその言葉の通りだとすれば、“魔女”を殺さなければ、死ぬのは・・自分?
『お前らにさっき渡した首輪にはね。九年前に偶然手に入れた特別なキャンディを溶かした液体が込められてるわけ。その液体は、深夜零時ちょうどにお前らの首元に注入される。すると、お前らは夢の世界に旅立つって寸法なわけよ。でも~、“魔女”だけには、その液体は注入されないから、“魔女”は寝ているお前らをあっさり殺すことが出来ちゃうのさ!!いや~、怖いねー。』
まだ混乱していて情報に頭が追いついていないナナに対して、エンキはさらに愉しそうに説明を重ねていく。
『でも、これじゃあ“魔女”があまりにも有利すぎるよね?それじゃあ面白くないから、お前らは昼の間はこの牢屋から出て動くことが出来るようになっているよ。そして、昼に“魔女”を殺してしまえば一件落着!!めでたしめでさし!!あ、ちなみに、夜にはちゃんと自分の牢屋に帰るようにね。零時までに牢屋に戻っていなかったら、首輪から刃物が飛び出してお前らの首をはねるように設定してあるから。』
最初の混乱も収まり、ようやくエンキの述べたルールを理解したナナは、その理不尽さに絶望した。夜になれば無条件で眠ってしまうなら、もし“魔女”に襲われてしまえば抵抗も出来ずに殺されてしまうだろう。しかし、その殺しを回避するためには、昼の間に魔女を探して殺さなければならないのだ。
自分が生き残るためには、三日間共に学園で過ごした仲間も“魔女”ではないかを疑い、そして殺さなければならない。これが、全く知らない相手ならまだ良かった。しかし、三日間という期間は、あまりにも長く、ナナはそんな仲間たちを疑わなければならないというだけでも胸が締め付けられる思いだった。
『・・ねえ、お前ら、もう一つ良いことを教えてやるよ。』
その時、ナナの頭に、囁くようなエンキの声が聞こえてくる。それは、まさしく『悪魔の囁き』であった。
『“魔女”は、お前らと楽しく学園生活を送っている時から既に、私から“魔女”の役目を言い渡されてる。これがどういうことか分かるか?つまり、お前らが仲間だと思っている奴。そいつは、お前のことを最初っから殺しの標的としか見てなかったってこと。』
その囁きは、参加者十人の心を揺らがすのに十分の効果があったといえよう。そんな疑念の種を植え付けられた状態で、ちょうど深夜零時を迎え、ナナは首筋にちくりとした痛みを感じ、意識を落としていった。そして、眠りにつく寸前、エンキのこんな声が聞こえてきた。
『それじゃあ、おやすみの前に、“魔女”を探すヒントもついでに教えちゃうよ。“魔女”は、自分の「ギフト」の詳細をごまかしている。この三日間でギフトを使っていない奴。そいつが怪しいかもね~。』
ナナは、その言葉の意味を考える前に、完全に眠りについてしまった。
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《四日目》
『皆ー!おっはろー!!四日目の朝になったよ!!いや~、早速“魔女”が仕事してくれたみたいで、一人目の犠牲者が出ているよ。』
エンキのやたらテンションの高い声で起こされたナナ。しかし、寝起きの眠気を感じる暇すらなく、非常にも一人目の犠牲者の名がエンキから告げられた。
『一人目の犠牲者は~・・マグナでしたー!!!!!さあ、夜は終わったから、今日の零時までは皆好きに動いていいよ!!勿論、殺しはいつでも大歓迎だからね♡』
エンキの声が映像と共に途切れる。その瞬間、「マグナァァァァァ!!!!!!!」という悲痛な叫び声と共に牢屋の扉が勢いよく開かれる音が聞こえてきて、ナナも慌てて牢屋を飛び出て外に出た。
「う、嘘だ!!マグナ!!マグナァァァァァァ!!!!!!」
その牢屋の周りには、既に他の全員も集まっており、その中では、胸から血を流しぐったりとうなだれるマグナを抱きかかえ狂ったように泣き叫ぶグラーフの姿があった。グラーフの後ろでは、ファラもまた呆然とした様子で立ち尽くしている。
「う、嘘でしょ・・。嘘って言ってよマグナ!!いつもみたいに死んだふりしてイタズラしてるんだよね!?そうだよね!?何か言ってよ、マグナァァ!!!」
グラーフは、激しくマグナの身体を揺さぶりそう問いかけるが、マグナの瞳が開かれることはない。
「ねえ!!早く起きてよマグナ!!喧嘩したまんま、仲直りも出来ないでお別れとか、そんなの・・そんなの・・ウワァァァァァァァァァ!!!!!」
グラーフは、マグナの死を受け止めきれなかったのか、いよいよ狂ってしまったのか、一声叫び声を上げると、「アハハハハハ!!!!!!!」と笑い声を上げ始めた。
そんな姉を見かねて、ファラもまた大声で叫び、暴れるグラーフを押さえつけようとする。
「やめてよグラーフ姉!!そんなグラーフ姉見たくない!!!」
あまりにも悲痛なその光景に、ナナは思わず口元を抑え「うっ・・。」と声を漏らす。皆もだいたいナナと同じような反応で、ただトットだけは、呆然とひたすら「マグナ・・マグナ・・。」と繰り返していた。
一方、牢屋の中では暴れるグラーフをファラが必死に押さえ込んでいたが、しばらくしてようやくグラーフがその手を止め、ファラの顔を見上げた。正気を取り戻したのかとほっと息をつく一同。しかし、次のグラーフの言葉で再び凍り付くことになる。
「あ・・。マグナ!!何だ、マグナ、やっぱり生きてるんじゃない!!もう、驚かせないでよね!!」
ファラを見つめるグラーフの瞳は、全く光を反射していない濁った瞳であった。そんなグラーフの瞳を正面から見たファラは、たまらず絶叫する。
「グラーフ姉・・!!あたしは・・あたしは、ファラだよ・・!!マグナじゃない!!マグナは・・もう死んじゃった!!死んじゃったんだよ!!!!」
すると、グラーフの濁った瞳はたちまちすっと細められた。そして、全く感情の感じられない低い声で、ぼそっとこう言った。
「・・嘘だ。マグナが死ぬわけない。だって、あたしたちはいつでも三人一緒だから。そんなひどいことを言うお前は・・偽物だ!!」
そう叫ぶなり、グラーフは突然ファラに襲いかかりその首を絞め始める。ファラが「ぐ、グラーフ姉・・やめて・・!!」とうめき声を上げるも、グラーフは力を緩めることはない。
「お前・・何をやってんだよ!!その手を早く離しやがれ!!」
その時、ラモーネ先生が声を上げて、ファラからグラーフを突き放した。ファラは、「ゲホッ!!ゴホッ!!」とむせながらも何とか無事のようだ。目を丸くさせつつラモーネ先生に問いかける。
「ら、ラモーネ先生、その口調どうしたの?」
「あぁん!?今そんな細かいこと気にしてんじゃねーよ!!生徒が殺されそうって時に、見栄張ってキャラ作る馬鹿がどこにいるんだよ!!」
「あ、あれやっぱりキャラだったんだね。でもありがと先生、おかげで助かった・・。」
ファラは、苦しそうに首を押さえつつもラモーネ先生に礼を述べ、一旦ナナたちの元へと避難する。その間に、ラモーネ先生は唖然とした様子で自分の手を見つめるグラーフを正面から睨み付けた。
「グラーフゥゥ!!妹が死んで悲しむ気持ちは分かる。だがよ、一番上の姉のお前がいつまでも取り乱してどうすんだよ!!それどころか、混乱したままファラの首を絞めるとはどういうことだ!!もっとしっかりしろ!!正気を保て!!」
ラモーネ先生のその声はとても必死で、グラーフのことを気遣っているこそあえて強い口調で叱咤しているということがナナにも分かった。しかし、グラーフはそんなラモーネ先生の言葉が全く聞こえていないようで、ぶつぶつと何事か呟いていた。
「あたし・・あた、あたし・・ファラの首を・・絞め・・なんてことを・・。ううう・・。ウワァァァァァァァァ!!!!!!」
ナナが、その時何が起こったのかに気づいたのは、ラモーネ先生の腕から滴る血を見た時だった。
ラモーネ先生は、舌を噛み切ろうとしたグラーフの口の中に手を突っ込み、寸前で彼女の自殺を止めることに成功したのだ。
「う、うわああああああ!!?た、大変だべ!?早く止血をしないと!!」
ラモーネ先生の血を見たクララが顔を青くして叫び声を上げる。
「大丈夫ラモーネ!?早く止血を!!」
「私のことは後でいい!!まずグラーフを何とかしてくれ!!」
慌ててラモーネ先生の元へと駆けつけたリリィ先生に、ラモーネ先生は鋭い口調で返事を返す。その返事を受け、リリィ先生はなおも暴れるグラーフの首筋にそっと注射の針を差し込んだ。その途端に、グラーフの動きは止まり大人しくなる。あまりにもそれが急だったため、ラモーネ先生は血相を変えてリリィ先生の胸ぐらをつかんだ。
「おい!リリィ!?てめぇグラーフに何をした!?まさか、殺したりしてねえよな!?」
「するわけないでしょ!?弱い麻痺毒を打っただけだから!!しばらくの間動けなくなるけれど、命に別状はない。それは保証する。」
リリィ先生の言葉を受け、ラモーネ先生はほっと息をつき手を離した。そして、皆の視線が自分の方に向いていることに気がつくと、厳しい表情のままこう語った。
「・・皆、マグナが殺された。短い間だったが、お前らの仲間だった奴だ。マグナの死を悲しむ気持ちは分かる。私も正直悲しい。だが、これで取り乱したり、怒りに囚われたりすればあのクソ学園長の思うつぼだ。あいつは、私たちが互いに誰が“魔女”かで疑心暗鬼になることを望んでいる。そして、私たちに殺しあいをしてほしいんだ。そのことはあの映像を見たら十分伝わってきた。・・そんな奴の思うがままになるのはお前らも嫌だろう?だから・・辛いかもしれないが、切り替えて、兎に角今を生きることを考えよう。必ず助かる方法はあるはずだ。」
ラモーネ先生の呼びかけに対する反応は様々だった。神妙な表情でうなずくナナとクララとトット。不安そうに隣のパティ先生を見上げるベティ。そんなベティの頭を優しくなでるパティ先生。ファラは未だうつむいており、リリィ先生はラモーネ先生の顔をじっと見ている。
そんな皆の反応を受け、ラモーネ先生はぱんと手を打ち鳴らして、明るい声で皆に食事の提案をした。
「・・よし!じゃあお前ら、とりあえず腹ごしらえすっか!!こんな時だからこそ、何か食べておかないとね!!美味しいモノ作ってやるから、待っとけよ☆」
「おいラモーネ、張り切ってテンション上げてるとこ悪いけれどさ、ここって料理作る場所あるの?」
「あ・・。」
リリィ先生の鋭い指摘を受け、固まってしまったラモーネ先生。しかし、結果から言うと、十人の牢屋が並べられたこの地下空間にも、食堂らしき場所は存在した。また、その他にも、ちゃんとトイレも設置されていた。
ナナたちは、こんな時でも美味しいラモーネ先生の料理に元気を貰いつつも、やはりこれまで通り楽しい食事という雰囲気にはならない。それは、この場にマグナとグラーフの二人がいないということが大きいだろう。三日目の時も思ったが、あの三つ子はこの学園内における絶対的なムードメーカーだったのだ。
食事が終わると、ナナたちはラモーネ先生の提案により各自ばらばらにこの空間を探索することになった。ラモーネ先生曰く、「もしかしたら、逃げ道があるかもしれない」とのことだが、当人含め全員がそれが希望的すぎる推測であることを半ば察していた。
《ベティside》
ベティの頭の中は、不安と恐怖でいっぱいだった。突然目の当たりにしたクラスメートの死。グラーフがマグナの死体を抱き寄せ泣き叫ぶ光景は、今も脳裏に焼き付いて離れない。地下空間を探索するベティの足は、自然と震えていた。
と、その時ベティと一緒に探索をしているパティ先生が、ベティに視線を合わせると、にこっと笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ~、ベティちゃん。ベティちゃんには、先生がついてるからね。」
そう言って、パティ先生はベティの頭をなでる。その些細なふれあいだけで、ベティは自分の中の恐怖がいくらか安らいだのを感じた。しかし、それでもまだ足の震えは止まらない。そんなベティの様子を見たパティ先生が、こんなことを言い出した。
「・・ベティちゃんに、私からどんな不安も吹き飛ぶ魔法のおまじないをしてあげる。一回しか言わないから、よく聞いててね?」
そして、パティ先生はベティの耳元にゆっくりと顔を近づけ、そっと囁く。その“おまじない”を聞いたベティからは、確かに不安が消えたのだった。
《ナナside》
ラモーネ先生の言ったことは確かにその通りだと思った。ナナだって、同じクラスメートの仲間を疑いたくはない。お互いに疑心暗鬼になるのは良くないと思う。
しかし・・誰が“魔女”なのかが分からなければ、このままだと全員殺されてしまうことも確かだ。ナナの脳裏に浮かんだのは、エンキが述べた魔女を探すためのヒント。
『魔女は、自分のギフトの詳細をごまかしている。』
このヒントを元に誰が魔女か考えるなら、まず除外できるのは、実際にギフトを使っているところを見たラモーネ先生とリリィ先生、あとグラーフとトットだろう。ナナも含めた他の六人は、実際にギフトを使ったところをまだ見ていない。ナナは、自分が魔女ではないことを知っているから、残る候補は五人。その中で、最もギフトの詳細をごまかしやすそうなのは・・。
「?どうしたんだべ、ナナ。おらの顔をそんなじっと見て。何か付いているだべか?」
「・・いや、何にもないよ。・・ごめんね?」
「ナナ、本当にどうしたべ?あんなことがあった後だから疲れてるんだべか?休んだ方がいいべ。」
こんな時でも、クララは優しくて素直ないつものクララだ。ナナは、一瞬でもクララのことを疑ってしまった自分を恥じた。
ただ・・ナナは見てしまったのだ。マグナの死体を見るクララの表情。その表情は、一瞬寒気を感じるほど恐ろしいものであった。
『演技が上手い』というクララのギフト。もしこれが、彼女が偽りの人格を演じているということを暗に示しているとすれば・・。
いや、これ以上考えるのはよそう。クララの友人である自分がクララを疑ってどうするのだ。ナナは再び激しい自己嫌悪に陥る。
しかし、この探索の間、とうとうナナはクララに対する疑いを完全に消し去ることは出来なかったのだった。
各自の探索の結果、この地下空間には、まあ予想していたことだが、逃げ道などどこにもないことが分かった。そして、思いの外食堂へと続く廊下が長かったこともあり、探索が終わり全員が集まった時には、既に深夜零時に迫ろうとしていた。
皆の顔には、一日の探索の疲れと、そして迫り来る死の審判の時への恐怖が浮かんでいる。
「・・結局、ここから逃げ出すことは出来ないみたいだな。それなら、なんとか殺されずに生き延びる方法を考えよう。確かに眠ってしまうと抵抗できねえみたいだけども、それなら"魔女"が廊屋に入っても殺されない工夫をすればいい。」
ラモーネ先生が提案したのは、ギフトによる防御策だった。
「身体を包み込むほどの巨大なプリンは一個しか作れないから、申し訳ないけどプリンアーマーを皆に配ることはできない。その代わり、食堂の皿をいくつか持ってきた。これに、トットのギフトで命を吹き込んで夜の間のボディーガードにしてもらうんだ。大丈夫か、トット?」
「はい、出来ます。・・私のギフトで、皆を守ってみせます!」
ラモーネの問いかけに答えるトットの目は、皆を守るという決意で燃えていた。
「あの、ラモーネ、うちらにはその皿貰えないの?」
「リリィは毒を撒き散らしておけば大丈夫だろ。それに、パティ先生も身体を固くすれば問題ないですよね?」
「そうですねー。たぶん大丈夫かとー。」
結局、先生たちは各自自分の身を守ることになり、ナナたち生徒にはボディーガードとして皿が与えられた。
『サラ!サラ!ボクはサラ男!よろしくサラ!』
「よ、よろしく・・。」
皿が喋るという光景はかなりシュールなものだったが、これがナナたちの身を守ってくれるはずなので、ナナはぎこちない笑みを浮かべつつもサラ男に挨拶した。
(ちなみに、トットのボディーガードの皿はサラ子、クララのボディーガードの皿はサラ美、ファラの皿はサラ江、グラーフの皿はサラ代というらしい。)
サラ男を連れて自分の廊屋へと入ったナナ。ナナはそこで、今朝までなかったものが廊屋の中に置かれていることに気付いた。
そこに置かれていたのは、奇妙な形をした棒のようなものの先に、赤い玉が紐で取り付けられている謎の物体。
その物体の下に置かれた紙には、「これは、『けん玉』といいます。廊屋の中は退屈だろうと思い、私たちピティーから遊具をプレゼントさせて頂きました。暇潰しにお使いください。」と書かれてあった。
ナナは、こんな状況で遊具などふざけているのかと思いつつも、実際零時になるまで少し暇だったので、紙に書かれた説明通りにけん玉を遊んでみた。
何度か失敗を繰り返し、ようやく一番大きな皿に玉を乗せられるようになったとき、首もとにチクリと痛みを感じ、ナナは再び意識を闇へと落としたのだった。
マグナ
身体能力 3
知性 3
社会性 4
運 1
能力の強さ 3
ギフトの能力・・『磁力を操る』
果たして、ラモーネ先生の策はうまくいくのか?五日目、新たな犠牲者は出るのでしょうか。そして、"魔女"はいったい誰なのか?




