四日目
オクター「たたた、大変ですー!これ、見てくださいよ村長たちー!!」
ソニア「騒々しいぞ新入り!一体何があったって・・。」
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ソニア「・・ふぁっ!?」
シャルン「ふぁっ!?」
作者「ふぁっ!?」
《ルル&スター&キャンディ&ディアナside》
ルルは、今もの凄く悩んでいた。その原因は、目の前で息を荒らげる彼女にあった。
「はあ!はあ!ルル様!私をもっと叩いて痛めつけてください!」
ルルの目の前にいる変態は、三日目まではキャンディ・キャンディのキャンディで無理矢理眠らせて自殺を止めさせていたディアナだ。彼女は、元々その『目で見た相手を石に変える』というギフトの特性から、布で目を覆っていたため、より一層変態度合いが増してしまっている。
いったいどうしてこんなことになってしまったのか・・。ルルは、昨日ディアナが目が覚めてからのことを思い返していた。
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キャンディの効力が切れ、目が覚めたディアナは、早速暴れだした。
「早く死ななくては!神は我らが死ぬことを望んでおられる!私がまず一番に神に捧げる名誉ある贄となるのだ!」
ルルは、内心やっべーなこいつと思いながらも、笑顔でディアナの説得を始めた。
「えーっと、まず落ち着きましょう。神も恐らくあなたが自殺することは望んでないと思いますよ?」
しかし、ディアナはルルの説得に全く聞く耳ももたず、さらに喚き出した。
「おお、神よ!今そちらに向かいます!この神聖国のシスターであるディアナが、あなたの御元に向かいます!」
そう叫びディアナは舌を噛み切る。ディアナの口から血が吹き出し、後ろで様子を見守っていたスターが「ぎゃあ!」と叫び気絶した。
しかし、ルルは落ち着いてディアナに対し右手をかざす。ルルの右手が光ると共に、噛みきったはずの舌がたちまち再生された。呆然とした様子のディアナに、ルルは落ち着いて再び説得を始める。
「自殺は諦めた方がいいですよ?即死じゃなきゃ大抵の傷はこうして治しちゃうんで。さあ、ディアナさんと言いましたね?落ち着いて私の話を・・」
「神の御元にぃぃーー!!!」
だが、自分が死ねなかったことを悟るとディアナは再び舌を噛みきった。またしてもルルが右手をかざし、ディアナの舌が再生される。もう一度説得を始めたルルのこめかみは、ピクピクと痙攣し始めていた。
「うん、話を聞きましょうね?何度言ったら分かるのかな?いいですか?今度こそ落ち着いて話を・・」
「神の・・」
「いい加減にせいやーー!!!!」
またしても話の途中で舌を噛みきろうとしたディアナを、我慢の限界がきたルルが思いっきり殴り付けた。ディアナは、殴られた勢いで何度か地面を跳ね、ピクピクと痙攣する。とても医者とは思えぬその所業に、様子を伺っていたキャンディ・キャンディの口からは思わず「ええ・・。」と声が漏れた。
ルルは、痙攣するディアナに近付くと、右手をかざして殴った傷を治し、ディアナの胸ぐらを掴み無理矢理立たせる。
「あの、いい加減にしてくれない?話聞けっていってんだろボケ。」
「か、神の・・」
しかし、ルルはディアナが再び喋り出す前に、再び顔面を殴り付け即座にその傷を癒した。
「だから話聞けって。お前がちゃんとこっちの話聞くまでこうして延々と殴って治し続けるからな?」
そして、その言葉通り、ルルは何度もディアナを殴っては自分の手で治すという荒療治を続け、日が暮れる頃にはディアナは次第に恍惚な表情を浮かべるようになり、そして四日目になった現在、最初の光景に至るというわけだ。
○○○○○
「いったいどうしてこうなってしまったんでしょうか・・。」
「どう考えてもルルさんのせいですよね~。」
頭を抱えため息をつくルルに対し、キャンディ・キャンディがおっとりとした口調で的確なツッコミをいれる。実際、ルルも自分が少し(?)やり過ぎてしまったことは自覚していた。
「ま、まあ結果的に自殺するとか言い出さなくなったのは良かったじゃないですか。」
「いや、これ見方によっては前よりヤバイですよね~。正直前の方がまだマシだった気がしますー。」
キャンディ・キャンディにそう言われ、ルルはうっと言葉に詰まる。助けを求めスターの方を見ると、スターはルルに向かいぐっと親指を立ててみせた。
「大丈夫ですよルルさん!私は、ルルさんがドSの変態でも引いたりしませんから!」
「黙れ不審者。」
「何故に罵倒!?」
アホに助けを求めたのが間違いだった。ルルははあっとため息をつき、ディアナの方を見る。ディアナは、いつの間にか口からだらしなく涎を垂らして仰向けに倒れルルにお腹を見せていた。
・・ダメだ、このシスター。ルルは、とりあえずキャンディ・キャンディに頼んで"リラックスキャンディ"をディアナに与えることにした。地面に投げたら喜んでそのキャンディを食べたディアナは、その直後だらーんとだらしなく地面に崩れ落ちた。
「・・これ、本当にリラックスキャンディですか?」
「ミント味です~。決してヤバイ薬じゃないですよ~?」
別に味を聞いてるわけではないのだが・・いや、これ以上追及するのはキャンディ・キャンディの目が何となく怖いから止めておこう。
「おや?貴女もゲーム参加者の一人ですか?ちっちゃくてかわいいですねー!迷子ですか?」
その時、後ろからスターの声が聞こえてきて、おや?と思いルルが振り向くと、そこには見慣れぬ人物の姿があった。
いや、正確には見たことはある。確か、一日目にモニターに映されていた軍服姿の少女だ。あの時も思ったが、どことなく偉そうな態度である。しかし、今はその額に青筋を浮かべていた。
おもむろに、軍服の少女が指を鳴らす。その次の瞬間、彼女と同じ姿形をした少女がスターの背後に現れ、その手にもったナイフでスターの耳を切り飛ばした。
「ぎゃー!!めちゃくちゃ痛いんですけどぉぉ!?ちょっといきなり何するんですかぁー!?」
「・・我輩を小さいと呼ぶな。今度再びそう呼んだら、次は容赦なくぶち殺すぞ!」
そう叫び、少女・・ポポ将軍は再びパチンと指を鳴らす。次の瞬間には、ルルたちは無数のポポ軍団に取り囲まれていた。
「いいか?お前ら全員これから我輩の指示に従え。従わないと、死ぬことになるぞ?」
ルルもキャンディ・キャンディも、ポポ将軍に言われるがまま両手をあげる。二人とも戦闘力には自信がなく、素直に従う他なかった。地面に倒れ涎を垂らすディアナの周りにも、ポポたちは張り付いている。
「ルルさーん!この耳!痛いですぅー!早く治してください!」
ルルは、こんな時でもアホ丸出しなスターに少し落ち着きを取り戻し、とりあえず耳だけは治してあげることにした。
その様子をじっと見ていたポポ将軍は、ほう?と興味深そうにルルを見つめる。
「貴様、治癒能力持ちか。実にいい。奴との決戦にも役立つことだろう。」
「・・奴とは一体?」
ルルは、ポポたちにナイフを向けられながらも、ポポ将軍から目を反らすことはせずそう尋ねた。そのルルの問いに、ポポ将軍はその瞳に怒りを宿しつつこう答えた。
「決まっているであろう。我輩の兵をさんざん殺してくれたにっくきシャーリーよ。今度こそ、我輩の手で引導を渡してくれるわ!」
《サラ&シャーリーside》
三日目、さんざんポポ軍団を殺しまくり、その力の強大さを見せつけた"首狩り"のシャーリー。しかし、そんな彼女は今、たった一人の少女の前に苦戦を強いられていた。
「なあ、いい加減機嫌直せって。寝てる時お前の顔蹴飛ばしちまったのは悪かったって謝ってるだろう?」
サラは、ぷくーっと頬を膨らませて不満を表している。そんなサラに対し、シャーリーは先程から対応に困らされていた。
「なあ、いい加減口きいてくれよ。あー!オレ、こういうの経験したことねえからめっちゃ苦手なんだよぉ!!」
全く機嫌の直らないサラにシャーリーが困り果て頭をかきむしる。サラは流石に少し可愛そうになってきて、条件付きで許してやることにした。頬は膨らせたまま、右手を動かしシャーリーに話しかける。
『わかった。ゆるしてあげる。でも、じょうけんある。』
「お、マジか!どんな条件だ?」
分かりやすくほっとした表情を浮かべたシャーリーに、サラは上目遣いでこうお願いした。
『あなたのことをはなして。わたし、もっとあなたのことしりたい。』
この言葉は、サラの本心だ。初めて会ったあの時から、シャーリーは何故かサラを助けてくれた。あの時語った理由が嘘ではないことは知っているが、その後も、昨日の戦いでもシャーリーはサラに傷一つ付けることなく守ってくれた。
シャーリーは狂っている。人を殺すことを楽しむ殺人鬼だ。そんな彼女が何故サラを助けるのか。サラは、その理由が知りたかった。そして、それ以上に、シャーリーのことを単純に知りたいと思った。
サラの願いを聞いたシャーリーは、あからさまに嫌な顔をした。
「えー?オレのことを聞いても全く面白くねえぞ?それでも聞きてえのか?」
『うん。ぜんぶおしえて。』
シャーリーは相変わらず嫌そうな顔をしていたが、サラが目をそらさずじっと見つめていたら、やがて根負けしたのか、ゆっくりと自分の過去を話し始めた。
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オレのことを全部話せって?ほんとつまらねえぞ?そうだなぁ・・。まず、オレがなんでこんな包帯ぐるぐる巻きの身体になっちまったのかについて話すか。
まあ、よくある話だよ。オレはスラム街出身でな。だけど、スラム街を嫌う貴族の奴に景観を損ねるって理由で焼かれちまったんだよ。辛うじて生き延びたが、その時の火傷痕が今も残ってるってわけだ。
え?よくある話とは思えない?いや、それはお前が世間知らずなだけだろ。こんな話、そこら中に転がってるさ。ただ、生き延びた奴が少ねえから有名になってないだけだ。
それがまあ・・三歳くれえの時か?そこら辺はよく覚えてねえなぁ。ほらオレ、周りと時間の感覚ちげぇからよ。
そうだ、お前、オレ今何歳くらいに見える?25歳?・・ああ、それくらいに見えるのか。こう見えてまだ15なんだぜ?オレ。
いや、そんな驚くなよ。流石に傷つくわ。・・まあ、これがオレの能力の代償だ。オレの能力は、時間を引き伸ばす能力。周りの奴らとオレとでは、流れる時間の早さを変えられる。その代わり、オレは他の奴より早く歳を取るんだ。
・・そんな悲しそうな顔すんなよ。元々、こんな身体じゃ長く生きられねえんだ。それなら、人生楽しんだもん勝ちだろ?実際、オレは自分のやりたいように生きてる。
初めて人を殺したのは、こんな身体になったのと同じ三歳の頃だ。スラム街に火をつけろと指示を出した貴族の館に忍び込んで、鎌で首をはねてやった。その時身体は六歳くらいになってたからなぁ。多少苦労したが、初めて首をはねた時はそりゃあ興奮したぜ!オレたちをゴミみたいに思っていた奴を、この手で殺せたんだからなぁ!
たとえどんな偉ぶった奴でも、死んじまったらそりゃあ生きてる奴の方が偉い。そう思うだろう?だからオレはそんな奴らの首をはねて笑うのさ!オレの方がおめえらより偉いぞ!ってな!
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「だからよぉ、あの神って奴の首もはねて、一緒に笑ってやろうぜ?どうだ、お前が使えないと言って捨てた奴よりオレたちの方が偉いってよ!」
そう言って、シャーリーはサラの頭をわしゃわしゃっと撫で、「おっと。」と呟いた。
「わりぃわりぃ。話がちょっと脱線しちまった。」
しかし、サラは、シャーリーに『もういいよ。』と右手で返事をする。シャーリーに向けなかった方の左手は、自然とこぼれていた涙を拭っていた。
シャーリーがサラを助ける理由は分かった。彼女は、どこまでも自分のやりたいように生きているのだ。ポポ軍団を笑いながら殺したのも、サラを助けたのも、理由は同じ。彼女がそれをしたかったから。シャーリーの心を読んだサラは、今シャーリーが語った言葉は全部本音であることは分かっている。
その生き様は、我が儘な子供のようだ。実際、彼女は初めて人を殺した三歳の時から精神年齢は変わっていないのかもしれない。
しかし・・そんなシャーリーの言葉に、サラは胸を打たれた。初めて声をかけられた時漠然とこの人についていこうと思った気持ちは、今はもっとはっきりとした形をもって、シャーリーと一緒にいたいと思えるようになった。
シャーリーと一緒にいたい。彼女と一緒なら、たとえ自分を作った神すら何とかしてくれる気がする。
胸に沸き上がってきたその気持ちをシャーリーに伝えたくて、しかし伝える言葉が見つからなくて、サラは何も言わずにシャーリーの手を握った。
シャーリーは、そんなサラに一瞬おっ?と目を開いた後、にいっとお得意の神ですら恐れぬ笑みを浮かべ、サラの手を握り返したのだった。
いやー、突然のことでほんとびびりました。
小心者の作者は、突然のレビュー獲得やブックマークの急激な増加に喜ぶより先に若干の恐怖すら感じてしまいました。
え!?これ夢じゃないよね!?まさかこの後死んじゃう!?みたいな。実際数秒フリーズしました。
とりあえず・・本当に、ありがとうございます!
これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします!
明日の五日目の更新も頑張りますよ!




