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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
3rd stage  その笑みは神をも恐れぬ
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三日目

ソニア「さあ、あらすじを語るため、今日の本編の内容を確かめようではないか。」

シャルン「そうやな!久しぶりに仕事してやるで!」

オクター「にょろーん・・。初仕事、うまくできるかな・・。」

三日目内容確認中・・

ソニア「ルルたちはまだ平和だな。」

シャルン「このスターとかいうやつあらすじ村に欲しいなあ。」

オクター「え、それは困る。」

確認終了・・

ソニア&シャルン&オクター「・・・・・。」

三人(この二人どうやって殺すねん・・。)

《ルル&スター&キャンディ&ディアナside》


 三日目の朝になった。二日目は、ディアナが起きる度に自殺を図ろうとし、その都度三人がかりで眠らせる作業をしてきたが、今日はディアナと話し合って自殺を止めてもらおうと思っている。というのも、キャンディ・キャンディ曰く彼女のキャンディは続けて何度も食べると耐性がついてしまい効きにくくなってしまうそうで、眠らせる戦法が通じなくなるからだ。


「飲み続けると耐性ができるとか薬みたいですね。」


「危ない薬ではないんですよー。この"おやすみキャンディ"も美味しいグレープ味ですしー。よかったら一つ舐めますか~?」


 キャンディ・キャンディの提案を嬉々として受け入れ飴を舐めたスターは即座に眠ることとなり、その後目覚めたディアナを二人だけで眠らせることとなってしまった。

 ルルは、そのことを思い出しため息をつく。懐から写真を取りだし、それを眺め疲れた身体に癒しを贈る。


「おや?ルルさーん、その写真何ですかー?何かすごいにやけ面になってますよ!このスターちゃんにも見せてください!」


 しかし、ルルの癒しの一時は、突如現れた不審者の声でうち壊される。ルルは、スターにも聞こえるようチッと舌打ちをした。


「ちょっ!?ルルさん、今舌打ちしましたね!?ああ、スターちちゃんのガラスのハートにヒビが入りましたよ!お医者さんがそんなことしていいんですかー!?」


 お前のハートはレンガ並みに頑丈だろうとルルは心の中でスターに辛辣なツッコミをいれ、写真を懐にしまうと、まだ眠っているディアナのそばに座るキャンディ・キャンディの元に近づき声をかける。


「ディアナさんが起きるのはもうすぐですか?」


「そうですね~。恐らくもうそろそろキャンディの効果が切れるかとー。彼女のメンタルケアは任せましたよお医者さーん。」


「精神科医は専門外なんですけどね・・。」


 そんな会話をしているうちにディアナが体を動かし始めた。さあ、ここからが勝負だ。ルルは、自分に気合いをいれるため、パチンと頬を叩いた。




《チームポポVSシャーリー&サラ》


 三日目の朝になり、再び森の中を歩き始めたサラとシャーリー。時折現れる顔の同じ人たちはシャーリーが一瞬で殺していく。首が飛び血が吹き出す光景は、あまり楽しいものではないが、その光景に少し慣れてきた自分が怖いとサラは思った。


「ん?なんだここ。急に開けた場所に出たな。」


 先を歩くシャーリーがそう言って立ち止まる。彼女の言うとおり、これまでの道と違い、そこだけ何故か急に草木がなくなり、だだっ広い地面が広がっていた。

 しかし、よく見ると、その空間は木を切り倒して作られたものだということが分かる。サラがそのことに気付くと同時に、前方の岩壁に空いた穴から、先程までとは比べ物にならないほどの大量の同じ顔の集団が姿を表した。

 そして、その集団の後ろから、ゆっくりと何者かが姿を表す。その人物は、それまでの集団と全く顔が一緒だが、彼女の心を読んだサラは、その人物がこの集団のリーダーであることが理解できた。

 無数のポポ軍団を率いるポポ将軍は、シャーリーとサラを一瞥すると、いつの間にか身に付けていたマントを翻しながら腕を大きく振ると、ポポ軍団に指示を下した。


「さあ、ウジ虫共!仲間の仇をとるのは今だ!一斉にかかれぇ!」


 その合図と共に、ポポ軍団が一斉にサラたち目掛け走りだす。同じ顔の集団が一斉に向かってくる恐怖に、サラは顔を青ざめさせつつ右手を動かしシャーリーに呼び掛ける。


『やばいよ!にげよう!』


 しかし、シャーリーはサラの頭に手を置くと、「大丈夫だ。」と囁き、余裕の笑みでポポ軍団を待ち構えた。


「何人相手だろうが問題ねえ・・。オレとお前らでは、流れる時間が違う(・・・・・・・・)んだよ。」


 そう言うなり、シャーリーは鎌を構える。そして、その次の瞬間には、二十体以上のポポの首か地面に落ち、血が噴水のように吹き出していた。

 サラには、シャーリーが何をしたかが分からなかった。ずっとシャーリーを見ていたはずなのに、気付いた時にはシャーリーは鎌を下ろし、ポポの首が飛んでいた。これまでの戦闘でも、シャーリーは一瞬でポポたちの首を落としていたが、今の動きはその比ではなかった。

 先程まで余裕の表情を浮かべていたポポ将軍が、信じられないようなものを見る目でシャーリーを見、絶叫する。


「あり得ない!あの一瞬で数十人の我輩の部下を殺せるのだ!?貴様、一体何をした!?」


 そんなポポ将軍に、シャーリーは口の端を吊り上げながら鎌を向け、得意気にこう答える。


「言ったろ?オレとお前らでは流れる時間が違うってよ。オレのギフトは、『時間を引き延ばす』能力だ。お前らが一秒動く間に、オレは三十秒分動くことができる。お前がどんだけ兵力をかき集めても、三十秒あれば十分全員殺せるっつーわけだ。・・さあ、次はてめえの番だぜ?」


 シャーリーのその言葉を聞き、ポポ将軍は一瞬悔しそうに唇を噛んだが、すぐに余裕の表情を取り戻し、指をパチンと鳴らした。


「いや、生憎だが、死ぬのは貴様だ。殺人鬼よ。」


 ポポ将軍がそう宣言した直後、シャーリーの肩から腰にかけて真っ直ぐに剣線が走った。




 カスミは、ポポ将軍に指示を受けて、ピンクと一緒に岩壁の上でスタンバイしていた。そして、先程ポポ将軍からの合図を受け、彼女のギフトである『黙視できる範囲が全て剣の間合いとなる』能力で、シャーリーを岩壁の上から斬りつけた。手応えは十分。実際、シャーリーは地面に崩れ落ち、一緒についてきていた白い少女が慌てて駆け寄り、二人にとどめをさすべくボボ将軍は再びポポ軍団を走らせ、そこに岩壁の上から飛び降りたピンクも加わる。カスミはここで待機だ。

 しかし、終わってみればあっけないものだ。最初、あの大人数相手に一瞬で殺戮ショーを披露してみせたシャーリーには驚いたが、やはり兵力の差が激しすぎた。こちらは、ポポだけで百人分の戦力に匹敵するのに加え、自分とピンクの二人のギフト持ちがいる。これだけの戦力があって負けるわけがない。

 眼下では、あの白い少女がポポ軍団を蹴散らしている。彼女もまた、シャーリーほどではないがなかなかの戦闘力を持っているようだ。だが、このままではやられるのは時間の問題だろう。

 せめて自分の腕で楽に葬ってやろうとカスミが刀に手をかけたその時、突然目の前に何かが飛んで来てカスミは慌ててそれをかわした。飛んできたそれを見ると、何故かポポ軍団の一人だ。

 しかし、カスミにそのことを疑問に思う余裕などはなかった。次々とポポ軍団が飛んできて、カスミはそれを必死でかわしていく。次第にかわしきれないほど密度が増え、カスミは刀で飛んで来るポポ軍団を切り落としていく。

 息を切らしながら必死にポポ軍団を切り落としていたカスミの目に、自分目掛け飛んで来る無数の石が見えた。この数を全て切り落とすことは到底できない。カスミは、無数の石の切れ目から、こちらに向かい狂ったような笑みを浮かべるシャーリーの姿を最期に見た。




 サラは、確かにシャーリーが切られ、地面に倒れたのを見た。彼女を助けなくてはと自然と身体が動き、彼女の側に駆け寄ってからは必死で向かってくるポポ軍団を蹴散らしていた。

 しかし、突然目の前にいたポポ軍団数体が消える。横を見ると、倒れたはずのシャーリーが何故か立ち上がり、狂ったような笑みを浮かべてポポたちを掴んでは岩壁の上へと投げていた。


「ギャハハハハハ!!!たーのしーーー!!!!!」


 サラは、目の前の光景が理解出来なかった。シャーリーが動いたと思った次の瞬間には、空に無数のポポ軍団と石が舞っている。シャーリーがそれらを投げたのだと気付いたのは、目の前にいたポポ軍団がすっかりいなくなってからだった。

 サラは、シャーリーに怪我は大丈夫なのかと聞こうとして、切られたはずの傷がサラの目の前でみるみる塞がっていくのを目を丸くして見つめた。


「あー、楽しかったー!!的当てゲームみたいだなこれ!!」


 そしてシャーリー自身は、サラが混乱していることなどお構い無しで純粋に戦闘を楽しんでいたようだった。やはり彼女は狂っている。そう思ったのはサラだけではないようで、ポポ軍団の中で一人だけ姿の違う女性は、顔面蒼白になり後ずさっている。


「ひ、ひぃぃ!?ば、化け物・・!?」


 その女性、ミセス・ピンクに向けて、シャーリーはにっと笑うと、くいくいっと指を曲げて挑発する。


「おめえもこいつらの仲間だろ?さあ、オレとやりあおうぜ?」


 シャーリーに視線を向けられたピンクは、「うわぁぁ!!」と叫びながら、森の奥へと逃げていった。その後ろ姿に、シャーリーは向かい、シャーリーは「なんだ、面白くねえ野郎だなぁ。」と文句を言うが、あれは逃げて当然だと思う。サラも同じ立場だったら逃げている。


「おいサラ、お前大丈夫か?怪我とかしてねえだろうなぁ。」


 ふと思い出したかのようにシャーリーがそう尋ねてきたが、それはサラの台詞だ。シャーリーに『けがはだいじょうぶなの?』と尋ねると、シャーリーはすっかり塞がった傷跡を押さえこう言った。


「ああん?ああ、これくらいの傷なら身体の時間引き延ばして自然治癒で無理矢理治せるぜ。それより、あのマントの野郎どこ行ったか知らねえか?」


 シャーリーにそう言われて、サラははじめてあのリーダーらしき人物が消えていることに気が付いた。サラが首を横に振ると、シャーリーは不機嫌そうに唇を尖らせて、「何だよ、もうちょい殺したかったのになー。」と口にしたが、サラはそれに対してはひきつった笑みしか返せなかった。



 ピンクは、間違いなくこれまで生きてきた中で一番の恐怖を味わっていた。それは、絶望的なまでの力の差による恐怖。ポポと会った時も感じたその恐怖は、しかしながらシャーリーの比ではなかった。とにかくシャーリーから離れなければと必死で足を動かすピンクの耳に、この三日間嫌というほど聞いた声が聞こえてくる。


「おい、我輩の許可なく何を勝手に逃げ出しているのだ?命令無視など、懲罰房行きものだぞ?」


 ピンクは、その声の主、ポポ将軍をきっと睨み付けた。


「何さ!あんた、あいつに手も足も出なかった癖に!こんなときだけ偉そうに私に指示するんじゃあないよ!」


 しかし、ピンクの視線を受けても、ポポ将軍は動じることなく答える。


「あれは、相手の情報を知らなかったからだ。奴の情報を知った今、我輩たちに勝機はある。逃げ出した無礼は特別に赦してやるから、再び我輩の下につけ。」


 そう言ってピンクの方に伸ばしてきた手を、ピンクは罵倒の言葉と共に打ちはねた。


「ふざけんな!誰があんたの言うことなんて聞くか!」


「そうか、残念だ。では、ここで死んで貰おう。」


「上等だよ!」


 確かに、数の暴力は恐ろしい。しかし、一体一体は別に大したことはないのだ。それなら、一気に潰す!

 ポポ将軍が指を鳴らすと同時に、ピンクは自分の背丈を伸ばす。そして、三メートルくらいまで身長を伸ばしたところで、元の体型に戻り、そこから今度は自分の身体を極限まで太らせる。

 眼下には、無数のポポたち。その中には、マントを着た将軍の姿もある。そのことを確認したピンクは、その巨体でポポたちを押し潰した。

 ゴキゴキッと言う嫌な音と共に、腹の下でポポたちがつぶれるのを感じる。その状態のまましばらく放置し、元の体型に戻ったピンクは、潰されて肉塊になったポポたちの中に将軍の姿があるのを確かめ、思わずガッツポーズを決めた。


「よっしゃー!やってやったわ!なんだ、やっぱり大したことないじゃない!こんな奴にビビって損したわ。」


 今は元のスリムな体型に戻ったお腹を、満足げに叩くピンク。伸縮性に優れた特殊素材でできたドレスは、あの体型変化でも破れていない。さあ、気を取り直して早くこの場から逃げようと足を動かしたピンクの耳に、信じられない声が飛び込んできた。


「ほう、誰にビビって損したと言っているのかね?」


 まさかと思い振り向いたピンクの目に、冷たい目でこちらを見つめるポポの姿が映った。


「なんであなたがいるのよ!?さっき私が殺したはずでしょう!?」


 心なしか声が震える。動揺を隠しきれないピンクに、ポポはゆっくりとした動きでマントを拾い上げると、パチンと指を鳴らした。その瞬間、ピンクの目の前に再び百人ほどのポポ軍団が現れる。


「一度は我輩の部下だったのだ。最期に、我輩の秘密を少しばかり教えてやろうではないか。我輩のギフトは、『増える』という単純なもの。確かに、貴様の言うとおり、一体一体はそこまで大した力を持っていない。しかし、この一体一体は、等しく我輩なのだ。今は我輩がこうして指揮を執っているが、たとえ我輩が死んだとしても、百体いる我輩のうち誰かが生き残れば、その我輩が将軍の座を引き継ぎ、また百体の我輩を従えることができる。確かに、貴様もあの殺人鬼も一騎当千の力を持っているのだろう。だが、皆殺しにしない限り永遠に蘇り続ける不死身の軍隊相手にいつまで戦い続けることができるかな?」


 そう言って、ポポ将軍が腕を振りおろす。襲ってくるポポ軍団に対し、ピンクにはもはや立ち向かおうとする気力は残されていなかった。

カスミ

身体能力 4

知性 3

社会性 2

運 2

能力の強さ 4


ギフトの能力・・『黙視できる範囲がすべて剣の間合いとなる』


ミセス・ピンク(35歳)

身体能力 4

知性 3

社会性 4

運 2

能力の強さ 2


ギフトの能力・・『体型を自在に変化させる』(ただし、変化できる程度には限度がある。)

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