二日目
オクター「ここがあらすじ村・・どんなところなのかなー。」
ギィィ(門を開ける音)
オクター「にょろーん。失礼しま・・」
ソニア「丸太を持ってこい!あのセルリアンぶっ殺してやる!」
シャルン「うちらのかばんちゃんを返せや!あの楽しかったジャパりパークを返せー!」
オクター「・・・。」
ギィィ(門を閉じる音)
《ルル&スターside》
神が見せた映像に映った少女を助けようと鼻息も荒く駆け出したルルであったが、当然場所が分かるわけもなく、早くも迷子になりかけていた。スターが「ねえルルさん、何となくついてきたけれど、これもしかして迷ってる?貴女方向音痴なの?」とか聞いてきたが別に方向音痴ではないはずだ。・・多分。
木の上に登り一晩を明かし、再び森の中の獣道を歩き始める。しかし、誰とも会うことなく、時間だけが虚しく過ぎていく。
「だ、誰かいませんか~?この人を止めるのを手伝ってください~。」
その時、右の方から困ったような声が聞こえてきた。ルルは、その声にとっさに反応し、森の中をさっきまで歩いてきた獣道を無視して、草木を掻き分け無理やり道を作りその声の元へと急ぐ。別に頼んではないはずだが、スターも「ちょ、こんなとこ通らないでくださいよ!髪が乱れるじゃないですか!」とか文句を言いながらもついてきてくれる。
その声の主らしき人物は、すぐ見つけることができた。湖に向かおうとしているシスター風の女性を、青いバブルドレスの少女が彼女の腰に手を回し、必死に抑えている。青いドレスの少女は、ルルたちの姿を確認するとほっとした表情を浮かべ、ルルたちに救援を依頼した。
「ああ、助かりましたー!このシスターさんの自殺を止めてくださいー!動きを抑えてくれれば、私がなんとかしますからー。」
妙に間延びした口調のせいで緊迫感がいまいち伝わらないが、状況は確かに理解できる。ルルとスターは、シスター風の女性の腰に手を回して動きを止めた。すると、ドレスの少女は掌に紫色のキャンディを出し、それをシスター風の女性の口の中に突っ込んだ。とたんに、シスター風の女性の身体から力が抜け、地面に崩れ落ちる。
「キャンディ・キャンディの"おやすみキャンディ"です~。これでこのシスターさんはしばらく寝ててくれるはずです。いや~、助かりましたよ。お医者さんに・・変態さん?」
「私は変態じゃあありません!」
ふぅ・・と一息ついた少女、キャンディ・キャンディは、おっとりとした口調でそう尋ね、スターが素早くツッコむ。しかし、どこからどうみてもスターは不審者か変態にしか見えないので、キャンディ・キャンディは間違っていない。
「私の名前はルル。ドクター・ルルとお呼びください。そしてこちらの変態はスターです。こう見えて、彼女変態ではないんですよ。」
「そうですよ!ルルさん、言ってあげてください!私が世界一魅力的なスーパースターであると!」
「彼女はただのアホです。」
「ちょっ!?」
「なるほど~。」
「いや、納得しないでくださいよ!?」
さて、コントはこのくらいにして、なぜこのシスターはキャンディ・キャンディ曰く自殺しようとしていたのか?そのことをキャンディ・キャンディに尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「えーっとですね~。なんか、あの仮面の人の放送が終わった後、『神のお望みとあらば、私がまず尊い犠牲者の一人となりましょう!』とか言って湖に飛び込もうとしたので、あっ、この人ヤバイ人だったのか~と思いつつも目の前で死なれたら嫌なので止めてました~。」
今はキャンディ・キャンディの能力によって眠らされているこのシスター、どうやら結構な狂信者のようだ。ルルはキャンディ・キャンディに「ナイスでした。」と称賛を贈りつつ、彼女が起きたらどうすればいいかを考えていた。
「あの、私はアホではないですからね!ホントですよ!?最近掛け算の七の段もつっかえずに言えるようになったんですから!7×7は45ですよね!」
《ポポ&カスミ&ピンクside》
カスミは、洞窟の中で、朝日が昇るよりも早く目を覚ました。そして、カスミは今起きたばかりとは思えない機敏さで、同じように洞窟の中で寝ていた軍服姿の小さな少女・・ポポに刀を振り下ろそうとしたが、その刀はポポに届く前に、彼女と全く同じ姿形の人物により止められた。
ポポは、余裕綽々の表情で起き上がると、悔しさから歯ぎしりするカスミに向かい、不敵な笑みを見せた。
「だから言ったであろう?我輩は倒せないと。大人しく我輩の傘下に加わるのだ。そうすれば、命だけは守ってやると約束しようではないか。・・さあ、朝礼の時間だ。」
ポポは、そう言うとパチンと指を鳴らす。すると、瞬く間に洞窟の中にポポと同じ姿形の人物が溢れかえり、一斉に敬礼をした。総勢九十九名にも及ぶポポ軍団に向かい、ポポは唾を飛ばしながら怒鳴り付ける。
「よく聞けウジ虫共ぉー!!今日からこのイカれたゲームの二日目が始まるぅー!!貴様らウジ虫共は、各自自らの職務を全うし、生き延びることを誓えぇー!!」
「「「「「「サー・イエッサー!!!!」」」」」」
「声が小せぇー!もっと腹から声出せねえのかぁー!!?」
「「「「「「サー・イエッサー!!!!!!」」」」」」
「うるせぇーー!!!!静かにしろ馬鹿野郎共ぉーー!!!」
「「「「「「サー・イエッサー!」」」」」」
カスミは、何て馬鹿馬鹿しいことをしてるのだと飽きれつつも、この光景を笑うことが出来なかった。気付くと、カスミと同じように無理やりポポの傘下に加えられたミセス・ピンクと名乗った女性が自分の方に近づいてきていた。
「恐ろしい能力よね・・。この軍隊の一人一人が、ポポちゃんと意識が繋がっていて、同じ感覚を共有しているなんて。」
ピンクの言葉に、カスミは苦々しい思いで頷く。この能力の凶悪さは、一日目で嫌というほど味あわされた。
一日目、あの神の放送が終わった後、ポポはカスミとピンクに自分の傘下に入れと言い出してきた。
「我輩は、あの神と名乗る狂人の言うことを聞くつもりはない。しかし、中にはあいつの言うことを真に受ける者も表れるだろう。特に、あの白い少女と殺人鬼と呼ばれた奴は要注意だ。そこで、貴様ら、我輩の軍隊に入隊し、あいつらが動き出す前に始末する手伝いをしてくれぬか?」
その誘いに、カスミは首を横に振った。そもそも、始末するなどという言葉が出る時点で神と名乗る奴の思惑に嵌まってるし、そんな奴と一緒に行動したくないというのが理由の一つ。もう一つの理由としては、カスミが単純に他人とつるむのが苦手なことにあった。
「私も、貴女と組む気はないわね。そもそも、この状況で手を組むメリットがあまりないですし。」
ピンクもまた、カスミと同様ポポと組む気はないようだった。しかし、その返答を聞いたポポは、激昂するでもなく、自信に溢れた瞳でカスミたちにこう告げた。
「そうか。それなら、力ずくで従えてやろう。」
そう言って、ポポはパチンと指を鳴らす。その瞬間、カスミとピンクは無数のポポ軍団に囲まれ、ナイフを突きつけられていた。突然の事態に驚愕する二人に、ポポが「殺されたくなければ武器を捨て、両手を上げろ。」と告げる。カスミは自分の力に自信は持っていたが、それでもこの数の暴力を相手にして上回るほどの自信はなかった。歯がゆい思いをしながらも、カスミは刀を地面に置き、両手を上げた。隣ではピンクも両手を上げている。
そんな二人に対し、満足そうなポポの声が話しかけてくる。
「そうだ。素直で大変よろしい。さて、二人とも、これから行動を共にするのだ。仲良くしていこうじゃあないか。」
どの口がそれを言うか。そう思いながらも言えるはずもなく、カスミはギッと目の前のポポ一体を睨みつけることしか出来なかった。
こうして、互いに能力の確認もしあい、二日目の今に至る。
現在、ポポ率いるポポ軍団は、十名ほどが偵察部隊として森の中を徘徊し、三十名程が洞窟周辺の警備、二十名程が洞窟のある岩壁の上に登り辺りを見回し、十五名ずつをカスミとピンクに護衛かつ監視要因としてつけ、残り九名をポポ軍団を率いるリーダー、自称ポポ将軍につける配置だ。
カスミは、なんとか隙をついてポポ将軍を殺せないかと思っていたが、監視の目が厳しく、なかなか手を出せない。カスミのギフト、『目視できる範囲が全て剣の間合いとなる』能力も、昨日拷問に近い形で無理矢理吐かされたため、剣を抜くことさえ難しい。ピンクのギフトは、『体型を自在に変化させる』というものらしいが、彼女もまた、監視がつけられたこの状況で能力を発動させることは難しいだろう。そのことを理解しているからか、ポポ将軍はにやにやと笑みを浮かべてこちらを眺めている。
しかし、その余裕の笑みが突如として消えた。何やら痛みを堪えるような苦痛の表情を浮かべ、それと同時に「ありえない・・。」という声が漏れる。一体何が起こったというのか。カスミがそれを知る前に、ポポ将軍はポポ軍団に急いで指示を出し、カスミもまた指示を受け無理矢理働かされることとなった。
《シャーリー&サラside》
「ひゃっはー!!さあ次はどいつだぁ~?」
サラの目の前では、シャーリーによる一方的な殺戮が繰り広げられている。最早芸術的ですらある殺戮ショーの犠牲となっているのは、さっきから全く同じ人物だった。この表現は比喩でも何でもない。本当に姿形の全く同じ人物が十名ほど現れ、そしてそのことごとくがシャーリーに首をはねられ殺された。
「あ?もう終わりか?つまんねぇなぁー。同じ顔の奴を何回も殺せる機会なんてそうないのによぉ。」
そんな機会があってたまるかとサラは心の中でツッコミをいれる。そして、シャーリーに対する評価を改めた。こいつは、昨日は何だかんだそれっぽいことを言って自分が気に入らない奴を殺しているだけだと語っていたが、いや、それも本心であることは心を読んだサラには分かっているのだが、それと同じくらいに、殺すこと自体を楽しんでいる節がある。彼女は間違いなく殺人鬼であり、狂人であるらしかった。
「なあ、サラ。お前人の心を読めるんだろう?こいつらの心読んで何か分かったことはねえか?」
血まみれの鎌を下ろしながら、シャーリーが流し目でそう尋ねてきたのに対し、サラはこくりと頷き返した。
サラが自分の能力のことをシャーリーに伝えるのはひどく大変だったが、ジェスチャーや表情を使って何とか昨日のうちに伝えることが出来ていた。
しかし・・今回は一体どうやって伝えればいいだろうか。サラは確かに、顔が同じ集団の心を読んだ。そして読み取った心の内容は、はっきり言って異常だ。
顔が同じ集団、全員がまるで一人であるかのように、全く同じことを考えていたのだ。ただ、その思考はある人物に指示を受けたうえでのものであるらしいことも読み取れた。その点から考えると、この顔の同じ集団にはリーダーがいて、そのリーダーから指示を受け同じ思考の元動いていたと考えられる。
問題は、それをどうやってシャーリーに伝えるかだ。サラは、ジェスチャーを用いて、そして表情を変えることでリーダーがいることとその下で働く軍団がいるらしいことを伝えようとした。
リーダーを表すときはキリッと表情を引き締め、その顔で何となく指示を出しているジェスチャーをとり、それに対し無表情の軍団が敬礼している様子もジェスチャーで再現。さあ、果たしてこれで伝わったか?
「うん、いや、分からねえわ。」
なんと、渾身のジェスチャーはシャーリーに全く伝わっていなかったようだ。サラは、ショックで思わず膝を付く。シャーリーは、イライラした様子で頭を掻くと、「あぁーーー!!!」と叫び声を上げた。
「昨日から思ってたけど、言葉が通じないのくっそめんでぇわ!・・よし、こうなったら言葉作るか。」
サラがシャーリーの言葉を理解する前に、シャーリーは顔をサラに近づけ、右手の親指を微妙に曲げてみせた。
「いいか?これが、"あ"だ。」
次に、親指をもう少し深く曲げ、
「これが、"い"。」
そういった動作を何回か繰り返し、五十音全てを指の曲げ方と曲げる指の違いで表したシャーリーは、サラにこう言った。
「サラ、お前はこれをオレが話すスピードと同じくらいの速度で使えるようになれ。こんな感じで・・よっと。」
シャーリーはそう言って、右手を高速でうねうねと動かす。神に作られた人形であるサラの人より優れた動体視力は、その指の動きを捉え、そして先程シャーリーが示した音にその動きを当て嵌めた。
『わたしのなまえはさら』
サラは、先程のシャーリーの動きを模倣し、指を動かしてみる。多少もつれはしたが、しっかりと動かすことができた。それを見て、シャーリーが満足そうに頷く。頷いたということは、シャーリーは自分の言葉を理解してくれたのだ。そのことが何となく嬉しくて、サラは今度は先程よりはゆっくりとした動きで言葉を紡ぐ。
『あなたはしゃーりー』
それを見たシャーリーは、一瞬目を丸くした後、にっと笑みを浮かべ、「上出来だ!」と言ってわしゃわしゃとサラの頭を撫でた。
その後、特訓は一日中続き、二日目が終わる頃には、サラはシャーリーと問題なく会話できるようになっていた。
二日目、本当はポポ軍団とシャーリーとの戦闘まで書きたかったんですが、そこまで書くと本当に長くなるので三日目に移行。
ところで、けものフレンズ12話はまだですかねえ・・(涙目)
アライさんが何とかしてくれると信じてる。アライさんにお任せなのだー!




