六日目
シャンプー「ここがあらすじカフェの入り口なのですか・・だピョン。」
カランカラーン(ドアを開く音)
シャルン「ふわぁぁ!いらっしゃあい!ようこそあらすじカフェへー!どうぞどうぞ!ゆっくりしてってぇー!ねえ何飲む?いろいろあるよぉ?これね、紅茶っていうんだってぇ!博士に教えてもらったんよ!ここからお湯が出るからそれを使ってえな!」
ソニア「待てい!けもフレ警察だ!安易に流行に乗るその行為、まさに悪!正義の名の元に、このソニアが断罪してくれる!」
シャルン「ぎゃぁぁあ!!」
シャンプー「ちょ、ちょっと待ってください・・だピョン!今日は、伝えなければならないことがあるんだピョン!」
シャルン「え、あんたはウサギのフレンズ?」
シャンプー「違います!・・だピョン!とにかくこれを読むピョン!」(紙を渡す)
シャルン&ソニア「こ、これは!?」
ソニア「これは、皆で祝う必要があるな!せーので一斉に言うぞ!せーの!」
三人「香月美夜先生、『本好きの下剋上』完結おめでとうございます!これからも頑張ってください!」
《全面対決》
クロは、訪れるであろうムイムイとの決戦の時に向けて、愛用の刀を研いでいた。そんなクロの側に腰掛け、クリスタが話しかける。
「クロ、メアリの怪我は大丈夫そうですか?」
クリスタの問いかけに、クロはちらりと後ろを見る。そこには、すやすやと寝息を立てるメアリと、彼女を心配そうに見つめるロロの姿があった。
「・・とりあえず、できるだけの処理はしたつもりです。腕の切り口は焼くことで完全に止血しましたし。麻酔などを使っていないので、痛みでショック死する危険もありましたが、ロロが一晩中ずっと呼び掛けていたお陰か、何とか一日乗り越えてくれました。ただ・・」
クロはそこで後ろのロロのことを気遣い、若干言い淀む。だが、クリスタが無言で続きを催促してきたため、クリスタだけに聞こえるよう小声で続けた。
「・・既に血を失いすぎています。今は落ち着いていますが、早いところ輸血などの処置をしなければ死んでしまうでしょう。」
クロの答えを聞き、クリスタもまたロロにメアリとその隣のロロに視線を向けた。
「・・今日は六日目です。たとえ今日生き残れても、こんなところで輸血ができるわけないですし、メアリが生き残るのは厳しいかもしれませんね。」
そこまで言って、クリスタは一回目を伏せた。クロもつられて目を伏せる。クリスタは、うつむきながらボソッと「それでも・・」と続けた。
「それでも、今日生き残るためにロロとメアリには協力してもらわなければなりません。今日死んでしまえば、明日を夢見ることすらできないのですから。」
メアリが目覚めたところで、クリスタは二人にも恐らくムイムイが今日メアリたちを殺しに自分たちの元へやってくるであろうことを伝えた。
「その根拠はなんですか?」
「ムイムイは、"おともだち"を作ることに執着しています。そして、貴女たちはもう既に彼女に"おともだち"の標的にされています。必ず彼女は貴女たちを殺しにくるでしょう。」
そして、クリスタはムイムイの能力のことも二人に伝えた。一度ムイムイと戦ったロロは得心がついたように頷き、只でさえ顔色の悪いメアリはさらに顔を白くした。
「なるほど。だからアスカたちはムイムイに従っていたのですね。あの時逃げておいて正解でした。」
「死体を人形にするって・・そんなのアスカさんたちが可哀想だわ。ムイムイちゃん、何でそんな酷いことを・・?」
二人の反応を見た後、クリスタはムイムイの情報が書かれた本を地面の上に置く。起き上がれないメアリ以外は、覗きこむようにして今も情報が更新されているその本のページを見た。
「今、ムイムイはどうやら寝ているようです。ここ数日も同じように昼近くまで寝ていることから、ムイムイは昼までは起きることはないでしょう。ここら辺はまだ幼い少女らしいですね・・。情報の更新が止まったことからすると、シャンプーはどうやら死体に戻ったようですが、その代わりにミラがシャンプーの能力をコピーしているため、瞬間移動でいきなり現れることが予想されます。そのことを前提で、作戦を建てておきましょう。」
クリスタのその提案に、全員が無言で頷いた。
太陽はほぼ真上に来ている。時刻は既に昼時。クリスタたちは、作戦通り各自決められた位置についていた。
メアリとロロ、どちらをターゲットに瞬間移動してくるかは予想できないので、地面に寝転がるメアリを守るようにしてロロが箒を構え立つ。そこから少し離れた位置で、クロは二人の様子を見守り、クリスタはムイムイの動きを確認するため本を開いていた。
「ムイムイが動きました!ロロ、箒を振って!」
クリスタの叫びに即座に反応し、ロロが箒を振るう。まさにその瞬間ロロの目の前に瞬間移動してきたムイムイたちは、ロロの箒により吹き飛ばされた。
戦い慣れているアスカが素早く受け身をとり、ムイムイを受けとめようとするが、そうはさせまいとロロがその胸元に飛び込んでいった。ロロは、再び箒を振るいアスカを吹き飛ばすと共に、掌の吸引機能でミラを自分の元に引き寄せる。アスカを吹き飛ばしたことで自分に襲いかかってきた衝撃は、背中のブースターを噴射することで相殺した。
こうして、ロロは作戦通り、ムイムイからアスカとミラの二人を引き離すことに成功した。
一方、一人取り残されたムイムイの元には、クロとクリスタの二人が向かう。ムイムイは既に起き上がり、クロとクリスタの二人を見て笑顔を浮かべていた。
「あ、のこりのおねえちゃんふたりもここにいたんだ!おねえちゃんたちも、ムイムイのおともだちにしてあげるね?」
そう言って鋏を構えるムイムイに、クロは愛用の刀を向けて答えた。
「それはお断りします。・・生憎、私はお嬢様だけいればそれで十分ですので。」
《ロロ&メアリvsアスカ&ミラ》
アスカとミラの二人をムイムイから引き離すことには成功したロロだったが、いきなり苦戦を強いられていた。
まずは一人ずつ撃破しようと、ミラに向かい箒を振るうロロ。しかしその一撃はかわされ、背後に瞬間移動されると同時に背中を蹴りつけられる。その攻撃に対処するため振り向いた時には、再び瞬間移動で今度は頭上に転移され脳天への一撃。慌てて箒を振るうも、ミラの姿は既にない。
(動きが速すぎる・・!まるで追い付けない!)
ロロは元々戦闘を前提にして作られた訳ではないので、素早い格闘戦は得意ではない。ロロの戦闘形式は箒による吹き飛ばしがメインで、今回はそれが裏目に出た。
しかし、ミラの攻撃は比較的軽いもので、ロボットであるロロの体には今のところ大したダメージは入っていない。そのため、ロロは耐えていればいつかミラの動きを捉えることができると少々油断していた。
この時ロロは忘れていたのだ。自分は、ミラ一人と戦っているのではないということに。
気が付いた時には、すぐそこまでアスカの強烈なパンチが迫ってきていた。ミラの動きに気をとられていたロロは、それを慌てて箒で受けとめる。だが、ボクシングチャンピオンの強烈な拳は、ロロの箒をいとも簡単に真っ二つにへし折った。そのまま勢いは止まらず、ロロの鳩尾にクリティカルヒットし、ロロはその衝撃で吹き飛ばされる。ブースターを展開する間もなかった。
そして、吹き飛ばされたロロを、瞬間移動したミラがさらに追撃し地面へと叩きつける。
ロロが起き上がった時には、ミラはアスカの元へと瞬間移動して逃げた後で、アスカの拳を食らった箇所はメイド服が破れ金属が剥き出しになっていた。
その様子を、離れたところから眺める者の姿があった。そう、クロにも絶対安静と言われ、動いたら死を早めると忠告されたメアリだ。ロロからも、私なら問題ないのでメアリは動かずじっとしていてくださいと懇願されている。
しかし、メアリの目から見たロロは明らかにピンチに見えた。唯一の武器である箒も折られ、頼りの耐久もアスカのパンチの前ではどこまでもつか分からない。
(このままじゃ、ロロちゃんが死んじゃう!でも、助けようにも、動けば今度は私の方が死んでしまう・・。)
だが、メアリの心によぎった葛藤は一瞬だった。メアリは、無事な右腕でマイクを握りしめると、立ち上がりロロの元へと駆け出した。
急にこちらへと走ってやってきたメアリを見たロロは、信じられない気持ちでいっぱいだった。
「何をやっているんですかメアリ!?貴女、死んでしまいますよ!?」
唖然とするロロに、メアリは優しい口調で静かに語りかけた。
「・・ごめんね、ロロちゃん。でも、私、何もせずにただ黙っていることなんてできない。だって、貴女は私の大切なファン一号なんだもの。」
そして、メアリはマイクを掌の上でくるくると華麗に回転させると、大きく天へと突き上げた。そして、その傷ついた身体のどこから出るのかと思うくらいに力強い声で、高々と吠える。
「さあ!アイドルメロディ・メアリのラストステージ!特とご覧あれ!私のこの歌を、世界中に響かせてあげる!メロディ・メアリで、『サヨナLiar』ー!!!」
『サヨナLiar』
作詞 レッドリーフ 作曲・歌 メロディ・メアリ
サヨナLiarー もう会えないのですか?
ごめんね嘘だよ また会えますよ
それも嘘だよ 二度と会えないよ
私は嘘つき サヨナLiarー
ラーイラーイライライアー
バーイバーイバイバイやー
四月一日に目が覚めて 私は貴方に恋をした
些細なことで喧嘩して うっかり嫌いと言ったけど
察してよ 今日の言葉は
午後には 嘘に変わるから
正午の鐘鳴る昼休みー
教室のー窓から見た貴方がー
ボールを追いかけ飛び出したー
横断歩道が朱に染まりー
嘘だと言ってよサヨナLiarー
サヨナLiarー 貴方はどこにいるのー
ここにいますー そう思いたいのー
自分に嘘をつき続けー 現実逃避のサヨナLiarー
サヨナLiarー もう二度と会えないよー
ごめんねこれは本当だよー
貴方のいない世界なんてー
嘘つきばかりの サヨナLiarー
ラーイラーイライライラー
バーイバーイバイバイやー
メアリの歌により、ロロの身体に力がみなぎってくる。しかし、メアリの歌は、ミラたちの注意を惹くには十分すぎるくらいだった。
ロロが止める前に、ミラが瞬間移動をしてメアリの前に立つ。そして、ミラはロッドの柄をメアリの腹に突き刺した。メアリは、痛みにうぐっ!と呻き声を上げたが、直後にいっと笑みを浮かべ、マイクを持った腕ごとミラの背中に手を回し、ぎゅっと力強く抱き締めた。そのせいで、ロッドがさらにメアリのお腹に突き刺さるが、メアリは最早痛みは感じていなかった。喉を枯らしながら、最愛の友人でありファンである彼女の名を叫ぶ。
「ロロちゃん!今のうちにとどめをさして!」
メアリのその声に答えるように、ロロはミラの首を掴むと、ぶちふちっと音を立てて縫い目から切り離すようにしてミラの首を胴体から切り離し、背後に放り投げる。ミラの死体は、メアリと重なるようにして地面に倒れた。
しかし、休む暇もなく、今度はアスカがロロに襲いかかる。だが、メアリの歌のバフでパワーアップしたロロにはアスカのパンチを受けとめる余裕があった。
そこから、アスカとロロはお互いに猛烈なラッシュを繰り広げる。アスカが受けたダメージは、そのままロロに返されるが、ロロはロボット特有の耐久力でそれを耐えつつ、アスカに強烈なパンチを叩き込む。
一分間にも及ぶ壮絶なラッシュの後、アスカのパンチがロロの顎にヒットし、ロロが地面に倒れる。追撃をかけようと近づいたアスカの顔面目掛け、ロロが口から火を吹いた。掃除のために搭載されたロロの奥の手、火炎放射だ。
炎は、アスカの首の糸を焼き切り、アスカは地面に崩れ落ちる。対するロロは、焼けるような熱さを顔面に感じたものの、ロボットなのでどうにか耐えることができた。最も、顔の皮膚は焼け、ところどころ金属部分が姿を見せていたが・・。
アスカが倒れたことを確認したロロは、すぐさまメアリの元へと向かった。しかし、当然ながら、その時には既にメアリの息はなかった。
ロロは、メアリの身体を抱き締め、思いっきり泣き叫んだ。それは、ロボットである彼女が初めて流した涙であった。
《クロ&クリスタvsムイムイ》
クロは、自分の影に潜り、泳いでムイムイの影に入ると、ムイムイの影から飛び出し、背後からムイムイに斬りかかる。
しかし、ムイムイの首はぐるんと百八十度回転し、クロの姿を捉えると、その刀を鋏で受けとめた。
その隙を付き、クリスタがムイムイの脳天にピストルを放つが、ムイムイは一瞬頭をぐらつかせただけで、すぐに何事もなかったかのようにクロに切りかかってくる。
「あは!あはははは!ねえ、おねえちゃん!はやくしんでよ!」
「お嬢様に教えてもらって知っているとはいえ、実際にこうして見ると改めて異常ですね・・!」
ムイムイの見事な不死身っぷりに、クロは思わず冷や汗を流す。しかし、ムイムイは力こそ強いが、戦闘技術は長年暗殺技術を磨いてきたクロに劣る。クロは、ムイムイの攻撃を避けつつムイムイの身体と頭に斬撃をお見舞する。
それにより、ムイムイの着ぐるみが切り裂かれ、その下のムイムイの肌が露になった。これまた事前に聞かされていたものの、その肌を見てクロの動きは思わず止まってしまった。
ムイムイの不死身っぷりの正体。それは、肌に刻まれた無数の縫い目が明らかにしていた。また、身体だけでなく、側頭部にも縫い目が走っている。
ムイムイは、自分の身体も縫うことによって、生きていながら人形と同じ不死身の身体を手にいれていたのだった。クロは、その事実を知っていながら、ムイムイの狂気を象徴するかのようなその身体に気圧されてしまった。
「クロ!危ないです!」
クリスタの声にはっと気付いた時には、ムイムイの鋏がすぐそこまで迫っていた。咄嗟に死を覚悟したクロだったが、銃声と共にムイムイが悲鳴を上げ、鋏は首をかする程度で済んだ。
クロが慌てて体勢を整えてムイムイを見れば、ムイムイはその左目から血を流していた。
「いたいよ!めがみえないよー!」
どうやら、クリスタがムイムイの目を撃ち抜いたようだ。確かに、ほぼ不死身のムイムイとはいえ、視界を奪えばこちらが有利にたてる。クロはこんな時でも冷静なクリスタの思考に感嘆すると共に、この隙を逃すまいとムイムイの右目も切りつけた。
「ああ!やめてよ!おねえちゃんたち、なんでムイムイをいじめるの!」
血を流し続ける両目を手で押さえつつ、ムイムイが叫ぶ。だが、それを聞いたクロの心に僅かながら同情心が産まれてしまった。あまりにも幼いムイムイを痛みつけている自分達が、悪者なんじゃなかろうかという感情が産まれた。
その感情は、クロに一瞬の隙を産んだ。クロがあっと気付いた時には、ムイムイにがっしりとその身体を掴まれていた。
「ムイムイ、めがみえないの。だから・・おねえちゃんのめを、ちょうだい?」
そう言って、ムイムイはクロの右目を抉り取った。あまりの痛みと目を抉られたショックに、クロは悲鳴をあげる。だが、その間もムイムイはまだクロの身体をがっしりと掴んでいる。
「クロを離しなさい!」
クリスタが慌ててやってきてクロを解放しようとムイムイに慣れないタックルをするが、ムイムイはびくともせず、クロの目を持ったままの手でクリスタを吹き飛ばした。
「お、お嬢様・・!た、助けなければ・・!」
クロは、吹き飛ばされたクリスタを見たことでようやく正気を取り戻し、ムイムイの腕に噛みつきなんとかムイムイの拘束から逃れることに成功する。
ムイムイは、クロを追うことはせず、自分の潰れた右目を抉り出すと、そこにクロの右目を嵌めた。その目を、針と糸で自分の顔に縫い付ける。
「やった!これでみえるようになったよ!」
クロの目は、ムイムイの目には大きすぎ、若干飛び出しているのを、無理矢理糸で縫い付ける形となっているため、ムイムイはますます化け物のような容姿となった。
クロは、残された左目で、ムイムイのその姿を見て、全身に鳥肌が立つのを感じた。それと同時に、とんでもない絶望感がクロを襲う。こんな化け物に勝てるはずがない。クロの腕からは、自然と刀が落ちていた。
そんなクロに向かい、ムイムイが鋏を構えゆっくりと一歩一歩近づいてくる。クロが近づいてくる死神の足音に目を瞑った時、思わぬ声が聞こえてきた。
「ムイムイ!殺すなら私を殺しなさい!私が、貴女のおともだちになってあげます!」
クロは驚き、目を開く。その瞳に写るのは、ムイムイに吹き飛ばされ血だらけになりながらも、両腕を広げムイムイの前にクロを庇うようにして立つクリスタの姿だった。
「ほんと?おねえちゃん、ムイムイのおともだちになってくれるの?」
「ええ、約束します。」
(駄目です!お嬢様、そんなことを約束しては・・!)
心の中でそう絶叫するクロ。クリスタは、そんなクロの叫びが聞こえたかのように、クロの方を向きにっこりと微笑んだ。
その瞬間、クロの頭にクリスタと過ごした日々のことが走馬灯のように浮かんでくる。それと同時に、クリスタの心をある強い衝動が動かした。
(自分は死んでも構わない!でも、この人だけは・・お嬢様だけは、なんとしてでも生かさなくては!)
そう思ったクロは、クリスタの身体を引っ張ると、自分の後ろへと放り投げた。宙に放り投げられたクリスタが、信じられないものを見るような目でクロを見つめてくる。クロは、そんなクリスタに、先程彼女がしたのと同じようににっこりと微笑んでみせた。
そして、クロは迫りくるムイムイを前にして影に潜った。身体を全て影の中に潜らせる寸前、ムイムイの足を掴む。すると、ムイムイもまたクロに引き摺られるようにして影の中へと潜っていく。
「え、なに!?どうなってるの!?」
ムイムイが困惑した声を出すが、クロも正直自分がこのようなことができるとは思っていなかった。本来、クロの能力は他人を影の中に潜らせることはできない。しかし、この時だけは何故かそれをすることができた。
これは、あまり知られていないことだが、『ギフト』の能力は時折進化することがある。それは、ヘアースタイルを変える能力が髪質を変化させ戦闘に髪を使えるような能力に変わるように、または自分を浮かせるだけの能力が他人も浮かせられるようになったりと様々だが、そのきっかけは耐えまぬ修行の成果だったり、大きな感情の爆発だったりする。
クロにとっては、後者の理由・・『クリスタを守りたい』という強い思いで、能力が進化したのだ。
そんなことは知らないクロであったが、無心でムイムイを影の中に引きずり込んでいった。影の中にいられるのは、息をしている間だけ。息が出来なくなれば、影の中から二度と出られなくなる。そうなれば、いくら不死身のムイムイとはいえおしまいだ。
クロは、最後の力を振り絞って、ムイムイの全身を影の中へと引きずり込んだ。
「やだ!ここどこ!?なんもみえない!まっくらだよ!こわいよ!」
突然目の前が真っ暗になり恐怖するムイムイに、クロはそっと語りかけた。
「ここは影の中。そして、貴女も私もこのままだともうじき息が出来なくなる。そうなれば、もう二度とここから出ることはできません。」
クロがそう言うと、ムイムイは激しい拒否反応を示した。
「やだよ!ムイムイ、まだしにたくない!だって、かみさまにかなえてもらいたいおねがいがあるんだもん!」
クロは、この異常な少女が神に願おうとしたことが何だったのかが純粋に気になり、ムイムイに尋ねた。
「貴女は・・神に、何を願おうとしたのですか?」
すると、ムイムイは少し躊躇いを見せたものの、やがて小さな声でこう答えた。
「ムイムイは・・ムイムイのおねがいは・・かぞくみんなで、なかよくてをつないでぴくにっくにいくこと。ムイムイは、それだたけで・・それだけでよかったの・・。」
クロは、影が作る闇の中で、どこまでも純粋に家族の愛を追い求め、それ故に狂ってしまったムイムイにそっと手を差し伸ばすと、その頬を撫で微笑んだ。
この子は、クリスタに出会えなかった自分だ。自分もまた、暗殺組織で家族の愛を知らぬまま育ってきたが、クリスタと出会い、彼女と家族当然の絆を結んだことでその愛を知った。ならば、今度は自分が、この少女に愛を教えてあげよう。
「大丈夫。これからは私がずっと貴女と一緒にいます。私はもう、貴女の家族です。」
「え・・?ほんと・・?じゃあ、ぴくにっくにもいってくれるの・・?」
「この闇の世界じゃピクニックをするには暗すぎますが・・それを望むなら、私は出来るだけ貴女の願いを叶えてあげます。私はもう、貴女の家族なんですから・・。」
クロの手がムイムイの手に触れ、ムイムイは一瞬ビクッとその身体を震わせたが、やがて自分からその手をつないできた。
「ねえ、おねえちゃん、かぞくって、とってもあったかいんだね・・。」
そう呟くムイムイの瞳からは、一筋の涙がこぼれ落ちていた。
‐こうして、ムイムイとの戦いは終わりを告げ、後にはロロとクリスタの二人が残されたのだった。
ミラ
身体能力 3
知力 4
社会性 3
運 2
能力の強さ 4
ギフトの能力・・『相手の能力のコピー』死体からのコピーも可能。一度にコピーしてとっておける能力は一つ。
チャンピオン・アスカ
身体能力 5
知力 2
社会性 4
運 2
能力の強さ 4
ギフトの能力・・『自分が受けたダメージを相手に返す』
メロディ・メアリ
身体能力 2
知力 3
社会性 5
運 3
能力の強さ 1
ギフトの能力・・『歌って踊って皆を楽しませる』歌の効果が聞く相手は選ぶことができる。
クロ
身体能力 4
知力 4
社会性 3
運 2
能力の強さ 3
ギフトの能力・・『影の中に潜ることができる』
ムイムイ
身体能力 5
知力 1
社会性 1
運 1
能力の強さ 5
ギフトの能力・・『人形遊びが得意』この能力は複雑なので、細かいことは本編を読んでね!
次回、セカンドステージラスト!




