表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
2nd stage  歌と書物は永遠に
20/110

五日目

シャルン「・・・・。」

ソニア「・・・・・。」

シャルン&ソニア「暇。」

シャルン「誰かはようやってこんかーい!」

ソニア「今回もムイムイが大暴れするぞー!」

《クロ&クリスタside》


 クリスタは、保存してあるデータの中から一冊の本を手に取る。その本のタイトルは、『ムイムイ』。彼女は、このゲーム参加者の中で最も異常だ。しかし、自分とクロの二人が生き残るためには、いずれ戦わなければならないだろう。いつか訪れるその時のために、クリスタは改めてその本のページをめくった・・。



 ムイムイは現在九歳。兄弟はいない。両親は、四年ほど前に他界している。当時まだ五歳だったムイムイが殺したのだ。

 それだけ読めば、ムイムイは単なる異常者で終わる。しかし、ムイムイが両親を殺したのには、ムイムイなりの理由があった。

 ムイムイが産まれた時、彼女の身体には両腕がなかった。ムイムイが産まれるまで仲睦まじい暮らしを送っていた両親は、ムイムイが産まれてからは娘に障害があることを互いに責任を押し付けあい、喧嘩ばかりするようになったようだ。その光景が、まだ赤ん坊だった頃のムイムイの記憶に記されている。

 ムイムイは、幼いなりに、自分の両腕がないことで両親が喧嘩していることを理解した。そこで、ムイムイは家で飼っていた猫を殺し、その腕を自分の腕に縫い合わせた。この時、わずか二歳。だが、ムイムイが猫の腕を手に入れてから、両親はますます言い争うようになった。それに加え、時おりムイムイを不気味なモノを見るような目で眺めるようになった。

 ムイムイに転機が訪れたのは、四歳の時だ。ムイムイは、窓の外に、両親と手を繋いで笑顔で歩く自分と同じ歳くらいの少女の姿を見た。その姿がよっぽど衝撃的だったのか、ムイムイを眺めた時間は短いはずなのに、その時の感情がはっきりと書かれてある。


『そうか。てをつなげば、パパやママとなかよくなれるんだ。』


 こうして、ムイムイはパパとママと手を繋ぐことにしたのだ。

 ・・その腕を切り落とし、自分の腕とすることで、物理的に。

 

 腕を切られた両親は、その後出血多量で死んだ。しかし、ムイムイが悲しむことはなかった。ムイムイにとって、自分と手を繋いでくれた腕だけがパパとママであり、自分を怯えた目で見る顔や、その下の身体はパパとママではなかった。だから、死体はあくまでも"おともだち"にしてあげることにした。

 両親の死の数日後、ムイムイの住む家に訪れた警察が目にしたのは、お互いの手を縫い合わされ、寄り添うようにして倒れている人形と化した両親の姿と、その上に座り自分の身体を抱きしめ幸せそうな表情を浮かべるムイムイの姿だった。そして、その警察によってムイムイは捕まり、牢屋に入れられることとなった。

 だが、その日のうちにムイムイは両親の死体と一緒に牢屋から消えていた。その後、神により選ばれこの殺し合いゲームに参加することとなる。


 幼い頃、両親からの愛を受けることなく育ったムイムイ。彼女は、無償の愛を求めている。それ故、彼女は無邪気に人を殺し、彼女を愛してくれる"おともだち"を作り出していくのだ。


 

 クリスタはムイムイのことが書かれた本を読み終えると、ハア・・。と深いため息をついた。彼女の本の最新ページによれば、彼女は既にアスカとシャンプーとミラの三人を彼女の言うことを聞く人形へと変えている。そして、恐ろしいことに、彼女に人形とされた人は、首の骨を折られても心臓を刺されても死ぬことはない。足の骨が折れたら歩けなくなるし、目を潰されたら視力を失うが、たとえバラバラになったとしてと死ぬことはない。人形とされた人を倒すには、ムイムイが縫った糸を切る必要がある。そうすれば、人形はただの死体に戻る。

 また、人形は言語機能と思考能力は失うが、それ以外の機能は普通に残る。そのため、アスカたちは『ギフト』の能力を使うことができるのだ。


 クリスタは、洞窟内で腕立て伏せをしているクロを横目で見る。クロには、既にムイムイのことは話してある。彼女との戦いは、決して楽なものにはならないだろう。そうなれば、クロは自分の命を捨ててもクリスタを守ろうとするかもしれない。

 だが、クリスタはクロに死なれては困る。彼女は、クリスタの持つ物語の中で最も魅力的な主人公なのだ。クリスタはバッドエンドは好きではない。


「ハッピーエンドの条件は、主人公が勝つこと・・。」


 クロという主人公が勝つためなら、クリスタは自らの命を投げ捨てる覚悟であった。




《ロロ&メアリside》


 殺し合いゲームも、既に五日目に突入した。しかし、ロロとメアリの二人は、この五日間時おり現れるゾンビとの戦闘はあるものの、比較的殺し合いとは無縁の生活を送っていた。

 今日も今日とて、小屋の外でメアリのライブが開催されている。ロロは、箒を振り回しながらメアリに全力でエールを送っていたが、曲が一段落したところで、水を持ってきてメアリに手渡した。その姿は、メイド服がなければ完全にアイドルをサポートするマネージャーのようである。


「お疲れ様でした。メロディ・メアリ。今日の曲は、これまでとは少し違う曲調でしたが、いつも通り素晴らしいものでしたよ。」


「えへへー。ありがとね、ロロちゃん。実はこの曲は、作詞はレッドリーフさんなんだけど、作曲は私が担当してるんだー。」


「へえ!そうなのですか。曲名は、『サヨナLiar』でしたよね。」


「そう!曲としては別れの歌なんだけどー。私にとって、この曲は子守り歌でもあるんだ。」


「それはどういうことですか?」


 頭に疑問符を浮かべ首をかしげるロロに、メアリは石でできた即席のステージから降り立つと、そっと耳打ちした。


「この曲のメロディーは、私が覚えているお母さんの子守り歌なの。・・そして、私の家族との唯一の思い出。」


 そこまで囁いてから、メアリは一旦ロロから離れる。だが、再び穏やかな表情で語りだした。


「私がアイドルになったきっかけはね・・生き別れた家族に、私の歌を届けるためなの。私、孤児院で育てられて、家族がいるなんて知らなかったんだけど、ある日、孤児院に来たレッドリーフさん・・あ、今の私のプロデューサーさんね?彼に、私には生き別れた家族がいることを教えてくれたの。彼は、『過去を見る』ギフトを持っているみたいで、それで私の過去を見て私が事故で赤ん坊の時に家族と引き離されたことが見えたんだって。」


 ロロは、メアリが自分のことを急に赤裸々に話し始めたことに対し少し困惑していた。しかし、それと同じくらいに何故だか胸がポカポカしてきて、メアリの話を聞きたい気持ちになる。

 この気持ちは、いったい何なのだろうか?


「でも、家族の存在を知ったからって、顔も知らない私に家族を探せるわけがない。でも、私には歌がある。歌なら、顔も知らない家族にも私の思いを届けることができる・・!そう思ったから、レッドリーフさんの誘いもあってアイドルになることにしたんだ。・・いきなりこんな話しちゃって、驚いたよね?でも、なんかロロちゃんには話したくなったんだ。」


「いえ・・私も、メアリのことを知れて嬉しいです。」


 そうだ。自分は、メアリのことを知ることが出来て嬉しいのだ。自分に芽生えた感情の正体を知ったロロは、自然と笑顔になっていた。


「あ!ロロちゃん、やっとメアリって呼び捨てにしてくれた!私もすごく嬉しいよ!」


 ロロの笑顔につられるように、メアリも満面の笑みを浮かべる。ロロは、そんなメアリに自然と手を伸ばし・・





「・・おねえちゃんたち、すごくたのしそうだね。わたしもまぜて?」


 突如聞こえてきたその声は、メアリのすぐ後ろからだった。嫌な予感がして、ロロはとっさにメアリの身体を引き寄せる。その直後、ブオン!という音がして、メアリの左腕が宙を舞った。


「きゃあああ!?」


 メアリは、腕を切られた痛みで悲鳴をあげて気絶してしまう。


「あれ?おかしいなー・・。ほんとはくびをきるつもりだったんだけど、メイドさんのせいでしっぱいしちゃった。」


 慌ててメアリを抱き抱えるロロの前で、ムイムイが血が滴る鋏を右手に構えながら可愛らしく首を傾げる。

 メアリが傷つけられたという事実に、ロロは激しい怒りの感情が込み上げてくるのを感じた。しかし、箒を構えたロロの前に、ムイムイを庇うようにしてアスカたちムイムイのおともだち三人が立ち塞がる。

 ロロは、一度ムイムイたちを見て、それから腕の中のメアリに視線を落とし・・メアリを救うためにも、逃げの選択肢をとることにした。4対1では流石に勝ち目がないし、何よりメアリには早く手当てが必要だ。

 ロロは、応急処置としてメイド服のスカートを破り、メアリの腕に巻き付けると、背中のブースターを急速展開。一気に空へと飛翔した。


「まってよメイドさん。ムイムイのおともだちになって?」


 空へと逃げたことで一瞬安堵したロロの目の前に、鋏を構えたムイムイが現れる。ロロは、とっさに箒を振り、ムイムイを地面にはたき落とした。そのまま、全速力で飛行し、なんとか逃走に成功する。

 しかし、メアリは未だ危険な状態だ。応急処置はしたとはいえ、このままでは出血多量で死んでしまう。かといって、ロボットであるロロには、メアリを救う方法が分からなかった。

 ロロの頭に浮かぶのは、三日目共に戦ったメンバーの顔だ。彼女たちなら、メアリを救ってくれる可能性がある。


「待っていてくださいメアリ!必ず貴女を助けますから!」


 ロロは、クリスタとクロを探すため、さらにスピードを上げた。




 一方、地面に落とされたムイムイ。彼女が空を飛んで逃げたロロに追い付けたのは、シャンプーに運んで瞬間移動してもらったからだった。しかし、ムイムイと一緒にはたき落とされ、地面に衝突したシャンプーは、その衝撃で足の骨が折れてしまっていた。シャンプーは先程から何度も立ち上がろうとしているが、足の骨がおれているため上手くいかない。

 そんなシャンプーを一瞥し、ムイムイがボソッと呟いた。


「あーあ、こわれちゃった。ざんねんだけど、もうつかえないみたいだし・・ばいばい。」


 ムイムイはそう言って、鋏で縫い目をプツンッと切る。その直後、シャンプーの動きは止まり、ドサッと鈍い音と共に地面に崩れ落ちた。糸が切られたことで、ただの死体に戻ったのだ。


「ミラおねえちゃん、シャンプーおねえちゃんから能力こぴーひておいてね。ぴゅーんってとぶやつ、べんりだから。・・あ、まうこんなじかんか。」


 ミラに指示を出したムイムイは、夕方になり、辺りが暗くなり始めているのに気付いた。すると、幼いムイムイは自然と眠くなってくる。


「もうねなきゃ・・。メイドさんたちのところには、あしたいけばいいしね。じゃあ、みんな、おやすみ・・。」


 そう言うと、ムイムイはすぐすやすやと寝息を立て始める。アスカとミラは、シャンプーの死体を地面に埋め、ムイムイを守るようにして一晩中そのそばに立ち続けた。





《クロ&クリスタside》


 クロは、何かが猛スピードでこちらに近付いてくる気配を感じ、剣を構えた。クリスタにもそのことを知らせ、洞窟からそっと顔を出す。そして、その近付いてきたモノの正体を見て、クロは目を丸くする。クロの前に息を切らしながら降り立ったのは、メイド服のスカートが無惨に破れ、その腕に血まみれのメアリを抱くロロ。そして、ロロはロボットらしからぬ切羽詰まった表情で叫んだ。


「お願いです!メアリを、どうかメアリを助けてください!」



‐かくして、決戦の舞台は六日目へと移る・・・。


 


 

シャンプー

身体能力 2

知力 2

社会性 2

運 1

能力の強さ 3


ギフトの能力・・『瞬間移動ができる』一度行った場所や会った人の元へと瞬間移動ができる。


六日目、チームクリスタVSチームムイムイの最終決戦!果たして、誰が生き残る!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ