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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
1st stage 戦場に咲く友情の花
2/110

プロローグ

海賊やロボットやエルフが同時に存在し、ジャージもある奇妙な世界観ですが、本筋には関係ないので気にしないでください。

 目が覚めた時、フローラははじめ自分がどういう状態に置かれているか理解することが出来なかった。目の前に広がるのは一面の白で、ここがどこなのかも分からない。しかし、その後すぐに頭に直接流れてくるように響いた声により、フローラはいやがおうにも現状を理解するはめになった。


『やあ、こんにちは。私は君たちをこの島に呼んだ神です。早速ですが、今から皆さんには・・殺し合いをしてもらいます♡』


 男だか女だか分からないその声が告げた内容に、フローラは困惑した。自分で神と名乗るなど、この声の人物は頭がおかしいのか?いや、おかしいに違いない。やたら物騒なことを高めのテンションで宣言していた気もするし。


『ちょっと~?今私のこと頭おかしいやつだって思ったでしょ!私本物の神だからね!その証拠に・・えいっ!』


 またしても頭に声が流れてきたと思った瞬間、目の前の風景が若干変化した。それまで只真っ白だった大地に、突然フローラと同い年くらいの少女たちが現れたのだ。皆が揃って困惑した表情を浮かべる中、少女たちの目の前に突然白い仮面を被った怪しい人物が姿を見せた。


『ほーら!こんな芸当神にしかできないでしょ?どう?信じてくれた?』

 

 どうやら、この仮面の人物こそ先程からフローラの頭の中に話しかけてきていた自称神らしい。声でも分からなかったが、見た目でも性別の判断がつかない。フローラがそのことを理解すると同時に、少女の一人が自称神にいきなりつっかかっていった。


「何が"神"ですのバカらしい!確かにいきなり人が現れたのには驚きましたけれど、そんなの神じゃなくても『ギフト』を使えばできそうなことですわ!」


 フローラは、その少女を見てびっくりした。その少女は、口調からしてお嬢様っぽいとは思っていたが、そんなお嬢様のイメージ(フローラの脳内だが)にぴったりの縦巻きロールヘアーだったのだ。通称ドリルヘアーとも呼ぶ。


『確かに、君がそう言うのも分からなくもないよ?それじゃあ・・こういうのはどうかな?』


 フローラが少女の髪に気をとられていたら、自称神がいきなり指をパチンと鳴らした。その瞬間、自称神は伝説上の生き物と呼ばれているドラゴンに変身し、少女たちに向かって吠えてみせた。腰を抜かすもの、泣き叫ぶもの。少女たちの反応は様々だった。フローラはというと、あまりの衝撃に固まってしまっていた。そして、先程自称神にくってかかった少女は、腰こそ抜かしていないものの青い顔をしていた。

 そんな少女たちの反応を見て、自称神はドラゴンの姿のまま満足そうに頷くと、元の姿に戻った。


『どうだい?これで私が神だと理解してもらえたかな?』


 今度は、誰も神に反論するものはいなかった。そんな少女たちの様子を見て、神は仮面が落ちそうなくらいの勢いで大袈裟に頷くと、ぱっと腕を広げて最初にフローラが聞いたものと同じ宣言をした。


『それでは、私が神様だということを理解してもらえたところで・・皆さんには、楽しい楽しい殺し合いをしてもらいます♡』


 しかし、今度は反論するものが現れた。あのドリルヘアーのお嬢様だ。


「ちょっと待ってくださいまし。貴方、先程もそう仰っていましたが、それ、本気なんですの?」


 相手が神だと分かったためか、先程よりは丁寧な口調だが、それでも神に対して目を背けることもなく堂々と言葉を発することができる豪胆さにフローラは感心した。それと同時に、自分では絶対にできないなとネガティブな気持ちにもなった。


『うん。本気だよ?』


 そして、神の返事はどこまでも軽いものだった。


「なんで私たちに殺し合いをさせるんですの?私たちが何か貴方の気に障るような罪を犯したとかですか?」


『いいや、違うよ?単なる暇潰し。』


「暇潰しって・・!ちょっと貴方ぁ!」


 神のそのあまりにも軽すぎる理由に、ドリルヘアーのお嬢様は怒りを露にして神に掴みかかろうとした。そんな彼女を、ジャージを着た女の子が慌てて止める。


「ちょ、落ち着いてくださいっす!怒る気持ちはうちも分かるっすけれど、神に歯向かうのは不味いっすって!」


 ジャージの少女が立ちふさがったことでドリルヘアーのお嬢様は握りしめた拳の行き先を失い、チッと舌打ちした。そして、ジャージの少女を思いっきり睨みつける。


「平民がこの私に指図なさらないでくださる!?」


 その言葉を聞いた瞬間、フローラはこのお嬢様とは絶対に仲良くなれないなと思った。フローラが嫌いなのは、キノコと、平民を見下す貴族だ。


 しかし、ジャージの少女の言葉に思うところがあったのか、ドリルヘアーのお嬢様はそれ以上神に突っかかることはなく一旦後ろに引っ込んだ。それと入れ替わるようにして、恐らくこの少女たちの中では最年長であろう、どこか色気を漂わせたエルフの少女が神に話しかけた。ちなみに、なぜエルフと分かったかというと、彼女の耳が尖っていたからだ。


「それで・・結局、私たちは貴方の暇潰しだけで殺し合いをさせられると。本当に他に理由はないのですか?」


『うーん、まああるっちゃあるかな。ヒントをあげる。君たち全員にはある共通点がある。それが、君たちが私に呼ばれて殺し合いをしてもらう理由だよ。』


 共通点?フローラはあのお嬢様と自分に共通点があるとはとても思えなかった。ジャージの少女とは多少共通点はあるかもしれないが、エルフの少女に至ってはそもそも種族すら違う。

 他の少女たちも共通点が何かは思い付かないようで、しきりにお互いの顔を見ていた。その時、あのお嬢様と目が合って、一瞬だけ凄い驚いた顔をされたが、その後すぐに元の表情に戻ったため、フローラもそれ以上気にはしなかった。

 なかなか共通点が何か答えがでない中、メイド風の少女におんぶされていたこの中で最も幼い容姿の白衣の少女が、無邪気な声でこう言った。


「あ、ひょっとして~、『ギフト』が関係しちゃってたりする~?」


 『ギフト』。その言葉に皆がはっとすると同時に、神が拍手したことでそれが答えということが分かった。


『正解!流石最年少で大学に入学して博士号を取得したララ君!頭のできがそこんじょそこらの凡人とは違うね。』


 神からの感情の全くこもってない称賛を受けたララと呼ばれた少女は、「いやー、それほどでも~。」と素直に喜び、他の面々は表情を固くした。


『そう!『ギフト』!巷では特殊な能力が生まれつき備わっているものが、その能力のことをそう呼んでいるらしいね。ところで、君たちはなぜ自分達の持つ能力が『ギフト』と呼ばれているか知っているかい?』


 神の問いに答えるものはいない。そんな少女たちに対し神はわざとらしく大きなため息をつき、『しょうがないから教えてあげよう』などと随分上から目線で語りはじめた。いや、神だから上から目線は当たり前かもしれないが。


『それは~・・『ギフト』は私が君たちに与えた力だからでーす!神たる私から贈られた能力、だから『ギフト』!分かりやすいでしょー?』


 先程から妙に言動がウザい。得意気に語りながら、指でこちらを指差し、時おり流し目を送ってくる。あのいかにも怒りっぽい感じのお嬢様なんか顔を真っ赤にしている。

 そんな中でも、一番冷静さを保っているエルフの少女が再び神に質問した。


「それで、私たちが全員『ギフト』を持っているとして・・それと私たちが殺し合いをすることになんの関係があるのでしょうか?」


 すると、神は、『まだ分からないの?本当に君たちって頭悪いね。』と少女たちを軽くバカにした後、その仮面の向こうから覗く金色の瞳で少女たちを見つめた。


『それは・・君たちが私の与えた『ギフト』を無駄遣いしているからだよ。特別な力を与えられておきながら、何もしない。それって、『ギフト』を与えた私に対する侮辱だよね?』


 フローラは、神のその言葉が自分を責めているように感じた。実際には、神はフローラだけを見ているわけではない。しかし、フローラがそう感じたのは、実際に自分が『ギフト』を活かせていないと自覚していたからだ。いや、あの『ギフト』を活かせというのも無理な話だと思うのだが。なぜならフローラの『ギフト』は・・。


「ちょっと待った!私は与えれた『ギフト』を活かしている自信があるぞ!実際、私は町でヒーロー活動をしている!私の名は『疾風のソニア』!『ギフト』の能力は超高速移動だ!私はこの脚を活かして何人もの命を助けた実績がある!」


 どうやら、フローラのように『ギフト』を活かせていない人ばかりではないらしい。自信満々でそう名乗りをあげた少女は、ヘルメットのせいで顔はちゃんと見えないが、ヒーローかくあるべきというようなスーツとマントに包まれた身体は非常にスタイルがよく、ヘルメットの中の顔も美少女なんじゃないかと思われた。

 しかし、自信たっぷりなソニアの宣言は、非常に冷たい神の声により一蹴された。


「それは違うんだよ、ソニア君。私は、そんな人助けみたいないいことをしてほしくて『ギフト』を与えたんじゃない。単純に強い力を得たものが力無きものを屈服させ殺す、そんな展開が見たかったんだよ。それなのに、君たちは全くその力を暴力に使おうとしない。『ギフト』をちょっと便利な力くらいにしか思っていない。そんなんじゃつまらない。面白くない。だから・・」


 神は、仮面の口をにやりと歪ませて笑った。


『だから、君たちには今から殺し合いをしてもらうのさ。私を失望させた罪滅ぼしと、そして『ギフト』を与えられたものが本来なすべき仕事をなすためにね。』


 少女たちは、戦慄した。この神は狂っている。誰もがそう思った。そして、同時に、この殺し合いから逃れることはできないことも、全員が理解したのだった。 


『さあ、とりあえず君たちが殺し合いをする理由は理解してもらえたかな?それなら今から殺し合いの簡単なルールを説明するね!』


 神はそう言うと懐から紙を取りだしそれを読み上げ始めた。神なのにカンペって・・。フローラは若干呆れた。


『えー、まず、殺し合いの期間は一週間!今から無人島にここにいる十人全員を転移させ、そこで殺し合いをしてもらいます。最低ノルマは一日一殺!最終的に生き残った二人は元居たところに戻してあげまーす!だから皆さんは頑張って他人を殺して生き残りを目指してね♪』


 生き残れるのは二人。それを聞いた皆の目付きが変わった気がした。生き残ることができるということを知り、自分は生き残ってみせると覚悟を決めたような目付きが多い。

 フローラはそんな中で、まだ覚悟を決めることができていなかった。フローラは、自分の『ギフト』が使えないものであることを知っている。とてもじゃないが、七日間の殺し合いを生き残れるとは思えなかった。

 そんなフローラの心情を読んでいたかのように、神が再び語り始めた。


『まあ、そう言っても中には戦いが得意ではないって人もいるよね。大丈夫!そんな人にも神は優しいからちゃんと救済措置を用意してあります。まず、今から無人島に転移させるまでの間、三分間だけ時間を与えます。その間に、一人が不安な人は誰かとペアを組むこともオーケーだよ。そのペアは、このゲーム開始時に同じ場所に転移させてあげる。別に三人組とかを作ってもいいけれど、最終的に生き残れるのは二人だから、あまりおすすめはしないよ。また、ゲーム三日目には、無人島にお得なアイテムが出る宝箱を設置するから、戦闘力に自信がない人は積極的にアイテムを狙いにいけばいいと思うよ。』


 とうとう、神は殺し合いのことを"ゲーム"と言い始めた。実際、神にとってはこれも暇潰しのゲームにしか過ぎないのだろう。自分達をゲームの駒としか思っていないその態度は、フローラの嫌いな貴族の態度とよく似ていて吐き気を覚えた。

 しかし、だ。先程神が語った内容はフローラとしては非常にありがたい。アイテムは使いこなせる自信はないが、三分間でなんとかペアを見つけようと思った。


『それじゃあ今から三分後に無人島に転移させるから、それまでに頑張ってペアを作ってね~。』


 神はそう言うとその場から姿を消した。それと同時に、少女たちもそれぞれ動き出す。フローラも、皆に遅れまいと慌てて動き出した。

 フローラは、最初に眼帯をつけた海賊風の少女に話しかけた。


「あ、あの・・私とペアを組んでくれませんか?」


 すると、海賊風の少女はくわっと目を見開いていきなりフローラを怒鳴り付けた。


「おいこらぁ!人に話しかけるときはまず自分が何者か名乗りやがれ!」


「ひぃ!す、すいません。私、フローラといいます・・。」


 フローラがその少女の剣幕に怯えながらも返事を返すと、少女は途端に笑顔になり、満足そうに腕を組んで頷いた。


「そうだ。それでいいんだよ。そっちが名乗ったんなら次は俺の番だな。俺の名前はキャプテン・ルージュ。百人の部下を従える海賊船の船長さ。よろしくな!」


 なんと、海賊風の少女は本当に海賊だったらしい。確かに、腕を組んで豪快に笑うその姿は、どことなく上に立つものの威厳を感じさせるものだった。この人とペアになれたらなかなかいいかもしれない。


「あの、それでペアの件なんですけれど・・。」


「あー、それなんだけどよ。悪いがお前より先に俺の部下になりてえって奴がいたもんでな。流石に三人組を作るつもりはねえんで無理なんだわ。」


 そう言ってルージュが指差した先には、先程あのお嬢様を止めていたジャージ姿の少女がいた。ジャージ姿の少女は、申し訳なさそうに頭を掻きながら、フローラに挨拶した。


「いやー、なんだか申し訳ないっすね。あんた見るからに戦闘とかできなさそうなのに、うちなんかが先にキャプテンをとっちまって。あ、うちの名前はスクリームって言うっす。」


 スクリームは明らかに心のこもっていない謝罪をしたあと、ルージュの後ろに隠れるようにして下がった。そして、ルージュはフローラに向けてその白い歯をにっと見せつけ笑いかける。


「・・とまあ、そんなわけでお前は俺たちの敵になるってわけだ。せいぜい俺に殺されないよう頑張れよ?ガーハッハッハ!」


 ルージュは軽い口調でそう言ったが、本当に殺すときは躊躇なくフローラを殺しに来るだろう。ルージュからは殺すことに対する忌避感を全く感じなかった。むしろ、この殺し合いを楽しんでいるようでさえある。

 フローラは、静かにルージュたちの元から離れた。


 ペアを探しているのはもちろんフローラだけではなかった。先程自らヒーロー活動をしていると言ったソニアの元に、一人の少女がペアを申請しに来ていた。


「貴女の力を見込んでお願いします。・・私と、ペアになってもらえませんか?」


 ソニアは、自分の元にやって来た少女をじっと観察した。その少女は、黒いタキシードを着ており、その背丈や凛々しい顔つきも相まって中性的な魅力を醸し出していた。実際、最初見たときは男かと思ったくらいだ。


「それは別に構わないぞ。助けを求める声があれば、その手を取るのがヒーローの務めだからな。ところで・・貴女の名前はなんというのだ?」


「これは大変失礼しました。私の名前はキスカと申します。以後お見知りおきを。」


 キスカはそう言って優雅に一礼した。そのキスカに、ソニアはペアとなる上で非常に大切な確認をすることにした。


「では、キスカ殿。貴女の『ギフト』はいったい何なのだ?ペアを組む上で互いの能力を確認しておくことは大事だからな。私の能力は先程も言ったように高速移動だ。最高で音速すら越える速度で走ることができる。」


 ソニアの問いに、キスカは一瞬躊躇ったあと返事を返した。


「・・そうですね。確かにお互いの能力を確認することは大切です。私の『ギフト』の能力は、他人のやる気を引き上げるというものです。」


「おお!それはなんともペアに向いている能力だな!心強い!」


「逆に言えば誰かとチームを組まなければ役にたたない能力ですけどね・・。まあ、それはさておき、ペアを組むにあたって、私から一つお願いがあるんですがよいですか?」


「む?いったい何だ?」


「私とペアを組むにあたり、『私には絶対に攻撃しない』・・それを約束してもらってもいいですか?・・こう見えて私、結構小心者なのでちゃんと約束してもらえないと安心できないんです。」


 キスカはそう言うと自分の右手をソニアに差し出した。ソニアは、その右手をがしっと握ると、キスカとしっかりと約束を交わした。


「ああ!勿論だとも!ペアを組んだ以上、君には絶対に攻撃などしない!それを約束しようではないか!」


 こうして、ソニアとキスカのペアが出来た間にも、フローラはまだペアとなる相手を探していた。

 ララと呼ばれていた白衣の少女は、彼女をおんぶしていたメイド服の少女と既にペアを組んでいた。あのエルフの少女・・名前はパトリシア・ローズマリーというらしい。彼女は、自分は誰ともペアを組むつもりはないとフローラの申し出を断った。

 まだ話しかけておらず、ペアを組んでいないのは二人。一人はあのお嬢様だからできれば避けたい。フローラは、自然な流れで残り一人の少女の元に足を運んでいた。


「あの、私、フローラといいます。私とペアを組んでもらえませんか?」


 先程ルージュに怒られた経験を活かし、自分から名乗り話しかけた。しかし、返事を待つもなかなか返ってこない。その少女は、ぼうっとした様子でフローラではないどこか遠くを眺めていた。


「えっと・・聞こえているよね?おーい!何か反応してよう・・。」


 いつまでたっても反応が返ってこず、フローラの心が折れかけたところで、ようやくその少女がフローラの方を向いた。


「・・ピティー。」


 少女はそれだけ言って、また遠くを見始めた。フローラは、それが少女の名前だということにしばらくしてから気づき、それと同時に改めて少女の姿を見た。

 よく見るとなかなか変わった姿をしている。髪が真っ白なのは話しかけた時から分かっていたが、服も瞳の色も真っ白だった。下手したら、この真っ白い空間に溶けて見えなくなってしまいそうにも感じる。

 若干の不気味さも覚えたが、ここで折れてはペアを組むのが困難になる。戦闘力が皆無のフローラとしては、なんとしてもここでペアを組んでおかなければならない。フローラはピティーと目線を合わせ、再び話しかけた。


「あの!できれば、私とペアを組んでほしいんだけれど・・。」


 最初は勢いよく発した言葉は、ピティーの瞳を向けられた瞬間次第に尻すぼみになっていった。ピティーは、感情を全く感じさせない声音で、ただ一言こう言った。


「・・私は、戦うつもりはないし、その必要もない。だから、誰ともペアは組まない。」


「え、それどういうこと・・?」


 しかし、フローラのその問いにピティーが答えることはなく、そしてピティーが再びフローラに視線を合わせることもなかった。


 結局、フローラは誰ともペアを組めないまま、三分間が過ぎようとしていた。しかし、残りあと数秒で三分が経過するという時になって、あのお嬢様がフローラに話しかけてきた。


「ちょっとそこの貴女!貴女まだペアを組んでいませんのよね?」


 フローラは、内心面倒な人に話しかけられたなぁ・・と思いつつも、渋々頷いた。


「それなら、この私が貴女とペアを組んで差し上げてもよろしくってよ!」


 あくまでも上から目線のその言葉に、フローラは心の中でため息をついた。どうせ、ペアが作れなかったから慌ててフローラに声をかけたのだろう。あの高慢な態度ならこれまでペアが組めなかったのも納得できる。しかし、フローラとしてもペアを組めそうなのはもうこのお嬢様しか残っていない。フローラが仕方なくお嬢様とペアを組むことを了承しようとしたその時、無慈悲な声が天から届いた。


『はーい、そこまで~!残念ながら時間切れでーす!それでは、楽しい殺し合いのはじまりはじまり~!』


 神の言葉と同時に、足元が眩しく輝き始める。次第に光に包まれる視界の中、「ちょっと!待ちなさいよ!」と焦ったようなお嬢様の声が聞こえた。

《殺し合いゲーム参加者リスト》


フローラ・・茶髪の女の子 平民。


ペトラ・ルドリアーナ・・ドリルヘアーのお嬢様。瞳の色は青。


パトリシア・ローズマリー・・エルフ。参加者の中では最年長。


ソニア・・マントにスタイルを強調させるスーツを纏った自称ヒーロー。顔にはヘルメット。


スクリーム・・ジャージ姿の少女。首にはヘッドホン。


キスカ・・タキシードを纏った男装の少女。長身。


ララ・・白衣を着た幼女。天才。萌え袖。


戦闘用メイド型ロボットNo.13(愛称アン)・・ララが作ったメイドの姿をしたロボット。


ピティー・・髪も目も白い少女。無表情。


キャプテン・ルージュ・・眼帯に海賊帽の少女。海賊船の船長。

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