四日目
シャルン「今回は、あらすじやるには人数多すぎて無理や!」
ソニア「というか、いつになったらあらすじ村の入村者は増えるのだ?」
※だいたいムイムイのせい。
《ロロ&メアリside》
三日目の特別イベントが終了した後、ロロとメアリの二人は、あの会場に飛ばされる前まで拠点にしていた小屋の中に戻されていた。
この小屋は、二日目の午後に偶然見つけたもので、見つけた時はカビやホコリだらけでボロボロだったが、ロロの掃除テクによりなんとか人が住める状態になったものだ。
小屋に戻った二人は、そのまま就寝し、たった今四日目の朝を迎えたところだ。タイマー機能のついているロロが、朝六時きっかりに目覚め、メアリを起こす。メアリは、寝ぼけ目を擦りながらも、ロロに朝の挨拶をした。
「おはようロロちゃーん。」
「おはようございます。メロディ・メアリ。朝食の準備ができております。とは言え、先程採ったばかりの果物しかありませんが。」
「それで十分だよ!さ、早速食べよー!そして今日も歌うぞー!」
ロロとメアリの二人は、小屋のベッドに腰掛けながら名前の分からない果物にかじりつく。メアリは、口についた果汁を袖で拭いながら、メアリに話しかけた。
「そういえばさぁ、ロロちゃんってロボットなんだよね?空を飛ぶ以外にどんなすごいことができるの?ロケットパンチとかできる?」
「そうですね・・。私は先代とは違い戦闘を前提として作られていませんので、そのような機能はありません。攻撃手段として持ち合わせているのは、ゴミを焼却するための火を口から吐けることくらいでしょうか。」
「何それ!口から火を吐けるなんてドラゴンみたいでカッコいい!ねえねえ他には?他にはどんなことができるの?」
目を輝かせて身を寄せてくるメアリを片手で制止しつつ、ロロはもう片方の手で形のいい顎に手を添えながら答える。
「そうですね・・。後は、手のひらからゴミを吸い込むことができます。吸い込んだゴミは、体内で焼却し、可動エネルギーにも使用しております。」
「すごーい!環境にも優しいー!」
「ただ、ゴミを燃やした後の燃えカスはどうしても出てしまいます。その燃えカスは、体内で圧縮し固めた後、体外へと放出しております。」
「え、それってウ◌コ?」
「ロボットはウ◌コなどいたしません。あくまでも口から放出します。それに、アイドルがウ◌コなど言うものではありません。」
「え、アイドルだってウ◌コくらいするよ?」
「それは十分承知しております。・・おっと、どうやら先程果物を食べたことで体内の燃えカスが規定量に達したようです。」
ロロはそう言うとベッドからおり、地面に四つん這いになった。メアリは、ロロが何をするつもりなのかとドキドキしながらその様子を眺める。
そして、それは唐突に始まった。
「オエェェェ!」
「え、ちょ、ロロちゃん。なんか絵面ヤバいんだけど!?どう見ても吐いてるようにしか見えないんだけど!?」
「ハア・・ハア・・も、問題ありません。ロボットはゲロなどしませんから。おや、どうやら喉の奥に引っ掛かってしまったようです。指を喉の奥に突っ込んでオボロロロロロ!」
「いや、どっからどう見ても吐いてるようにしか見えないんだけど!?誰かー!助けに来てー!衛生兵ー!」
そんなこんなで小屋の中はしばらくドタバタしていたが、ロロの口から出た固形物は宝石のように綺麗だったとだけ言っておこう。
《クロ&クリスタside》
四日目になっても、自分の主人は相変わらず本を読んでいる。これは、特別イベントがあった昨日を除けばこのゲームが始まっても毎度の光景だ。しかし、クリスタが今読んでいる本のタイトルを見て、クロは思わず顔をしかめてしまう。
「お嬢様。目の前に本人がいるのに私のことが書かれた本を読むのはやめていただけませんか?流石に恥ずかしいです。」
クロが苦言を呈すも、クリスタは全く読み進める手を止めようとはしない。クリスタは、顔は本に向けたままで、クロに返事をよこした。
「そうは言われましても、この本は私のお気に入りですから。特に、私との出会いの場面などは心理描写が豊かで面白いです。」
「ちょっと待ってください!その本、私の心理まで書かれるんですか!?それは初耳ですよ!?」
思わぬ言葉を聞き声を張り上げたクロに対して、クリスタがようやく本を読む手を止め顔を上げた。
「あれ、言っていませんでしたか?私の書く本は、私が本にした人物を見た時間に比例し、その内容がより詳しく変わっていくのです。今のところ、一番の大作は貴女ですね。」
そう言われてみれば、自分の名前が書かれているクリスタの持つ本は、いつの頃からか辞書のような分厚さになっていた。
「言われていませんよ!もう、そんな分厚くなっているなら、私の感情とか全部駄々漏れじゃないですか・・。」
自分のことを丸裸にされたような気がして、恥ずかしさから顔を真っ赤にするクロに、クリスタは少しだけ黒い笑みを浮かべた。
「はい!今もクロの羞恥の感情が赤裸々に書かれていますね。それもかなり細やかに。」
とうとう恥ずかしさに耐えきれず顔を覆い座り込んでしまったクロの耳に、クリスタが本のページをめくる音が聞こえてくる。
「それと・・これは最近気付いたことですが、本の内容が詳しくなると、本人も知らない情報も加わるようなのです。」
クリスタは、クロの隣にしゃがみこむと、「少々からかい過ぎましたね。すいません。では、これを見てくださいませんか?」と言って手に持った本を見せてくる。
従者の悲しい性で、謝られてはそれ以上責める気にもなれない。クロは大人しくクリスタが差し出した本を見ることにした。
「これは・・メアリのことが書かれた本ですか?」
「はい。そして、この家族構成のところを見てください。ここは、私が最初読んだ時は何も書かれておらず、孤児とだけ書かれていました。しかし、今は家族構成がちゃんと書かれています。」
そこに書かれた家族構成を見て、クロは息を呑んだ。
「これは・・!」
「なんとも数奇な運命ですよね。元は貴族の娘だったにも関わらず、自分は孤児と思っているなんて。」
そこに書かれたあった家族構成には、メロディ・メアリの本名も書かれてあった。
彼女の本名は、メアリ・ノックス。そして、彼女の姉として、シャーロット・ノックスの名前が書かれていた。
《ミラ&ムイムイside》
ミラは、三日目の特別イベントが終わってから、眠りにつくこともせず、ムイムイがやってくるのを警戒していた。ミラの頭には、三日目のイベントが終わる寸前、ムイムイが言った言葉がずっと鳴り響いていた。
(冗談じゃないわ!私は、まだ死ぬわけにはいかないのよ!)
ミラには、この殺し合いゲームを生き残り神に叶えてほしい願いがある。それは、貴族の身分を手にいれることだ。
平民であるミラは、ずっと貴族に憧れと恨みを抱いていた。ミラは、幼い頃から負けず嫌いだった。人よりも何倍も努力し、しかしそれを他人には見せず、自分より能力が劣る者を見てそれを嘲笑うことが何よりも好きだった。しかし、身分の壁というものはどうしようもない。平民のままでは、いくら能力で勝っていても、貴族を嘲笑うことなどできない。ミラは、それが我慢ならなかった。
だから、ミラがこの世界で一番優れていることを証明するためにも、身分の壁という縛りがない貴族の地位を手にいれることは必要なのだ。
幸い、一日たって少しは考える時間もあった。あの時は、ムイムイに対する恐怖で冷静な考え方が出来なかったが、今度は違う。今度こそ、自分が優れていることを見せつけてやるのだ。
「そうよ!くるんならいつでもかかってきなさい!」
ミラは、自分に喝をいれるつもりでそう叫んだ。
「そう?じゃあ、しんで?」
だから、その叫びに返事が返ってくることは予想外だった。いつの間にか、目の前には鋏を構えたムイムイの姿がある。ミラは、反射的に上半身を反らすことでなんとかその攻撃をかわしたが、その内心は恐怖と混乱でいっぱいだった。
(なんで!?こいつどこから現れたの!?)
初撃をかわされたムイムイはすぐには追撃には移らず、ミラの様子をじっと見つめていた。その隣には、彼女のおともだちとなったシャンプーとアスカの姿がある。
(なんで追撃してこないのかしら・・。まあいいわ。それなら、この隙にコピーさせてもらうわよ!)
先程の恐怖からなんとか立ち直ったミラは、とりあえず冷静に三人の能力を一通りコピーする。その結果、先程突然ムイムイが現れた理由が分かった。
三人の能力をコピーした結果はそれぞれこうだ。
シャンプー・・『瞬間移動ができる。』一度行った場所、会った人の元への瞬間移動が可能。
アスカ・・『自分が受けたダメージを相手に返す。』自分にダメージを与えた相手にそっくりそのままそのダメージを返す。
ムイムイ・・『人形遊びが得意』自分が殺した死体を縫い合わせることで、自分の命令を聞く人形を作り、使役できる。
先程の理由は、シャンプーの能力を使ったに違いない。あのウサ耳巫女、おどおどしていた割にはなかなか使える能力を持っていたようだ。それにしても、ムイムイの能力はある程度は予想していたが凶悪すぎるだろう。その上、よく分からない怪力も持ち合わせているのだ。
シャンプーの能力がある以上、逃げることはほぼ不可能。逃げてもすぐ瞬間移動で追い付かれてしまう。そうなると戦うしかない。
ミラがコピーして使える能力は一つだけだ。この中なら、戦闘に最も使えるのはアスカの能力だろう。ミラはそう判断し、アスカの能力をコピーする。そして、こちらを見つめるムイムイを正面から睨み付けた。
実質3対1での戦闘。しかも、相手は全員凶悪な能力持ち。ミラに勝機があるとすれば、それはミラが相手の能力を知っているのに、相手はミラの能力を相手が知らないことだろう。知っているということは、それだけで重要なアドバンテージになる。
「ねえ、ミラおねえちゃん。ムイムイのおともだちになってよ。」
ムイムイが幼女らしく可愛らしい声で話しかけてくるが、ミラはもうその見た目には騙されない。ムイムイの言葉を全力で拒否した。
「誰があんたなんかの友達になるもんか!あんたみたいな異常者はとっとと死になさい!」
すると、ムイムイの表情が一瞬で消え、虚ろな瞳を浮かべたまま、ボソボソと呟き出す。
「・・なんで?なんでムイムイのおともだちになってくれないの?なんでそんなひどいこというの?・・そっか、そうだね。うん。パパ、ママ、やっぱりそうだよね。」
そして、その虚ろな瞳が、真っ直ぐにミラの瞳を捉えた。
「いきてるから、そんなひどいこというんだ。だったら、もうしんじゃえ!」
次の瞬間、ムイムイの姿が消える。ミラがそれに気付いた時には、ムイムイはシャンプーと一緒にミラの背後へと瞬間移動していた。咄嗟にロッドを構え防御するも、防ぎきれず、右腕が鋏で切断されてしまう。
「うわあああ!!?」
あまりの痛みに悲鳴をあげる。だが、ミラはアスカの能力をコピーしていた。そのため、ミラの右腕が切断されると同時に、ムイムイの右腕も切断される。それを見たミラは、痛みで顔を歪めながらも心の中でガッツポーズをとった。
(よし!これでムイムイはもう鋏は使えないはず。この隙に一気に畳み掛けて・・?)
しかし、切断されたムイムイの右腕をその視界に捉えた時、思考は中断される。
ムイムイは、猫の着ぐるみを着ていた。そのため、その腕も猫の手を模したアームカバーに覆われ、その中身を見ることはなかった。だが、切断されたことで、その中身が見えている。
その腕は、とてもじゃないが幼女の右腕には見えなかった。筋肉が盛り上がり、毛も生えているその腕は、どこからどう見ても男の腕だ。
そのことを混乱する頭で理解した時、ミラはムイムイの自己紹介を思い出していた。
『こっちがパパで・・』
そう言ってムイムイが上げたのは、今と同じ右腕だった。
『こっちがママ。』
そう言ってムイムイが上げたのは、左腕だった。
そして、ムイムイの能力は、『人形遊びが得意。』というもの。あの時は、変な子供だとしか思わなかったが、もしあの言葉が本当だとすれば・・
「・・まさか、自分の両親の腕を、自分に縫い合わせたの!?」
ムイムイが顔面蒼白になりながらそう叫んだところで、先程切り落としたムイムイの右腕がミラの足を掴む。
これまでで一番の恐怖を感じ、ミラは「ヒイイィッ!?」と情けない悲鳴をあげた。そんなミラに、ムイムイが鋏を構えてゆっくりと一歩ずつ近づいてくる。もうミラに戦う意志は残されていなかった。
「じゃあね、ミラおねえちゃん。しんだらまたあおうね?」
ミラの首が宙を舞い、ミラがコピーしたアスカの能力によりムイムイの首もまた宙を舞う。
しかし、アスカの首をはねた時と同様、ムイムイは何事もなかったかのように自分の首を縫い合わせ、そしてミラの首も縫い合わせる。
ムイムイは、自分のおともだちになったミラににこっと笑いかけると、地面に落ちた右腕を拾い上げ、その右腕を抱きしめながらこう呟いた。
「やったよパパ!おともだちがたくさんできた。・・でも、もっとたくさんおともだちがほしいな。つぎは、あのあいどるちゃんをおともだちにしようかな?」
わーい!今日も脱落者はいなかったね!(棒)




