表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
2nd stage  歌と書物は永遠に
17/110

三日目 part 1

シャルン「あれ、ここはいったいどこや?」

ソニア「よく来たな新人よ!ここはあらすじを読者に伝えるあらすじ村!そして私はこのあらすじ村の村長兼正義のヒーロー、ソニアだ!」

シャルン「・・え、あんた誰や?」

ソニア「細かいことはいい!ここではあらすじが全てだ!」

シャルン「えー・・なんか超強引に話を進めてるんやけど。」

ソニア「今回のあらすじは、クリスタとクロとロロとメアリがチームで怪獣と戦うぞ!そして、三日目はパート1、2の二部に分かれるのだ!」

シャルン「そして結局あんたがあらすじ言うんかーい!」

《チームクリスタside》(クロ・クリスタ・ロロ・メアリ)


 クロの三日目の朝は、聞きたくもない神のアナウンスから始まった。


『みんなー、おっはー!元気してた~?三日目に突入したところで、途中経過を発表するよ~。現在、脱落者はピティーとシャルンの二人!ちょっと~、このままのペースじゃ七日間で生き残り二人は無理だよ?ということで~・・特別イベントを開催しようと思いまーす!ドンドンパフパフー!』


 クロは、昨日クリスタが要注意人物と挙げていたシャルンが早速脱落していることに驚いた。だが、その驚き以上に、神が今から何をしようとしているかの危機感の方が勝り、クロは顔を引き締める。


『今から行う特別イベント、その名も~、《大怪獣討伐》!これからお前らには、四人ずつのチームに分かれてもらって、特別ステージで大怪獣と戦ってもらうよ。このイベントのお前らの勝利条件は二つ!一つ目は、大怪獣を倒すこと。まあ、これは普通に考えたら分かるね~。そして次が大事だよ?二つ目は、チーム内に一人いる《生け贄》を殺すこと!《生け贄》には、私から個別にアナウンスを送っているから、本人は自分が《生け贄》であることを知ってるよ~。賢いお前らなら、どっちの条件の方が楽かってことは分かるよね?それじゃあ、頑張ってね~!』


 神のアナウンスが終わると同時に、クロとクリスタの身体は白い光に包まれ、気がつくと野宿していた洞窟から、見覚えのない石畳の地面の上へと転移させられていた。


「うわっ!?びっくりした~!いきなりピカーって光って前が見えなくなるんだもん!・・で、ここどこ?」


「メロディ・メアリ。ここはおそらく先程神が言っていた特別会場の入り口であると推測いたします。目の前に大きなドアのようなモノも確認できますし。」


 聞き覚えのある声が聞こえてそちらを向くと、そこにはメロディ・メアリと自己紹介していた少女と、ロボットメイドのロロの姿があった。どうやら、この二人と自分とクリスタを含めた四人でのチームのようだ。

 クロは、このメンバーの中にムイムイがいないことにほっとした。クリスタからムイムイの能力やその性格を聞かされた後だと、彼女と一緒に行動するのは遠慮したい。


「メアリさんとロロさんですね。どうやら、私たち四人でのチームのようです。今だけは互いに協力しあい、怪獣を倒す方向でまとまりませんか?」


 クリスタが、早速二人に共闘を持ちかける。どうやら、クリスタは二つ目の条件を選ぶことはしないらしい。個人的には、クリスタに危険が及びそうな一つ目の条件よりも、リスクが少なくて済む二つ目の条件の方が喜ばしい。先程確認したのでクロとクリスタのどちらも《生け贄》ではないことは分かっているので、あの二人のどちらかが《生け贄》で間違いない。

 クロとしては、他人を殺すことには特に忌避感はない。今はクリスタの従者をしているとはいえ、元は暗殺者だったのだ。しかし、クリスタがそれを望まないなら、クロはその意志に従うまでである。

 そう思っていたクロであったが、その思いは次のロロの言葉で揺らぐこととなる。


「共闘の必要はありません。私が《生け贄》に選ばれたようなので、私を殺せばそれで済む話です。未知の怪獣を倒すよりそちらの方が圧倒的にリスクが少ないため、私を殺すことを提案します。」


 さも当然というような顔でそう言ったロロに対し、真っ先に反応したのは彼女の隣にたつメアリであった。


「ロロちゃん、何言ってるの!?貴女を殺せるわけないじゃない!」


 メアリは心底驚いたようで目を丸くして叫ぶが、対するロロはどこまでも機械的だ。平然とした無表情でこう答える。


「メロディ・メアリ。貴女は既に知っているはずです。そちらの二人にも明かしますが、こう見えても私はロボットです。私がたとえ死んだとしても、そのデータは研究所に送られ、私と同じ機体にそのデータが移されます。替えのきく私は貴女たち人間とは命の重さが違うのです。そのため、私を殺すことに罪悪感を感じる必要はありません。」


 なるほど。確かにロロの言うことには一理ある。それなら、余計な罪悪感を感じる必要はない。

 クロがロロを殺そうとその腰の刀に手をかけると、それをクリスタが手で制した。


「なぜ止めるのですか?貴女の命を守るためなら、これが最も良い選択肢なはずです。」


「私は、それが最良とは思えません。それに・・貴女は納得しても、彼女は納得していないようですよ。」


 クリスタはそう言って目線をメアリに向けた。そして、そのメアリはというと、顔を真っ赤にして頬を膨らませていた。


「ロロちゃんの馬鹿!貴女がロボットとかそんなの関係ないの!私が貴女に死んで欲しくないの!」


「メロディ・メアリ。ですから、私は死んでもデータは残ります。悲しむ必要はありません。」


 ロロがメアリの様子にも怯まず相変わらず機械的な口調でそう答えると、メアリはおもむろにロロの頬をぎゅーっと両手で挟んだ。


「馬鹿なことをいう口はこの口かぁー!」


「い、いきなり何をするのですか?」


 それまで感情らしい感情を見せてこなかったロロが、突然のメアリの奇行に驚いたのか、初めて困惑した表情を浮かべた。そんなロロを真正面から見つめ、メアリは真剣な顔で問いかける。


「ねえ、ロロちゃん。死んでもデータは残るって言ってたけれど、そのデータで新しく産まれたロボットは本当にロロちゃんと同じって言えるの?私はそうは思わない。だって、私の歌を聞いて一緒に踊ってくれたロロちゃんは私がこうして見ているロロちゃんだけで、他の誰でもないもの。」


 メアリは、ロロに近づけた顔を一旦離すと、「それにね、」と続けた。


「それにね、私、自分が生き残るために誰かが犠牲になるなんて耐えられない。だって、世界中のみーんな、このアイドルメアリちゃんの大切なファン候補なんだもん。アイドルがいなくても、歌は残るけれど、ファンがいなかったら、聞いてくれる人がいなければ、歌は残らない。だからね・・。」


 メアリは、もう一度今度は優しくロロの頬をその両手で包むと、にこっと穏やかな笑みを浮かべた。


「私の大切なファン一号のロロちゃんが死ぬのは許せない!それで怪獣と戦うことになろうとも、望むところよ!」


「メロディ・メアリ・・。」

 

 ロロは、本当にロボットかと思うくらいに目を見開いてメアリを見つめていた。メアリは、そんなロロに再びにこっと笑いかけると、メアリとロロの様子を眺めていたクロとクリスタに、「シュタッ!」というセルフ効果音と共に、謎の構えを向けた。


「さあ、貴女たちも、ロロちゃんを殺すつもりなら、この私が相手になるよ!アイドル真拳をお見舞いしてあげるんだから!ほわちゃー!」


 ポーズと台詞は勇ましいが、足は情けなく震えている。しかし、クロはそんなメアリを笑うことはできなかった。


「クロ、これでもまだ、ロロを殺すのが一番良い方法だと思えますか?」


 クリスタのその問いかけに、クロは苦笑しながら首を横に振った。



▼▼▼▼▼



 メアリの訴えにより、ロロも自らが犠牲になるとは言わなくなったことで、クロたちの方針として怪獣を倒すことが決まった。


「ですが、怪獣を倒す前にある程度の作戦を立てておく必要があります。」


 クリスタが自然と指揮を取り、怪獣を倒すための作戦会議が始まる。しかし、どんな怪獣が相手なのかが分からない現状、立てられる作戦は少ない。とりあえず、最小限各自が行うべき動きを確認するだけになった。


「それでは、作戦通り、まず私が相手の能力や弱点を探ります。その間、メアリさんは歌で敵の注目を集めてください。ロロさんは、メアリさんを護衛。クロは、私を運んで移動、相手の弱点が分かり次第、積極的に攻撃してください。」


「了解です。」「承知しました。」「おっけー!」


 各々が返事をするのを確認し、クリスタが扉を開ける。それと同時に、クロはクリスタを背負った状態で扉をくぐり中に駆け込む。その後に、ロロとメアリが続いた。

 扉の中に入ったクロは、目の前に現れた怪獣を前に言葉を失った。


(でかっ!?)


 そう、その中にいたのは、クロの予想より遥かに大きな巨大ゴーレムだった。クロがそのあまりの巨大さに思わず立ち尽くしていると、頭上からクリスタの少し焦った声が呼び掛ける。


「何をしているんですかクロ!?既に狙われていますよ!?」


 その声に反応し上を見ると、クロとクリスタ目掛けゴーレムの巨大な拳がまさに振り下ろされようとしているところだった。

 クロは、間一髪でそれをかわし、そのままゴーレムから逃げるように全力でダッシュする。ゴーレムがいるここは、闘技場のような構造になっていて、逃げ回れるステージはそこまで広くない。後ろからドスンドスンとゴーレムの迫る音が聞こえてきて、クロは冷や汗を流す。

 しかし、その音をかき消すような明るい声が、闘技場内に響き渡った。


「でっかいゴーレムさーん!この私の歌を聞きなさーい!メロディ・メアリで、『カクレクマノミの巣』!」



『カクレクマノミの巣』

作詞・作曲 レッドリーフ 歌 メロディ・メアリ


カークーレクーマノーミのー巣×2

カークーレクマノーミの巣ーはイーソギーンチャーク

カークーレクーマノーミのー巣×2

カークーレクーマノーミ カークーレクマノーミー

カクレ×8

イソギンチャクの中で一年中過ごしているー(いるーいるー)

まいにーち隠れてばっかりで つーまーらないなと思うなら

たーまーには外に出てきて 遊びにおいでよー((うお)ー魚ー)

カークーレクーマノーミのー巣×2

カークーレクーマノーミのー巣 かーくーれるクマノミー

そーのー名はー 《チャーリー》!


 

 メアリが歌った歌は、意味不明なものであったが、何故だかそれを聞くと力が湧いてきて、クロはいつもよりも速く走ることができた。

 そして、メアリの歌により、作戦通りそちらに注意を向けたゴーレムは、メアリ目掛けその拳を振り下ろす。しかし、迫ってくる拳を目の前にしても、メアリがマイクを離すことはなかった。


「・・メロディ・メアリ。貴女はそれでいいのです。貴女というアイドルを守るのは、『親衛隊』のこの私が努めましょう。」


 メアリの前に立ち塞がるのは勿論、ロボットメイドのロロ。ロロは、迫り来るゴーレムの拳を、その手に持った箒で弾き飛ばした。


「貴方のような巨大なゴミはアイドルには近づけさせません!コンサートチケットを予約してから出直して下さい。」


 ロロの能力により、巨大ゴーレムは吹き飛ばされ、ドシーンという大きな音を立てて地面に仰向けに倒れる。

 その隙だらけのゴーレム目掛け、クロは全速力で走り出した。


「クロ!このゴーレムの弱点は頭部にあるコアです!そこを全力で攻撃してください!」


 クロが逃げ回っている内に、既にゴーレムの情報を読み取っていたクリスタが本を片手に頭上からクロに指示を出す。


「了解しました!」


 クロは、クリスタの指示を受け、さらに速度を上げる。クロがゴーレムの足に飛び乗る寸前で、クリスタがクロから飛び降りる。クリスタをロロが文字通り飛んできて受け止めるのを横目で確認すると、クロはゴーレムの足を思いっきり踏みつけ、その反動で天高く舞い上がる。

 そして、そのまま重力加速度に身を任せ速度を上げながら降下。ゴーレムの頭部のコアに、すれ違いざまにメアリからの歌のバフが入った強烈な一撃をお見舞いし、地面にぶつかる時に影に潜り、衝突の衝撃を逃した。

 影の中で、クロはゴーレムが爆発する音を聞いた。そのあまりの爆音に、クリスタが巻き込まれていないか心配になったが、今影から出ても爆発に巻き込まれるだけなので、クロはクリスタの無事を信じて、影の中を泳ぎメアリが居た場所へと移動することにした。

 そして、影の中から出たクロが目にしたのは、箒をぐるぐると回し、爆風を完璧に跳ね返したロロと、その後ろに隠れて無傷のクリスタとメアリの姿だった。

 ほっと安心して一息つくクロに、クリスタが珍しく満足そうにニヤリと笑みを浮かべてこう声をかけた。


「流石はクロですね。これでまた、貴女の物語に新しい一ページが加えられました。これからも貴女の書く物語を楽しみにしていますよ。」


 従者の活躍を自分のことのように独特な表現ながらも喜んでくれる主に、クロもまた笑みを浮かべてこう答えた。


「はい、楽しみにしていてください。・・まだ絶版にはさせませんよ。」


‐こうして、クリスタチームは見事怪獣を退治することに成功したのであった。


パート2、ミラチームに続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ