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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
1st stage 戦場に咲く友情の花
13/110

番外編:フローラのバレンタイン

バレンタイン番外編です!

遅すぎるとかツッコミはスルーで!

 フローラとシャーロットの二人は今、ララの研究所がある隣国へと向かっている途中である。しかし、目的地である研究所は遠く、未だに隣国に到達してすらいない始末。

 とはいえ、ここ数日の移動でようやく国境付近までたどり着いたので、二人は近くの安宿で一泊し、明日隣国へ入ろうとしていた。


「フローラ。君はルドリアーナ家の援助を受けているのだからもう少し高い宿に泊まれたのではないか?」


「宿ごときに無駄に金をかける程の余裕はありませんよ。それに、あまり高い宿だと眠れないので。」


「なるほど。貧乏人の性というやつだね。悲しいことだ。」


 二人は、そんな軽口を叩きつつ、部屋に荷物を下ろしていく。フローラの荷物はリュックサックだけだが、シャーロットの荷物は多い。宿の従業員の手も借りて、大型のキャリーバック三個を部屋に運び入れた。バックを下ろす際、フローラは床が抜けるのではないかと内心ビクビクしていたが、安宿の床はなんとか耐えてくれたようで一安心である。


「しかし・・改めて見てもすごい量の荷物ですよね。何でこんな大量の荷物が必要なんですか?」


「おや、話していなかったかね?この荷物は全てシャーロット・ノックスの事務所に置いてあった地図や新聞類だ。シャーロット・ノックスの推理においては欠かせない、君以上に頼りになる私の相棒だよ。」


「それにしても多すぎますよ!私の能力で少し楽に運べるとはいえ、この量の荷物を持つのは結構大変なんですよ!?集中力も使いますし・・。」


 そう、このシャーロットの大量の荷物、ここまで運んできたのは何を隠そう、フローラである。

 フローラの『ギフト』の能力は、『自分が足場と認識したモノから浮く』能力であったが、能力の修行をひたすらしていくうちに、能力の幅が広がり、今では、『自分または触れたモノを浮かす』能力に変化していた。この能力により、フローラはシャーロットの大量の荷物を浮かしながら運ぶことでここまでやってきたが、先程本人も語ったように、自分以外のモノを浮かす際にはかなりの集中力が必要となるため、負担も大きいのだ。


「知識は多いにこしたことがないのだよ、フローラ君。それに、これも君の修行の糧となればと思ってのこのシャーロット・ノックスからの粋な気遣いさ。むしろお礼を言ってほしいくらいだね。」


「なんで私が礼を言わなければならないのですか!?むしろ逆でしょう!?」


 フローラはシャーロットのあんまりな言い分に、つい目を丸くして抗議する。そんなフローラの様子を、シャーロットは目を細めて眺めていた。



 シャーロットが数日前フローラと初めて会った際には、フローラには表情と呼べるものがなかった。復讐の念に縛られ、それ以外の感情を表に出すことがない、まるで人形のようだと初めてフローラの顔を見た時は思ったものだ。

 しかし、自分は、彼女の瞳の奥で燃える復讐の炎に魅せられてしまった。自分では気付かないようにしまいこんでいた感情に、彼女の炎が火を付けたからこそ、シャーロットはこうして今フローラと共にいるのだ。

 そのことに関しては、シャーロットは知的な行動を心がける自分らしくないと思いつつも、どこかでそんな自分に興奮していた。名探偵である自分でも、自分自身の感情をというものは推理できるものではないらしい。

 そんなシャーロットにとっての最近の日課は、相棒であり、そして尊敬に値する人物であると評価するフローラをからかうことである。

 フローラの意志は、シャーロットを変えてしまうほど強いものだ。しかし、あんなはりつめた状態では、そのうち無理がくるのは目に見えていた。だからこそ、フローラには心の余裕をもってほしかったのだ。

 それに、フローラがあまりにも無表情なので、他の表情を見てみたいという気持ちも強かった。いや、正直に言えばこっちの理由が大半だ。どうやら自分は相当シャーロットが気に入っているらしい。

 荷物をフローラに持ってもらったのもからかいの一部だ。先程は目を丸くして予想以上に可愛・・ゲフンゲフン。興味深い姿を見せてくれた。ここ数日の自分の努力は、どうやら少しずつ実っているようだ。

 さて、今日はいったいどうやってフローラをからかおうか・・。そうシャーロットは思案する。そしてすぐに、今日が東洋の国でバレンタインデーというイベントがある日であることを思い出した。バレンタインデーとは、本来女性が男性にチョコを贈る日だが・・そんなことは関係ないな。フローラのチョコが欲しい。そう強く思ったシャーロットは、早速行動に移ることにしたのであった。



▼▼▼



「フローラ、君は今日が東洋の国でバレンタインというイベントがある日ということを知っているかい?」


「なんですか急に・・バレンタイン?いえ、知りませんね。」


 荷物の整理が終わり、各自椅子に座って新聞を読んだり、瞑想をして集中力を高める訓練をしたりしている時に(どっちがどちらなのかはご想像にお任せします。)、シャーロットがそう切り出した。


「バレンタインとはだね、女性が思いを寄せる男性にチョコを贈るという日なのだよ。」


「はあ。それはまあなんというかロマンチックなイベントですね。」


 フローラは、瞑想した状態で卵を空中に浮かべつつ、シャーロットの説明に興味なさげな様子で返事を返す。しかし、シャーロットにとってもそんな反応は予想済みである。


「それでだ。君がシャーロット・ノックスにチョコを作ってくれないかね?」


「・・は?」


 シャーロットの言葉が理解できず、思わず間抜けな声を出してしまうフローラ。それと同時に集中力が切れ、浮かべていた卵を床に落としてしまう。哀れ生卵は爆発四散。フローラのスカートに白身を撒き散らした。


「うがぁ!?私のスカートが・・。」


「そんなことより、シャーロット・ノックスにチョコをくれないか?」


「そんなことよりって何ですか!大体シャーロットが急に変なことを言うのがいけないのでしょう!」


「いや、それは修行に生卵を使う君に問題があると思われるよ。あと、私のことはシャーロット・ノックスとフルネームで呼びたまえ。」


「生卵を使った方が落としてはいけないという緊張感でいい修行になるんですよ!あと、フルネームは長いので面倒です!」


 シャーロットから見る今のフローラは大分感情豊かだ。ここ数ヶ月フローラをからかい続けた甲斐があったと、自分の努力を称賛しながらも、シャーロットは自分の欲望を抑えることはしない。


「分かった。君だけは私のことをシャーロットと呼ぶのを許そう。その代わり、私にチョコをくれ。」


「いや、どんだけチョコが欲しいんですかシャーロットは・・。それに、先程の話ならバレンタイン?とは女性が男性にチョコを渡す日のことなのですよね。シャーロットは男性ではないではないですか。」


 この反論はシャーロットの予想内のモノだ。探偵に抜かりはない。シャーロットはすぐさま口角をニヤリと引き上げ、プランB、『フローラいじり』に移行する。


「まあ、確かにシャーロット・ノックスは男ではない。シャーロット・ノックスは背も高くなく、筋肉もない。男性的とは程遠い体型だと自負しているよ。どちらかといえば、フローラ、君の方が男性的な体型だ。その慎ましやかな胸といい、程よく引き締まった体といい、シャーロット・ノックスよりは男性役が似合うのは間違いないだろう。それならば、チョコを作るのはこのシャーロット・ノックスが適任かもしれないなあ。」


 シャーロットは、自分のそこそこに豊かな胸を腕を組むことで強調しつつ、フローラに流し目を送った。そして、フローラはというと、自分が男性的だと言われた怒りからか、顔を真っ赤にしていた。そして、


「・・分かりましたよ!そんなに私が貧乳だの男っぽいだの扁平足だの馬鹿にするなら、私がチョコを作ってあげますよ!私たって女っぽいところはあるんですからね!」


 そう言うと、フローラはチョコを作る材料を買うべく、矢のような速さで宿から飛び出していった。

 残されたシャーロットは、「いや、扁平足は言ってないが・・。」と冷静なツッコミをいれつつ、フローラのチョコを楽しみにして表情を緩ませていた。


-この数分後、フローラが作ったチョコは、特別に上手いわけではないが、シャーロットにとっては良い思い出となる味であったことだけを記しておく。

本編の方の再開はもう少しお待ち下さい。少し余裕はできたので、今から書き溜めておきます。

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